2023年4月2日日曜日

すみだ北斎美術館 企画展「北斎バードパーク」

桜も咲き、春の穏やかな陽射しがやさしく、「ホーホケキョ」というウグイスのさえずりが聞こえてくる中、東京・墨田区のすみだ北斎美術館では、この時期にぴったりの企画展「北斎バードパーク」が開催されています。

3階ホワイエのフォトスポット

展示室内は葛飾北斎や門人たちが描いた鳥の作品でいっぱい。前後期あわせて約110点の作品が展示されます。

それではさっそく展示室内の様子をご紹介したいと思います。

展覧会概要


会 期  2023年3月14日(火)~5月21日(日)
 前期:3月14日(火)~4月16日(日)
 後期:4月18日(火)~5月21日(日)
 前後期で一部展示替あり
開館時間 9時30分~17時30分(入館は17時まで)
休館日 毎週月曜日
会場  3階企画展示室
観覧料 一般 1,000円、高校生・大学生 700円、65歳以上 700円
    中学生 300円、障がい者 300円、小学生以下 無料
  ※観覧日当日に限り、AURORA(常設展示室)、常設展プラスもご覧になれます。
  常設展プラスには「隅田川両岸景色図巻(複製画)」が展示されていて、北斎の絵手本の
  レプリカを手に取って読むことができる<『北斎漫画』ほか立ち読みコーナー>もあり
  ます。

 ※展覧会の詳細、関連イベント等の情報は同館公式HPをご覧ください⇒すみだ北斎美術館
 
展示構成
 第1章 バードウォッチング
 第2章 鳥グッズ
 第3章 舞台装置としての鳥

※3階の企画展展示室、4階の常設展プラス展示室内及びミュージアムショップは撮影禁止です。掲載した写真は内覧会で美術館より特別に許可をいただいて撮影したものです。
※3階ホワイエのフォトスポット、高精細複製画は撮影可。4階AURORA(常設展示室)内は一部を除き撮影可です(いずれもフラッシュ、三脚(一脚)の使用は不可。)


企画展オリジナルリーフレット(税込350円)は1階ミュージアムショップで絶賛発売中です。

企画展オリジナルリーフレット



第1章 バードウォッチング

今回の主役は色とりどりの鳥たち。
第1章では鳥の種類ごとに北斎や門人たちの作品に描かれた66種もの鳥たちが紹介されるので、まるで自然の中や野鳥園にいるような気分でバードウォッチングを楽しむことができます。
北斎の肉筆画「杜鵑」は当館初公開!

右 葛飾北斎「来燕帰雁図」吉野石膏コレクション(すみだ北斎美術館寄託)
左 葛飾北斎「杜鵑」すみだ北斎美術館蔵
どちらも前期展示


そして、「鳥の解説」パネルには鳥の特徴や生息地域、名前の由来、渡り鳥であれば日本に飛来する時期、外来種であれば日本に渡来したいきさつなどの詳しい説明があるので、バードウォッチングをしながらそれぞれの鳥についての勉強ができるのもうれしいです。

右 葛飾北斎『三体画譜』駒鳥 雀 鶯 泰吉了
左 魚屋北溪『狂歌百花鳥』下
どちらもすみだ北斎美術館蔵、前期後期で頁替えあり 


今回の企画展ではあらためて葛飾北斎の天才ぶりに気がつかされました。

鳥や花などが描かれた花鳥画は古くからやまと絵などで描かれ続けていたので、浮世絵でも花鳥画は当初から描かれていたと思っていたのですが、そうではなく美人画や役者絵が主流で、技術的にも制約があった浮世絵の世界では、多色摺木版画の錦絵の登場後、北斎が花鳥画というジャンルの確立に一役買ったというのです。
(詳しくは企画展示室内の解説パネルをご覧ください。)

天保(1830-44)初期に北斎による錦絵の花鳥画シリーズが続けて出版されたことから、その人気の高さがわかります。

右 葛飾北斎「鵙 翠雀 虎耳草 蛇苺」、左 葛飾北斎「芙蓉に雀」
どちらもすみだ北斎美術館蔵、前期展示 

作品解説に「十枚揃の西村屋版大判(又は中判)花鳥画シリーズ」とあるのが目印で、前期展示の「鵙 翠雀 虎耳草 蛇苺」「芙蓉の雀」はじめ、後期にもこのシリーズの作品が展示されるので、浮世絵界の花鳥画の金字塔となる作品にぜひ注目してみてください。


第2章 鳥グッズ

現在も鳥グッズ専門店があるほど鳥のデザインは人気がありますが、江戸時代の人たちの間でも鳥グッズが人気でした。

今ではあまり使われることがないきせるや文様入の櫛、刀剣ファンでなければ家に置くことはない刀や刀の鍔など、当時の人たちにとっては身近なモノのデザインも北斎や門人たちが手がけていたのです。

こちらは門人たちの図案集。
第2章「鳥グッズ」展示風景


葛飾北斎「馬尽 駒菖蒲」で注目したいのは、丸い根付に描かれた鳥。

葛飾北斎「馬尽 駒菖蒲」すみだ北斎美術館蔵
前期展示

描かれているのはインコ。江戸時代にはオウムもインコも輸入されていたそうです。
色鮮やかな赤色がとてもオシャレです。

扇子の下には広げられた書物が空摺りで描かれているので、近くでじっくりご覧ください。


第3章 舞台装置としての鳥

作品の中に描かれた鳥たちのもつ役割や意味合いをひも解いていくのも今回の企画展の楽しみの一つです。

今でも展望デッキなどに100円玉を入れると何分間か遠くの景色が見られる望遠鏡が置かれていますが、江戸時代の人たちも同じように高いところから景色を楽しんでいました。

葛飾北斎『画本狂歌 山満多山』上
すみだ北斎美術館蔵 前期展示
(後期には作品を替えて同じ場面が展示されます。)

望遠鏡は17世紀初めに日本に輸入され、18世紀には高台の茶屋などにも設置されました。
この作品では長い長い望遠鏡の下に飛ぶ鳥や山を描いて、高台の情景であることを表現しているのです。


浮世絵にはとまり木で休むフクロウや頭巾をかぶったフクロウが登場しますが、これには二つの意味があるそうで、一つは病を払う象徴、もう一つはズク引きのフクロウ。
ズク引きとは、昼間にフクロウを林に連れてとまり木に繋いでおくと、それを追い払おうとして飛んでくる小鳥を網やトリモチなどで捕まえる猟法のことで、その際、目隠しのため頭巾をかぶせることもありました。

葛飾北斎『卍翁艸筆画譜』 山鴞
 すみだ北斎美術館蔵 通期展示


ここで一つ耳寄りな情報をご紹介。

「愛鳥週間」に北斎が描く鳥たちのしおりをプレゼント!

期 間 2023年5月10日(水)~16日(火)
    ※5月15日(月)は休刊日のため配布はありません。
対 象 企画展「北斎バードパーク」展観覧券、または年間パスポートお持ちの方
    (AURORA(常設展示室)、常設展プラスのチケットは対象外)
※しおりはなくなり次第、配布終了です。あらかじめご了承ください。
※しおりの4種類ありますが、絵柄はお選びいただけません。 

こちらは4種類のうちの一つのフクロウです。

『卍翁艸筆画譜』山鴞がデザインされたしおり


そして最後は、とてもユニークな作品が展示されていました。

北斎が十一代将軍徳川家斉の御前で、ニワトリの足に朱肉をつけて紙の上を歩かせて、紅葉で知られる竜田川の風景を描かせたというパフォーマンスが伝えられていますが、実際にはニワトリの爪で紙が破れて絵にならないのではとの推測がある中、2017年にすみだ北斎美術館が「竜田川に紅葉」の逸話を見事に再現したのが「竜田川に紅葉の図」なのです。

向井大祐 勝川ピー 「竜田川に紅葉の図」
すみだ北斎美術館蔵 通期展示

藍色の線を引いた東京藝術大学保存修復日本画研究室 向井大祐氏(肩書は制作当時)、チャボのピーの飼い主 勝川東氏の協力のもと、北斎の大胆な逸話が実証されたのですが、北斎はこのような発想をどのようにして思いついたのでしょうか。

たまたま家の中にニワトリが乱入してきて北斎が描いてる最中の絵の上を歩いてペタペタ足跡をつけたのでは、など勝手な想像をしたりして興味は尽きません。

4階AURORA(常設展示室)内
「北斎のアトリエ」再現模型

展覧会の大きな楽しみの一つが展覧会に関連したミュージアムグッズですが、今回の企画展でも鳥に関連した可愛らしいグッズが販売されているので、ぜひミュージアムショップにもお立ち寄りください。

ミュージアムショップ


北斎や門人たちが描いたさまざまな鳥たちの楽園が見られる展覧会です。
ぜひお楽しみください!