2023年6月5日月曜日

大倉集古館 特別展「愛のヴィクトリアン・ジュエリー~華麗なる英国のライフスタイル~」

東京・虎ノ門の大倉集古館では、特別展「愛のヴィクトリアン・ジュエリー~華麗なる英国のライフスタイル~」展が開催されています。

大倉集古館外観


はじめは東洋美術のコレクションで知られる大倉集古館で「なぜヴィクトリアン・ジュエリー?」と思いましたが、絶頂期の大英帝国のジュエリーやドレス、銀食器はヨーロッパのお城を思わせる壮麗な内装の展示室にはとてもお似合いです。

展覧会開催概要


会 期  2023年4月4日(火)~6月25日(日)
開館時間 10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日  毎週月曜日
入館料  一般 1,300円、大学生・高校生 1,000円、中学生以下無料
※事前予約不要
※展覧会の詳細、各種割引料金等は同館公式サイトをご覧ください⇒大倉集古館 

※展示室内は撮影禁止です。掲載した写真は主催者より広報用にお借りしたものです。
※展示作品は、すべて穐葉アンティークジュウリー美術館所蔵です。


華麗なるヴィクトリア時代のアフタヌーンティー


今回の特別展の主人公は、大英帝国最盛期の情報、ヴィクトリア女王(在位:1837-1901)。

若き日のヴィクトリア女王の肖像と、ティーセットやデザートセットなどの銀食器が冒頭に展示されていて、展示室内に入ってすぐに東京からヨーロッパに瞬間移動した気分になりました。

《若き日のヴィクトリア女王》F.X.ヴィンターハルタ―工房作
イギリス、1842年頃

《ティーセット》1860-61年、ロンドン

17世紀半ばに喫茶の習慣が宮廷に広まり、18世紀初めに銀の茶道具一式で喫茶を楽しむライフスタイルが上流階級層に流行して、のちに紅茶文化が完成したのがヴィクトリア女王の時代。
こんなゴージャスな銀のティーセットでゆったりとアフタヌーンティーを飲んだらどんな味わいがするだろうと想像してみました。


貴重なアンティーク・ジュエリーの輝き


今から100年以上前に作られたアンティーク・ジュエリーは、当時の英国の豊かさを象徴する多彩な素材、デザイン、技法を駆使して作られているので、現在では同じものを再現できないという点でとても貴重なものなのです。

細かい細工がほどこされたゴールドの中の四角くカットされたエメラルドの緑の輝きがまばゆい《エメラルド&ダイヤモンドゴールドセット》。
ネックレスの中央に下がるペンダントはブローチにになるものです。

《エメラルド&ダイヤモンドゴールドセット》イギリス、1830年頃

希少な存在のピンクトパーズとアーカンサスの葉模様に細工されたゴールドのコンビネーションが絶妙なのが《ピンクトパーズ&カラーゴールドスウィート》。

《ピンクトパーズ&カラーゴールドスウィート》イギリス、1830年頃

小さなペンダントに込められた贈り主の思い


宝石の輝きに目を奪われがちになりますが、小さなペンダントにも、そこに込められた贈り主の思いが伝わってきます。

こちらは19世紀にヨーロッパで流行した、個人的な思いをジュエリーに込めた「センチメンタルジュエリー」の代表作《リガードパドロックペンダント》。


《リガードパドロックペンダント》イギリス、1820-30年頃

宝石による文字遊びの「REGARD(リガード)」は「敬意」、パドロック(錠前)は「捕えられた愛情」、そして中央の真珠とターコイズで表現された「忘れな草」は「私を忘れないで」という贈り主の思いが、この3㎝ほどの小さなペンダントに込められているのです。


聖書を象徴する鳩が「忘れな草」をくわえて飛んできました。
もちろん贈り主の思いは「私を忘れないで」ですね。

《ターコイズ&ゴールドブローチ》イギリス、1830年頃


ゴールドの葉の表現が見事な《ゴールドスプレーブローチ》も展示されています。

《ゴールドスプレーブローチ》イギリス、19世紀初期

小さなペンダントの一つひとつの細工がとても見事です。単眼鏡をお持ちの方はぜひご持参して細部までじっくりご覧いただきたいです。

日常から離れて優雅な雰囲気が楽しめます


イングランドのバラ、スコットランドのアザミ、アイルランドのシャムロック。
連合王国を構成する3つの国の国花をモチーフにしたティアラは見た目もゴージャスですが、バラの花の下にはスプリングがついていて、頭上で震えるような細工が施されているのです。


《シードパールティアラ》イギリス、19世紀初頭


スコットランド産の色メノウ(アゲード)をデザインに合わせてかっとした銀台(まれに金台)に嵌め込んだ「スコッティッシュ」のジュエリーもうっとりするほどの見事な輝きを放っています。

《スコティッシュブローチ》イギリス、19世紀初頭

スコットランドにはヴィクトリア女王と夫君が余暇を過ごした宮殿があったので、当時はイタリアに次ぐ観光地でした。スコティッシュジュエリーは旅の記念品としても人気が高かったのです。


《エナメル&サフィア、ダイヤモンドネックレス》は、ルネサンス期のエナメル技法を復刻させたもので、19世紀を代表する作品です。

《エナメル&サファイア、ダイヤモンドネックレス》イギリス
カルロ・ジュリア―ノ作、1880年頃、旧イスメリアンコレクション



ジョージ4世(在位1820-30)から受け継いだダイアモンドのティアラ、イアリング、ネックレスを着用したヴィクトリア女王のペンダントは、「ロイヤルギフト」「プレゼンテーション・ジュエリー」と呼ばれ、贈られた女官たちの名前が記されています。

《ヴィクトリア女王のミニアチュールペンダント》イギリス、1858年6月14日


ダイアナ元妃が24歳の誕生日に宝石商ルイ・ジェラールから贈られたダイヤモンドリングも展示されていました。
ダイアナ元妃のその後を思うと涙なしには見られないジュエリーです。

《ダイアナ元妃のダイヤモンドリング》ルイ・ジェラール作、
フランス、1985年

他にもイギリス上流階級のライフスタイルを彩ったドレスやレースなどが展示されていて、日常生活とは離れた華やかで優雅な雰囲気がお楽しみいただける展覧会です。
この機会にぜひご覧ください!