今年(2024年)は、平安時代後期、およそ百年にわたり平泉を中心に奥羽を支配した奥州藤原氏の栄華を今に伝える中尊寺金色堂の建立900年に当たる節目の年。
この記念すべき年に、中尊寺に安置されている国宝の仏像はじめ、金色堂を飾っていたまばゆいばかりの工芸品の数々が展示される特別展「中尊寺金色堂」が東京国立博物館で開催されています。
展覧会チラシ |
展覧会開催概要
会 期 2024年1月23日(火)~4月14日(日)
前期:1月23日(火)~3月3日(日) 後期:3月5日(火)~4月14日(日)
会 場 東京国立博物館 本館 特別5室
開館時間 午前9時30分~午後5時 ※入館は閉館の30分前まで
※2月9日(金)以降、金・土曜日は午後7時まで(入館は午後6時30分まで)
休館日 月曜日、2月13日(火)
※ただし、2月12日(月・休)、3月25日(月)は開館
観覧料 一般 1,600円、大学生 900円、高校生 600円
※中学生以下、障がい者とその介護者1名は無料。入館の際に学生証、障がい者手帳等をご提示ください。
※本展は事前予約不要です。混雑時は入館をお待ちいただく可能性があります。
※会期中、一部作品の展示替えがあります。
展覧会の詳細等は、展覧会公式サイトをご覧ください⇒https://chusonji2024.jp/
※会場内は《金色堂模型》(縮尺5分の1)を除き撮影不可です。
※掲載した写真は報道内覧会で主催者より許可を得て撮影したものです。
今回の大きな見どころは何といっても、金色堂内にある3つ須弥壇のうち中央檀上の国宝仏像11体がそろって公開されていることです。
展示風景 |
金色堂内の3つ須弥壇には阿弥陀三尊、六地蔵、二天像の11体の仏像が安置されていますが、上の写真はそのうちの阿弥陀如来坐像(上の写真中央)、観音菩薩立像(同右)、勢至菩薩立像(同左)の阿弥陀三尊像。
阿弥陀如来坐像は、中央檀の主尊像なのでいわば金色堂のご本尊といえる存在なのですが、現地ではこれほど近くで拝むことはできないので、とてもありがたいです。
国宝《阿弥陀如来坐像》平安時代・12世紀 中尊寺金色院 |
近くから、そして360度ぐるっと回って拝むことができるからこそわかることもあります。
優雅なたたずまいは当時の京都仏師の流れをくんでいますが、後頭部の螺髪(らほつ)が逆V字型に刻まれていることや、右肩にかかる衣を別材で造るのは新しい感覚で、奥州藤原氏が新たな造形や技法を受け入れる柔軟性を持っていた証であることが指摘されているのです。
阿弥陀三尊像の両脇には六地蔵が3体ずつ、その前には二天像が展示されているので、現地ではできないことですが、まるで中央檀の中を回遊するかのように仏様を拝むことができるという贅沢な体験ができます。
展示風景 |
六体のお地蔵さんは微妙に顔つきが異なりますが、みなさんおだやかないい表情をしています。
邪鬼を踏みつけにらみを利かせる増長天立像。
どことなくユーモラスな邪鬼の表情との対比が増長天の迫力を一層引き立てているように感じられました。
国宝《増長天立像》平安時代・12世紀 中尊寺金色院 |
「現存するのは日本で唯一、日本最古」という経典が見られるのも今回の展覧会の大きな見どころの一つです。
初めにご紹介するのは、紺紙に金字と銀字で行ごとに交互に書写した一切経(さまざまな仏教典籍を集成したもの)の国宝《紺紙金銀字一切経》。
これは、奥州藤原氏の初代・清衡が莫大な富を背景として発願したもので、8年の歳月をかけて五千巻を超える経典が制作されるという大事業でした。
江戸時代までに大部分が高野山に納められ、中尊寺には現在25巻が所蔵されていますが、このような金銀交書経は珍しく、一切経で現存するのはこの中尊寺経のみという貴重なものなのです。
国宝《紺紙金銀字一切経》平安時代・12世紀 中尊寺大長寿院 ※前期後期で展示替えあり |
遠くから見ると塔が描かれているように見えるのですが、実はこの塔は金泥を用いて写した『金光明最勝王経』の経文によって表されているのです。
経文の文字によって宝塔を描く作例は他にもありますが、『金光明最勝王経』によるものはこの作品が唯一で、かつ日本で作られた宝塔曼荼羅として現存最古という、こちらも貴重なものなのです。
宝塔の周囲には釈迦説法図などが描かれていますが、仏様や人々の顔はみんな「なごみ系」。見ていて自然と心がなごんできます。
ぜひ近くでじっくりご覧いただきたいです。
最後に展示されているのが縮尺5分の1の《金色堂模型》。
この作品だけは撮影可です。
会場を出てすぐの特設ショップには展覧会オリジナルグッズが盛りだくさん。
当然オリジナルグッズも充実しているのではと思いましたが、想像をはるかに超える充実ぶりでした。
最初に驚かされたのは、金色堂を背景に勢ぞろいした11体の国宝仏像のアクリルスタンド。
お部屋に飾れるコンパクトサイズです。
続いては、最初は何の物体だろうと思いましたが、国宝の持国天立像に踏みつけられている邪鬼をかたどったぬいぐるみ。
クッションにも最適。あまりにも可愛いので「悪さをしなければ踏みつけないからね。」と言いたくなってしまいます。
金色に輝く豪華な表紙、そしてハードカバーの図録もおすすめです。
今回のために撮り下ろした本展展示作品50件をフルカラーの図版で紹介しているだけでなく、仏像の拡大写真や多彩なコラムや論文、作品解説、そして四季折々の中尊寺の風景画像も掲載しているので、その場の雰囲気が伝わってくる貴重な1冊です。
間近で見られる国宝の仏像、華やかで貴重な経典はじめこの場でしか味わえない中尊寺金色堂の雰囲気をぜひお楽しみください!