刀剣ブームがすっかり定着した今、刀剣ファンのベテランにも、これから刀剣のことを知りたい方にもピッタリの展覧会が、東京駅すぐ近くの明治生命館1階にある静嘉堂@丸の内で6月22日(土)から始まります。
タイトルは超・日本刀入門reviveー鎌倉時代の名刀に学ぶ。
世田谷区岡本で開催されて人気を博した「超・日本刀入門」が開催されたのが2017年。それから約7年の月日が経過して、東京・丸の内で初となる刀剣展は見どころいっぱい。
開幕に先立って、さっそく展覧会の様子をご紹介したいと思います。
展覧会開催概要
会 期 2024年6月22日(土)~8月25日(日) ※会期中一部展示替えあり
会 場 静嘉堂@丸の内(明治生命館1階)
休館日 毎週月曜日(ただし7月15日・8月12日は開館)、7月16日(火)
トークフリーデー 8月13日(火)
開館時間 午前10時~午後5時
(毎週土曜日は午後6時まで、第3水曜日は午後8時まで)
※入館は閉館の30分前まで
入館料 一般1,500円 大高生1,000円 中学生以下無料
展覧会の詳細、関連イベント等は静嘉堂文庫美術館公式サイトをご覧ください⇒https://www.seikado.or.jp/
※掲載した作品はすべて静嘉堂文庫美術館所蔵です。
見どころ1 静嘉堂文庫美術館所蔵の国宝・重文刀剣9件が揃い踏み!
静嘉堂が所蔵する刀剣はなんと約120振!
その中には国宝1件、重要文化財8件が含まれるので、そのコレクションの充実ぶりには驚かされますが、今回の展覧会では国宝・重文の刀剣9件すべてが展示される超豪華レパートリーなのです。
まずは国宝の刀剣「手搔包永《太刀 銘 包永》から。
国宝 手搔包永《太刀 銘 包永》鎌倉時代(13世紀) |
銘の「包永(かねなが)」とは、大和国(現在の奈良県)最大の刀工集団で、奈良東大寺の西門・輾磑門(てがいもん 現在の転害門)前に住した手掻派の祖のことで、この国宝の太刀は正応年間(1288-93)に活躍した包永の銘が刻まれた貴重な作品なのです。
(上の写真の左の部分、柄(つか)の中に入れる「茎(なかご)」に彫られた「包永」の文字に注目です。)
続いては重要文化財の刀剣「新藤五国光《太刀 銘 国光》」。
重要文化財 新藤五国光《太刀 銘 国光》鎌倉時代(13-14世紀) |
新藤五(しんどうご)国光は相州伝の始祖とされる相模の刀工で、国光の銘の入ったこの太刀のすごいところは、短刀の名手とされる国光の極めて稀な太刀であることと、茎部分を短く詰める「磨上げ(すりあげ)」を行わないで、制作当初の姿を保っている「生ぶ(うぶ)」の状態であること。すらりとした姿に思わず見入ってしまいます。
こちらは幅広くて力強い姿の短刀。
重要文化財 左安吉《短刀 銘 安吉(名物日置安吉)》 南北朝時代(14世紀) |
岡山藩家老・日置豊前守忠俊(へきぶぜんのかみただとし)(1571-1641)が所持していたこの短刀は、筑前の刀工・左安吉の作で、江戸幕府8代将軍徳川吉宗のときに本阿弥家によって編纂されたといわれる『享保名物帳』で「名物刀剣」とされている名刀のひとつなのです。
まるではるかかなたの大星雲のような刀剣の輝きは、見ているだけでうっとりしてきますが、作られた地域による刀文の違いがわかってくると楽しみが一段と増えたような気がしてきました。
見どころ2 戦国武将が所持した名刀6振が見られる!
刀剣はどのような武将が所持していたのかというのも大きな興味のひとつです。
織田家家臣で織田四天王のひとり滝川一益(1525-1586)が主君・織田信長から賜ったとされるのが「滝川高綱」の太刀。戦国時代末期の様式を伝える希少な作例の朱鞘の打刀拵(うちがたなこしらえ)とあわせて展示されます。
備前長船派の名工・兼光の作と伝わる刀は、上杉景勝の重臣・直江兼続(1560-1619)が豊臣秀吉の遺品として賜ったものでした。兼続没後は未亡人のお船の方から主家の米沢藩主上杉家に献上されたので「後家兼光」との号がついています。
附 渡邊桃舩《芦雁蒔絵鞘打刀拵》明治時代(19世紀) |
信長、秀吉の次は徳川家康。家康ゆかりの大名が所持していた太刀も展示されます。
太刀の茎の部分に金象嵌の見事な所持銘が入っている本多平八郎忠為(忠刻、1596-1626)は播磨姫路新田藩の初代藩主で、徳川四天王の中でも武勇で名高い本多平八郎忠勝(1548-1610)の孫にあたり、眉目秀麗で知られたそうです。
イケメンと刀剣の深いつながりはこの時代からあったのかもしれません。
見どころ3 重要文化財「木造十二神将立像 七軀」(鎌倉時代)が特別公開!
見どころは刀剣だけではありません。
京都・南山城の古刹、浄瑠璃寺の薬師如来坐像の眷属として鎌倉時代に制作された十二神将像のうち、現在静嘉堂が所蔵する7軀が一挙公開されます。
作者は、運慶の子息など周辺の仏師(慶派仏師)と推測されていて、頭の上の十二支の彫刻がとてもリアル。ぜひ注目してみてください。
慶派《木造十二神将立像》のうち午神像 鎌倉時代・安貞2年(1228)頃 |
さて、十二神将立像のうち気になる残りの5軀ですが、それは東京国立博物館に所蔵されています。
2017年に東京国立博物館で開催された特別展「運慶」では42年ぶりに12軀が勢揃いしましたが、次はいつになるかわかりません。まずは今回の展覧会で7軀をじっくりご覧いただいてみてはいかがでしょうか。