2018年7月25日水曜日

青い日記帳×ショーメ展ブロガー特別内覧会 in三菱一号館美術館

明治の洋館の趣を残す三菱一号館美術館にピッタリの展覧会が始まりました。
パリの伝統あるジュエラー(宝石商)、ショーメの宝飾品の数々が展示されるショーメ展です。


宝石の展覧会というと、男性のみなさんは「興味ないなあ」とすぐにおっしゃるかもしれません。私も展覧会を見るまでは同じように思っていました。
でも、展示会場に入ればすぐにそんな考えは吹き飛んでしまいます。

大きな肖像画とジュエリーの展示ケース、そしてこの三菱一号館美術館の洋風の内装がコラボして、まるでヨーロッパの貴族のお屋敷に迷い込んだような不思議な気分。
女性だけでなく決して男性も裏切らない内容の展覧会です。
(展覧会の概要はこちらです→ショーメ展特設サイト)

さて、さっそく先日参加したブロガー内覧会の様子をご紹介したいと思います。
※掲載した写真は、美術館の特別の許可をいただいて撮影したものです。

はじめに高橋館長からご挨拶がありました。

「今回の展覧会は『ブランドとのコラボ』という新たな試みです。レイアウトにも凝りました。ヴァチカンからは普通では借りることができないローマ教皇の王冠が来日しています。ぜひ多くの方にご覧になっていただければと思います。」

  こちらが、最初の部屋の右奥に鎮座する「皇帝ナポレオン1世より贈呈された教皇ピウ
 ス7世のティアラ」です。ヴァチカンはこのティアラの修復をショーメに委任しました。


続いて、今回の展覧会を担当した同館学芸員の岩瀬慧さんと「青い日記帳」主宰のTakさんのトーク。
今回の展覧会のテーマは宝石なので、女性の方が担当されたのではと思っていましたが、岩瀬さんは男性!だからこそ男性にも受ける内容になっているのでしょうか。
岩瀬さんはこれまで昨年の「レオナルド×ミケランジェロ展」や一昨年の「PARIS オートクチュール」展を担当されたとのことです。

Takさん 今まで担当された中でどの展覧会が大変でしたか。
岩瀬さん やはり今回のショーメ展でしょうか。
     今回は特に作品をどう展示するかという点に力を注ぎました。ショーメ側も熱
    意があって、よく議論しました。時には建物のキャパシティをオーバーするよう
    な提案もあって調整に苦労しました。
     レイアウトの作業は、レタックというフランスでファッション・ショーの舞台
    装置を引き受けているチームが担当しました。
Takさん フランスからスタッフが来たのですか。
岩瀬さん 50人も来ました(→すごい!)
Takさん 展示は必ずしも年代順でなく、テーマ別になっていますね。
岩瀬さん 最初がナポレオン、続いてティアラ(頭頂部につけるアクセサリー)、中国・イ
    ンド、中世・ルネサンス、アールデコ、トランスフォーム(変化=宝石の加工)、
    そして最後が日本の部屋です。
Takさん 展示の雰囲気がいいですね。
    最初の部屋はナポレオンとジョセフィーヌの絵があって、入った瞬間、こここは
   どこ?といった感じでした。

 こちらが最初の部屋です。 (「Ⅰ 歴史の中のショーメ」)
 ナポレオン1世と皇妃ジョセフィーヌの肖像画。いきなりフランスです!
 

 肖像画と宝飾品のショーケース。



高橋館長 絵画と宝石を並べて展示して、社会史や文化史とのつながりを見ていただきた
   いというコンセプトです。
Takさん 展示室内に入って、絵画もあるので安心しました(笑)。キラキラだけかと思って
   いたので(笑)。これなら女性が夫や彼氏と一緒に来ても大丈夫ですね。

 ここで展示室内をご案内しましょう。

 Ⅱ 黎明期のミューズ
 (1)皇妃ジョセフィーヌ
    左の宝飾品の展示ケースの後ろの壁に描かれているのは麦の穂。
    これは皇妃ジョセフィーヌのアイコン。豊穣の女神セレスに由来しています。


 (2)王妃オルタンスと皇妃マリー=ルイーズ
   ナポレオン1世の2番目の皇妃マリー=ルイーズの肖像画と宝石
   (王妃オルタンスのオルタンシア(アジサイ)のブローチは後で出てきます。)




 Ⅲ 戴冠!ティアラの芸術
  この広い部屋にティアラがずらり!この部屋は撮影可です!

 Ⅳ 旅するショーメ
 (1)時間旅行
   下の写真左は皇妃マリー=ルイーズのゴシックスタイルのベルト


 注文主にちなんでホープ・カップと呼ばれる大きなカップ。
 金銀細工の細かさがすごいです!何回もぐるぐる回って四方から眺めてました。


 (2)水平線の彼方の新たな世界へ
    中国風の扇もあります。

 フォトスポット
  記念写真をぜひ!

 Ⅴ 自然を披露する
 (1)自然史
   重厚なディスプレイケースに圧倒されます。
   このディスプレイケースの重さに耐えるように床は補強したとのことです。


  自然史のコーナーなので、よく見ると百合だったり、蝶だったり、ハチだったり。


 (2)「この光輝く金と宝石の世界」(ボードレール)
   金銀、真珠は自然の恵み、光り輝いています。

 Ⅵ 身につける芸術=ジュエリー
   後半になると映像が多くなるのが今回の展覧会の特徴のひとつです。
   下の画面では人の首から上の映像が360°回転するので、ネックレスを身につけたと
  きのイメージがわかるようになっています。
   ここはまだおとなしい動きの映像ですが、次のコーナーからは少ずつ動きがダイナ
  ミックになって、そこはまるでチームラボ。


 Ⅶ キネティック・アートとしてのジュエリー
  
  中央のディスプレイの左に飾られている《6羽のツバメの連作》と連動して右の画面
 ではツバメが壁いっぱいに勢いよく飛んでいます。
  (《6羽のツバメの連作》は写真では小さくてよくわからないので、ぜひ近くでご覧に
   なってください。) 



 Ⅷ 遥けき国へーショーメと日本
  そしていよいよ日本の部屋。
  正面のスクリーンの映像はめまぐるしく変化するので、その場に立っていると足元を
 すくわれそうな感覚。やっぱりチームラボ、楽しい気分です。


  中央の円形のディスプレイには西洋と日本の文化がマリアージュしたネックレスやイ
 アリング。


 こちらは漆器の硯箱。



さて、ふたたびトークに戻ります。

Takさん 岩瀬さんおススメの一点は。
岩瀬さん 最後の日本の部屋の雷神のブローチです。19世紀後半にはフランスに日本の芸
    術が入ってきましたが、この雷神は俵屋宗達のとちがい、服を着ていて、女性と
    向かい合っています。ジョセフ・ショーメはいろいろな要素を混ぜ込んでこのブ
    ローチをつくったのでしょう。
     この不思議さを楽しんでください。


Takさん 雷神が叩いているのはどうも太鼓のように見えないですね。
岩瀬さん タンバリンのようです(笑)。
高橋館長 西洋のジュエリーはきらきら輝いています。これは教会のステンドグラスに見
    られるように、ヨーロッパの、特に北の方の人たちの、光に対するあこがれが原
    点ではないでしょうか。
Takさん ただ「きれい」というのでなく、そこには西洋的価値観、光へのあこがれがあり
    ますね。

Takさん 他に見るべきポイントはありますか。
岩瀬さん ダイヤモンドのカッティングとセッティングですね。
     ダイヤモンドのカッティングはルネサンス期から洗練されてきて、20世紀以降
    は格段の差で進歩しました。
     また、ダイヤモンドと一緒に飾られる金や銀も磨かれていないとダイヤモンド
    の輝きも悪くなります。ダイヤモンドと金や銀、その他の宝石とのセッティング
    や地金の彫刻も洗練されてきています。時代とともに洗練されてくるカッティン
    グやセッティングも見どころの一つです。
Takさん ダイヤモンドの輝きだけでなく地金の部分も注目ですね。
岩瀬さん もうひとつは、トランブルーズ(フランス語で「震えるもの」という意味)とい
    って、後ろに小さなばねが入っていて、身につけたときに震えて独特の輝きを見
    せる作品もあります。
Takさん ありがとうございました。それではみなさんショーメの輝きをお楽しみください
    (拍手)。

 王妃オルタンスのオルタンシア(アジサイ)のブローチはこちらです。
 アジサイの花の茎のところにバネがあるのがおわかりでしょうか。
 展示していると震えないので、自分の頭を揺らして角度の違いによる輝きの違いを味わいました。


 こちらが清楚な王妃オルタンスの肖像。
 暖炉がいい雰囲気を出しています。



さて、ショーメ展はいかがだったでしょうか。
繰り返しで申し訳ありませんが、男性でも十分楽しめる展覧会です。
ぜひともショーメの細かい技巧がほどこされた宝飾品を近くでじっくりご覧になっていただければと思います。

2018年7月23日月曜日

静嘉堂文庫美術館「明治150年記念 明治からの贈り物」ブロガー内覧会

静嘉堂文庫美術館「明治150年記念 明治からの贈り物」

待ちに待った展覧会がようやく始まりました!

この展覧会では、明治前期のスーパースター、橋本雅邦の《龍虎図屏風》(重要文化財 静嘉堂文庫美術館)が展示されるので、迫力ある大画面を久しぶりに見たいと思っていたのです。

龍の登場とともにおこった突風や雨の勢い、龍に向かって吠える虎、風にしなる竹、どれもが見る人の前に迫ってくるようで、期待どおりの迫力でした。
発表当時は「腰抜けの虎」と酷評されましたが、虎は決して怖気づいてはいません。果敢に龍に立ち向かっています。
そしてこの作品は近代日本画では初めての重要文化財です! 

もちろん他にも見どころいっぱい。
開会初日(7/16)に開催されたブロガー内覧会のトークショーで、この展覧会の見どころを紹介していただいたので、さっそくトークショーの様子をご披露したいと思います。
(展覧会の雰囲気を伝えやすくするため、トークショーのあとの質疑や、展示会場で行われたギャラリートークの内容を適宜盛り込んでいます。ご了承ください。)

※掲載した写真は、美術館より特別に撮影許可をいただいたものです。

「いまトピ~すごい好奇心のサイト~」で今年開催される近代日本画の展覧会を紹介しています。こちらもご参照ください。(終了した展覧会もありますのでご注意ください)
  ↓
近代日本画の世界へようこそ

トークショーのメンバーは、ご存知アートブロガーの草分け「青い日記帳」のTakさんがナビゲーター、そして静嘉堂文庫美術館の「饒舌館長」河野館長、今回の展覧会を担当した同館主任学芸員の長谷川さん。
それではトークショーの始まりです。

Takさん 今回の展覧会は明治からの贈り物ということで様々なジャンルの作品が展示され
 ていて、見どころは多岐にわたりますが、ベストスリーをあげていただけますでしょう
 か。
河野館長 一つは日本画から橋本雅邦《龍虎図屏風》(重要文化財 静嘉堂文庫美術館)。


  次に洋画から黒田清輝《裸体夫人像》(静嘉堂文庫美術館)。


  そして工芸から濤川惣助(下絵:渡邊省亭)《七宝四季花卉図瓶 1対》(静嘉堂文庫美
 術館)。


河野館長 この作品は、今でいえば「超絶技巧」。近代的な作品ながら、四季の草花をア
 レンジして、日本の伝統的四季感を描いてます。美的にも面白く、いろいろ考えさせて
 くれる作品です。
  下絵を描いた渡邊省亭(1851-1918)は、近代のシンボリックなアーテイストで、最近
 注目されてきた日本画家です。

  このあと長谷川さんから、「渡邊省亭は、柴田是真に弟子入りしようとしたが、是真
 から『あなたの画風は菊池容斎に向いている。』と容斎を紹介され、容斎に弟子入りし
 たというエピソードの紹介がありました。
 
長谷川さん 今回の展覧会は、作品の配置にも凝ったので、ぜひ作品が展示されている位
 置にも注目してください。
  展示室入口に展示されている2点の刺繍額はジョサイア・コンドルが設計した岩﨑家高
 輪本邸(現・三菱 関東閣)の貴賓室に飾られていた作品です。
  貴賓室といえばお客様をおもてなしする部屋。今回の展覧会でも入口でお客様をお迎
 えしています。

左から 菅原直之助《羽衣図 刺繍額》《鞍馬天狗図 刺繍額》(静嘉堂文庫美術館)

Takさん 貴賓室に刺繍というのは珍しいですね。
長谷川さん 三菱第二代社長・岩﨑彌之助は能楽師・初代梅若実から能を習い、熱心に稽
 古していました。そこで能をテーマにした刺繍の制作を菅原直之助に依頼したので  
 す。 
Takさん 来客はさぞかし驚いたのでは。能面の部分も糸の色を変えてヌメッとした質感を
 出してますね。
長谷川さん 私が初めて静嘉堂文庫美術館に来たときには館長室に飾られていたので、最
 初に見たときには驚きました(笑)。 

長谷川さん 展示室に入ると菊池容斎の大幅の掛軸が2点展示されていて、その横に容斎の
 弟子 松本楓湖の屏風《蒙古襲来・碧蹄館図屏風》(前期展示 7/16-8/12)を並べてい
 ます。

左から 菊池容斎《阿房宮図》(全期間展示)
《呂后斬戚夫人図》(前期(7/16-8/12)展示)
(後期(8/14-9/2)は菊池容斎《馮昭儀当逸熊図》)
(いずれも静嘉堂文庫美術館)


松本楓湖《蒙古襲来・碧蹄館図屏風》(静嘉堂文庫美術館)
(前期(7/16-8/12)のみの展示)

  後期(8/14-9/2)にはこのスペースに柴田是真の屏風《瀑布図屏風》が展示され、(是
 真に弟子入りするはずだった)渡邊省亭が下絵を描いた濤川惣助《七宝四季花卉図瓶》と
 向かい合うようになります。
  松本楓湖《蒙古襲来・碧蹄館図屏風》の向かいには修理後初公開の河鍋暁斎《地獄極
 楽めぐり図》(静嘉堂文庫美術館)が展示されています。


  (《地獄極楽めぐり図》画帖は、日本橋大伝馬町の大店、小間物問屋の勝田五衛が明治
   2年に14歳で亡くなった娘・田鶴の供養のため暁斎に制作を依頼したもので、全40
   図のうち物語部分35図を会期中4期に分けて場面替えして展示されます。展示期間
   は次のとおりです。)

   7/16(月・祝)~7/26(木) 田鶴の臨終と来迎、羅人宮、三途の川の渡し船に乗る等
   7/27(金)~8/9(木) 賽の河原、旅館はりまや到着、田鶴の身支度等
   8/10(金)~8/23(木) 家族との再会、芝居小屋、盛り場等
   8/24(金)~9/2(日)  地獄見物、閻魔大王、極楽行きの汽車、極楽往生等
 


長谷川さん 次のコーナーには6曲1双の橋本雅邦《龍虎図屏風》(下の写真右)と8曲1双
 の鈴木松年《群仙図屏風》(静嘉堂文庫美術館)(下の写真左)が並んでいます。


  この2双の大きな作品は、明治28年に開催された第4回内国勧業博覧会の出展作品
 です。
  第4回内国勧業博覧会は岩﨑彌之助が資金提供したもので、過去3回は東京で開催さ
 れたのに対して京都で開催されました。静嘉堂文庫美術館では同博覧会に出品された10
 双の屏風のうち8双を所蔵していますが、今回は賞を逃した2双を展示しています。
  今の皆さんの目でご覧になってどう感じられますでしょうか。
 
(第4回内国勧業博覧会に出品された屏風のうち静嘉堂文庫美術館所蔵の作品はパネル展示されています。こちらもご参照ください。なお、《龍虎図屏風》は入賞しませんでしたが、橋本雅邦は《釈迦十六羅漢》(個人蔵)で妙技一等賞を受賞しています。)



  鈴木松年《群仙図屏風》の隣は山本芳翠《龍虎図》(静嘉堂文庫美術館)。


長谷川さん 山本芳翠は洋画家で岩﨑家の肖像画が多いのですが、こちらは墨の濃淡で龍
 虎を描いた水墨画です。
  フランスに留学していた山本芳翠は、現地で法律を勉強していた黒田清輝と知り合
 い、清輝の画家としての才能を見出していた芳翠は清輝に画家になることを勧めまし
 た。芳翠がいなければ清輝の作品は生まれなかったでしょう。
  そこで山本芳翠《龍虎図》の正面に黒田清輝《裸体婦人像》を配置しました。
  この作品は岩﨑家高輪本邸(現・三菱 関東閣)のビリヤードルームに飾られていまし
 た。(当時の室内の写真がパネル展示されています。)

黒田清輝《裸体婦人像》(静嘉堂文庫美術館)(再掲)

長谷川さん この二つの作品の間には明治37年に開催されたセントルイス万国博覧会ゆか
 りの美術品が展示されています。セントルイス万国博覧会では、日本郵船会社(現 日本
 郵船株式会社)のブースが設けられていて、その休憩室には伊藤若冲《動植綵絵》の綴織
 が10枚飾られて「若冲の間」と名付けられました。
  展示されているのは、「若冲の間」を飾った織作品の制作過程の分かる下絵などで
 す。展示ケースの下には伊藤若冲《動植綵絵》のうち《池辺群虫図》の部分模写の下絵
 も展示されています。
  《動植綵絵》の綴織は博覧会終了後、ニューヨーク商工会議所に寄贈することになり
 ましたが、輸送中の船舶火災で全焼してしまいました。ここに展示されている作品は、
 当時の面影をうかがうことができる貴重なものです。
Takさん 下絵の集合体は大発見ですね。

セントルイス万国博覧会とゆかりの美術


河野館長 セントルイス万国博覧会で、なぜ当時はセカンドクラスの評価だった若冲が選
 ばれたのか。琳派ならわかるが、アメリカで開催ということで西洋人の目を意識したの
 か。あるいは京都の織物の技法の伝承のためだったのでしょうか。
Takさん 若冲については知り尽くした感がありますが、新しい発見もあるのですね。
長谷川さん 若冲の絵が細かすぎて原寸大では織れないので、拡大した織下絵を作成して
 います(作品番号31 上の写真左から2点目)。

Takさん ラウンジに展示されているのは明治の工芸作品ですね。

ラウンジ風景

長谷川さん 当館初めての試みなのですが、このコーナーだけは写真撮影可です。鈴木長
 吉の《鷹置物》が展示されていますので、外の緑を背景にぜひ写真をとっていただければと
 思います。



鈴木長吉《鷹置物》(静嘉堂文庫美術館)

Takさん 鷹が飛び立っていきそうですね。ラウンジからは天気がいい時は富士山が見える
 そうですね。
河野館長 この静嘉堂文庫美術館は周囲の空間も、古き良き武蔵野の面影を残している緑
があってとても趣があります。前回の展覧会でも緑をバックに弦楽四重奏のコンサート
 を開催しましたが、今回は初めての企画で、静嘉堂”庭園の花木を観察しようツアー”を
 開催します。
Takさん 講演会も豪華な講師陣ですね。
河野館長 入館料は必要ですが、講演会はすべて無料です。ぜひご参加を。

 ※8月26日(日)には河野元昭館長の「おしゃべりトーク」もあります。学芸員による列品
  解説、コンサートなど関連イベントも多数開催されます。
   詳しくは静嘉堂文庫美術館公式サイトでご確認ください。

Takさん 静嘉堂文庫美術館は展覧会のチラシのデザインもあか抜けてきましたね(笑)。
 我々アートファンはチラシから情報を得ることが多いので、チラシのデザインは大切だ
 と思います。

チラシ(表面)



チラシ(裏面)


河野館長 私は日ごろから、美術館には3つ「ティ」が必要と感じています。
  一つは「クオリティ」、展覧会に「質」が求められるのは当然のことです。
  二つめは「ポピュラリティ」、展示作品はやはりみなさんに知られているものが展示
 される必要があります。
 (河野館長からは、よく知られた静嘉堂文庫美術館所蔵の国宝の一つ《曜変天目》を展
  示する機会をもっと増やしたいとのお話もありました。)
  三つめが「パブリシティ」、これには今Takさんが言われたチラシもあるでしょうし、
 マスメディアもあります。そして、今日お集まりのみなさまが発信していただくSNSも
 大切であると考えています。
Takさん みなさんどうもありがとうございました。(拍手)

さて、「明治150年記念 明治からの贈り物」はいかがだったでしょうか。
橋本雅邦の迫力のある龍と虎、最近注目を浴びてきた渡邊省亭の四季折々の花、河鍋暁斎の地獄と極楽などなど、どれも見応えのある作品ばかりです。
ぜひその場でじっくりご覧になっていただければと思います。

また、静嘉堂文庫美術館ではすっかりおなじみになった展覧会の小冊子もショップで売っています。税込350円です。



最後になりましたが、トークショーでナビゲーターを務めていただいたTakさんの著書『いちばんやさしい美術鑑賞』が8月6日に発売されます。伊藤若冲や静嘉堂文庫美術館の曜変天目のことも書いているそうです。
新著と出版記念パーティーについてはこちらをご覧ください→http://bluediary2.jugem.jp/?day=20180713

新著楽しみです。私はさっそく書店で予約しました。出版記念パーティーも参加しますので、もし会場でお会いする機会がありましたらぜひアートについて語りましょう! 


2018年7月18日水曜日

横浜美術館「モネ それからの100年」夜間特別鑑賞会

やはりモネのネームバリューはすごい!
横浜美術館で開催されている企画展「モネ それからの100年」は連日の大賑わい。
三連休が終わってもモネを見に来るお客さんの勢いはとどまることなく続いています。


今回の展覧会は、モネとモネの影響を受けた現代アートがテーマ。
そのため全部がモネの絵でなく、展示されている約90点のうちモネの作品は25点。そのうち2点は前期と後期で展示替えがあるので、一度に見ることができるのは24点。
それでも、国内で24点まとめて見る機会はそう多くはないし、年代によって作風の違いはありますが、どの作品も「やっぱりモネっていいよね」と安心できる作品ばかりなので、猛暑の中、横浜まで来てよかった、と思っていただけること間違いなしです。
それに今回のモネの作品は、ほとんどが国内の美術館や個人蔵。あらためて日本のモネ・コレクションの充実ぶりを実感しました。

そして、もう一つの注目は、モネの息吹が感じられるモダンアートの作品群。
モネの作品と同じ空間に展示されているので、モネとモダンアートの接点を見つけるのも楽しみの一つ。

会期は9月24日(月・祝)までです。
展覧会の概要やイベント情報は横浜美術館の公式サイトをご参照ください。

さて、今回は、開催初日(7/14)に開催された夜間特別鑑賞会に参加しましたので、そのときの様子をお伝えしながら、展覧会の見どころなどを紹介したいと思います。

はじめに担当学芸員の坂本さんのミニレクチャーがありました。

「パリ・オランジュリー美術館の《睡蓮》大装飾画の制作に着手してから約100年。この機会に現在の視点からモネを見る意味、おもしろみがあるのでは。」と坂本さん。
「モネ(1840-1926)の作品は、海外からの作品2点を含めて、ほぼ時系列に展示されています。『プチ・モネ回顧展+現代アートの展覧会』と言えます。」

展覧会は4章構成になっていて、各章ごとの見どころをスライドを使って解説いただきました。
それでは坂本さんの解説に沿って、展示室内を周りながら展覧会の見どころを紹介したいと思います。

※掲載した写真は、夜間特別鑑賞会のため特別に撮影許可されたものです。

第1章 新しい絵画へ-立ちあがる色彩と筆触

会場入口でお出迎えしてくれるのはモネの《睡蓮》。

モネ《睡蓮》1914-17年 
群馬県立近代美術館
(群馬県企業局寄託作品)


「この作品は本来は第4章に展示すべき作品ですが、モネといえば睡蓮なので、展覧会の冒頭に展示しました。」と坂本さん。

続いて第1章の展示室には、はじめにモネの初期からの作品がずらりと並んでいて、まずはモネファンをホッとさせてくれます。

左から モネ《わらぶき屋根の家》1879年 上原美術館
《海辺の船》1881年 東京富士美術館、《アヴァルの門》1886年島根県立美術館

左から モネ《モンソー公園》1876年 泉屋博古館分館
《サン=タドレスの断崖》1867年 松岡美術館
※《モンソー公園》は8月17日までの展示で、8月18日からは《サン=
シメオン農場の道》(1864年 泉屋博古館分館)が展示されます。 
左から モネ《ヴィレの風景》1883年 個人蔵
《ヴァランジュヴィルの風景》1882年 ポーラ美術館
続いて現代アート。

こちらは現在でもフランス現代美術の第一線で活動するルイ・カーヌ(1943年生まれ)の作品。
中央の大きな作品《彩られた空気》は、紙やキャンバスでなくなんと金網の上に樹脂絵具が塗られています。後ろのスクリーンに色の影が映るようになっていて、色は「物質」であることが認識できるようになっているのです。まさに「立ちあがる色彩」です。

そして、モネをはじめ印象派の画家による、絵の具をパレットの上で混ぜずに細かいタッチで置いていく筆触分割の技法がとられています。

左から ルイ・カーヌ《作品》1995年 大原美術館
《彩られた空気》2008年、《WORK8》2013年 
いずれもギャラリーヤマキファインアート
こちらはジョアン・ミッチェルの荒々しく力強い筆致の作品。
部分的に切り取ると何が描かれているのかわからないけれど、全体として形になっているというところがモネとの共通点。
モネの《ヴィレの風景》と見比べてみるといいでしょう。ちなみに《ヴィレの風景》は本邦初公開です!

左から ジョアン・ミッチェル《湖》1954年 静岡県立美術館
《紫色の木》1964年 いわき市立美術館
続いて日本の現代作家 丸山直文(1964年生まれ)《puddle in the woods 5》。
学芸員の坂本さんは、モネの筆触分割の継承ということでこの作品を展示したのですが、作家の丸山さんご本人は意識されていなかったようで「モネと共通点ありますか?」とお話されたとのことです。

丸山直文《puddle in the woods 5》2010年 作家蔵

第2章 形なきものへの眼差し-光、大気、水

ブルーを基調とした落ち着いた雰囲気の展示室に、1880年代から1900年代の作品が展示されています。
左から モネ《セーヌ河の日没、冬》1880年 ポーラ美術館
《ヴェトゥイユ、水びたしの草原》1881年 笠間日動美術館
《ラ・ロシュ=ブロンの村(夕暮れの印象》1889年 三重県立美術館


左から二番目から《ジヴェルニー近くのリメツの草原》1888年
 公益財団法人吉野石膏美術振興財団(山形美術館に寄託)
《ジヴェルニーの草原》1890年 福島県立美術館
《チャリング・クロス橋》1899年 メナード美術館  
モネ《テムズ河のチャリング・クロス橋》1903年 
吉野石膏株式会社(山形美術館に寄託)

モネ《霧の中の太陽》1904年 個人蔵

モネは、風景を包んでいる形のない大気や光を描くことに力を注ぎ、《セーヌ河の日没、冬》では冬の凍りついた大気をオレンジから黄色に変わるグラデーションで表現しました。

そして、グラデーションの美しさを表現したのがモーリス・ルイス(1912-1962)でした。
解説パネルにあります、てっぺんに注目です!
(所々に子供向けの解説パネルがあります。とても参考になります。)

モーリス・ルイス《ワイン》1958年 広島市現代美術館
《金色と緑色》1958年 東京都現代美術館
こちらは、ゲルハルト・リヒター(1932年生まれ)。

ゲルハルト・リヒター《アブストラクトペインティングCR845-5、CR845-8》
1997年 金沢21世紀美術館

そして、「モネが大好き」な松本陽子(1936年生まれ)《振動する風景的画面Ⅲ》。
この作品はモネの《テムズ河のチャリング・クロス橋》と見比べてみてください。全体的にモヤモヤとして、画面がオーロラのように輝いています。

左から 松本陽子《振動する風景的画面Ⅲ》1993年 倉敷市立美術館
 根岸芳郎《91-3-8》1991年 個人蔵(名古屋市美術館に寄託)

第3章 モネへのオマージュ-さまざまな「引用」のかたち

この章には、モネの作品をどのように自分のものにしていったかというテーマで現代作家の作品が展示されています。

ロイ・リキテンシュタイン(1923-1997)の《積みわら》連作。

ロイ・リキテンシュタイン《積みわら#1 #2 #3 #4#6 #6(第1ステート)》
1969年 富士ゼロックス株式会社

同じくロイ・リキテンシュタインの《日本の橋のある睡蓮》(下の写真左)。
この作品は、ステンレスの上にスクリーンプリントが塗られているのですが、何も塗られていない部分はステンレスなので、鑑賞者自身が写るしかけになっています。リキテンシュタインは「反射」にこだわったのです。
下の写真右は、ルイ・カーヌの《睡蓮》です。

左から ロイ・リキテンシュタイン《日本の橋のある睡蓮》1992年 国立国際美術館
ルイ・カーヌ《睡蓮》1993年 ギャラリーヤマキファインアート

次にモネの大切にした庭を、色彩を全部抜いて自分の表現様式にした湯浅克俊(1978年生まれ)の木版画《Light garden #1》(下の写真右)。左は福田美蘭《モネの睡蓮》。

左から 福田美蘭《モネの睡蓮》2002年 大原美術館
湯浅克俊《Light garden #1)2009年 作家蔵
続いて児玉麻緒(1982年生まれ)《IKEMONET》。
「イケモネです。タイトルが軽やかですね。(笑)」と学芸員の坂本さん。

左から 児玉麻緒《SUIREN》2016年 《IKEMONET》2015年
いずれも作家蔵

作者の児玉さんは「モネは庭を耕すように描いたのでは」「美術館でもギャラリーでもどんな場所でも自分の絵が生命を放ってくれたらうれしい」とお話されていたそうです。

第4章 フレームを越えて-拡張するイメージと空間

円形の展示スペースが睡蓮の展示にこんなにぴったりくるとは!
まるでパリ・オランジュリー美術館のモネの大作《睡蓮》の展示室にいるかのように、モネと現代アートの睡蓮に取り囲まれて心ゆくまで作品を楽むことができます。

左から モネ《睡蓮》1897-98年 個人蔵、《睡蓮》1897-98年頃 鹿児島市立美術館
《睡蓮》1906年 吉野石膏株式会社(山形美術館に寄託)
《睡蓮、水草の反映》1914-17年 ナーマッド・コレクション(モナコ)
《睡蓮、水草の反映》を見ていると、どこまでが実像で、どこからが水面に反射した虚像なのか、その境目がわからなくなって、イメージが絵のフレームの外側に広がっていきます。

そして反対側は、写真家 鈴木理策(1963年生まれ)《水鏡14、WM-77、WM-79》。
こちらも、水面に浮かぶ蓮の葉と水面に写る雲が交わっています。
鈴木理策《水鏡14 WM-77、WM-79》2014年 作家蔵
そしていよいよフィニッシュ。最後の展示室です。

福田美蘭(1963年生まれ)《睡蓮の池》(写真左)、そして新作《睡蓮の池、朝》。
タイトルは《睡蓮の池》ですが、睡蓮の葉に見えるのは高層ビルのレストランのガラスに写るテーブルと椅子。背景は都心のビル群です。

左から 福田美蘭《睡蓮の池》《睡蓮の池 朝》
いずれも2018年 作家蔵
床面の大きな作品は小野耕石(1979生まれ)《波絵》。
解説パネルにあるように、小さなつぶつぶに注目です!

小野耕石《波絵》2017年 作家蔵


そして最後はアンディ・ウォーホール(1928-1987)《花》。
正方形の作品なのでいくつでも重ねることができてイメージがどこまでも拡張していきます。
アンディ・ウォーホール《花》1970年 富士ゼロックス株式会社
さて、「モネ それからの100年」はいかがだったでしょうか。
モネの初期から晩年までの作品、そしてモネの息吹が感じられる現代アートの作品。
それぞれ見比べてみるのも一つの楽しみかもしれません。

最後に担当学芸員の坂本さんはこう締めくくられました。
「サブタイトルは『わたしがみつける新しいモネ。』。ぜひみなさんご自身のモネをみつけていただければと思います。」(拍手)

暑い夏が続きますが、ヨコハマは他にもみどころがいっぱいあります。ぜひこの機会に夏のヨコハマにお越しになってください!