2019年11月15日金曜日

青い日記帳×印象派からその先へ展 in 三菱一号館美術館 -世界に誇る 吉野石膏コレクション-

東京丸の内の三菱一号館美術館では、豊富な近代フランス絵画のレパートリーを誇る吉野石膏コレクションの中から、シスレー、ルノワール、ピカソ、シャガールといったおなじみの画家たちの名品が展示されている展覧会が開催されています。

展覧会ごとに趣向を凝らした外壁のデコレーションもすっかり冬景色。
素敵な少女の微笑みがお出迎えしてくれます。

【展覧会概要】
会 期 2019年10月30日(水)~2020年1月20日(月)
開館時間 10:00~18:00 ※入館は閉館の30分前まで
(1/3を除く金曜、第2水曜、会期最終週平日は21:00まで)
休館日 月曜日
(但し、祝日・振替休日の場合、1/20、トークフリーデーの11/25と12/30は開館)
年末年始休館 12/31、1/1
入館料 一般 1,700円ほか
展覧会の詳細はこちらをご覧ください→三菱一号館美術館
※展示室内は撮影禁止です。掲載した写真は内覧会で美術館から特別の許可をいただいて撮影したものです。

会場に入ってすぐの部屋には、コロー、ミレー、ブータンの自然の景色を描いた作品が展示されていて、
第1章「印象派、誕生~革新へと向かう絵画~」
展示風景
ピサロのコーナー、
第1章「印象派、誕生~革新へと向かう絵画~」
展示風景
シスレーのコーナーと、心がなごむ風景画が続き、
第1章「印象派、誕生~革新へと向かう絵画~」
展示風景
ルノワールやモネの展示されている広い部屋に入ります。

先日開催された内覧会では、今回の展覧会を担当された同館学芸員の岩瀬さんと青い日記帳のTakさんの楽しいギャラリートークをおうかがいしました。
ここからはお二人のご案内で展覧会の見どころを紹介していくことにしましょう。

右が岩瀬さん、左がTakさん
Takさん「はじめに紹介していただくのは、ルノワールの《庭で犬を膝にのせて読書する少女》ですね。」
岩瀬さん「この作品は1874年に制作されたものです。1874年といえば第1回印象派展が開催された年。右ひじの白い絵の具に注目です。これはハイライト的に光が当たっているところを表現したもので、当時ルノワールは木漏れ日をカンバスにどう描くか追及していました。この作品は、2年後に制作されるルノワールの代表作《ブランコ》《ムーラン・ド・ギャレットの舞踏会》(いずれもオルセー美術館)を思わせるものがあります。」

ルノワール《庭で犬を膝にのせて読書する少女》
Takさん「筆跡を残さない=完成品という当時のアカデミックな風潮とは異なる描き方ですね。」
岩瀬さん「筆の跡一つ一つを残すことによって画面全体が明るくなるという効果があります。通常は100ルクスのところ、70~80ルクスで十分明るいのです。」
Takさん「照明を落としているのですね。」
岩瀬さん「そうです。戸外で描くことを始めた印象派の画家たちがまさにねらっていたことなのです。」

Takさん「続いて、ポスターやチラシにもなっているルノワールの《シュザンヌ・アダン嬢の肖像》。」

ルノワール《シュザンヌ・アダン嬢の肖像》
Takさん「この作品は依頼されて描いたものなのですか。」
岩瀬さん「シュザンヌは、ブローニュの銀行家アダン氏のお嬢さん。ルノワールとアダン家は家族ぐるみの付き合いをしていて、北フランスにあるアダン氏の別荘をよく訪れていました。プロのモデルでなく一般の人を描いたルノワールにとっては、注文というより交流の証だったのでしょう。」
Takさん「この作品は先ほどの《庭で犬を膝にのせて読書する少女》と見比べると印象が違いますね。」
岩瀬さん「この作品は1887年に描かれたもので、今回展示している4点のパステル画のうちの1点です。」
「少し硬めの表情はルノワールの古典回帰の表れなのでしょう。一方、長い髪はパステルの黄、青、赤を塗ってつやを出して光が当たっている様子を表したり、ドレスも柔らかさを出して、全体的なバランスをとっています。」

Takさん「岩瀬さんがお嬢さんを描いてもらうとしたらどの画家に描いてもらいますか。」
岩瀬さん「そうですね。ドガではないですね(笑)。やっぱりルノワールですかね(笑)。」

ドガ《踊り子たち(ピンクと緑)》

Takさん「この大きな部屋は壁の色を変えていますが、何か意味があるのでしょうか。」
岩瀬さん「そうです。この部屋のどこかに同じ色を使った作品があるのです。ヒントは・・・言わない方がいいですね(笑)。」
第1章展示風景 壁の色が違っています
Takさん「この《箒をもつ女》には涙なしには語れない物語があります。」

ルノワール《箒をもつ女》

岩瀬さん「ルノワールは、モネやシスレーとは画塾仲間でした。その中でシスレーは他の2人と違って、経済的に恵まれず貧しいまま1899年に60歳で亡くなりましたが、その時、モネの呼びかけで開催された展覧会とオークションでルノワールが描いたのがこの作品です。」
「そこではシスレーがアトリエに残した27点の絵画と6点のパステル画も売りに出され、売り上げはシスレーの遺族に渡されました。」
「シスレー作品のうちの1点が今回の展覧会で展示されている《ロワン川沿いの小屋、夕べ》で、モネやシスレーの作品が4000フランだったのに対して、この作品は9000フランの値がつきました。」
「この2つの作品、ルノワール《箒をもつ女》と、シスレー《ロワン川沿いの小屋、夕べ》は、パリの画廊で開催された展覧会とオークションからおよそ120年ぶりに再び同じ場所で展示されることになったのです。」
シスレー《ロワン川沿いの小屋、夕べ》
Takさん「マネは印象派展には参加していませんが、印象派の画家たちにとっては尊敬すべき存在でした。」
岩瀬さん「マネはサロン(官展)で活動していましたが、どのあたりが印象派の画家たちから尊敬されたのかというと、顔は立体的に描かれているのですが、ドレスなどは早い筆さばきで平面的に描いたところなどが革新的だったことです。」

マネ《イザベル・ルモニエ嬢の肖像》

Takさん「この作品はゴッホの若いころの作品ですが、注文を受けて制作した作品ですね。」

ゴッホ《雪原で薪を運ぶ人々》

岩瀬さん「ダ・ヴィンチの《最後の晩餐》のように教会の食堂に飾るような作品との注文でしたが、ゴッホは、宗教的なものでなく、農民、四季をモチーフにした作品にします、と注文主を説得して描いたのがこの作品です。ゴッホが描きたいように描いたと言える作品ですね。」

岩瀬さん「こちらはゴッホが1886年に描いた静物画。ブルーの壁の前に補色のオレンジ色を使うあたりは印象派の影響が見てとれます。近くで見るとさまざまな色を使っているのがわかります。」
ゴッホ《静物、白い花瓶のバラ》
Takさん「他におススメの作品、見どころはありますか。」
岩瀬さん「暖炉と窓を多用したマティスの作品は暖炉と窓のある部屋に展示していますが、ここの展示は特に工夫しました。この配置は玄人(くろうと)的には結構受けているのです(笑)。」
「マティスが1920年代に古典に回帰した時代の作品や、マルクの風景画を展示している部屋はぜひご覧いただきたいです。マティスもマルクも、モローの弟子という共通点があります。」(拍手)

第2章「フォーヴから抽象へ~モダン・アートの諸相~」展示風景
右 マティス《静物、花とコーヒーカップ》
左 マルケ《コンフラン=サントノリーヌの川船》
展示はまだまだ続きます。
こちらはナチスに2回追われたカンディンスキーの作品。
第2章「フォーヴから抽象へ~モダン・アートの諸相~」展示風景
右からカンディンスキー《結びつける緑》《適度なヴァリエーション》 

カンディンスキーについては以前、いまトピのコラムで書きました。

杜の都で再会した二人の芸術家~カンディンスキーとパウル・クレー


三菱一号館美術館が誇るルドンの《グラン・ブーケ》が展示されている部屋もあります。



ルドン《グラン・ブーケ》
撮影可のコーナーもあります。



続いて、第3章「エコール・ド・パリ~前衛と伝統のはざまで~」。

ユトリロのコーナー
第3章「エコール・ド・パリ~前衛と伝統のはざまで~」展示風景
右から、ユトリロ《サン=ベルナール(アン県)の家並》、
《モンマルトルのミュレ通り》

ローランサンとキスリングのコーナー
第3章「エコール・ド・パリ~前衛と伝統のはざまで~」展示風景
右から、ローランサン《五人の奏者》《羽扇をもつ女》
キスリング《背中を向けた裸婦》 

そして、最後はシャガールの部屋で華やかにフィナーレ。

全部で72点が展示されている充実のラインナップ。さすが世界に誇る吉野石膏コレクションです。

少し早いですが、この冬にピッタリの心あたたまる展覧会をお楽しみください。







2019年11月13日水曜日

静嘉堂文庫美術館「名物裂と古渡り更紗」展

いつも豊富な所蔵作品の中から選りすぐりの展示で私たちを楽しませてくれる静嘉堂文庫美術館の今回の展覧会は、同館としては初の「染織展」。
染織というと、あでやかな模様の着物や、大きなタペストリーなどを思い浮べがちですが、今回の展覧会の主役は、小さな小さな「仕覆(しふく)」。



小さい上に、中に包まれている名物茶道具のわき役と見られがちの仕覆。はたして主役が務まるのかと思われるかもしれませんが、どうしてどうして。
金や銀、色とりどりの糸で紡がれた文様、カラフルな草花や吉祥文様、はるか中国の元や明、清の時代、さらには遠くペルシャや中東からやってきた生地だったりで、上の展覧会チラシでご覧のとおり、あでやかな仕覆たちの美の競演。
カラフルさだけではありません。じっくり見れば見るほど細部の模様までわかって、見る人の心を捕えて離さないものばかり。

小さな仕覆に広がる大きなアートの世界。

日ごろ茶道や茶道具とはあまり縁のない方もぜひご覧になっていただきたい展覧会です。

【展覧会概要】
会 期  11月2日(土)~12月15日(日)
休館日  毎週月曜日
開館時間 午前10時~午後4時30分(入館は午後4時まで)
入館料  一般 1,000円ほか
関連イベントもあります。詳細は同館公式サイトをご覧ください→静嘉堂文庫美術館

※展示室内は撮影禁止です。掲載した写真は内覧会で美術館より特別の許可をいただいて撮影したものです。(ロビーは撮影可)
※展示作品はすべて静嘉堂文庫美術館(書籍は静嘉堂文庫)所蔵です。

内覧会では、茶道具や染織がご専門の五島美術館主任学芸員の佐藤留実さんと、今回の展覧会を担当された静嘉堂文庫美術館主任学芸員の長谷川祥子さんのトークショー、そして、展示室内では長谷川さんのギャラリートークをおうかがいしました。

それでは、お二人にご案内いただきながら今回の展示の魅力をご紹介していくことにしましょう。

プロローグ ~至宝を包む~ 国宝「曜変天目」・重要文化財「油滴天目」の仕覆

入口すぐでお出迎えしてくれるのは、ご存知・国宝《曜変天目》(下の写真手前)。
世界中で三碗しかなく、その三碗とも日本にあってどれも国宝という《曜変天目》。
今年の春、三碗がほぼ同時期に公開されたので三碗コンプリートされた方もいらっしゃるのでは。


プロローグ展示風景


冒頭から《曜変天目》の輝きに魅せられるところですが、今回の主役は名物茶道具を包んでいた仕覆。上の写真奥のケースには《曜変天目》を包む仕覆が2点展示されています。
一つは明時代初期(14~15世紀)の華麗な「金地金襴」が使われた《紺地二重蔓牡丹唐草文金地金蘭仕覆》。長い伝来の間に金の糸は剥落していますが、かつての輝きを偲ばせる逸品です。
もう一つは、かっこ岩﨑家に入った際に新調された《白地雲文金襴仕覆》。昭和時代につくられたとはいえ、こちらも明時代(15~16世紀)の格式高い白地金襴で、金糸がまばゆく輝いています。

Ⅰ ~名物裂、古渡り更紗を愛でる~ 「唐物茶入れ(利休物相)」の次第から

最初の展示ケースには、いくつもの箱や仕覆、それに書物が展示されていますが、これは何でしょうか?
第1章展示風景
中央左には千利休から伝わる《唐物茄子茶入 利休物相(木葉猿茄子)》が、小堀遠州が探してきたとされる菱形の堆朱のお盆に乗っています。
その前にはこの茶入を包む仕覆が5つ、さらに右側には仕覆に包まれた茶入をしまう箱が並んでいます(平たい箱は堆朱をしまう箱)。
手のひらに乗るほどの小さな茶入を、仕覆で包み、さらに木箱やおしゃれな蒔絵の箱まで、大きさの違う箱に幾重に重ねて厳重に保管されていたことがわかります。

第1章展示風景

そして、一番左の書物は、江戸時代後期の松江藩主で茶人の松平不昧が著した『古今名物類聚』(静嘉堂文庫蔵)。
全18冊のうち2冊が名物裂を扱ったもので、この2冊だけがカラー刷り。
「裂は茶会に招かれないと見られないものでしたが、この書物によって一般の人にも柄や色がわかるようになった貴重な書物です。」と佐藤さん。

開かれたページには、その右に展示されている仕覆の一つと同じ柄の見本が載っていて、両方が比較できるようになってます。
「色のリアル感を見比べてみてください。」と長谷川さん。

Ⅱ ~茶入・棗を包む~ 織りの美、「名物裂」の世界

ここにも茶入や仕覆と並んで書物が展示されています。

第2章展示風景
こちらは江戸時代中期に著された『雅游漫録』(静嘉堂文庫蔵)。
「『雅游漫録』には名物裂の模様の説明や値段が記載されています。当時一番高価だった《鶏頭金襴 仕覆》(上の写真左から2つ目)は200両もしたのです。」と佐藤さん。

200両というとかなり高価なものであったと想像しますが、今の値段でどのくらいかはよくわかならいので、日本銀行金融研究所の貨幣博物館に聞いてみることにしました。

日本銀行金融研究所貨幣博物館「お金の豆知識 江戸時代の1両は今のいくら?」

同館の公式サイトを見たのですが、答えは「簡単には言えません」。
とは言っても、目安として知る方法がいくつか書かれていて、1つの例としてそばの代金で換算すると江戸時代後期には1両でそばが約406杯食べられたとのこと。
それに今の駅そばのかけそばの値段約300円を掛けると1両が約12万円。
ということは手のひらに乗るほどのこの仕覆のお値段はなんと約2,400万円!

これが高いか安いかは見る人次第ですが、模様を見ているだけでなく、値段はいくらぐらいするのかなと想像しながら仕覆を見るのも一つの楽しみ方かもしれません。

第2章では、展示室奥のこのコーナーにも注目です。
ここには全部で10点の仕覆が並んでいます。(下にキャプションのパネルがあるのが仕覆です。)
第2章展示風景
この中には、鎌倉時代の禅僧・大燈国師の袈裟裂に由来する「大燈金襴」という名称の仕覆が3点展示されています。
いずれも漢方薬で知られ、中国では幸福をもたらすキノコ・霊芝が描かれていますが、右の展示ケースに並ぶ2つは赤系の裂、左の展示ケースには白地の裂のものなので、色の違いもぜひお楽しみください。

仕覆はその名称にも注目です。
それは牡丹、鶏頭といった草花や兎や龍文といった動物、それに禅僧や能役者といった人物だったりとバラエティに富んでいるので、キャプションのパネルを読むと新たな発見があるかもしれません。

こちらは今回の展覧会の冊子『静嘉堂 名物裂と古渡り更紗 鑑賞の手引き』。


写真もきれいで、丁寧な解説もついてハンディサイズ。お値段も税込350円とお手頃。
ミュージアムショップで販売してますので、こちらを手に取りながら仕覆を見るのもおススメです。

さて、仕覆に使われる裂の年代ですが、どうやって時代を判定するのでしょうか。
佐藤さんと長谷川さんのお話によると、使われている糸によって産地に傾向があって、文様なども時代によって流行があるので、裂をルーペで丹念に調べるという根気のいる作業によって、どの時代のものか判定するとのことです。

また、江戸時代の大名たちは名物茶道具にふさわしい裂を入手するのにも力を注ぎました。
加賀百万石の前田家は、当時海外との窓口だった長崎にまで裂を買いに行かせたり、また、大名の間では裂をお互いに交換したりなどしたとのこと。
お気に入りの裂が手に入った時の喜びようが目に浮かぶようです。

Ⅲ ~茶銚・茶心壷を包む~ 染めの美、「古渡り更紗」の世界

展示の後半は、カラフルなインドの更紗。
仕覆が絹なら、更紗はインドを起源とする木綿布。そして江戸時代中期頃までに輸入されがものが、後世の「新渡り」と区別されて「古渡り更紗」と呼ばれました。

第3章展示風景
第3章展示風景
こちらにも書物が展示されています。
更紗の図柄が描かれた江戸時代中期の『更紗図譜』(静嘉堂文庫蔵)。
開かれたページの「栗鼠手」の図柄と並んで《白地葡萄・栗鼠手更紗袋》が展示されています。
「江戸時代の武士たちの間では、『武道を律する』に通じることから、葡萄と栗鼠の図柄が好まれました。」と佐藤さん。

エピローグ 染織 ~憧れの意匠の広がり~

第3章に続き、エピローグに展示されているのは《桐鳳凰蒔絵箪笥(内、壽地尽・名物裂尽) 梶川作》(下の写真左)。

第3章~エピローグ展示風景

開かれた観音開きの扉の裏には「壽」字チラシの意匠、そして染織デザインの引出が現れてくる豪華な箪笥。蒔絵は、将軍家御抱えの印籠蒔絵師・梶川派によるもの。
一番上の段には、中国・江南地方にある景勝地・西湖が描かれています。
前回の展覧会「入門 墨の美術 -古写経・古筆・水墨画-」でも「西湖図」が展示されていたので、ご覧になられた方もいらっしゃるのでは。

箪笥の上段に目を移してみましょう。
宋代の詩人・蘇軾(蘇東坡)がこの地方の長官として着任していた時に整備した長い蘇堤が目印。湖の中に描かれた山は、鶴と梅を愛した林和靖が隠遁していた孤山では、など想像がふくらみます。

ヨーロッパから伝来した更紗で作られた仕覆や反物も展示されています。
下にはカラフルな赤い生地の反物が敷かれていますが、実はこれも展示作品の一つ《赤地花卉菱文更紗反物》。ヨーロッパで産業革命後に発明されたローラープリントで染織されたもので、長さはなんと16m!

エピローグ展示風景

今回の展覧会では、ロビーは撮影可です。
武蔵野の面影の残る岡本の森を背景に重要文化財《油滴天目》を記念に撮ってみてはいかがでしょうか。

今回とても楽しいトークをお話いただいた佐藤さんが所属されている五島美術館でも、とても興味深い展覧会が開催されてます。


タイトルは「美意識のトランジション」。
社会構造が大きく変化する中、文化的にも過渡期(トランジション)だった16~17世紀の東アジアの絵画・書・工芸・書物の名品が展示されている展覧会です。
公式サイトはこちらです→五島美術館

五島美術館は、静嘉堂文庫美術館の最寄駅二子玉川駅のお隣、東急大井町線の上野毛駅が最寄駅なので「お隣どうし」。二館めぐってアジアの旅をしてみてはいかがでしょうか。










2019年11月1日金曜日

永青文庫「細川家伝来・江戸の唐絵」展

東京・目白台にある永青文庫では中国・明清絵画と工芸の展覧会「細川家伝来・江戸の唐絵」展が開催されています。


永青文庫は、肥後熊本54万石の大名・細川家の広大な屋敷跡にあって、大都会の中にありながらも緑が多く、静かなたたずまいの中にあります。建物も昭和初期に建てられた旧細川侯爵家の家政所(事務所)で、洋館風の落ち着いた風情。


展示室内はまるで江戸時代の蔵の中のような重厚で古風な雰囲気。
中国明清の絵画・工芸との相性もピッタリ。
4階展示室風景
さて、今回の令和元年度秋季展「細川家伝来・江戸の唐絵」とはどんな内容の展覧会なのでしょうか。開会に先駆けて開催された内覧会に行ってきましたので、さっそく館内をご案内したいと思います。
※館内は撮影禁止です。掲載した写真は主催者より特別の許可をいただいて撮影したものです。
※展示されている作品はすべて永青文庫蔵です。

【展覧会概要】
会 期 10月19日(土)~12月8日(日)
    前期 10月19日(土)~11月10日(日)
    後期 11月12日(火)~12月8日(日)
開館時間 10:00~16:30(入館は16:00まで)
休館日  毎週月曜日(但し11/4は開館し、11/5は休館)
入館料  一般 800円ほか
公式サイト→永青文庫

今回の展覧会の主役は熊本藩細川家8代藩主の細川斉茲(なりしげ)(1759-1835)。
天明7(1787)年に藩主となって、文化7(1810)年に52歳で隠居。中国絵画を収集するだけでなく、自らも絵筆をとる絵画を愛した藩主でした。

はじめに4階展示室からご案内しましょう。

下の写真の左の掛軸は斉茲筆、いかにも「中国花鳥画大好きです」と主張している《木蓮錦鶏図》。
右 《細川斉茲像》通期展示
 左 細川斉茲《木蓮錦鶏図》前期展示
(後期には同じく細川斉茲《松鶴図》が展示されます)
そして、斉茲は細川家コレクションのリストも作成しました。

「古画御掛物之帳」 通期展示
「掛物之帳」というだけあって、細川家が所蔵した掛軸だけのリストで、巻物は含まれていませんが、それでも日本絵画16件、中国絵画119件が記されています。
そして、中国絵画119件のうち、永青文庫に現存しているのは12件。
残りの107件も見てみたい!と思いますが、とりあえず永青文庫が所蔵する12件だけは前期と後期ですべて見ることができます。

右から 伝・劉祥《雲龍図》、顧氏《咸陽宮(楼閣)図》、
伝・辺文進《海棠牡丹八哥鳥図》
いずれも前期展示

《雲龍図》は一見黒ずんでいるように見えますが、よ~く見ると雲の間から表れてくるのはどことなく愛嬌のある龍の顔。

伝・劉祥《雲龍図》(部分) 前期展示
そして楼閣も細部まで丁寧に描かれています。
画面右上、宮殿の右上の雁の群れが飛んでいるのがご覧いただけますでしょうか?
単眼鏡必携です!

顧氏《咸陽宮(楼閣)図》(部分) 前期展示
さらに、愛嬌のある表情の八哥鳥。
伝・辺文進《海棠牡丹八哥鳥図》(部分)
前期展示
中国絵画はさらに続きます。
手前 沈南蘋《芦雁図》 通期展示
後の右から林良(款)《芦雁図》、
李一和(款)《花鳥図》(三幅対)、
《松鷹図》いずれも前期展示
4階展示室のもう一つの見どころは、前期限定で展示される重要文化財・黄庭堅《伏波神祠詩巻》。

重要文化財 黄庭堅《伏波神祠詩巻》
前期展示
黄庭堅(1045~1105)は、中国・北宋時代を代表する詩人・書家で、蘇軾、米芾、蔡襄とともに宋の四大家に数えられるほどの人。
《伏波神祠詩巻》は、国、東京都、文京区の助成を得て修理を完成した後の初めての公開です。きれいによみがえった名作をぜひご覧ください。

3階展示室に移ります。
こちらは中国工芸と巻物のコーナー。

3階展示室風景
3階展示室風景

こちらは清時代の《漆絵雲龍文食駕》。
パッと見るとよくわからないのですが、しばらく眺めていると、あれよあれよという間に何頭もの龍が姿を現してくるので、あら不思議。
《漆絵雲龍文食駕》 通期展示
こちらは青緑山水を得意とした明時代の仇英の款がある《宮中図巻》。
仇英(款)《宮中図巻》(部分)
前期後期で巻替あり
この作品は、明時代に文化の中心地だった江南地方・蘇州で多く作られた「蘇州片」と見られていますが、とてもレプリカとは言えないほどの鮮やかな色が残った作品です。
先ほど紹介した『古画御掛物之帳』に巻物は記されていませんが、他の巻物も見事な作品ばかりです。

3階では細川斉茲が自ら描いたと伝わる《写生図》も見逃せません。
包み紙に「うつし絵」とあることから、手本となる絵を模写したものとされていますが、
江の島や湘南海岸の様子、人物の動きなどは、その場で写生したのではと思えるほど生き生きと描かれています。
細川斉茲《写生図》全62枚のうち
通期展示

2階展示室に移ります。
手前は東本願寺伝来品と伝えられる《螺鈿楼閣人物稜花形食籠》。
奥は図書コーナーになっています。
2階展示室風景
360度ぐるりと見ることができる《螺鈿楼閣人物稜花形食籠》。
螺鈿の細かな細工、側面に描かれた場面ごとの人物の動き、何回ぐるぐる回っても飽きません。
《螺鈿楼閣人物稜花形食籠》(明~元時代)
通期展示

まるで中国の博物館に紛れ込んだような気分が味わえる展覧会。
前期展示は11月10日(日)までです。
もちろん後期展示も見逃せません。

4階展示室には中国・唐時代の如来さんがいらっしゃいます。
優しいお顔に癒されます。

重要文化財 如来坐像
(中国 唐時代 8世紀前半)
この如来さんは、唐の都・長安(現・西安)の青龍寺から来られたと伝えられています。
せっかくなので、以前西安の青龍寺址に行ったときの写真もご紹介します。
青龍寺は、空海が留学中に師・恵果和尚のもとで修業したお寺です。