2019年11月23日土曜日

山種美術館 広尾開館10周年記念特別展「東山魁夷の青 奥田元宋の赤-色で読み解く日本画-」

山種美術館では、東京・広尾に開館して10周年を記念した特別展「東山魁夷の青 奥田元宋の赤-色で読み解く日本画-」が開催されています。

展覧会チラシ


【展覧会概要】
会 期  11月2日(土)~12月22日(日)
開館時間 午前10時から午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日  月曜日(11/4(月)は開館、11/5(火)は休館)
入館料  一般 1200円ほか
展覧会の詳細はこちら→山種美術館公式ホームページ

※今回展示されている作品はすべて山種美術館所蔵です。
※展示室内は撮影禁止です。掲載した写真は美術館より特別の許可をいただいて撮影したものです。
※展示室内では同館特別研究員の三戸さんのギャラリートークをおうかがいしました。

今回の展覧会は、サブタイトルにあるとおり、色を手がかりに日本画を読み解いていく展覧会。東山魁夷の青、奥田元宋の赤をはじめ、緑、黄、黒、白、銀、金、まさに色とりどりの作品が展示されている、とてもカラフルで楽しい展覧会です。

「青」

「青」といえば、はずせないのが展覧会のチラシにもなっている東山魁夷《年暮る》。
こちらは、京都の四季を通じて日本の美を表現した連作「京洛四季」の締めくくりを飾る作品。
親交のあった川端康成に「京都は今描いといていただかないとなくなります。京都のあるうちに描いておいて下さい。」と言われたことが後押しとなって描いた連作ですが、開発が進んでマンションやオフィスビルの合間に町屋がぽつりぽつりと残っている現在ではとても信じられないほどの古風な景色が昭和40年代まではあったのです。

東山魁夷《年暮る》(1968(昭和43)年)

橋本明治《月庭》は不思議な雰囲気をもった作品。
《月庭》というタイトルですが月は描かれていません。この作品の主人公は舞妓さんたちをほのかに照らす青白い月の光なのです。
鮮やかな発色の人造岩絵具を使い、マチスやピカソの影響を受けた橋本明治。
「舞妓さんたちの無機質な表情にはピカソの影響が見られます。これは明治のオリジナルです。」と三戸さん。

橋本明治《月庭》(1959(昭和34)年)

「緑」

新緑の山の景色を連想させる「緑」。やはりこのコーナーには緑いっぱいの山の景色がありました。
石井林響の《総南の旅から のうち「仁右衛門島の朝」》です。
朝の景色だからなのでしょうか。全体的に靄のかかった感じ。緑だけでなく青く描かれた葉もあります。青緑山水の伝統を継承しつつも、大正時代に流行した南画風の、ゆるくてあたたか味のある作品です。

石井林響《総南の旅から のうち「仁右衛門島の朝」》
1921(大正10)年
画面いっぱいにひろがる草花と、蜜を求めてひらひらと舞う蝶。
色合いからして小林古径の《芥子》(東京国立博物館)を思い出しましたが、こちら戦後すぐの作品。
「このように画面のいっぱいに描く画法は戦後期に流行しました。」と三戸さん。

佐藤太清《清韻》(1947(昭和22)年)

「赤」

大作に取り組むのも80歳までが限度と考え、日展出品作とは別に、年1点、大作を描こうと決めた奥田元宋が70歳をすぎて描いた大作シリーズの第1弾がこの《奥入瀬(秋)》。
手前のケースには奥田元宋が使ったいろいろな種類の赤が展示されています。
絵の具といっしょに元宋の赤を楽しんでいただきたい作品です。
床まで「紅葉」しています!

奥田元宋《奥入瀬《秋》
(1983(昭和58)年)
こわい顔で睨みつけている鍾馗と、恐れをなして逃げる邪鬼。
こちらは幕末から明治にかけて漆芸家、画家として活躍した柴田是真の《円窓鍾馗》。
赤一色で塗られた地は表装、絵は円窓の部分を表現しているのですが、鍾馗の迫力に鬼が絵から飛び出して逃げていってしまいました。
「是真の遊び心が出ている作品です。」と三戸さん。


柴田是真《円窓鍾馗》(19世紀 江戸-明治時代)

「黄」

セザンヌなどの西洋絵画を積極的に学んだ小林古径の静物画《三宝柑》。
「黄色い三宝柑とガラスの紫色は反対色。質感の対比を際立たせています。」と三戸さん。

小林古径《三宝柑》(1939(昭和14)年)


「黒」

奥村土牛が描いた《舞妓》は、黒の質感にこだわった土牛らしい作品。
同じ黒でも着物は着物らしいなめらかな黒。
髪の毛はザラザラとした質感のある黒。これは岩絵具を焼いて黒くしたもので、髪の毛のきめの細やかさが表されています。

奥村土牛《舞妓》(1954(昭和29)年)

「白」

白といっても白色を塗ったのでなく、絹の白地をそのまま活かして雪を表現したのが森寛斎の《雪中嵐山図》。
雪を表現するのに絹の白地を活かすといえば、円山応挙《雪松図屏風》(三井記念美術館)。幕末から明治にかけて活躍した森寛斎は、応挙に学んだ森徹山の門下。
「応挙のDNAを継いでいるのです。」と三戸さん。

森寛斎《雪中嵐山図》(1890(明治23)年頃)

東山魁夷の《白い嶺》は北欧に取材旅行に行った2年後に描いた作品。
鮮やかな青の背景が針葉樹に積もった白いふわふわの雪を際立たせています。
「東山魁夷は北欧の雪景色から『青』に目覚めたのです。」と三戸さん。

東山魁夷《白い嶺》(1964(昭和39)年)

「銀」

一見のどかな初冬の農村風景のように見えますが、かつて水害と闘い続けてようやく手に入れた輪中の様子が描かれた田渕俊夫《輪中の村》。
この作品の背景の空に使われているのは、すぐに劣化する銀箔でなく、劣化しにくいアルミ箔。銀はやわらかいので、のりを付けるとすぐに平らになるのですが、糊付けすると、くしゃっとしたしわが残るアルミ箔の特性を利用してどんよりとした空を表現しています。

田渕俊夫《輪中の村》(1979(昭和54)年)

「金」

第2展示室にはきらびやかな金を使った作品が展示されています。
「金箔、金泥、金砂子など、金にはさまざなな表現方法があります。」と三戸さん。
下の写真右は全面に金箔を貼った森田曠平《出雲阿国》、左は色づいた葉を金泥で描いた小林古径《秌采》。

右 森田曠平《出雲阿国》(1974(昭和49)年)、
左 小林古径《秌采》(1934(昭和9)年)

展示室内には日本画の画材や岩絵具、箔の見本なども展示されています。

協力:谷中得応軒


協力:谷中得応軒




ミュージアムショップでは三戸さんの著書『色から読み解く日本画』が販売されています。今回の展覧会の図録ではありませんが、今回展示されている作品も多く収録されています。オールカラーで色別に日本画が紹介されていて、解説もコンパクトでわかりやすいので日本画の入門書としても最適。ぜひお手に取ってご覧になってください。

三戸信惠著『色から読み解く日本画』2018年
株式会社エクスナレッジ
定価 1,600円+税

展示作品にちなんだ和菓子も山種美術館の楽しみの一つ。
今回のラインナップは、中央が「除夜」(東山魁夷《年暮る》)、右上から時計回りに「秋の色」(奥田元宋《奥入瀬(秋)》)、「里の秋」(小林古径《秌采》)、「雪けしき」(森寛斎《雪中山水図》)、「鶴の舞」(奥村土牛《舞妓》)。(カッコ内はモチーフになった作品。いずれも山種美術館蔵)
どれも美味ですし、どれも形がよくできているので、どれか1つとなると困ってしまいますが、個人的には「秋の色」でしょうか。上に乗っている紅葉の葉がかわいいです。


ミュージアムグッズも充実。


新発売の可愛いマスキングテープやお年玉袋に使えるポチ袋などがおススメです。

マスキングテープ 400円+税
ポチ袋 380円+税

会場内は、色の表現方法や色へのこだわり、それぞれの日本画家たち個性が伝わってくる作品ばかり。
この冬おススメの展覧会です。



2019年11月20日水曜日

「横浜美術館開館30周年記念 オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち」展

横浜みなとみらい地区にある横浜美術館は、今年(2019年)が開館30年にあたる記念すべき年。
現在開催されている「横浜美術館開館30周年記念 オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち」は、「Meet the Collection-アートと人と、美術館」(4/13~6/23)、「原三溪の美術 伝説の大コレクション」展(7/13~9/1)に続く、横浜美術館開館30周年記念の第3弾。


オランジュリー美術館といえば、楕円形の部屋の四方をぐるりと取り囲むモネの《睡蓮》の連作、印象派やエコール・ド・パリの画家たちの作品をもつ「ジャン・ヴァルテル&ポール・ギヨーム コレクション」で有名なパリ屈指の美術館。

このたび同館が改修工事のため「ジャン・ヴァルテル&ポール・ギヨーム コレクション」の展示室が今年9月から来年3月まで閉鎖される間、同コレクション146点のうち約半数にあたる69点が来日しました。

なんとオランジュリー美術館のほぼ半分がごっそり横浜にやってきたのです。
そして、巡回展はありません。

つまり、

横浜でしか見られないオランジュリー美術館展なのです。

これは見逃すわけにはいきません!

【開催概要】
会 場  横浜美術館(横浜市西区みなとみらい3-4-1)
会 期  開催中~2020年1月13日(月・祝)
休館日  毎週木曜日(ただし12/26は開館)、12/28(土)~1/2(木)
開館時間 10:00-18:00
 *会期中の金曜・土曜は20:00まで開館(ただし、1/10~12は21:00まで) 
 *入館は閉館の30分前まで
観覧料(税込) 一般 1,700円ほか
詳しくはこちら→横浜美術館公式ホームページ
※館内は撮影禁止です。掲載した写真は内覧会で美術館より特別の許可をいただいて撮影したものです。
※所蔵の記載のないものは、すべて「オランジュリー美術館 ジャン・ヴァルテル&ポール・ギヨーム コレクション」です。

内覧会に先立って、今回の美術展を担当された同館学芸員の片多さんから展覧会の見どころを解説していただきました。

今回の展覧会の最大の見どころは、ルノワールはじめ、シスレー、モネ、セザンヌ、アンリ・ルソー、マティス、ピカソはじめ、私たちにとってなじみのある19世紀後半から20世紀前半のフランス絵画が最も輝いていた時代のスーパースターたちの作品が楽しめること。

まずは、シスレーとモネの風景画、セザンヌの静物画とセザンヌ夫人を描いた肖像画のコーナー。冒頭からすっかりオランジュリー美術館に瞬間移動したような気分になります。
シスレー、モネ、セザンヌのコーナー
続いて、木の葉の一枚一枚まで丁寧に描きこむのに、子どもの足が地面にのめり込んでいいたり、花嫁が宙に浮いていたり、どことなくおかしなところが持ち味のアンリ・ルソーのコーナー。
アンリ・ルソーのコーナー
左から、《人形を持つ子ども》1892頃、《婚礼》1905頃、《ジュニエ爺さんの二輪馬車》1908

そして、南フランス・ニース時代のマチスの作品。
部屋全体を明るくする赤系の色、そして窓からのぞく地中海がとてもいい感じです。
アンリ・マティス《ソファーの女たち(別名:長椅子)1921

おなじみのキュビスムや、古典に回帰した時代のピカソのコーナー。
パブロ・ピカソのコーナー
左から、《大きな静物画》1917-1918、《布をまとう裸婦》1921-1923頃

このように「この画家のこういった絵が見たかった。」という私たちの願いをかなえてくれる作品ばかりの「ジャン・ヴァルテル&ポール・ギヨーム コレクション」。
展示室内を歩いているだけでも満ち足りた気分にひたることができるのですが、こういった私たち好みのコレクションの基礎を作ったポール・ギヨームとはどういった人だったのか気になるところです。

右 アンドレ・ドラン《ポール・ギヨームの肖像》1919
左 アンドレ・ドラン《大きな帽子を被るポール・ギヨーム夫人の肖像》1928-1929
展示会場の入口でお出迎えしてくれるのは、28歳のころのポール・ギヨームの肖像画と、ギヨーム夫人ドメニカの肖像。

13歳の時に自動車修理工になったポール・ギヨーム(1891-1934)が20歳の頃、働いていた自動車修理工場がタイヤ用にアフリカから輸入したゴムの中に紛れ込んでいたアフリカ彫刻を偶然見つけました。
その美しさに魅了されてアフリカ彫刻の仲買人になったギヨームは、詩人のアポリネールと出会い、また、アフリカ彫刻の造形に熱狂していたパリの前衛芸術家たちと知り合い、23歳で画商になり、当時パリで活躍していた画家たちの作品を収集するようになりました。

ギヨームといえば、やはりこのモディリアーニの描いた、手にたばこを持ち、口をすぼめて煙を吐き出すようなそぶりの肖像画を思い浮べます。
貫禄があるようにも見えますが、ギヨームはこの時まだ23歳。
画面の左上には「ポール・ギヨーム」の名前が黒字で、左下には「Novo Pilota(新しき水先案内人)」が青系の色で描かれています。
また、キャプションによると、右上には聖母マリアを暗示する「Stella Maris(海の星)」がダビデの星や鉤十字とともに描かれているとのことですが、斜めから見て、ここがそうかなというくらいしかわからなかったので、みなさまぜひお近くでご覧になって探してみてください。

アメデオ・モディリアーニ《新しき水先案内人ポール・ギヨームの肖像》1915


ギヨームの資料紹介のコーナーには、ギヨームとドメニカ夫人のインテリアの再現ミニチュア(1/50)があって、この再現ミニチュアだけは撮影可です。

ギヨームは、シンプルでモダンな家具を好み、壁にはマティス、ドラン、モディリアーニなどの名品を飾り、書棚の上にはアフリカ彫刻を飾りました。

こちらはギヨーム邸の食堂の再現ミニチュア。
レミ・ムニエ作「ポール・ギヨームの邸宅(フォッシュ通り22番地、1930年頃):食堂」
(オランジュリー美術館)

こちらは書斎の再現ミニチュア。
すごくよくできたミニチュアなので、こうやって写真に撮ると、まるで本物の邸宅の中におじゃましたように見えませんか?。
レミ・ムニエ作「ポール・ギヨームの邸宅(フォッシュ通り22番地、1930年頃):ポール・ギヨームの書斎」
(オランジュリー美術館)
画商になってからは、パリ市内に次々と画廊を開設して、当時の現代作家たちの展覧会を開催したり、美術雑誌『パリの芸術』を創刊したギヨームは、37歳の頃、私邸を美術館にするという構想のもと邸宅を購入したりなど芸術活動に意欲的に取り組みました。

ポール・ギヨームの資料紹介コーナーの『パリの芸術』
(オランジュリー美術館アラン・ブレ・コレクション)

こういった活動が認められ、1930年には『パリの芸術』の出版と美術批評の功績によりレジオン・ド・ヌール勲章シュヴァリエ章(勲五等)を授勲されました。
こちらはフォーヴィズム(野獣派)の旗振り役の一人、キース・ヴァン・ドンゲンの《ポール・ギヨームの肖像》。
右胸にはさりげなくレジオン・ド・ヌール勲章の赤いリボンが描かれています。
キース・ヴァン・ドンゲン《ポール・ギヨームの肖像》1930頃
画商、出版者、コレクターとして活躍して得意の絶頂にあったギヨームですが、1934年、42歳の若さで亡くなりました。

その後、ギヨームのコレクションを引き継いだのがギヨーム夫人ドメニカ。
個性が強くプライベートでもスキャンダルが噂された彼女は、先ほど紹介したドランの描いた肖像画ではその性格が垣間見られますが、ローランサンが描くと左手に花を持ち、右手で犬を撫でる優しい女性になるから不思議です。
マリー・ローランサン《ポール・ギヨーム夫人の肖像》1924-1928頃
1941年、ドメニカは建築家のジャン・ヴァルテルと再婚。
印象派が好きだった彼女は、ギヨームの作品の半分を売却して印象派の画家の作品を集め、コレクションの幅を広げました。特にルノワールは彼女のお気に入りでした。

こちらは、この展覧会のハイライト、ルノワールのコーナー。
左は展覧会のポスターやチラシになっている《ピアノを弾く少女たち》、右は《ピアノを弾くイヴォンヌとクリスティーヌ・ルロル》。

左から、オーギュスト・ルノワール《ピアノを弾く少女たち》1892頃、
《ピアノを弾くイヴォンヌとクリスティーヌ・ルロル》1897-1898頃
同じ構図の油彩画やパステル画が少なくとも6点制作された《ピアノを弾く少女たち》。
この作品は、油彩によるスケッチといった性格のものですが、背景はササッと描かれているだけに、人物が際立ち、少女たちはみずみずしい印象に見えます。
もう一点は、当時、文化人たちのサロンとなっていたルロル家の娘さんたち。彼女たちは印象派の画家たちのアイドル。背景にはドガの作品が描かれています。

1963年にはジャン・ヴァルテル&ポール・ギヨーム コレクションはフランス政府に売却され、1966年にオランジュリー美術館で初公開されたあと、1984年には同館で常設展示されるようになりました。
プライベートコレクションだったジャン・ヴァルテル&ポール・ギヨーム コレクションは、このようないきさつからパブリックなコレクションとなり、おかげで私たちも今、横浜で見ることができるようになったのです。

ギヨームもドメニカも好きだったドランの作品は、コレクションの中でも大きな位置を占めていて、今回の展示でも最も多い13点を数えます。

ドランのコーナー
こちらはギヨームが個展を開いて支援したユトリロのコーナー。白を厚く塗る「白の時代」の作品が中心です。
ユトリロのコーナー
そして展覧会の最後を飾るのは、エコール・ド・パリを代表する画家の一人、スーティン。
「バーンズコレクション」で有名なアメリカのコレクター、アルバート・バーンズが作品を大量に購入したことがきっかけとなって、一夜にしてドライバー付きの生活を送るようになったと言われるシンデレラボーイ、スーティン。
バーンズ・コレクションの菓子職人の絵を大変気に入ったギヨームが、コレクションに加えたのが、まだあどけなさの残る少年の菓子職人が描かれたこの作品。

シャイム・スーティン《小さな菓子職人》1922-1923

そして、この先は展覧会ショップのコーナー。展覧会グッズも充実しています。
図録は公式図録(2,300円+税)とミニ図録(1,200円+税)の2種類。
こちらはコンパクトなミニ図録。持ち運びに便利です。


ピカチュウが案内するジュニアガイドもあるので、大人も子どもも楽します。


音声ガイド(1台560円 税込)は女優の上白石萌音さん。萌音さんの優しい声の解説、そして特別出演のピアニスト福間洸太朗さんのピアノの音色がさらに会場の雰囲気を盛り上げてくれます。

会期は来年(2020年)1月13日(月・祝)まで。

この冬限定、横浜限定のオランジュリー美術館コレクションの展覧会。

ぜひこの機会に横浜みなとみらいにお越しになってください!

2019年11月15日金曜日

青い日記帳×印象派からその先へ展 in 三菱一号館美術館 -世界に誇る 吉野石膏コレクション-

東京丸の内の三菱一号館美術館では、豊富な近代フランス絵画のレパートリーを誇る吉野石膏コレクションの中から、シスレー、ルノワール、ピカソ、シャガールといったおなじみの画家たちの名品が展示されている展覧会が開催されています。

展覧会ごとに趣向を凝らした外壁のデコレーションもすっかり冬景色。
素敵な少女の微笑みがお出迎えしてくれます。

【展覧会概要】
会 期 2019年10月30日(水)~2020年1月20日(月)
開館時間 10:00~18:00 ※入館は閉館の30分前まで
(1/3を除く金曜、第2水曜、会期最終週平日は21:00まで)
休館日 月曜日
(但し、祝日・振替休日の場合、1/20、トークフリーデーの11/25と12/30は開館)
年末年始休館 12/31、1/1
入館料 一般 1,700円ほか
展覧会の詳細はこちらをご覧ください→三菱一号館美術館
※展示室内は撮影禁止です。掲載した写真は内覧会で美術館から特別の許可をいただいて撮影したものです。

会場に入ってすぐの部屋には、コロー、ミレー、ブータンの自然の景色を描いた作品が展示されていて、
第1章「印象派、誕生~革新へと向かう絵画~」
展示風景
ピサロのコーナー、
第1章「印象派、誕生~革新へと向かう絵画~」
展示風景
シスレーのコーナーと、心がなごむ風景画が続き、
第1章「印象派、誕生~革新へと向かう絵画~」
展示風景
ルノワールやモネの展示されている広い部屋に入ります。

先日開催された内覧会では、今回の展覧会を担当された同館学芸員の岩瀬さんと青い日記帳のTakさんの楽しいギャラリートークをおうかがいしました。
ここからはお二人のご案内で展覧会の見どころを紹介していくことにしましょう。

右が岩瀬さん、左がTakさん
Takさん「はじめに紹介していただくのは、ルノワールの《庭で犬を膝にのせて読書する少女》ですね。」
岩瀬さん「この作品は1874年に制作されたものです。1874年といえば第1回印象派展が開催された年。右ひじの白い絵の具に注目です。これはハイライト的に光が当たっているところを表現したもので、当時ルノワールは木漏れ日をカンバスにどう描くか追及していました。この作品は、2年後に制作されるルノワールの代表作《ブランコ》《ムーラン・ド・ギャレットの舞踏会》(いずれもオルセー美術館)を思わせるものがあります。」

ルノワール《庭で犬を膝にのせて読書する少女》
Takさん「筆跡を残さない=完成品という当時のアカデミックな風潮とは異なる描き方ですね。」
岩瀬さん「筆の跡一つ一つを残すことによって画面全体が明るくなるという効果があります。通常は100ルクスのところ、70~80ルクスで十分明るいのです。」
Takさん「照明を落としているのですね。」
岩瀬さん「そうです。戸外で描くことを始めた印象派の画家たちがまさにねらっていたことなのです。」

Takさん「続いて、ポスターやチラシにもなっているルノワールの《シュザンヌ・アダン嬢の肖像》。」

ルノワール《シュザンヌ・アダン嬢の肖像》
Takさん「この作品は依頼されて描いたものなのですか。」
岩瀬さん「シュザンヌは、ブローニュの銀行家アダン氏のお嬢さん。ルノワールとアダン家は家族ぐるみの付き合いをしていて、北フランスにあるアダン氏の別荘をよく訪れていました。プロのモデルでなく一般の人を描いたルノワールにとっては、注文というより交流の証だったのでしょう。」
Takさん「この作品は先ほどの《庭で犬を膝にのせて読書する少女》と見比べると印象が違いますね。」
岩瀬さん「この作品は1887年に描かれたもので、今回展示している4点のパステル画のうちの1点です。」
「少し硬めの表情はルノワールの古典回帰の表れなのでしょう。一方、長い髪はパステルの黄、青、赤を塗ってつやを出して光が当たっている様子を表したり、ドレスも柔らかさを出して、全体的なバランスをとっています。」

Takさん「岩瀬さんがお嬢さんを描いてもらうとしたらどの画家に描いてもらいますか。」
岩瀬さん「そうですね。ドガではないですね(笑)。やっぱりルノワールですかね(笑)。」

ドガ《踊り子たち(ピンクと緑)》

Takさん「この大きな部屋は壁の色を変えていますが、何か意味があるのでしょうか。」
岩瀬さん「そうです。この部屋のどこかに同じ色を使った作品があるのです。ヒントは・・・言わない方がいいですね(笑)。」
第1章展示風景 壁の色が違っています
Takさん「この《箒をもつ女》には涙なしには語れない物語があります。」

ルノワール《箒をもつ女》

岩瀬さん「ルノワールは、モネやシスレーとは画塾仲間でした。その中でシスレーは他の2人と違って、経済的に恵まれず貧しいまま1899年に60歳で亡くなりましたが、その時、モネの呼びかけで開催された展覧会とオークションでルノワールが描いたのがこの作品です。」
「そこではシスレーがアトリエに残した27点の絵画と6点のパステル画も売りに出され、売り上げはシスレーの遺族に渡されました。」
「シスレー作品のうちの1点が今回の展覧会で展示されている《ロワン川沿いの小屋、夕べ》で、モネやシスレーの作品が4000フランだったのに対して、この作品は9000フランの値がつきました。」
「この2つの作品、ルノワール《箒をもつ女》と、シスレー《ロワン川沿いの小屋、夕べ》は、パリの画廊で開催された展覧会とオークションからおよそ120年ぶりに再び同じ場所で展示されることになったのです。」
シスレー《ロワン川沿いの小屋、夕べ》
Takさん「マネは印象派展には参加していませんが、印象派の画家たちにとっては尊敬すべき存在でした。」
岩瀬さん「マネはサロン(官展)で活動していましたが、どのあたりが印象派の画家たちから尊敬されたのかというと、顔は立体的に描かれているのですが、ドレスなどは早い筆さばきで平面的に描いたところなどが革新的だったことです。」

マネ《イザベル・ルモニエ嬢の肖像》

Takさん「この作品はゴッホの若いころの作品ですが、注文を受けて制作した作品ですね。」

ゴッホ《雪原で薪を運ぶ人々》

岩瀬さん「ダ・ヴィンチの《最後の晩餐》のように教会の食堂に飾るような作品との注文でしたが、ゴッホは、宗教的なものでなく、農民、四季をモチーフにした作品にします、と注文主を説得して描いたのがこの作品です。ゴッホが描きたいように描いたと言える作品ですね。」

岩瀬さん「こちらはゴッホが1886年に描いた静物画。ブルーの壁の前に補色のオレンジ色を使うあたりは印象派の影響が見てとれます。近くで見るとさまざまな色を使っているのがわかります。」
ゴッホ《静物、白い花瓶のバラ》
Takさん「他におススメの作品、見どころはありますか。」
岩瀬さん「暖炉と窓を多用したマティスの作品は暖炉と窓のある部屋に展示していますが、ここの展示は特に工夫しました。この配置は玄人(くろうと)的には結構受けているのです(笑)。」
「マティスが1920年代に古典に回帰した時代の作品や、マルクの風景画を展示している部屋はぜひご覧いただきたいです。マティスもマルクも、モローの弟子という共通点があります。」(拍手)

第2章「フォーヴから抽象へ~モダン・アートの諸相~」展示風景
右 マティス《静物、花とコーヒーカップ》
左 マルケ《コンフラン=サントノリーヌの川船》
展示はまだまだ続きます。
こちらはナチスに2回追われたカンディンスキーの作品。
第2章「フォーヴから抽象へ~モダン・アートの諸相~」展示風景
右からカンディンスキー《結びつける緑》《適度なヴァリエーション》 

カンディンスキーについては以前、いまトピのコラムで書きました。

杜の都で再会した二人の芸術家~カンディンスキーとパウル・クレー


三菱一号館美術館が誇るルドンの《グラン・ブーケ》が展示されている部屋もあります。



ルドン《グラン・ブーケ》
撮影可のコーナーもあります。



続いて、第3章「エコール・ド・パリ~前衛と伝統のはざまで~」。

ユトリロのコーナー
第3章「エコール・ド・パリ~前衛と伝統のはざまで~」展示風景
右から、ユトリロ《サン=ベルナール(アン県)の家並》、
《モンマルトルのミュレ通り》

ローランサンとキスリングのコーナー
第3章「エコール・ド・パリ~前衛と伝統のはざまで~」展示風景
右から、ローランサン《五人の奏者》《羽扇をもつ女》
キスリング《背中を向けた裸婦》 

そして、最後はシャガールの部屋で華やかにフィナーレ。

全部で72点が展示されている充実のラインナップ。さすが世界に誇る吉野石膏コレクションです。

少し早いですが、この冬にピッタリの心あたたまる展覧会をお楽しみください。