2022年5月22日日曜日

Bunkamuraザ・ミュージアム「ボテロ展 ふくよかな魔法」

 人物も、動物も、果物も、花も、楽器も、みんなボテッとしていて、一度見たら忘れられない作品が会場いっぱいに展示されている展覧会がBunkamuraザ・ミュージアムで開催されています。

その名も ボテロ展 ふくよかな魔法

展示会場外のフォトスポット


ボテッとしてるから「ボテロ」というわけではなく、南米コロンビアの国民的画家で、90歳を迎えて今もなお精力的に制作活動を続けているフェルナンド・ボテロの展覧会なのです。


展覧会概要

会 場  Bunkamuraザ・ミュージアム(東京・渋谷)
会 期  2022年4月29日(金・祝)~7月3日(日)
     ※5月17日(火)のみ休館
開館時間 10:00-18:00 ※毎週金・土曜日は21:00まで
     ※入館は各閉館時間の30分前まで
     ※金・土の夜間開館につきましては、状況により変更になる場合があります。
料 金  当日:一般 1,800円 大学・高校生 1,100円 中学・小学生 800円
※会期中すべての土日祝は「オンラインによる入館日時予約」が必要です。
※展覧会の詳細、日時予約等については同館公式サイトをご覧ください⇒Bunkamuraザ・ミュージアム

展覧会チラシ



展示構成
 第1章  初期作品
 第2章  静物
 第3章  信仰の世界
 第4-1章 ラテンアメリカの世界
 第4-2章 ドローイングと水彩
 第5章   サーカス
 第6章   変容する名画  

※展示室内は一部作品を除き撮影禁止です。掲載した写真は本展主催者の許可を得て撮影したものです。

※撮影には注意事項があります。会場内の掲示をご確認ください。
※混雑時などは撮影を制限させていただく場合があります。
※状況により中止させていただく場合があります。予めご了承ください。


見どころいっぱいの展覧会なのですが、今回は展示の様子を3つの見どころに絞ってご紹介したいと思います。


見どころ1 画面の中の小さなものに注目!

さて、ボテロはどうして「ふくよかな」絵を描くようになったのでしょうか。
ボテロは今までの芸術家活動の中で何回も同じ質問を受けましたが、ボテロの答はこうでした。

「私はふくよかな作品を描いているわけではない。芸術はデフォルメなのだ!」

「第2章 静物」展示風景

ボテロが、ボテロの代名詞ともいうべき「ふくよかな」絵を描くようになったきっかけはマンドリンでした。
あるときマンドリンのボディにある穴(サウンドホール)を小さく描いてみたら、マンドリン全体が爆発したように見えたのです。

フェルナンド・ボテロ《楽器》

あらためてマンドリンを見てみると、これでは弦の音がボディの中で響かないではないか、というくらいサウンドホールは小さく、マンドリンのネックやヘッドもずんぐりむっくり。ボディもかなり分厚いです。

ボテロの作品を見ていると、ふくよかな方に目が行きがちですが、このマンドリンように、実は小さなものが大きなものをさらに大きく見せていてることがわかります。
まさに描く対象をデフォルメしたものなのです。

たとえばこの作品では、小さな赤い靴のつま先の一点が、ふくよかなバレリーナをさらに大きく見せているのがわかります。



フェルナンド・ボテロ《バーレッスン中のバレリーナ》


そしてもう一点。
いくら遠近感を出しているとはいえ、右下のタキシード姿の男性のなんと小さいこと。
それとは対照的に、台の上の象はあまりに巨大に描かれています。


フェルナンド・ボテロ《象》




見どころ2 無表情な人物の顔に注目!

次に、ボテロ作品に描かれた人物の表情に注目してみましょう。

「第4-1章 ラテンアメリカの世界」展示風景


たとえ楽しそうな場面であっても、悲しい場面であっても、なぜか人物は無表情。

陽気な音楽が聴こえてきそうな場面ですが、楽士たちは黙々と演奏をしています。

フェルナンド・ボテロ《楽士たち》

《コロンビアの聖母》では、聖母の額に流れているのは汗ではなく涙。
それでも悲しげな表情をしているわけではなく、どこか遠くを眺めているようにも見えます。

フェルナンド・ボテロ《コロンビアの聖母》


ボテロは言います。

「私は人物を静物の様に描く。」

確かに果物や花には表情はありません。

ボテロにとっては人物も静物と同じく、見る人がどう感じるかその人の判断に委ねるように描いたのです。

描かれている人物が無表情だと、どうしても冷たい印象を受けがちですが、そこはふくよかなフォルムが和らげているためでしょうか、なぜか温かみが感じられるのです。
これがサブタイトルにあるように、まさに「ふくよかな魔法」なのでしょうか。


見どころ3 ボテロの好きな色は?


マンドリンが「爆発」してからのボテロの作品を見た印象は、南米らしい情熱的な色遣い。

こちらの黄、青、赤の3枚組の花の作品は、それぞれが大きな画面の作品ですが、1枚の絵にはなんと500種類以上もの花が描かれています。

フェルナンド・ボテロ 左から《黄色の花(3点組)》
《青の花(3点組)》《赤の花(3点組)》

そしてこの3色はコロンビアの国旗の色。
20歳で祖国コロンビアを離れたボテロですが、生まれ育った故郷は今でも心の中に残っているのですね。

何気ない日常の様子を描いても、サーカスの場面を描いてもいつもカラフル。


フェルナンド・ボテロ
右から《寡婦》《パーティーの終わり》



「第5章 サーカス」展示風景


こんなカラフルな絵を描くボテロですが、ボテロの一番好きな色は、実は「〇」なのです。
答はぜひ音声ガイドでお聴きください。

【音声ガイド】
音声ガイドのナレーターは声優の伊東健人さん。そして、本展オフィシャルサポーターを務めるBE:FIRSTが音声ガイドのスペシャルゲストとして登場します。
 料金
  会場レンタル版 貸出料金 一人1台 650円(税込)
  アプリ配信版「聴く美術」(iOS/Android)  販売価格 730円(税込)
   配信期間 2022年4月29日(金・祝)~12月11日(日)予定


「第4-1章 ラテンアメリカの世界」展示風景



第6章「変容する名画」では、西洋絵画の巨匠たちの名画をモチーフにした作品が展示されています。

「第6章 変容する名画」展示風景


「第6章 変容する名画」展示風景



第6章については、5月5日に書いたボテロ展の記事で紹介していますので、ぜひこちらもあわせてご覧ください。


ボテロ本人が出演して、人柄や芸術に対する信念を知ることができるドキュメンタリー映画「フェルナンド・ボテロ 豊満な人生」も紹介しています。
Bunkamuraル・シネマほかで絶賛上映中。
映画も展覧会も見れば楽しさ倍増間違いなしです!

映画「フェルナンド・ボテロ 豊満な人生」チラシ




展示会場を出ると、そこに待ち受けているのはミュージアムショップ。
ついつい財布のひもが緩んでしまう場所です。

ボテロ展なので展覧会グッズもカラフル。まさに色とりどり。

展覧会カタログ(税込2,700円)も「ふくよか」!
ボテロ作品がデザインされたマスキングテープは3種類あって、各税込715円。
どれにしようか迷ってしまいます。

ミュージアムショップ


会期は7月3日(日)まで。おススメの展覧会です。

【巡回展情報】
 名古屋展 2022年7月16日(土)~9月25日(日)名古屋市美術館
 京都展  2022年10月8日(土)~12月11日(日)京都市京セラ美術館