2019年5月21日火曜日

東京都江戸東京博物館 特別展「江戸の街道をゆく~将軍と姫君の旅路~」

1年半ぶりに特別展が再オープン!

待ちに待った特別展が始まりました。
東京都江戸東京博物館では、4月27日(土)から特別展「江戸の街道をゆく~将軍と姫君の旅路~」が開催されています。


江戸時代には東海道をはじめとした街道が幕府によって整備されて、多くの人たちが行きかい、街道沿いの宿場町も栄えました。

今回の特集は、将軍たちの上洛、大名行列、そして姫君たちが将軍家に嫁ぐ下向がメインテーマ。街道をめぐる絵巻や浮世絵、旅や婚礼の調度品など、豪華な旅行気分が楽しめる展覧会です。

それではさっそく私たちも江戸時代にタイムスリップして街道をゆく旅に出てみることにしましょう。

※展示資料は、すべて東京都江戸東京博物館所蔵です。

展覧会概要
会 期  4月27日(土)~6月16日(日)
展示期間 前期 4月27日(土)~5月26日(日) 後期 5月28日(火)~6月16日(日)
休館日  5月27日(月)、6月3日(月)、10日(月)
開館時間 午前9時30分~午後5時30分(土曜日は午後7時30分まで)
*入館は閉館の30分前まで
観覧料(税込) 一般 特別展専用券 1,000円 特別展・常設展共通券 1,280円ほか
展覧会の詳細はこちらをご覧ください→江戸東京博物館公式ホームページ



特別展示室入口
プロローグ

やはり旅立ちはお江戸日本橋から。
今回の特別展ではレイアウトも凝っていて、会場入口には日本橋を模した橋が架かっています。そして渡った先には畏れ多くも東照大権現「徳川家康像」がお出迎え。

奥が「徳川家康像」 全期間展示
東照大権現を拝んでから、関所を通って次の展示に向かいます。



第1章 武家の通行~威信をかけた旅路~

武士たちの通行は決して物見遊山ではありませんでした。お家の存亡をかけた過酷な旅路だったのです。

徳川家康は慶長5年(1600)の関ヶ原の戦いに勝って天下の実権を握り、慶長3年(1603)に征夷大将軍になりました。
はじめに関ヶ原の戦いに関する資料が展示されています。

奥の左が「徳川秀忠書状」全期間展示、右が関ヶ原の戦い
に関わる徳川家康・秀忠親子の軍勢の動きを示したパネル、
手前は山鹿素水/画「関ヶ原合戦絵巻」(前巻)後巻は後期展示

「徳川秀忠書状」は、のちに2代将軍になる秀忠が、挙兵した石田三成を迎え討つため西に向かう途中、真田昌幸の上田城を攻撃しているときに書いたもので、上田城攻めは早々に終わり、すぐに西上できるだろうという秀忠の心情がうかがえる貴重な資料。
実際には上田城攻めにてこずり、関ヶ原の戦いに間に合いませんでした。

続いて展示されているのが、参勤交代にまつわる資料。
大名統制策の一つとして武家諸法度で定められた参勤交代は、大名たちに過酷な出費を強いることとなりました。

奥が安達吟光/画 児玉又七/版
「旧諸侯江戸入行列之図」前期展示、
手前が「酒井忠器書状」全期間展示

第1章展示風景
大名行列の時に使われた武具や鞍が
展示されています。

続いて中山道に進みましょう。

第2章 姫君の下向~華麗なる婚礼の旅路~

宮家や五摂家、さらには皇室の姫君たちは、大きな河川が多く、川が氾濫すると川留めになる東海道ではなく、距離は長くても川の氾濫がほとんどない中山道を通って将軍家に嫁ぎました。

今回の展示の見どころの一つは、全長約24mにおよぶ絵巻「楽宮下向絵巻」。
巻き替えはありません。すべてを一度に見ることができます。

第2章展示風景
右のケースの中に青木正忠/画「楽宮下向絵巻」
(全期間展示)が展示されています。

こちらは、姫君たちの豪華な婚礼道具のコーナー。

第2章展示風景
豪華な蒔絵の婚礼道具が展示されています。
島津家ゆかりの女性の駕籠も展示されています。内部の貼付絵も見事なので、ぜひ内部もご覧になってください。
第2章展示風景
中央は「黒漆丸十紋散牡丹唐草蒔絵女乗物」全期間展示
公武一和のため、14代将軍・徳川家茂に嫁ぐ孝明天皇の妹・和宮が京都を出発したのは文久元年(1861)。そのときの様子を描いたのが関行篤/詞書「和宮江戸下向絵巻」です。

第2章展示風景
手前が関行篤/詞書「和宮江戸下向絵巻」前後期で場面替


第3章 幕末の将軍上洛~描かれた徳川家茂の旅路~

さあ、いよいよ最後のコーナー。東海道に入りましょう。



寛永11年(1634)、3代将軍家光が30万人を超える諸大名らの軍勢を率いて上洛、徳川幕府の威光を示したのは遠い昔の話。その229年後の文久3年(1863)に14代将軍家茂が上洛したのは、ペリー来航後に攘夷をめぐって対立した朝廷との融和を図るためでした。
家茂は、その後、元治元年(1864)、慶応元年(1865)にも上洛。
将軍の上洛は話題を呼び、そのときの様子は「東海道名所風景」や「末広五十三次」に描かれました。
「東海道名所風景」や「末広五十三次」は前後期で展示替えがあります。

第3章展示風景
こちらは「東海道名所風景」


第3章展示風景
こちらは「末広五十三次」


エピローグ~東京の道をゆく~

フィナーレは明治維新後の「東京の道」。 
明治天皇が京都から東京に向かう行幸(東幸)や蒸気機関車が走る様子が描かれた錦絵などが展示されています。
エピローグ展示風景

さて、駆け足で紹介してきましたが、特別展「江戸の街道をゆく」はいかがだったでしょうか。
江戸時代の将軍や姫君たちの旅の様子がうかがえる、とても楽しめる展覧会です。
会期は6月16日(日)までですが、前期展示は5月26日(日)までなので、お見逃しなく!

ミュージアムショップでは、展覧会関連グッズや展覧会図録を販売しています。
展覧会図録は、写真もきれいで説明も丁寧でわかりやすくて、これで2,200円(税込)。
レイアウトもおしゃれ。展示室内の解説パネルにありましたが、「朱傘」は将軍や姫君の存在を暗示する象徴です。


1階ロビーには撮影スポットがあります。中に入って江戸時代の姫君になった気分で、来館記念に一枚いかがでしょうか。













2019年5月3日金曜日

すみだ北斎美術館「北斎のなりわい大図鑑」~200年前のお仕事大集合!

いつも趣向を凝らした企画展で楽しませてくれる東京・墨田区にある「すみだ北斎美術館」では「北斎のなりわい大図鑑」が開催されています。

今回のテーマは「なりわい」。
ものを売ったり、作ったり、人やものを運んだり、磨いた芸を見せたり、今でもある生業(なりわい)も、今はもうない生業もあって、江戸時代の人たちの生き生きとした生活が見ることができるとても楽しい展覧会です。

3階企画展示室前のホワイエにある撮影スポット
富士山を背景に職人さんとぜひ記念写真を!

どれだけ楽しい展覧会かは実際にご覧になってからのお楽しみですが、開会に先がけて開催されたプレス内覧会に参加しましたので、ちょっとだけ展覧会の見どころをご紹介したいと思います。

※掲載した写真は、美術館の特別の許可をいただいて撮影したものです。
※展示作品はすべてすみだ北斎美術館所蔵品です。
※展覧会は4月23日(火)から6月9日(日)までですが、前期と後期で展示替えがあります。 
前期:4月23日(火)~5月19日(日) 後期:5月21日(火)~6月9日(日)
※関連イベントやコラボ企画もあります。詳しくはこちらでご確認ください
すみだ北斎美術館公式ホームページ
最新情報は公式フェイスブック、ツィッターでご確認ください。公式ホームページの画面で見ることができます。

企画展示室入口
展示室内をご案内いただいたのは、今回の企画展を担当されたすみだ北斎美術館学芸員の山際さん。
それでは200年ばかり前の江戸時代にタイムスリップしてみましょう。

「今回の展覧会では、北斎と一門の作品が、前後期で約100点展示されます。」と山際さん。

展示は6章構成になっています。

第1章 ものを売る生業
第2章 自然の恵みをいただく生業
第3章 人を楽しませる生業
第4章 ものを運ぶ生業
第5章 ものを作る生業
第6章 生業いろいろ


第1章 ものを売る生業


第1章展示風景


最初に出てくるのは葛飾北斎《東海道五十三次 桑名》。
焼き蛤(はまぐり)が名物だった桑名宿で、団扇を片手に蛤を焼いて売る女性と、おいしそうに食べている男性が描かれています。

葛飾北斎《東海道五十三次 桑名》前期展示
パネルの解説にも注目です。
作者や絵のタイトルや解説はじめ、描かれている生業も絵のタイトルの右下に書かれています。この絵の生業は「焼き蛤売り」。
「その手は桑名(=食わぬ)の焼き蛤」というダジャレもあったそうです。



「こちらが北斎にゆかりのある唐がらし売りです。」と山際さん。
「北斎は30代後半、「宗理」という雅号のころ、生活が苦しかったので七味唐がらしを売っていたと伝わっています。」

牧墨僊『写真学筆 墨僊叢画』 全期間展示
左のページの左上に描かれているのが、大きな唐がらしの形のものを肩に下げて、そこに粉唐がらしの小袋を入れて売り歩く唐がらし売りです。
牧墨僊『写真学筆 墨僊叢画』(部分) 全期間展示
壁の所々に詳しい解説パネルがあるので、こちらも注目です。


新発見「蛤売り図」!

すみだ北斎美術館のコレクションに加わった葛飾北斎《蛤売り図》が、今回初めてお披露目されます。

葛飾北斎《蛤売り図》 前期展示

蛤売りの上には、「蜆子(しじみ)かと思ひの外の蛤は げにく(ぐ)りはまな思ひつき影 蜀山人筆(花押)」と書かれた江戸時代後期の狂歌師・蜀山人の賛があります。

描かれた人物を「蜆子(けんず)和尚」(居所を定めず、夏も冬も一衲(いちのう)をまとい、蜆や蝦を食べていたという唐末の禅僧)に見立て、籠の中の貝は蜆かと思ったら、よく見たら大きい貝なので蛤だった。これはとんだ見当違い(「ぐりはま」)だと思いついた、といった意味。
「はまぐり」を倒置した「ぐりはま」は「貝合わせ」から来た言葉で、食い違うことや
あてが外れること。「思いつき影」は、思い「付き」と「月」影の掛詞(かけことば)。
さすが狂歌師として一世を風靡した蜀山人らしいエスプリのきいた賛です。

籠の中の蛤の白色は、貝殻を焼いて砕いて粉末にした胡粉で描かれています。
ぜひ近くでご覧になってください。

葛飾北斎《蛤売り》(部分) 前期展示


そしてもう一つ。「蜆子和尚」といえば京都大徳寺・真珠庵の《蜆子豬頭図襖》のように蝦を手に持ってうれしそうな顔をしているところを思い浮べるので、この絵に描かれた蛤売りのおじさんとはイメージが違いますが、威勢よくものを売るというより、少しうつむき加減で、どことなく世の中を達観したような表情をしているので、蜀山人が和尚さんに見立てたのも一理あるのかなと、勝手に想像してしまいました。

葛飾北斎《蛤売り図》(部分) 前期展示


第2章 自然の恵みをいただく生業

第2章展示風景

「北斎の魅力は大胆な構図です。」と山際さん。
働いている場面だけでなく、焚火の前で暖をとる猟師を描いたりするところも北斎の魅力。そしてこの燃え上がるような炎の赤が印象的です。

葛飾北斎《百人一首うはかゑとき 源宗干朝臣》前期展示
第3章 人を楽しませる生業

第3章展示風景
子どもたちが熱心に穴の中をのぞきこんでいます。
さてその向こうには何が見えるのでしょうか。

葛飾北斎《覗機関(のぞきからくり)》 前期展示 
覗機関(のぞきからくり)は、凸レンズを通して奥行きを強調した絵を見たり、紙芝居のように絵を替えて物語を見せるものでした。

安定しない台の上に高下駄で乗って刀を振り回している人がいます。
この人の職業は「居合抜」なのですが、これは歯磨粉などを売るためのパフォーマンス。
よく見ると後ろの看板には「はみがき」と書かれています。
そしてこの「居合抜」の御仁、歯の治療もするそうなのですが、居合抜きよろしく歯を抜かれてはたまったものではありません。
「この先生にはあまり治療してもらいたくないですね(笑)。」と山際さん。


八隅景山著 葛飾北秀画『養生一言草』 全期間展示
第4章 ものを運ぶ生業

第4章展示風景
情報を運ぶのが飛脚、人を運ぶのが駕籠かき、そして川を越える人やものを運ぶのが川越人足。
こちらは、東海道の要所として橋をつくることや渡船が禁止されたため、川越人足が人やものを運んでいた大井川。
「箱根八里は馬でも越が越に越れぬ大井川」と言われたように、大雨で川が増水したときには水が引くまで何日も待たされたのですが、こんなに増水して流れが急な時でも人を渡したのを見ると、川越人足も、上に乗って運ばれている人も命がけですね。

葛飾北斎《富嶽三十六景 東海道金谷ノ不二》 前期展示
第5章 ものを作る生業

第5章展示風景

3階ホワイエの撮影スポットのパネルにもなっているのが葛飾北斎《富嶽三十六景 尾州不二見原》。

葛飾北斎《富嶽三十六景 尾州不二見原》 前期展示

「大きな丸い桶の中に三角形の富士という構図の面白さもありますが、丸い桶を動かないように木槌をストッパーにして固定しているところに注目です。北斎はこういった細かいところまで観察していたのです。」

葛飾北斎《富嶽三十六景 尾州不二見原》(部分) 前期展示

第6章 生業いろいろ

この章には、医師、手習師匠、質屋、さらには留女といった、今まで章のジャンルに入らなかった職業の人たちが登場します。

その中でも、現在、地球温暖化対策で見直されているリサイクルを生業とする人たちを紹介しましょう。

「下の写真左上は、焼き接ぎ師。割れた茶碗を修理しています。」

岳亭春信『略画職人尽』 前期後期で頁替え
「下の写真の左ページ手前の人物は紙屑買い。集めた紙は紙屑問屋がすき返して、浅草紙の名で売られました。右ページの人物は唐傘の古骨買い。集めた古傘は傘屋で新しい紙を張り、張替傘として売りました。」と山際さん。

寿福軒真鏡著 二代柳川重信画『主従心得草』後編 上 全期間展示
最後に、ご案内いただいた山際さん「北斎や門人たちの描いた江戸時代の仕事をする人たちの生き生きとした姿をぜひお楽しみください。」(拍手)

さて、「北斎のなりわい大図鑑」はいかがだったでしょうか。

江戸時代には、いろいろな職業がありました。
今ではもう存在しない職業だったり、今でも綿々と続く職業だったり、いろいろな職業があって、およそ200年前の江戸時代に仕事をしている人たちの姿がよくわかるとても楽しい展覧会です。

会期は6月9日(日)までありますが、前期後期で一部展示替えがあって、前期は5月19日(日)までなので、お早めに!

企画展「北斎のなりわい大図鑑」展覧会概要
会 期  4月23日(火)~6月9日(日)
開館時間 9:30~17:30(入館は17:00まで)
休館日 5/7(火)、5/13(月)、5/20(月)、5月27日(月)、6月3日(月)
観覧料 一般 1000円(800円)ほか カッコ内は団体料金
(本展チケットで会期中観覧日当日に限り、次に紹介する4階の「AURORA(常設展示)」と「常設展プラス」もご覧になれます。)
詳細は展覧会公式HPでご確認ください。→すみだ北斎美術館公式ホームページ



「北斎のなりわい大図鑑」展リーフレットも販売しています。これで税込300円。絵も多くて、解説もわかりやすいのでお買い得です!

リーフレット表紙

4階では「常設展プラス」と「常設展」が開催されています。
前回企画展のブログでも紹介しましたが、ここに再掲します。

他にも楽しさいっぱい~『北斎漫画』を立ち読みしよう!
4階の常設展示室(AURORA)では、北斎の画業の流れがわかる複製画の展示があって、北斎さんに会うこともできます。こちらは一部を除き写真撮影ができます。

北斎と娘のお栄


同じく4階の企画展示室では新しい企画として「常設展プラス」が開催されていて、すみだ北斎美術館所蔵の『北斎漫画』や全長7mの「隅田川両岸景色図巻(複製画)」が展示されています。こちらは写真撮影不可です。
会場入口

葛飾北斎『隅田川両岸景色図巻(複製画)』
『北斎漫画』(これは複製です)の立ち読みだってできる!
『北斎漫画(複製)』の立ち読みコーナー
常設展プラスの開催概要
会 期  2月5日(火)~6月9日(日)
開館時間 9:30~17:30(入館は17:00まで)
休館日 毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)
観覧料(常設展プラスと常設展示室(AURORA)のみ) 一般700円(560円)ほか カッコ内は団体料金
(企画展開催中は企画展のチケットで会期中観覧日当日に限り常設展プラスとAURORA(常設展示)もご覧になれます。)

次回の企画展は、「門外不出」のアメリカ・フリーア美術館の北斎作品を「綴プロジェクト」の高精密複製画で綴る「フリーア美術館の北斎展」。
こちらも楽しみです。













































2019年4月29日月曜日

静嘉堂文庫美術館「日本刀の華 備前刀」

武蔵野の面影を残した東京・世田谷の岡本の森にある静嘉堂文庫美術館では、「刀剣王国」備前で作られた備前刀の展覧会が開催されています。


開催概要
会期  4月13日(土)~6月2日(日)
休館日 毎週月曜日(ただし4/29、5/6は開館)、5/7(火)
開館時間 午前10時~午後4時30分(入館は午後4時まで)
入館料 一般 1000円、大高生 700円、中学生以下 無料
※20名様以上の団体は200円割引
関連イベントも充実してます。詳細は静嘉堂文庫美術館公式ホームページでご確認ください。
 
刀剣といえば、「刀剣女子」で注目を集めて、今ではすっかり刀剣人気も定着していますが、今回展示されているのは100パーセント備前刀。刀剣ファンにはたまらない展覧会ですが、それぞれの刀剣の丁寧な見どころ解説のパネルがあって、私のように刀剣にあまり詳しくないアートファンにもやさしい工夫がされています。

それでは、ブロガー内覧会に参加したときの様子をお伝えしながら、展覧会の見どころを紹介したいと思います。
※展示会場は撮影不可です。掲載した写真は内覧会で美術館より特別の許可をいただいて撮影したものです。

はじめに「日本刀の華 備前刀」トークショーがありました。
出演は、日本刀剣保存会 幹事の吉川永一さん、静嘉堂文庫美術館 学芸員の山田正樹さん、そしてナビゲーターは人気アートブログ「青い日記帳」のTakさんです。
※トークショーの様子は、展示室に移ってからの吉永さんの解説や、山田さんのギャラリートークを交えて構成しています。

刀剣の手入れは大変です

Takさん はじめに刀剣の保存についてお話いただけますでしょうか。
吉川さん 刀剣の一番やっかいなのは、素材が鉄であるということです。何しろ鉄は錆びるのが仕事ですから。
 具体的には、年4回、季節の変わり目に塗ってあった油をとって、油を塗り直します。湿気のあるところだと、月1回、この作業を行う必要があります。
山田さん 油は、錆びを止めるための酸化被膜で、油を錆びさせて、刀を錆びさせないようにしているのです。
Takさん 刀剣の保存は大変ですね。
吉川さん よく時代劇で白くて丸いものでポンポンと刀をたたいて手入れしている場面が出てきますが、今ではあまり使われていません。白い物の中には打ち粉といって砥石の粉が詰まっていて、その粉が刀の表面の細かい凹凸に入ってしまって、取るのが大変で、取るときに傷がついたりするのです。今では主にうすめたエタノールを使っています。

展示風景


備前刀は日本刀の華

Takさん 今回の展覧会のタイトルは「日本刀の華 備前刀」ですが、備前刀はメジャーな存在なのですね。
山田さん 刀は大きく分けると、平安時代から鎌倉時代を経て慶長年間までが古刀、それ以降を新刀といいます。そして、五箇伝といって、全国で5カ所のメジャーな生産地があって、それが山城、大和、備前、相模(相州)、美濃なのですが、中でも備前が群を抜いて生産量、刀工の数が多かったのです。
Takさん 備前刀の魅力は?
吉川さん 平安時代後期から鎌倉時代につくられた「古備前」は腰反りが高く、堂々とした太刀姿をしています。また、小乱れの中に丁字が目立つ華やかな刃文が見られます。
(刃文(はもん)は刀身の波模様で、丁字は沈丁花のつぼみが重なり合った形で、それが小さいものが小乱れといいます。)
山田さん 古備前の魅力は「直刃調(すぐはちょう)の小乱れ」(刃文がまっすぐに見えるようでちらちらっと乱れている様子)と言われています。
「古備前」の展示風景
吉川さん 私のおススメは、「古備前国継太刀 銘 國継」(作品№4 重要美術品 静嘉堂文庫美術館)です(上の写真の右)。「生ぶ(うぶ)」といって、作られた当時から一度も砥がれることがない太刀で、横から見ると、鎺(はばき)のところに隙間がありません。何回も砥がれた太刀だと、ここに隙間ができるのです。
(鎺は、刀身が鍔(つば)に接する部分にはめる金具)

日本刀には見方があった!

展示室内では実際に、吉川さんから刀剣の見方を教わりました。
まずは、横から鎺のところを見て、隙間があるかどうか見ます。隙間がなければ「生ぶ」です。そして、腰をかがめて、刃身の高さに目線を合わせて体を左右に動かして、刃文を見ます。
私が見たときは、刀身に上からの照明が当たって、刀身に映る日の出を見ているようでした。
こういう見方をすると、「あの人、かなりの通だな」と思われるかもしれないので、試してみてはいかがでしょうか。

吉川さんのもう一振りのおススメは、静嘉堂文庫美術館所蔵の刀剣で長さが一番長い「鵜飼雲生太刀 銘 雲生」(作品№27 重要美術品 静嘉堂文庫美術館)です。
(下の写真左から二振り目が「雲生」)


吉川さん 全部で31振り展示されていますが、「これが一番気に入った」という見方でいいのではないでしょうか。

刀剣を見るポイントはいくつもあるようですが、自分のお気に入りの刀剣をさがすのも一つの楽しみかもしれません。

私も自分のお気に入りをさがしてみました。
一番のお気に入りは、堂々とした風情のある「長船長光太刀 銘 長光」(作品№19 静嘉堂文庫美術館)でした。(下の写真右)

 

備前刀でも地域によって違いがある

Takさん 備前の中でも地域によって違いがあるのですね。
山田さん 備前には大きな川が3本流れていて、一番東の吉井川流域には、鎌倉時代初期に備前福岡に拠点を構えた「一文字派」、鎌倉時代中期に登場した「長船(おさふね)派」がありました。
一番西の旭川流域には独特の流派であった「鵜飼派」がありました。
Takさん やはり川の流域できれいな水が必要だったのですね。
山田さん 刀剣の産地の要件として、原料の砂鉄がとれること、火を使うので燃料の木が採れること、焼き入れの時に必要な水があること、そして、運搬するときの水運や交通の要衝であることなどです。
Takさん 「一文字吉房太刀 銘 吉房」(作品№15 静嘉堂文庫美術館)の波模様のような刃文は見事ですね。
山田さん 私は織田信長が所持していたと伝わる「古備前高綱太刀 銘 高綱」(作品№3 重要文化財 静嘉堂文庫美術館)です。まさに古備前の魅力を伝えている一振りだと思います。
唯美的な一文字派は、鎌倉時代中期に隆盛を誇りましたが、元寇のときにまさに「太刀打ち」できませんでした。その後、隆盛したのが実用性に優れた長船派でした。
Takさん 「肌(刀の地鉄(ぢがね))」の部分も違いますね。
吉川さん 備前刀は杢目(もくめ)肌(樹木を横に切った時の年輪のような模様)が多いです。
山田さん 作品№29から31は低いケースに入っているので、じっくりご覧になっていただければと思います。


Takさん どうもありがとうございました。それではさっそく展示室で備前刀の魅力を楽しんでいただければと思います。(拍手)

さて、展示室に移ることにしましょう。

見どころがよく分かる解説パネル

冒頭でもふれましたが、それぞれの刀剣の由来や見どころが解説パネルに書かれているので、刀剣に詳しくない人でも、一振りごとの刀剣の魅力を楽しむことができます。

例えば・・・
作品№6「嘉禎友成太刀 銘 五月六日友成」(重要文化財 静嘉堂文庫美術館)


「友成」は徳川将軍家から小石川伝通院に伝来したもので、もとは「嘉禎三季(嘉禎3年、1237年 鎌倉時代)」との銘がありましたが、明治初期に流出したときに、平安中期の有名な刀工・友成の作とするため潰された、とのエピソードが紹介されています。
実際に中心(なかご 柄で隠れる部分)を見ると、不自然に削ったような跡がわかります。


そして、もう一枚のパネルがそれぞれの刀剣の見どころ。
これを見ながら「この腰反りの高いところがいいんだよな。」とうなずきながら独り言を言えば、あなたはもう刀剣マニア!(笑)


これだけ丁寧な解説をつくられた担当学芸員の山田さんの苦労がしのばれます。
山田さん、ありがとうございます!

関連イベントも充実

①②は聴講無料。当日の開館時より整理券配布(1名様につき1枚限定)、整理券の番号順にお入りいただきます。

①講演会
5月26日(日) 午後1時30分~ 地階講堂にて 定員120名
「静嘉堂の備前刀について」 吉永永一氏 (日本刀剣保存会 幹事)
~今回のトークショーに出演された吉永さんのお話です。刀剣について、とてもわかりやすい解説が聴けます。

②河野元昭館長のおしゃべりトーク
5月5日(日) 午後1時30分~ 地階講堂にて 定員120名
「浦上玉堂-酒仙画家」饒舌館長 口演す
~河野館長の気さくで楽しいお話が聴けます。

③職方実演会
5月18日(土) 午前10時~12時、午後1時~4時30分(職方の休憩時間以外は随時ご覧いただけます) 地階講堂にて
「日本刀にたずさわる職方の技」
水野美行氏(日本刀鞘師)、小澤茂範氏(刀匠)、川上陽一郎氏(研師)
観覧料 300円(当日受付にて販売、別途当日の入館料が必要です)
  
④列品解説
5月9日(木)、5月23日(木) 午後2時~
6月1日(土) 午前11時~

⑤静嘉堂コンサート
5月11日(土) 午後2時開演(午後1時30分開場) 地下講堂 自由席100名
「100万人のクラシックライブ」~ヴァイオリンとピアノの二重奏~
堀脩史(ヴァイオリン)、岩下真麻(ピアノ) 
ロンドンカプリチオーソ(サン・サーンス)、「真田丸」のテーマ他
※参加料:1,000円(別途当日の入館料が必要です)
※要事前予約

⑥静嘉堂ガーデン(ビアガーデン&カフェ)
4月27日(土)~5月6日(月・振替) 午前11時~午後4時30分(雨天中止) 静嘉堂文庫美術館前庭にて
ビアガーデンとカフェを開店!
二子玉川クラフトビール、おつまみ、スイーツをお楽しみください。
入館料が半額となるお得なセット券を販売しています。

詳細は静嘉堂文庫美術館公式ホームページでご確認ください。

もう一つ大切なものを忘れてはいけません!

そうです。世界に三碗しかなくて、全部日本にあって国宝で、それも今はほぼ同時期に国内の美術館・博物館で公開されている曜変天目茶碗です。
※ロビーも撮影禁止です。こちらは内覧会で特別の許可をいただいて撮影したものです。

国宝「曜変天目」


静嘉堂文庫美術館で公開されているのは、稲葉家に伝来したことから「稲葉天目」といわれる曜変天目茶碗。
ロビーに展示されていて、窓の外には緑が広がり、天気がいい日には富士山を背景に曜変天目を見ることができるかもしれません。

国宝「曜変天目」三碗コンプリートの旅については、「いまトピ~すごい好奇心のサイト~」にコラムを書いていますので、こちらもぜひご覧になってください。
ペンネームはyamasanです。

【三碗コンプリート!】国宝「曜変天目」関西~東京三館めぐりの旅に行ってきた。