2020年10月21日水曜日

東京国立博物館 特別展「桃山-天下人の100年」

東京・上野公園の東京国立博物館では、豪華絢爛な桃山文化の逸品が勢ぞろいした特別展「桃山-天下人の100年」が開催されています。

天下人好みの勇壮な襖絵や障壁画、南蛮文化の影響を受けた美術品、侘びの趣の茶道具。
室町時代末から江戸時代初期にかけて激動の100年に生まれた文化の粋が楽しめる展覧会です。



【展覧会概要】

会 場  東京国立博物館 平成館 
会 期  2020年10月6日(火)~11月29日(日)
   前期展示 10月6日(火)~11月1日(日)
   後期展示 11月3日(火・祝)~11月29日(日)
開館時間 9:30~18:00(会期中の金曜・土曜は21:00まで)
休館日  月曜日(ただし、11月23日(月・祝)は開館。11月24日(火)は休館)
観覧料金  一般 2,400円ほか
※ 本展は事前予約制です。オンラインでの日時指定券の予約が必要です。詳細は展覧会公式サイトをご確認ください⇒https://tsumugu.yomiuri.co.jp/momoyama2020/

それではさっそく会場内をご案内いたしましょう。
※会場内は撮影禁止です。掲載した写真は内覧会で博物館より特別に許可をいただいて撮影したものです。

会場内は7つのエリアに分かれています。

第1会場
 A「桃山の精髄-天下人の造形」
 B「変革期の100年ー室町から江戸へ」
第2会場
 C「桃山前夜-戦国の美」
 D「茶の湯の大成-利休から織部へ」
 E「桃山の成熟ー豪壮から瀟洒へ」
 F「武将の装い-刀剣と甲冑」
 G「泰平の世へー再編される権力の美」

どのエリアも見どころいっぱいの展覧会で、どれも紹介したいのですが、今回は特に注目のポイントを3点に絞ってご紹介したいと思います。

見どころ1 桃山の二大天才絵師の対決が見られる!
見どころ2 狩野派の師弟の華麗な競演が見られる!
見どころ3 甲冑や刀剣、茶道具も充実!



見どころ1 桃山の二大天才絵師の対決が見られる!


桃山の天才絵師といえばまず思い浮かべるのは、織田信長、豊臣秀吉に仕え、天下人が好む迫力の大画面作品を描いた狩野永徳(1543-90)。
そして狩野永徳の代表作といえば、京都の神社仏閣、祇園祭の山鉾巡行、2,500人近くもの人物が細かく描かれた黄金色に輝く国宝《洛中洛外図屛風(上杉家本)》
こちらは、A「桃山の精髄-天下人の造形」のエリアに展示されている作品で、前期のみの展示です。


狩野永徳筆 国宝《洛中洛外図屛風(上杉家本)》
室町時代・永禄8年(1565)
(山形・米沢市上杉博物館) 前期展示

時の権力者に仕えたため戦火に遭い、安土城、大坂城、聚楽第はじめ、狩野一門の総力を挙げて制作した障壁画がことごとく焼失する中、国宝《洛中洛外図屛風(上杉家本)》と並んで残った永徳の代表作が《唐獅子図屛風》(宮内庁三の丸尚蔵館)。こちらは後期展示です。

東京国立博物館正面の案内看板

そして、永徳最大のライバルは能登から上京した長谷川等伯(1539-1610)。
A「桃山の精髄-天下人の造形」のエリアには、永徳と等伯、二人の天才絵師の屛風対決が見られるコーナーがあります。

右 狩野永徳筆 国宝《檜図屛風》
安土桃山時代・天正18年(1590)
(東京国立博物館) 前期展示
左 長谷川等伯筆 重要文化財《牧馬図屛風》
室町~安土桃山時代・16世紀
(東京国立博物館) 展示期間10/6-10/18



長谷川等伯の台頭をおそれ、「はせ川(等伯のこと)と申す者に内裏の対屋の襖絵を描かせることにしたのは迷惑である。」と、狩野永徳が公家の勧修寺晴豊に申し出たことはよく知られているエピソードですが、まさか当時は火花を散らした永徳も等伯も、400年以上たって仲良く並んで作品が展示されるとは夢にも思わなかったでしょう。
私たちにとってはありがたいことですが。

この屛風対決のコーナーは微妙に展示替えがあるのでご注意を。
10月20日からは長谷川等伯 国宝《松林図屛風》(東京国立博物館)が登場します。

10月6日~10月18日
 狩野永徳 国宝《檜図屛風》、長谷川等伯 重要文化財《牧馬図屛風》
10月20日~11月1日
 狩野永徳 国宝《檜図屛風》、長谷川等伯 国宝《松林図屏風》
11月3日~11月29日
 狩野永徳 《唐獅子図屛風》、長谷川等伯 国宝《松林図屏風》

下の写真は、東京国立博物館が所蔵する高精細複製画の《松林図屛風》。
以前、本館で畳の上でろうそくと同じ明るさの中に展示されている時に撮影したものです。
長谷川等伯筆 国宝《松林図屛風》
安土桃山時代・16世紀 東京国立博物館蔵


見どころ2 狩野派の師弟の華麗な競演が見られる!


今回の展覧会の特徴は、屏風や障壁画といった大画面の作品が、広い平成館特別展示室の中にぎっしり展示されていること。見応え十分の展示です。

中でも、徳川の時代に移り、江戸に下った狩野探幽のあと京都で狩野派の基礎を築いた狩野山楽(1559-1635)と、山楽の弟子で、のちに養子となって京狩野を継いだ狩野山雪(1589/1590-1651)の襖絵の競演も見どころのひとつ。
E「桃山の成熟ー豪壮から瀟洒へ」のエリアに展示されています。

山楽の襖絵は、京都・大覚寺を飾る《紅梅図襖》と《牡丹図襖》。
この二つの襖絵は同じ襖の両面に描かれているので、ご覧のように敷居のついた展示ケースに入っていて、どちらの面も見られるようになっています。

うねるような梅の木の大胆さと、画面いっぱいに広がる紅梅の優雅さが感じられる《紅梅図襖》や、白い牡丹がまるで音符のようにリズミカルに舞う《牡丹図襖》。

狩野山楽筆 重要文化財《牡丹図襖》
江戸時代・17世紀
(京都・大覚寺) 通期展示



山雪の襖絵は、京都・妙心寺塔頭の天球院を飾る《籬に草花図襖》と《竹林虎図襖》。こちらも襖の両面に描かれているので、敷居のついた展示ケースに入っています。
山楽と山雪の襖が展示ケースに入って一直線に並んでいる様は壮観です。

垂直に描かれた竹の安定感と咆哮する虎の迫力の対比が見事な《竹林虎図襖》や、竹垣の壁のような安定感と草花の踊るような動きの対比が見事な《籬に草花図襖》。
狩野山雪筆 重要文化財《籬に草花図襖》
江戸時代・寛永8年(1631)
(京都・天球院) 通期展示



そして、勇壮な桃山文化の有終の美を飾るのにふさわしい、大胆にうねる松の巨木と獲物を狙った眼光鋭い鷹が描かれている、二条城を飾る狩野山楽の《松鷹図襖・壁貼付》。
G「泰平の世へー再編される権力の美」に展示されています。

狩野山楽筆 重要文化財《松鷹図襖・壁貼付》(部分)
江戸時代・寛永3年(1626)
京都市(元離宮二条城事務所) 通期展示



見どころ3 甲冑や刀剣、茶道具も充実!


桃山文化が花開いた時代は、江戸幕府が開かれて天下泰平の世になるまで戦いが絶えませんでした。屛風や障壁画だけでなく、優れた甲冑や刀剣もこの時代のシンボルなのです。
F「武将の装い-刀剣と甲冑」のエリアでは、有力な武将にゆかりの刀剣や甲冑が展示されています。

まるで後ろの《関ヶ原合戦図屛風》から飛び出してきたような甲冑群と刀剣。
合戦のときの法螺貝の音や鬨(とき)の声が聞こえてきそうな空間。このレイアウトは絶妙です。

F「武将の装い-刀剣と甲冑」展示風景



F「武将の装い-刀剣と甲冑」展示風景

《関ヶ原合戦屛風》は、徳川家康の愛蔵品で、前期は家康と家康の本陣が描かれた右隻、後期に本戦と西軍の敗走の様子が描かれた左隻が展示されます。

重要文化財《関ヶ原合戦図屛風》右隻
江戸時代・17世紀(大阪歴史博物館) 前期展示

豪華絢爛な桃山文化の中、「侘びの趣」を追求したのが千利休。

D「茶の湯の大成-利休から織部へ」展示風景

茶道具はD「茶の湯の大成-利休から織部へ」以外のエリアにも数多く展示されていますので、ぜひじっくりご覧になっていただきたいです。

こちらは、C「桃山前夜-戦国の美」に展示されている、上品な趣の青磁と茶入。

右 重要文化財《青磁筒花入 大内筒》
南宋時代・13世紀(東京・根津美術館) 前期展示 
左 《唐物瓢箪茶入 上杉瓢箪》
南宋~元時代・13~14世紀(京都・野村美術館)
 通期展示



展覧会オリジナルグッズも充実してます


第1会場と第2会場の間にある特別展のミュージアムショップでは、展覧会オリジナルグッズを販売中!どれも欲しくなるものばかりで、財布のひもがついゆるんでしまうかも。

屛風の大判絵はがき(200円+税)。専用の大判絵はがき用フレーム(1,500円+税)に入れて部屋に飾ることができます。


すっかりミュージアムグッズの定番になった絵入りマスキングテープ(500円+税)や、コロナ禍の今では必需品のマスクケース(500円+税)はじめ小物類も充実。


厚さ約3.5㎝、図版も多く解説も詳しい展覧会図録は税込3,000円。



お帰り前に撮影スポットで記念に一枚!


1階ラウンジには撮影スポットがあります。来館記念にぜひパチリ!

撮影スポット


こちらは2020年に制作された、狩野長信筆 国宝《花下遊楽図屛風》(東京国立博物館)の高精細複製画。関東大震災で失われた右隻中央部も見事に復元されています。
原品は会場内のE「桃山の成熟-豪壮から瀟洒へ」のエリアに通期で展示されています。

豪華絢爛な桃山文化の展覧会にふさわしい内容充実の展覧会です。
会期は10月6日(火)から11月29日(日)までですが、前期後期で展示替えや、細かな展示替えもあるので、出品目録をチェックして、お目当ての作品をぜひお楽しみください!

2020年10月20日火曜日

山梨県立美術館 特別展「クールベと海」

山梨県立美術館では11月3日(火・祝)まで特別展「クールベと海 フランス近代 自然へのまなざし」が開催されています。

今回の特別展は、全国各地の美術館のコレクションを中心に30点近くのクールベ作品、さらにターナーやブーダン、モネはじめ日本でもよく知られた画家たちが描いた海や海岸など、全部でおよそ70点の作品が一度に見られる、とても内容の充実した展覧会です。

山梨県立美術館外観


展覧会概要


会 場  山梨県立美術館(山梨県甲府市)
会 期  9月11日(金)~11月3日(火・祝)
開館時間 午前9:00~午後5:00(入館は午後4:30まで)
休館日  月曜日(11月2日は開館)
観覧料  一般 1,000円ほか
新型コロナウィルス感染症予防対策、展覧会の詳細は同館公式サイトでご確認ください⇒https://www.art-museum.pref.yamanashi.jp/


「クールベと海」チラシ(表と裏)

それではさっそく展示室内をご案内していきましょう。
※展示室内は撮影禁止です。掲載した写真は同館から提供いただいた広報用画像です。


甲府に国内のクールベ作品が大集結!



展示を見てはじめに驚いたのは、国内の美術館が所蔵するクールベ作品が質・量ともに充実していること。
地元・山梨県立美術館はもちろん、北は山形県の山寺後藤美術館から、国立西洋美術館、千葉県立美術館、茨城県近代美術館、西は島根県立美術館、ひろしま美術館、愛媛県美術館まで、国内各館のクールベ作品が大集結しているのです。

ギュスターヴ・クールベ《波》
1869年 愛媛県美術館蔵


コロナ禍の影響で、今では海外作品中心の展覧会の開催は難しく、国内の美術館といっても、アートを巡る旅というのも時にはいいのですが、さすがに全部の美術館を回っている時間はありません。

今回の特別展「クールベと海」のように、一人の画家、あるいは一つのテーマで、国内の美術館が所蔵する作品を集めた展覧会を開催してもらえるのは本当にありがたいことです。


岩のようにごつごつした波



クールベ(1819-1877)といえば「海」、うねるような「波」というイメージがあって、特別展のタイトルも「クールベと海」なのですが、実はクールベが生まれたのは、スイス国境に近いフランス西部の山や森に囲まれたフランシュ=コンテ地方の小さな町オルナン。
裕福な地主の家に生まれたクールベは、1840年に画家をめざしてパリに出て、その後、フランス北部のノルマンディーで初めて海を見たのです。

広々とした海原、ひゅーと吹き続ける風の音、絶え間なく続く波の音、そして潮の香り。

波は海岸に打ち寄せて消えてしまうものなのですが、クールベの波はモニュメントのようにがっちりして、岩のようにごつごつしています。クールベが初めて海を見た時の驚きや感動が作品から伝わってくるようです。


ギュスターヴ・クールベ《波》
1869年 ふくやま美術館蔵

エトルタの海岸を描いた作品では、夕日に映える海は穏やかですが、象の鼻のような岩ががっちりと描かれています。

ギュスターヴ・クールベ《エトルタ海岸、夕日》
1869年 新潟県立近代美術館・万代島美術館蔵

以前、モネが同じエトルタの景色を描いた作品を見たのですが、やはりモネらしく、おだやかな海岸の印象をもちました。

モネの描いた海の作品も2点展示されています。
社交の場としての海岸を、多くの人物を入れて描いたブーダンの作品などとあわせて、少し後の世代の画家たちが描いた海と比べられるのも今回の特別展の楽しみの一つです。

クロード・モネ《アンティーブ岬》
1888年 愛媛県美術館蔵


森や山、岩に囲まれたクールベの故郷



波や海だけでなく、クールベが故郷を描いた作品も多く展示されています。

中でも印象的だったのは、見る人を圧倒するような岩山、その下にひっそりとたたずむ集落、穏やか流れの小川。

ギュスターヴ・クールベ
《フランシュ=コンテの谷、オルナン付近》
1865年頃 茨城県近代美術館蔵

水車小屋や農場の景色、那智の滝を思わず想像してしまうような滝を描いた作品も展示されています。

まるでオルナンの町や周囲の自然の中を歩いているような気分が味わえる空間です。


クールベが描く雪景色、狩猟



「海」や「波」と並んでクールベ作品のイメージは「雪景色」と「狩猟」。
自分でも森の中で狩猟をして、獲物や厳しい自然と対峙したクールベならではの作品といえるでしょう。

ギュスターヴ・クールベ《雪の中の鹿のたたかい》
1868年頃 ひろしま美術館蔵

1855年に開催されたパリ万国博覧会に作品を送りつけたのに審査員によって出展を拒否され、それに怒ってわざわざ万博会場の向かいの建物を借りて個展を開いたクールベ。
1871年のパリ・コミューンに参加して、投獄されたのちにスイスに亡命してそこで客死したクールベ。
時代に反逆したクールベですが、描いた作品には自然に対する畏怖、尊敬のまなざしが感じられます。

特別展のキャッチコピーも「山国育ちの反逆児が出会った海」。
まさに山に囲まれた甲府の地で開催されるのにふさわしい展覧会。
残りの会期もわずかになってきましたが、11月3日(火・祝)の文化の日まで開催されていますので、ぜひご覧ください。


ミレー館はじめコレクション展も見逃せない!


山梨県立美術館といえば、《種をまく人》はじめジャン=フランソワ・ミレーのコレクションでよく知られています。

左 山梨県立美術館パンフレット
右 コレクション展観覧券



ミレーやバルビゾン派の作品が展示されているミレー館はじめコレクション展も充実の内容。
コレクション展のみの料金は一般520円ですが、特別展とセットになったお得なチケットがあります。

 ⇒ パスポート(コレクション展+特別展)  一般1,260円ほか

そしてテーマ展示室は、秋にちなんだ絵画が展示されていて、日本画のコーナーは「野口家コレクション」の後期展示(10/20-12/6)。

野口家とは、幕末から明治大正期に活躍した日本画家で、1904年に女性として初めて帝室技芸員を拝命した野口小蘋が嫁いだ先。
野口小蘋や師の日根対山はじめ、さすがに逸品ぞろいです。

コレクション展の作品リストは同館公式サイトからダウンロードできます⇒https://www.art-museum.pref.yamanashi.jp/

ミレーの《種をまく人》と《落ち穂拾い、夏》は海外での展示を好評のうちに終えて無事に帰国したところ。
せっかくの機会なのでぜひコレクション展もあわせてご覧ください。

2020年10月15日木曜日

京都国立博物館「御即位記念 特別展 皇室の名宝」

皇室ゆかりの地・京都にふさわしい展覧会「御即位記念 特別展 皇室の名宝」が、京都国立博物館 平成知新館で開催されています。




宮内庁三の丸尚蔵館が所蔵する名品の数々、天皇家伝来の御物、京都国立博物館の名品はじめ皇室が伝えてきた日本文化の粋が見られる展覧会。
これだけ多くの皇室の名宝が見られる機会はそう多くはないかもしれません。
ぜひご覧になっていただきた展覧会です。

【展覧会概要】

会 場  京都国立博物館 平成知新館(京都・東山七条)
会 期  2020年10月10日(土)~11月23日(月・祝)
 展示替:前期 10/10-11/1 後期 11/3-11/23
開館時間 午前9時30分~午後6時(入館は午後5時30分まで)
観覧料  一般 1800円ほか
※本展は、新型コロナウィルス感染症の感染予防・拡大予防のため、オンラインでの事前予約制(日時指定券)を導入しています。
詳細は展覧会公式サイトでご確認ください⇒https://meiho2020.jp/index.html
 


それではさっそく展示室内をご案内したいと思います。
※展示室内は撮影禁止です。掲載した写真は、報道内覧会で博物館より特別の許可をいただいて撮影したものです。

展示内容は大きく分けて2つの章で構成されています。

第一章 皇室につどう書画 三の丸尚蔵館の名宝

   皇居東御苑内にある三の丸尚蔵館の名宝と聞いて、多くの方が真っ先に思い浮かべるのは伊藤若冲《動植綵絵》30幅ではないでしょうか。
 そして、江戸後期京都画壇の巨匠・円山応挙の孔雀、教科書に出てくる《蒙古襲来絵詞》《春日権現験記絵》、そして古筆や中国の書画。
 第一章では、幅広い分野の名品を所蔵する三の丸尚蔵館の書画の逸品が展示されています(《花手桶形引手》(通期展示)のみ宮内庁京都事務所蔵)。 

第二章 御所をめぐる色とかたち

 第二章では、京都御所での生活の品々、即位の情景、描かれた天皇の姿、天皇の書、王朝物語などを通じて、天皇が日々をすごしていた空間、御所の後宮の女性たちが暮らしていた空間が、宮内庁三の丸尚蔵館はじめ、御物、京都国立博物館、京都の寺院ほかの名品で再現されています。
 長いあいだ都が置かれていた京都ならでの展示と言えるでしょう。


第一章 皇室につどう書画 三の丸尚蔵館の名宝


第一章展示は4つのエリアに分かれています。

 「筆跡のもつ力」
 「絵と紡ぐ物語」
 「唐絵へのあこがれ」
 「近世絵画百花繚乱」

※紹介した展示作品はすべて宮内庁三の丸尚蔵の所蔵です。

展示は3階の「筆跡のもつ力」のエリアから始まります。

タイトルにあるとおり、時空を超えて現代に伝えらえた、墨で書かれた文字の力をぜひ感じとっていただきたい逸品ばかり。

第一章「筆跡のもつ力」展示風景

冒頭を飾るのは、中国・東晋時代の4世紀に活躍した書聖・王羲之筆(搨本)の《喪乱帖》
後世の中国や日本に大きな影響を与えた王羲之の真筆はすべて失われ、のちの模写、拓本が残されています。この《喪乱帖》も唐時代に模写されたものなのですが、それも数が少なく、貴重なものなのです。

《喪乱帖》は前期展示。後期には、国宝の詫び状で知られた(国宝《離洛帖》東京・畠山記念館蔵)藤原佐理(944-998)の《恩命帖》が展示されます。
本人もまさか詫び状が後世に伝わるとは思わなかったでしょうが、おおらかな人柄がしのばれます。この《恩命帖》も詫び状のようですが、藤原佐理といえば、小野道風、藤原行成と並ぶ平安時代中期の「三蹟」の一人。達筆ぶりをぜひご覧ください。

続いて「絵と紡ぐ物語」のエリア。

ここには、《蒙古襲来絵詞》はじめ絵巻物が展示されています。
日本史教科書の元寇のページに必ずと言っていいほど出てくる場面も出てきます(《蒙古襲来絵詞》は、前期に前巻、後期に後巻が展示されます)。

    
(展覧会チラシは公式サイトからダウンロードできます。)

そして、同じく鎌倉時代に制作されて、一巻も欠けることなく現代に残されている貴重な絵巻《春日権現験記絵》(絵 高階隆兼筆、詞書 鷹司基忠ほか筆)20巻のうち、6巻および目録が前期後期で展示されます。

とても700年以上も前に描かれたとは思えない色のあざやかさをご覧ください。「絵と紡ぐ物語」のエリアは2階にも続きます。
2階の1部屋を占めるのは、岩佐又兵衛《小栗判官絵巻》(15巻のうち3巻が前期後期で1巻半ずつ展示)、尾形光琳《西行物語絵巻》(4巻のうち2巻が前期後期で1巻ずつ展示)。


次に「唐絵へのあこがれ」のエリアに移ります。

第一章「唐絵へのあこがれ」展示風景


墨の濃淡だけで描かれた竹や梅、浮かび上がってくるような鮮やかな色の牡丹、表情豊かな羅漢さんたち。日本の絵師や文人たちがあこがれた中国絵画の名品が勢ぞろいしています。

国宝《観音猿鶴図》(京都・大徳寺蔵)の作者で、日本で特に人気のあった中国・南宋末元初の画僧、牧谿の作と伝わる作品も展示されています。
この伝牧谿《蘿蔔蕪菁図》は、土から掘り出された大根と菜が描かれた二幅。画面の横に描かれた賛とともに室町時代の禅宗の人たちが大根と菜にどのような意味合いをもたせたのか、想像してみるのも楽しいかもしれません。

前期は9~15世紀(唐~五代時代から元~明時代)の中国絵画7点、後期は14~18世紀(元~清時代)の中国絵画7点と朝鮮絵画1点の計8点で、総入れ替えになります。
明清時代の水墨の山水や青緑山水、それに明代の書画の大家で、その後の中国書画に大きな影響を与えた董其昌の金箋の上に墨で描かれた《書画合冊》が出てくるので、中国絵画ファン(私もその一人です)にとっては後期も見逃せません。

続いて広々とした平成知新館の展示室を3つ使って繰り広げられる、近世京都画壇で活躍した絵師たちの「近世絵画百花繚乱」のエリアに移ります。

最初の展示室と次の展示室は、絢爛豪華な屏風の競演。
屏風も前期後期で総入れ替えですので、できれば全部ご覧いただきたいです。

絵師の顔ぶれも豪華。

狩野一門の棟梁として織田信長や豊臣秀吉に仕えた桃山の巨匠・狩野永徳の作と伝わる《四季花鳥図屏風》(前期展示)、《源氏物語図屏風》(後期展示)。
あの有名な国宝《風神雷神図屛風》(京都・建仁寺蔵)の作者で、「琳派の祖」俵屋宗達《扇面散図屏風》(後期展示)。
狩野派に学び、その後、独自の画風を確立した海北友松《浜松図屏風》(前期展示)、《網干図屏風》(後期展示)(海北友松も建仁寺蔵の重要文化財《雲龍図》がよく知られています)。

はじめ狩野派に学び、のちに尾形光琳に学んだ江戸時代中期の京都の絵師・渡辺始興《四季図屏風》(前期展示)。
京都ゆかりの絵師たちの屏風の名品がずらりと展示されています。

江戸を拠点にした狩野探幽狩野常信の屏風も展示されていますが、二人とも京都に上り、それぞれ二条城、紫宸殿に障壁画を描いているので、京都にゆかりのある絵師と言ってもよいでしょう。

そしていよいよ「近世絵画百花繚乱」の最後の部屋は伊藤若冲《動植綵絵》登場!
今回展示されるのは全30幅のうち、鶏、鴛鴦、鳳凰はじめ鳥が描かれた8幅(前期後期で4幅)。
競演するのは江戸中期京都画壇の巨匠、円山応挙《牡丹孔雀図》(前期展示)。
まさに「花鳥の楽園」です!


第一章「近世絵画百花繚乱」展示風景


第一章「近世絵画百花繚乱」展示風景

後期には伊藤若冲《旭日鳳凰図》が展示されるので、こちらも楽しみです。


第二章 御所をめぐる色とかたち



第二章も4つのエリアに分かれています。

 「即位の風景」
 「漢に学び和をうみだす」
 「天皇の姿と風雅」
 「王朝物語の舞台」


「即位の風景」のエリアに展示されているのは、天皇即位の様子や、即位にともなう大嘗祭の後の饗宴で飾られていた土佐光貞・光時《天明度 主基方本文屏風》2帖(京都国立博物館蔵 前期後期で1帖ずつ展示)、天皇が即位礼で着用した礼服(らいふく)と冕冠(べんかん)などが展示されています(礼服と冕冠は御物)。

この展示室は、即位礼の様子が描かれた屏風とあわせて、まさに即位の風景が再現されている空間です。

「京都国立博物館だより」2020年10・11・12月号
展覧会の概要がコンパクトに紹介されています。


続いて「漢に学び和をうみだす」に展示されているのは、私たちになじみのある『万葉集』『和漢朗詠集』『古今和歌集』はじめ、天皇家に伝わる「和様の書」の逸品。

第二章「漢に学び和をうみだす」展示風景

漢文から、やわらかな和風の書体に移ってきた平安時代の書の見どころは、文字の流麗さはもちろん、料紙装飾のきらびやかさ。文字も料紙もあわせてお楽しみください。

第一章で紹介した藤原佐理と並ぶ平安時代中期の「三蹟」の二人、小野道風《屏風土佐》(後期展示)、藤原行成筆と伝わる《雲紙本和漢朗詠集 巻上》(前期後期で巻替)、《大江切本古今和歌集》(前期展示)(いずれも宮内庁三の丸尚蔵館蔵)も展示されるので、三人の書を見比べることができます。


「天皇の姿と風雅」のエリアでは、天皇の肖像、天皇の筆跡「宸翰」、天皇が研鑽を積んだ書道や和歌、音楽といった学問に関する名品から天皇の日々の姿が浮かび上がってきます。

第二章「天皇の姿と風雅」展示風景


展覧会のフィナーレを飾るのは、みやびやかな「王朝物語の舞台」
王朝文学を代表する『源氏物語』や、御所の中でも中宮や有力な女御が住まう「飛香舎」に飾られていた襖絵や調度品が展示されていて、当時の御所での生活の様子を思い描くことができます。
第二章「王朝物語の舞台」展示風景



展覧会オリジナルグッズも充実してます!

展覧会公式図録は約100件の出品作品すべてカラー図版で掲載、伊藤若冲《動植綵絵》は1ページ1点で紹介、解説も詳しくて丁寧ですので来館記念にぜひ!(税込 2,800円)。



展覧会出品作品をデザインした一筆箋3種類(税込550円)、マスキングテープ3種類(税込550円)など展覧会オリジナルグッズも盛りだくさん。お帰りにはぜひ1階ミュージアムショップにお立ち寄りください。


これだけの名品がそろった展覧会も会期はわずか6週間。
そのうえ、前期後期それぞれ3週間で多くの作品が展示替えになるので、いつか行こうと思っていては見逃してしまいます。
今から予定を立てて、名品の数々をご覧になっていただければと思います。

2020年10月7日水曜日

藝大コレクション展2020-藝大年代記(クロニクル)

 東京上野公園の東京藝術大学大学美術館では、9月26日(土)から「藝大コレクション展2020-藝大年代記(クロニクル)」が開催されています。

毎年楽しみにしている展覧会なので、コロナ禍の影響で開催が延期されたときはショックを受けたのですが、この秋めでたく開催されることになりました。
そこで先日さっそく行ってきましたので、展覧会の様子をレポートしたいと思います。

今年のテーマは、前身の東京美術学校から現在の東京藝術大学までの130年以上の歴史を所蔵作品で綴る「藝大年代記(クロニクル)」。
よりすぐりのコレクションと、卒業生の自画像や卒業制作で日本近代美術の足跡をたどることができる、とても内容の濃い展覧会です。

【展覧会概要】

会 期  9月26日(土)~10月25日(日)
開館時間 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日  月曜日
観覧料  一般 440円ほか
展覧会の詳細や新型コロナウィルス感染防止対策は公式サイトでご確認ください⇒

※館内は撮影禁止です。掲載した写真は取材時に美術館の特別の許可をいただいて撮影したものです。
※取材では、同美術館の熊澤弘准教授に展覧会の趣旨及び作品の解説をしていただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。

展示は、所蔵作品がほぼ年代順に展示されている 第1部 「日本美術」を創る と、
自画像と卒業制作がメインの 第2部 自画像をめぐる冒険 の2部構成になっています。

見どころいっぱいのコレクション展なので、今回は特に注目ポイントを三つに絞って紹介したいと思います。

見どころ1   教科書や切手で見たことがある日本近代美術の作品に会える!
見どころ2 藝大の歴史を収蔵年代順にたどることができる!
見どころ3 卒業生たちの個性あふれる自画像がずらり!



見どころ1 教科書や切手で見たことがある日本近代美術の作品に会える!


第1部会場入口では高橋由一の《鮭》がお出迎え。

第1部イントロダクション
中央が高橋由一《鮭》(重要文化財)明治10年頃(c.1877)、
左は原田直次郎《靴屋の親爺》(重要文化財)明治19年(1886) 
右は黒田清輝《婦人像(厨房)》明治25年(1892)


《鮭》は、日本史教科書に必ずといっていいほど出てくるので、ご記憶のある方も多いのではないでしょうか。
切り身を一部切取られ紐にぶら下がった鮭を子どもの頃に見たときの印象がとても強く、私の頭の中には「鮭=近代日本美術」という図式がしっかりインプットされているのです。
作者は写実的な画風を追求した日本西洋絵画界のパイオニアともいえる高橋由一。
ぜひこの機会に目の前で鮭の質感をご覧になってください。

そして、やはり子どもの頃、切手の図柄で知っていた上村松園《序の舞》。
京都画壇の美人画の第一人者、上村松園が描いたこの作品も展示されています。

上村松園《序の舞》(重要文化財)
昭和11年(1936)

この作品は2年前に同じく東京藝術大学大学美術館で開催された「東西美人画の名作《序の舞》への系譜」展で修理後初めて一般公開された時に見たのですが、髪の生え際の細かな表現や着物のあでやかな色合いが見事によみがえっていますので、こちらもぜひ目の前で見ていただきたい作品です。

ところで、切手コレクターの方はもうご存じかと思いますが、10月16日に日本郵便から発行される特殊切手「美術の世界シリーズ 第2集」に、《鮭》、《序の舞》が84円郵便切手、洋画家・和田英作の《渡頭の夕暮》が63円郵便切手の題材として選ばれているのです!


和田英作《渡頭の夕暮》も第2部で展示されています。
一日の仕事を終えて、川べりで対岸を眺める一家と川面に浮かぶ夕陽。スーッとその場に入っていけそうな光景が描かれている逸品です。

第2部の卒業制作のコーナー
中央が和田英作《渡頭の夕暮》明治30年(1897)
右は横山大観《村童観猿翁》明治26年(1893)
左が近藤浩一路《京橋》明治43年(1910)

切手が発売される前に実物を見るか、切手が発売されてから実物を見に行くか。
いずれにしてもぜひその場で実物をご覧になっていただきたい作品です。

見逃せない作品ばかりなのですが、やはり狩野芳崖《悲母観音》も見逃すわけにはいきません。

狩野芳崖《悲母観音》(重要文化財)
明治21年(1888)

狩野芳崖(1828-1888)は、橋本雅邦(1835-1908)と並ぶ明治期の近代日本画界のスーパースター。
東京美術学校の創立に尽力しましたが、開校前に惜しくも亡くなり、最後の力を振り絞って描いたのがこの名作《悲母観音》。
昨年のコレクション展以来の再会です。

正面に立って見上げると、赤子に優しく微笑みかえる観音様。
思わず手を合わせたくなる作品です。

《悲母観音》も私の手元にある『詳説 日本史図録』(第6版)(山川出版社 2015年)の近代日本美術紹介のページ(P245-246)に高橋由一《鮭》、和田英作《渡頭の夕暮》や、今回は展示されていませんが、浅井忠《収穫》、赤松麟作《夜汽車》とともに掲載されているので、受験生のみなさんは一度は見たことがある作品かもしれません。

見どころ2 藝大の歴史を収蔵年代順にたどることができる!

 

今回の展覧会は「所蔵作品で東京美術学校と東京藝術大学の年表をつくりたい。」(熊澤弘准教授)とのコンセプトで構成された「藝大年代記(クロニクル)」。
第1部では、学生たちの美術活動に必要な参考資料としての収蔵作品がほぼ年代順に展示されているので、会場内を巡りながら、藝大の歴史をたどることができます。

第1章 1889年 東京美術学校と最初期のコレクション 


1889年(明治22年)は東京美術学校が開校された年。
開校に際して、学生が入る前から教材としての美術品の収集に尽力したのが、初代校長を務めた岡倉天心。

この方が天心です(下の写真一番右)。
            ↓
第1章展示風景
右から下村観山《天心岡倉先生(草稿)》大正11年(1922)
中央の二幅が《羅漢図》(重要文化財)南宋時代(13世紀)
左が《阿弥陀三尊来迎図》鎌倉時代(13世紀後半)

天心には「本邦古来の美術を」との考えがあったので、登場する仏さんや人物のなごみ系のお顔にホッとさせられる国宝《絵因果経》(下の写真)や、上の写真の《羅漢図》《阿弥陀三尊来迎図》といった古美術も含まれていたのです。

《絵因果経》(国宝)天平時代(8世紀後半)


第2章 1896年 黒田清輝と西洋画科


1896年(明治29年)は東京美術学校に西洋画科と図案科が新設された年。

第2章展示風景
左から原作:ベルナルディーノ・ルイーニ 模写:久米桂一郎
《小児と葡萄》明治25年(1892)、
久米桂一郎《寒林枯葉》明治24年(1891)
山本芳翠《西洋婦人図》明治15年(1882)

久米桂一郎(1866-1934)は、黒田清輝(1866-1924)と同じくフランス留学を経験し、ともに西洋画科を主導した人。
山本芳翠(1850-1906)もフランス留学を経験した明治期を代表する洋画家。
イントロダクションで展示されている、黒田清輝が収集した高橋由一《鮭》、原田直次郎《靴屋の親爺》や自身の《婦人像(厨房)》とともに、まさに「西洋画科の最初の教材」がここに展示されているのです。

谷文晁コレクション


今回初めて知ったのですが、東京藝術大学大学美術館では、江戸後期の文人画家・谷文晁(1763-1841)に関する作品・資料が計57件所蔵されているとのこと。
今回は4点の絵画が展示されていて、そのうちの2点が、中国絵画(下の写真右)と国宝「信貴山縁起絵巻」の模写《志貴山縁起 上》。
狩野派や土佐派、中国絵画や西洋絵画の手法も取り入れて独自の画風を創出した、研究熱心な谷文晁が一生懸命模写をしている姿が思い浮かんできそうです。
今後のコレクション展で谷文晁の特集が組まれるのを期待してしまいます。

右から、模写:谷文晁《夏谿新晴図》寛政11年(1799)
谷文晁《韓信》文政3年(1820)
原作:谷文晁 模写:柳月斎《芦葉達磨》
(文政4年(1821)原作、天保5年(1834)模本制作)


第3章 美校の素描コレクション


この章には、明治9年(1876)から明治16年(1883)まで存続した日本最初の官立美術学校、工部美術学校から東京美術学校が受け入れた素描コレクションが展示されています。

絵画教師としてイタリアから招聘されたフォンタネージの作品や、
第3章展示風景

素描を重視したフォンタネージの指導のもと工部美術学校で学び、その後洋画家として活躍する浅井忠、松岡寿、五姓田義松らの生徒時代の作品から、明治初期の美術教育のあり方が伝わってくるようです。
第3章展示風景


第4章 1900年 パリ万博と東京美術学校


1900年(明治33年)はパリ万国博覧会が開催された年。
東京美術学校は積極的に作品を出品しましたが、当時はアールヌーヴォーの全盛期。
賞を得た作品もありましたが、全体的な評価はあまり芳しくなく、関係者たちは落胆したそうです。
同じくこの章に展示されているアールヌーヴォー調のポスターと比較すると派手さはないかもしれませんが、素朴な日本の原風景を見ているようで、何となく懐かしさを感じるいい作品が展示されています。

第4章展示風景
左から、藤島武二《池畔納涼》明治31年(1898)、
広瀬勝平《磯》明治31年頃(c.1898)、
結城素明《兵車行》明治30年(1897)


第5章 1931年 官展出品・政府買上作品

1931年(昭和6年)は、官展に出品後、政府が買い上げした作品の東京美術学校への移管が始まった年。
移管は、同年の第12回帝展から1946年(昭和21年)の第2回日展まで続き、現在、東京藝術大学は日本画、彫刻、版画合わせて43点を収蔵しているとのことです。
第5章展示風景
右 上村松園《序の舞》(重要文化財)昭和11年(1936)、
左 小林古径《不動》昭和15年(1940)

上村松園《序の舞》は、昭和11年(1936)の文展に出品された作品。
京都画壇の上村松園は東京美術学校とは縁がなかったのですが、この作品が東京藝術大学の所蔵になった背景には、官展出品・政府買上→移管といういきさつがあったことを初めて知りました。
神武天皇即位から2600年にあたる昭和15年(1940)に開催された紀元2600年奉祝美術展に出品されて東京美術学校に移管された作品は、上の写真の小林古径《不動》のほか、前田青邨《阿修羅》、鏑木清方《一葉》が展示されています。


見どころ3 卒業生たちの個性あふれる自画像がずらり!



今回の展示のすごいところは、卒業制作の一環として制作された卒業生たちの自画像約100点がずらりと展示されていること。


第2部イントロダクション
左から、白滝幾之助、青木繁、李叔同/李岸、中村萬平の《自画像》


どうでしょうか、この景色。何しろ壮観です。
顔が正面を向いていたり、少し斜に構えていたりさまざまですが、誰もがいい表情をしていて、画風もそれぞれの画家の個性が出ています。

第2部自画像をめぐる冒険 展示風景


お気に入りの画家の自画像が見つかるかもしれません。ぜひ一つひとつの《自画像》をじっくりご覧になっていただきたいです。

明治31年(1898)卒業の北蓮蔵、白滝幾之助の2点の自画像から始まった西洋画科の自画像は、中断した時期もありましたが、その後、日本画科、彫刻科、工芸科が加わり、現在でも自画像の納入と所蔵が続けられています。

「自画像」といっても絵だけではありません。中には映像の自画像といった変わり種も。

作者は、今をときめく現代美術家の宮島達男。
昭和59年(1984)に制作されたものなのでDVDではなくビデオテープに収録されているのですが、展示されているビデオテープを見て妙に懐かしさを感じました。
映像は会場内で上映されているので、ぜひこちらもご覧になってください。


展覧会パンフレットも充実!


そして、第1部入口に作品リストと一緒に置いてあるのが、今回の展覧会のパンフレット。



全14ページでオールカラー。展示作品の図版も多く、各章ごとの分かりやすい解説もあって、まるでミニ図録。制作された皆さんの熱意が伝わってきます。それに何と無料!
お一人様一部です(なくなり次第終了)。ぜひお手に取って、会場内を巡っていただければと思います。

間違いなくこの秋おススメの展覧会。
会期は1ヶ月、10月25日(日)までです。
ぜひ上野公園の東京藝術大学大学美術館までお越しになってください!