東京国立博物館 平成館では、聖徳太子1400年遠忌記念 特別展「聖徳太子と法隆寺」が開催されています。
冠位十二階や「和を以て貴しとなす」で知られる憲法十七条の制定、遣隋使の派遣、仏教を奨励して奈良・法隆寺の建立など、飛鳥時代に日本の基礎を築いた聖徳太子は、最も有名で、私たちにとって最も身近に感じられる歴史上の人物の一人ではないでしょうか。
その聖徳太子の展覧会が奈良国立博物館(4月27日~6月20日 終了)に続き、いよいよ東京国立博物館で始まりました。
展覧会概要
展覧会名 聖徳太子1400年遠忌記念 特別展「聖徳太子と法隆寺」
会 場 東京国立博物館 平成館
会 期 2021年7月13日(火)~9月5日(日)
※会期中、一部の作品は展示替を行います。
主な展示期間 前期 7/13-8/9 後期 8/11-9/5
開館時間 午前9時30分~午後5時
休館日 月曜日(ただし、8/9は開館し、8/10(火)は休館)
観覧料 一般 2,100円ほか
※本展は事前予約制です。詳細は展覧会公式サイトをご確認ください⇒特別展「聖徳太子と法隆寺」
※展示室内は撮影禁止です。掲載した写真は、報道内覧会で主催者より特別の許可をいただいて撮影したものです。
展示は5つのエリアで構成されています。
第1会場 A 聖徳太子と仏法興隆
B 法隆寺の創建
C 聖徳太子と仏の姿
第2会場 D 法隆寺東院とその宝物
E 法隆寺金堂と五重塔
今回の展覧会は、普段は見ることのできない国宝の秘仏にお会いできたり、法隆寺の東院や金堂の内部に入ったような雰囲気が体験できるなど、聖徳太子遠忌1400年記念ならではの盛りだくさんの内容が楽しめる、またとない機会です。
それではさっそく会場内に入ってみることにしましょう。
見どころ1 聖徳太子のさまざまなお姿が見られます。
第1会場では、さまざまなお姿の聖徳太子や、創建当時の法隆寺の様子がうかがえる逸品が展示されています。
第1会場入口でお出迎えしてくれるのは、優しいお顔で優雅なポーズをとる「如意輪観音菩薩半跏像」(奈良・法隆寺蔵 重要文化財)。
重要文化財「如意輪観音菩薩半跏像」平安時代(11~12世紀) 奈良・法隆寺 全期間展示 |
なぜ平安時代の観音様が、と思われるかもしれませんが、平安時代には聖徳太子を観音様の化身とする信仰が広まったので、この観音様も聖徳太子のお姿なのです。
続いて第1会場のAエリアへ。
第1会場A「聖徳太子と仏法興隆」 展示風景 |
聖徳太子の時代には、「異国の宗教」であった仏教を受容するかどうかの対立がありましたが、崇仏派の太子や蘇我馬子らは排仏派の物部守屋を破り、以降、仏教が日本国内に広まりました。
このエリアには、主に仏教興隆当時が偲ばれる仏像、仏具が展示されています。
聖徳太子といえば、やはりこのお顔。
日本史の教科書やお札でおなじみの聖徳太子の肖像を見つけました!
第1会場Bエリアのテーマは「法隆寺の創建」。
一番の見どころは、聖徳太子の没後、「天寿国」に往生した太子の姿を見たいという、妃の橘大郎女の願いを受けて作られた刺繍の帷(とばり)、国宝「天寿国繍帳」。
およそ1400年の時を超えて鮮やかに残る色合いをぜひご覧いただきたいです。
今回は特に音声ガイドがおススメです。ナビゲーターは女優の杏さん、解説ナレーターは、声優の三宅健太さん。(貸出料金:お一人様1台600円(税込))
わかりやすい解説はもちろんのこと、音声だけでなく画面には灌頂幡の再現の様子も出てくるので、創建当時のきらびやかな様子を想像することができます。
幡とは仏教儀礼で用いる旗で、特に天蓋を伴ったものは灌頂幡を指すとのことです。
下の写真は天蓋。その下の写真の幡身の上に天蓋がついて、高くそびえたつ様子はさぞかし壮観だったことでしょう。
こちらは「大幡の幡身」。見事な透彫にも注目です。
飛鳥時代の異国情緒あふれる逸品も展示されています。
下の写真右、国宝「竜首水瓶」の注ぎ口は竜頭で、胴部には有翼馬(ペガサス)が彫られているので、ぜひお近くでご覧ください。
近年では日本製とみなす説があるとのことですが、エキゾチックな趣が感じられます。
第1展示室Cエリアのテーマは「聖徳太子と仏の姿」。
国宝「聖徳太子および侍者像」は、今から900年前、聖徳太子の五百年遠忌にあたり制作された法隆寺聖霊院の秘仏本尊。
中央の像が聖徳太子なのですが、瞳の部分には青緑色の薄いガラス板が嵌め込まれていて、威厳のあるとてもリアルな表情をしています。かつてはまつ毛も植えられていたとのことです。
27年ぶりの寺外公開なので、ぜひお近くで太子様の真剣なまなざしに注目していただきたいです。
聖徳太子は、推古天皇の求めによって勝鬘経の講義を行ったという伝記が残されていますが、その場面を描いたのが「聖徳太子勝鬘経講讃図」。
蘇我馬子や、遣隋使で隋に派遣された小野妹子の姿も見られます。
「聖徳太子勝鬘経講讃図」鎌倉時代 文歴2年(1235)頃 奈良・法隆寺 前期展示 |
見どころ2 法隆寺伽藍の内部に入った雰囲気が感じられます。
第2会場には、法隆寺伽藍の東院、金堂、五重塔にゆかりの仏像や宝物が展示されています。
Dエリアは「法隆寺東院とその宝物」。
第2会場D「法隆寺東院とその宝物」 展示風景 |
中央には、太子が数え2歳の2月15日、東に向かって手を合わせ「南無仏」と称えたという伝承に基づいて制作された「聖徳太子立像(二歳像)」。この時、掌から釈迦の遺骨がこぼれ落ちたと伝えられ、それが納められているのが左の「南無仏舎利」。
後方にはかつて舎利殿内壁を飾っていた障子絵(現在は屛風に改装(※)、一部パネル展示あり)が展示されているので、東院舎利殿内陣のかつての姿をこの場で体験することができるのです。
(※)重要文化財「文王呂尚・商山四皓図屛風」南北朝時代(14世紀) 東京国立博物館(法隆寺献納宝物) 前期「文王呂尚図」後期「商山四皓図」
右 「聖徳太子立像(二歳像)」鎌倉時代(13~14世紀) 左 「南無仏舎利」[舎利塔]南北朝時代 貞和3~4年(1347-48) [舎利据箱]鎌倉時代(13世紀) いずれも奈良・法隆寺 全期間展示 |
Eエリア「法隆寺金堂と五重塔」に入ると、見上げるほど大きな四天王様が見えてきました。
ここからは金堂ゆかりの仏像をご紹介していきます。
第2展示室E「法隆寺金堂と五重塔」 展示風景 |
飛鳥時代の四天王立像のうち、今回東京までお出ましいただいたのは、多聞天と広目天(下の写真右から)。
現存する日本最古の四天王像ですが、後に見られるように怖い表情というより、どちらかというと穏やかな表情を浮かべていて、1400年の長きにわたり踏みつけられている邪鬼も憎めない表情をしています。
右 国宝「四天王立像 多聞天」 左 国宝「四天王立像 広目天」 いずれも飛鳥時代(7世紀) 奈良・法隆寺 全期間展示 |
続いて、四天王立像と同じく法隆寺金堂の須弥壇上に安置されている国宝「薬師如来坐像」(飛鳥時代(7世紀) 奈良・法隆寺 全期間展示)(下の写真中央)。
展示室E「法隆寺金堂と五重塔」 展示風景 |
そしてラストは、かつては金堂に安置されていた国宝「伝橘夫人念持仏厨子」。
国宝「伝橘夫人念持仏厨子」 飛鳥時代(7~8世紀) 奈良・法隆寺 全期間展示 |
金堂ゆかりの仏像がこれだけゆったりした空間で間近に見られる機会はそう多くはないでしょう。
この厳かな空間をぜひご覧いただきたいです。
東京国立博物館 東洋館地下1階では、ヴァーチャルリアリティで金堂内の仏像や壁画をすべてご覧いただくことができるVR作品が上映されています。特別展とあわせてぜひご覧ください。
上映のご案内はこちらです⇒VR作品『法隆寺 国宝 金堂ー聖徳太子のこころ』
また、昨年(2020年)、コロナ禍の中、残念ながら中止になった特別展「法隆寺金堂壁画と百済観音」で、東京までお越しいただいたのに公開されることなく奈良に帰られた国宝「百済観音」と、同じく国宝の救世観音を3DGCでご覧いただくことができます。
場所は平成館1階です。こちらもぜひお立ち寄りください。
展覧会オリジナルグッズも盛りだくさん。
私のおススメは、カラー図版も解説も充実している展覧会公式図録。
おうちでもぜひ特別展「聖徳太子と法隆寺」をお楽しみください!