2021年7月2日金曜日

東京国立博物館 特別展「国宝 聖林寺十一面観音 ー三輪山信仰のみほとけ」 

6月22日(火)から東京国立博物館 本館特別5室で特別展「国宝 聖林寺十一面観音 ー三輪山信仰のみほとけ」が始まっています。
開幕以来、多くの方が訪れ、すでに話題沸騰の展覧会ですが、それもそのはず。
「日本彫刻の最高傑作」といわれる国宝の十一面観音菩薩さまを間近に拝むことができるのですから、間違いなく今年見逃してはならない展覧会の一つなのです。



展覧会概要


展覧会名 特別展「国宝 聖林寺十一面観音 ー三輪山信仰のみほとけ」
会 期  2021年6月22日(火)~9月12日(日) 
開館時間 午前9時30分~午後5時
休館日  月曜日(ただし、8月9日(振休)は開館)
会 場  東京国立博物館 本館特別5室
※本展は事前予約制(日時指定券)です。詳細は展覧会公式サイトをご確認ください。
※本展覧会は、2022年2月5日(土)~3月27日(日)に、奈良国立博物館 東新館に巡回予定です。

※展示室内は撮影不可です。掲載した写真は内覧会で主催者より許可をいただき撮影したものです。

それではさっそく展覧会の見どころを紹介したいと思います。

雄大な三輪山と大神神社の三ツ鳥居を背景に観音さまが拝めます!


展示室に入ると、背景に見えてくるのは、雄大な三輪山と大神神社の三ツ鳥居。
その前には堂々としたお姿の国宝「十一面観音菩薩立像」(聖林寺蔵)。

まさかこのように見事なレイアウトの中で、十一面観音さまを拝むことができるとは想像していませんでした。
展示室内は、緑たたえた山々に囲まれた奈良盆地の雰囲気そのもの。


国宝 十一面観音菩薩立像
奈良時代・8世紀
奈良・聖林寺蔵

この十一面観音菩薩さまは、江戸時代まで三輪山の麓の大神神社の神宮寺であった大御輪寺(旧大神寺)の御本尊でしたが、明治に入ってからの神仏分離で、同じく奈良盆地の南部、桜井市の聖林寺に移されたので、まるで三輪山のふもとに「里帰り」したかのようです。

もちろん仏様は本堂にまつられていたので、このような場面は見られなかったでしょうが、それにしてもまさにその場にいるような雰囲気が感じられます。

そして、観音さまの頭の上の、あらゆる方向を見渡す八面(三面は亡失)のお顔も、360度ぐるっと回って見ることができるので、慈悲深い表情をした面や怒っているかのような表情など、それぞれの面の表情の違いをご覧いただくことができます。

国宝 十一面観音菩薩立像(部分)
奈良時代・8世紀
奈良・聖林寺蔵


みほとけさまが約150年ぶりに感動の再会!


展示室内のレイアウトを見て、すっかり感動にひたっていたところですが、今回の展示にはさらに感動の物語が隠されているのです。

大御輪寺には多くの仏像がまつられていましたが、明治時代の神仏分離でそれらの仏像は近隣の寺に移されました。

聖徳太子ゆかりの奈良・法隆寺からは、国宝「地蔵菩薩立像」。
明治元年(1868年)に聖林寺に移されたのですが、その5年後にさらに法隆寺に移ったとのこと。十一面観音さまとは、まさに約150年ぶりの再会。
とても優しいお顔に、心がなごんできます。

国宝 地蔵菩薩立像
平安時代・9世紀
奈良・法隆寺蔵

奈良市東南の山あいにある正暦寺からは、「日光菩薩立像」「月光菩薩立像」。
国宝「地蔵菩薩立像」と並んで展示されていて、やはり約150年ぶりの再会です。
下の写真右がふくよかなお顔の「日光菩薩立像」、左がりりしいお顔の「月光菩薩立像」。

それぞれ特徴がありますが、どちらもの菩薩さんもいい表情をしています。

右 日光菩薩立像 左 月光菩薩立像
いずれも平安時代・10~11世紀
奈良・正暦寺蔵



自然信仰の姿を今に伝える大神神社の珍しい品々も公開!



こちらは、大神神社の広大な景観が描かれた「三輪山絵図」(室町時代・16世紀 奈良・大神神社蔵。8月1日までの展示。8月3日からは江戸時代に描かれた「三輪山絵図」が展示されます)。

大きな画面の上部には、ご神体の三輪山。
山のふもとには大神神社の拝殿と三ツ鳥居、さらには神仏習合の時代らしく、摂社や寺院が画面いっぱいに描かれています。
そして、画面中央左には国宝「十一面観音菩薩立像」をはじめ多くの仏像がまつられていた大御輪寺も見えます。


三輪山絵図 室町時代・16世紀
奈良・大神神社蔵
8月1日(日)までの展示


大神神社のご神体は三輪山なので本殿はありません。
拝殿の奥にある三ツ鳥居の先は、人の立ち入りができない神聖な場所「禁足地」。

その禁足地からは、勾玉(まがたま)や、坏(つき)、坩(つぼ)をはじめとした土製品ほか、古墳時代に祭祀に用いたものが出土され、この地が古くから神聖な場所であったことがうかがえます。
(下の写真中央から左が大神神社蔵、右奥が東京国立博物館蔵です。)

三輪山禁足地出土品ほかの展示風景
古墳時代(4~6世紀)

今回の展覧会では、大きな仏さまだけでなく、小さな展示品の細部に注目すると興味深い発見があるかもしれません。

縦長に整形した木板に書き写された仏典「柿経(こけらきょう)」。
お経の下には小さな地蔵菩薩さまが描かれています。

そして、この「杮経」は、大神神社の摂社・大直禰子神社社殿の天井裏から発見されたもので、神仏分離前、この社殿は、なんと大御輪寺の本堂!
この杮経も十一面観音菩薩さまと約150年ぶりの再会だったのです。

右 柿経 左 五輪塔墨描枌
いずれも鎌倉~南北朝時代・13~14世紀
奈良・大神神社蔵

最後にご紹介するのは、ちょっとこわい表情をした大黒様。
大黒様といえば、米俵の上に立って、打ち出の小槌を手に、にこやかな笑みを浮かべている七福神のイメージがありますが、もとはヒンドゥー教の破壊神・シバ神。
このこわい表情はシバ神の名残をとどめているからなのかもしれません。

大国主大神立像
平安時代・12世紀
奈良・大神神社蔵

そして、大黒天の姿をした大国主大神は、大神神社にゆかりの神様なのです。
『古事記』には、大神神社のご祭神・大物主大神は、大国主大神の国造りを助けるために、三輪山に自身をまつらせたといういわれがあります。


展覧会オリジナルグッズも充実!


展覧会に来て、やはり気になるのが展覧会オリジナルグッズ。
Tシャツ(税込3,000円)、トートバッグ(税込1,000円)をはじめ、来館の記念になるものばかりが勢ぞろい。





ジオラマ好きの私のおススメは、その名もずばり「国宝 聖林寺十一面観音 アクリルジオラマ」(税込880円)。りりしい観音さまのお姿がすくっと立つようになっています。
ぜひお部屋に飾ってみてはいかがでしょうか。






聖林寺オリジナルグッズもあります。
三輪という地名で思い浮かべるのが、手延べそうめんで知られた「三輪そうめん」。
その三輪そうめんが、カリッと揚がったスナックになっているとは知りませんでした。
「そうめんスナック」はうま塩味とかつお梅味があってどちらも税込648円(下の写真右上の棚)。

ビールのおつまみやお子さんのおやつにピッタリです。





そして、解説もカラー写真も充実した展覧会公式図録(税込1,800円)も記念にぜひ。



音声ガイドのナビゲーターは女優の天海祐希さん。
とてもわかりやすい解説で、みほとけの世界にすーっと入り込むことができました。
(音声ガイド 一人一台 税込600円)

1300年の時を超えて初めて東京に出現した三輪山信仰の空間をぜひお楽しみください。