2021年7月17日土曜日

開館55周年記念特別展「山種美術館所蔵 浮世絵・江戸絵画名品選ー写楽・北斎から琳派までー」

東京広尾の山種美術館では、開館55周年記念特別展「山種美術館所蔵 浮世絵・江戸絵画名品選ー写楽・北斎から琳派までー」が開催されています。

展覧会チラシ

近代日本画の豊富なコレクションの展覧会で私たちを楽しませてくれる山種美術館ですが、今回は浮世絵と江戸絵画。少し意外にも思えますが、実は浮世絵や江戸絵画も貴重なコレクションを所蔵しているのです。

それでは、先日開催された内覧会に参加しましたので、さっそく展覧会の様子をご紹介したいと思います。


展覧会概要


会 期 2021年7月3日(土)~8月29日(日)
 ※会期中展示替えあり
  前期 7/3-8/1 後期 8/3-8/29
開館時間 平日:午前10時から午後4時
     土・日・祝日:午前10時から午後5時
    (入館はいずれも閉館時間の30分前まで)
休館日 月曜日(但し、8/9(月)は開館、8/10(火)は休館)
入館料 一般 1300円ほか
夏の学割 大学生・高校生500円
     ※本展に限り、特別に入館料が通常1000円のところ半額になります。
チケット ご来館当日、美術館受付で通常通りご購入いただけます。
     また、入館日時が予約できるオンラインチケットもご購入可能です。
展覧会の詳細、新型コロナウイルス感染予防策、日時指定オンラインチケットの購入方法などは、美術館公式サイトでご確認ください⇒https://www.yamatane-museum.jp 

※展示室内は次の1点を除き撮影不可です。掲載した写真は、内覧会で美術館より特別の許可をいただいて撮影したものです。
※展示作品はすべて山種美術館蔵です。

今回撮影OKの作品は次の1点のみです。

椿椿山《久能山真景図》【重要文化財】
1837(天保8)年 全期間展示


第1章 山種コレクションの浮世絵


展示室に入って驚きました。
いつもなら近代日本画の掛軸が展示されている場所には、よく知られた浮世絵の名作がずらりと並んでいるのです。

展示室入口で私たちをお出迎えしてくれるのは、ご存じ葛飾北斎の《冨嶽三十六景 凱風快晴》。

葛飾北斎《冨嶽三十六景 凱風快晴》
1830(文政13)年頃 前期展示

説明をしなければ、これが山種美術館の展示室だとは信じてもらえないかもしれませんが、そこは日本画専門の美術館。ただ単に浮世絵コレクションが並んでいるだけではありません。

最初から順を追って見て行きましょう。
浮世絵は、最初からいくつもの色を使った多色摺りができたわけでなく、墨で摺ったあとに1枚ずつ筆で彩色した「紅絵」に始まり、2,3色を使った色刷りの「紅摺絵」、より多くの色を使った「錦絵」といった具合に、摺りの技術が発達していくのですが、その過程が作品と解説パネルでわかるような展示になっているのです。
(下の写真では左から右に見ていきます。)

第1章展示風景

雲母の粉を使ってキラキラ輝く効果を出す「雲英摺(きらずり)」をはじめとした、摺りの技術の解説もあります。

東洲斎写楽《八代目森田勘弥の駕籠舁鶯の次郎作》
1794(寛政6)年 前期展示



そして反対側には歌川広重《東海道五拾三次》のシリーズ。

「広重の《東海道五拾三次》なら何回も見たことある。」とおっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんが、こちらの《東海道五拾三次》はちょっと違います。

第1章展示風景



こちらは、広重の東海道シリーズの中でも最も出来映えのよい「保永堂版」で、さらに、題字を記した扉があるので、もとは画帖仕立てのものがまとまって残った数少ない例で、後摺では省略された雲が摺られていたりなど、初摺の特徴を持つ図が多く含まれるものなのです。

そしてなにより、色合いがとても鮮やかです。

歌川広重《東海道五拾三次》のうち「蒲原・夜之雪」
1833-36(天保4-7)年頃 前期展示


広重の《東海道五拾三次》は、53の宿場に、扉と起点の「日本橋・朝之景」と終点の「京師・三條大橋」を加えて全部で56点あります。
扉から「掛川・秋葉山遠望」までの28点が前期展示。「袋井・出茶屋之図」から「京師・三條大橋」までの28点が後期展示です。
前期後期あわせて江戸から京都まで東海道の旅を楽しんでみませんか。

第2章 山種コレクションの江戸絵画


続いて江戸絵画のエリアに移ります。

まずは琳派の世界。
華やかな金屏風が並ぶ壮観な光景が目の前に広がります。

右から、伝 俵屋宗達《槇楓図》17世紀(江戸時代)
酒井抱一《秋草鶉図》(重要美術品)19世紀(江戸時代)
鈴木其一《四季花鳥図》19世紀(江戸時代)
いずれも全期間展示

続いて掛軸の琳派作品。

江戸時代前期の俵屋宗達、江戸時代後期の酒井抱一、鈴木其一と、200年の時を越えて引き継がれた琳派の名品が一堂に会しています。

右から、[絵]俵屋宗達、[書]本阿弥光悦
《鹿下絵新古今集和歌巻断簡》17世紀(江戸時代)、
酒井抱一《菊小禽図》《飛雪白鷺図》19世紀(江戸時代)、
鈴木其一《伊勢物語図 高安の女》19世紀(江戸時代)
いずれも全期間展示


上の写真一番右は、俵屋宗達の絵と本阿弥光悦の書のおしゃれなコラボ作品。
振り返る鹿と、墨のくずし字の配置にリズミカルな動きが感じられて、とても好きな作品です。


[絵]俵屋宗達 [書]本阿弥光悦
《鹿下絵新古今集和歌巻断簡》17世紀(江戸時代)
全期間展示


展覧会のサブタイトルは「ー写楽・北斎から琳派までー」ですが、江戸絵画は琳派だけではありません。

琳派のコーナーの反対側にはなんと岩佐又兵衛!

岩佐又兵衛《官女観菊図》(重要文化財)
17世紀(江戸時代) 全期間展示

なぜここで驚いたのかと言いますと、この作品は又兵衛が得意とする古典を題材とした作品ですが、近世初期風俗画を描いた又兵衛は、のちに第1章に展示されている浮世絵の祖と呼ばれるようになったので、浮世絵のちょうど反対側に展示されているのを見て、この配置は絶妙の隠し味と感じたからなのです。

織田信長の軍勢に包囲された時、家族や家臣たちを見捨てて、大切にしていた茶道具をもって有岡城を脱出した戦国武将、荒木村重を父にもつ岩佐又兵衛。
よく生き延びて「浮世絵の祖」になってくれたものです。


NHKの正月時代劇「ライジング若冲」の名コンビがいる!

左から、伊藤若冲《伏見人形図》1799(寛政11)年、
池大雅《指頭山水図》1745(延享2)年、
《東山図》18世紀(江戸時代)
いずれも全期間展示

みなさまはNHKの正月時代劇「ライジング若冲」をご覧になられましたでしょうか。
人付き合いが嫌いな伊藤若冲が、唯一親交を深めたのが池大雅。
その二人の作品が並んで展示されています。

「ライジング若冲」を見て以来、池大雅の作品を見ると、豪放磊落な大雅の姿が目に浮かんでくるのですが、《指頭山水図》のように、筆を使わずに指や爪を使う「指頭画」を描いている場面が出てきたことを思い出しました。


そして冒頭に紹介しましたが、今回唯一の撮影可の作品が椿椿山《久能山真景図》(重要文化財)。


右から、椿椿山《久能山真景図》(重要文化財)1837(天保8)年、
谷文晁《辛夷詩屋図》1792(寛政4)年
いずれも全期間展示


椿椿山は、江戸幕府の鎖国政策を批判して蛮社の獄(1839年)で捕らえられた師・渡辺崋山の救援活動に奔走しましたが、当時、幕府に逆らうことは命がけのことでした。

勇気ある椿山がこの作品を描いたのは蛮社の獄の2年前のことですが、中央の2人の人物は、椿山が慕う師・崋山と、そのあとを追う椿山自身ではと思えてならないのです。

そして、隣には崋山の師・谷文晁の《辛夷詩屋図》。
こちらも山あいの理想郷を描いた素晴らしい作品です。


第2展示室では、円山応挙の奔放な弟子、長沢芦雪の作と伝わる《唐子遊び図》を見つけました。

 長沢芦雪《唐子遊び図》(重要美術品)
18世紀(江戸時代) 全期間展示

中国では古来から士大夫が身につける芸とされた琴棋書画をまじめに習っている唐子ばかりと思ったら、そうではなく、じゃれあう唐子たちがいて、その足元では碁石がばらけていたり、芦雪の「龍図」「虎図」襖で知られた紀州・無量寺で見た、芦雪の「唐子遊図」襖を思わせるユーモアたっぷりな作品です。

紹介しきれませんでしたが、京狩野最後の輝きを放った狩野永岳の作品も展示されるなど、「第2章 山種コレクションの江戸絵画」では、琳派をはじめとした江戸絵画の粋が楽しめます。


展覧会オリジナルグッズ・オリジナル和菓子も充実!


山種美術館の展覧会でいつも気になるのが、展覧会オリジナルグッズ。
今回も充実の内容です。

展覧会オリジナルグッズ



私のイチ押しは、歌川広重《東海道五拾三次》のすべての図柄が載って、解説も付いているA4Wクリアファイル(税込715円)。おうちに帰ってからも東海道の旅が楽しめます。

俵屋宗達(絵)・本阿弥光悦(書)《鹿下絵新古今集和歌巻断簡》の金箔はがき入れ(税込3,850円)、名刺箱(税込1,800円)、一筆箋(税込462円)もオシャレです。


1階ロビーの「Cafe椿」では、オリジナル和菓子をお召し上がりいただけます。

オリジナル和菓子
上から時計回りに、
「赤富士」(葛飾北斎《冨嶽三十六景 凱風快晴》作品展示期間:7月3日~8月1日)、
「秋のおとずれ」(俵屋宗達(絵)・本阿弥光悦(書)《四季草花下絵和歌短冊帖(朝顔)》作品展示期間:8月3日~8月29日)、
「月夜の海」(歌川広重《武陽金沢八勝夜景(雪月花之内 月)》作品展示期間:8月3日~8月29日)、
「夏の日」(鈴木其一《四季花鳥図》(右隻))、「菊の香」(酒井抱一《菊小禽図》)
カッコ内はモチーフとなった作品ですべて山種美術館蔵

抹茶とのセットで1,200円(税込)。いつもどの和菓子とのセットにしようか迷ってしまうのです。


この夏に山種美術館の浮世絵と江戸絵画はいかがでしょうか。
ぜひ前期後期ともご覧ください!

2021年7月12日月曜日

三菱一号館美術館「三菱創業150周年記念 三菱の至宝展」

 東京丸の内の三菱一号館美術館では、「三菱創業150周年記念 三菱の至宝展」が開催されています。



洋風建築の外観と内装から、西洋絵画展のイメージがぴったりの三菱一号館美術館ですが、今回は、三菱ゆかりの静嘉堂、東洋文庫の国宝12点を含む秘蔵コレクションから、茶道具、刀剣、絵画、仏像、古典籍、陶磁器と、主に日本や東洋文化のさまざまなジャンルからよりすぐりの名品が競演する、まさに「三菱の至宝」が大集結した豪華な内容の展覧会なのです。

先日開催された内覧会に参加しましたので、さっそく展覧会の様子をご紹介したいと思います。

展覧会概要


会 場  三菱一号館美術館(東京都千代田区丸の内2-6-2)
展覧会名 三菱創業150周年記念 三菱の至宝展
会 期  2021年6月30日(水)~9月12日(日)
 前 期 8月9日(月・振休)まで、後期 8月11日(水)から
 前後期で展示替えがあり
開催時間 10:00~18:00 ※入館は閉館の30分前まで
夜間開館日 当面の間、夜間開館は20:00まで
 ※夜間開館日は下記の美術館公式サイトでご確認ください。
休館日  月曜日、展示替えの8月10日(火)
 ※ただし、祝・振休の場合、7月26日、8月30日、9月6日は開館。
入館料・当日券  一般 1,900円ほか
※本展覧会は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、各時間の入場人数に上限を設けています。日時指定券お持ちの方は、優先的に入場できます。
※展覧会の詳細、新型コロナウイルス感染拡大防止策、チケットの日時指定予約、夜間開館日等については、美術館公式サイトでご確認ください⇒三菱一号館美術館

展覧会チラシ



展示構成は、三菱の前身「九十九商会」を設立した三菱の創業者で初代社長、岩崎彌太郎氏、第二代社長 彌之助氏、第三代社長 久彌氏、第四代社長 小彌太氏の肖像にはじまって、歴代社長が収集したコレクションごとの順番になっています。

 第1章 三菱の創業と発展ー岩崎家4代の肖像
 第2章 彌之助ー静嘉堂の創設
 第3章 久彌ー古典籍愛好から学術貢献へ
 第4章 小彌太ー静嘉堂の拡充
 
※展示室内は、フォトスポットを除き撮影不可です。掲載した写真は、美術館より特別の許可をいただいて撮影したものです。

フォトスポットにある謎の円形のパネル。
フラッシュをたいて撮影すると何かが写ります。ぜひお試しを!


見事な輝きを放つ国宝「曜変天目(稲葉天目)」


展示の順番どおりではありませんが、まず初めにご紹介したいのは、やはり展覧会チラシの表紙を飾るこの名品。

国宝《曜変天目(稲葉天目)》(静嘉堂蔵 通期展示)です。


第4章展示風景

世界中に三碗しかなく、その三碗とも日本にあって国宝という貴重な曜変天目が見事な輝きを放っています(他の二碗は、京都・大徳寺龍光院、大阪・藤田美術館が所蔵。)。

洋風建築の大小の部屋に区切られた展示室のメリットを活かして、個室にただ一点だけ展示されていました。これ以上ないという贅沢な空間です。

続いて第1章から順番に、見どころを紹介したいと思います。

第1章 三菱の創業と発展ー岩崎家4代の肖像


最初の展示室には、三菱の創業者、岩崎彌太郎氏の座像と彌太郎氏の書。
そして、手前の茶入は《唐物茄子茶入 付藻茄子》(静嘉堂蔵 前期展示)。

第1章展示風景


とても小さな《付藻茄子》ですが、戦国時代には戦国大名の領土一国に相当するほどの価値のあったものなのです。

もとは足利義満の所蔵でしたが、戦国武将・松永久秀が、畿内を平定した織田信長に《付藻茄子》を献上して、自分の領国・大和国が安堵されたというエピソードがあります。

松永久秀といえば、その後、信長に反旗を翻して、信貴山城に立てこもった時、信長が「平蜘蛛の茶釜を渡せば命だけは助けてやろう。」と言ったのに対して、「信長に渡すくらいなら死んだ方がましだ!」と平蜘蛛を叩き割って自害したという逸話が残されています。
戦国大名にとって、茶器は命より大事なものでした。

《付藻茄子》は、その後、秀吉の手に渡り、大坂夏の陣で大破したのですが、家康の命によって探し出され、漆によって修復されたという、まさに激動の時代を生き抜いた名品なのです。


第2章 彌之助ー静嘉堂の創設


三菱一号館美術館の内装の中でも特に雰囲気がいいのが、暖炉を再現した部屋。
西洋絵画だけでなく、山水を描いた中国絵画も意外としっくりと合います。
東洋美術愛好の西洋人のお屋敷はこういう感じだったのでは、と勝手に想像してしまいました。

第2章展示風景

中国絵画ファンの私としては、どの作品が展示されるか気になっていたところですが、前期は、夏珪とともに南宋画院の代表的な画家で、日本の水墨画に大きな影響を与えた馬遠の作と伝わる国宝《風雨山水図》(下の写真左 静嘉堂蔵 前期展示)と、明末四大家の一人として知られた書家で、画家としても江戸時代の文人画家・田能村竹田ほかに影響を与えた張瑞図の重要文化財《松山図》(下の写真右 静嘉堂蔵 前期展示)が展示されていました。

第2章展示風景

後期には、因陀羅、楚石梵埼/題《禅機図断簡 智常禅師図》(国宝)藍瑛《秋景山水図》(重要文化財)が展示されるので、こちらも楽しみです。


続いて、一番広い展示室に展示されているのは、大きな屏風と十二神将。

この広々とした空間のとり方が絶妙です。

第2章展示風景

そして、展示されている作品も名品ばかり。

手前の個別ケースに入っているのは、慶派の重要文化財《木造十二神将立像》(静嘉堂蔵)のうち「寅神像」「午神像」「亥神像」(前期展示。後期には「丑神像」「卯神像」「酉神像」が展示されます。)
どれも特徴のあるお顔をしていて、ユニークな表情をしている像もあるので、ぜひじっくりご覧ください。

この《木造十二神将立像》は、京都・浄瑠璃寺旧蔵と伝えられ、上記の6躯と「子神像」の7躯を静嘉堂、「辰神像」「巳神像」「未神像」「申神像」「戌神像」の5躯を東京国立博物館が所蔵しています。
2017年に東京国立博物館で開催された運慶展で12躯が勢ぞろいした時のことを思い出しました。

奥の右の屏風が、俵屋宗達の国宝《源氏物語関屋澪標図屏風》(静嘉堂蔵)のうちの「澪標図」(前期展示)、後期には「関屋図」が展示されます。

左の屏風は、狩野芳崖と並んで明治の近代日本画の二大巨頭の一人、橋本雅邦の重要文化財《龍虎図屏風》(静嘉堂蔵 前期展示)。
明治28(1895)年に開催された第四回内国勧業博覧会に、岩崎彌之助氏の支援によって出品された作品で、当時、左隻の虎は「腰抜けの虎」と酷評されましたが、けっしてそんなことはありません。
近くで見ると、激しく降る雨や竹がしなるほどの強い風の中、堂々と龍を迎え撃つ虎の姿に圧倒されます。

第2章展示風景

後期には、同じく第四回内国勧業博覧会に出品された今尾景年の《耶馬渓図屏風》が展示されます。

第3章 久彌ー古典籍愛好から学術貢献へ 


第3章には、久彌氏が創設した東洋文庫から東西の古典籍が出展されています。

東洋文庫といえば、やはりこの景色。
モリソン文庫の書棚が壁一面のパネルで再現されています。

第3章展示風景

ケースの中には、バラモン教とヒンドゥー教の聖典『リグ・ヴェーダ』とマルコポーロの『東方見聞録』(どちらも通期展示)。
寒い冬に暖炉のぬくもりを感じながら、ソファにゆったりと座って読書をしている自分を想像してみたくなる空間です。

第3章では、世界地図や海外の風景の版画なども展示されていて、国際色豊か。

第3章展示風景


さらに先に進むと、神秘的な光を放つ空間にはチベット仏教の聖典や仏画が展示されていました。

第3章展示風景



第4章 小彌太ー静嘉堂の拡充 


国際色豊かな空間を体験して、次の展示室に入ろうとすると、何とそこには襖が!
まるで知人の和室におじゃまするような感覚になります。


中に入ると、そこには茶室の床の間のしつらえ。
それも、豊臣秀吉が京都・北野天満宮で開催した「北野大茶湯」(1587年)を350年ぶりに再現した「昭和北野大茶湯」(1936年)のうち、小彌太氏が任された一席を再現したものなのです。

第4章展示風景

掛軸は、中国臨済宗の僧、無準師範《禅院牌字断簡「湯」》(東京国立博物館蔵 前期展示、後期には複製が展示されます。)、手前には龍泉窯《青磁鯱耳花入》(静嘉堂蔵 通期展示)が展示されています。
これは「昭和北野大茶湯」の時と同じ組み合わせなので、この掛軸と青磁は85年ぶりの再会なのかもしれません。

続いて、冒頭にご紹介した国宝《曜変天目(稲葉天目)》の展示室を通り、最後の展示室に入ると、そこは日本、朝鮮、中国陶磁器のカラフルな世界。

第4章展示風景

中でも多くを占めているのが、中国陶磁器。
唐時代の唐三彩にはじまって、北宋の磁州窯の枕、南宋や明時代の青磁、明時代や清時代の景徳鎮の色鮮やかな磁器が展示されているので、この部屋だけで中国陶磁器の時代別の変遷を見ることができるのです。

東京2020の延期によって、昨年開催される予定が今年夏に変更になりましたが、1年越しでようやく三菱の至宝にめぐり会うことができました。

前後期で展示替えがあるので、後期展示も楽しみです。

みなさんも前期後期ともお越しいただいて、洋風建築の贅沢な空間でぜひ東洋の美をお楽しみください。

2021年7月2日金曜日

東京国立博物館 特別展「国宝 聖林寺十一面観音 ー三輪山信仰のみほとけ」 

6月22日(火)から東京国立博物館 本館特別5室で特別展「国宝 聖林寺十一面観音 ー三輪山信仰のみほとけ」が始まっています。
開幕以来、多くの方が訪れ、すでに話題沸騰の展覧会ですが、それもそのはず。
「日本彫刻の最高傑作」といわれる国宝の十一面観音菩薩さまを間近に拝むことができるのですから、間違いなく今年見逃してはならない展覧会の一つなのです。



展覧会概要


展覧会名 特別展「国宝 聖林寺十一面観音 ー三輪山信仰のみほとけ」
会 期  2021年6月22日(火)~9月12日(日) 
開館時間 午前9時30分~午後5時
休館日  月曜日(ただし、8月9日(振休)は開館)
会 場  東京国立博物館 本館特別5室
※本展は事前予約制(日時指定券)です。詳細は展覧会公式サイトをご確認ください。
※本展覧会は、2022年2月5日(土)~3月27日(日)に、奈良国立博物館 東新館に巡回予定です。

※展示室内は撮影不可です。掲載した写真は内覧会で主催者より許可をいただき撮影したものです。

それではさっそく展覧会の見どころを紹介したいと思います。

雄大な三輪山と大神神社の三ツ鳥居を背景に観音さまが拝めます!


展示室に入ると、背景に見えてくるのは、雄大な三輪山と大神神社の三ツ鳥居。
その前には堂々としたお姿の国宝「十一面観音菩薩立像」(聖林寺蔵)。

まさかこのように見事なレイアウトの中で、十一面観音さまを拝むことができるとは想像していませんでした。
展示室内は、緑たたえた山々に囲まれた奈良盆地の雰囲気そのもの。


国宝 十一面観音菩薩立像
奈良時代・8世紀
奈良・聖林寺蔵

この十一面観音菩薩さまは、江戸時代まで三輪山の麓の大神神社の神宮寺であった大御輪寺(旧大神寺)の御本尊でしたが、明治に入ってからの神仏分離で、同じく奈良盆地の南部、桜井市の聖林寺に移されたので、まるで三輪山のふもとに「里帰り」したかのようです。

もちろん仏様は本堂にまつられていたので、このような場面は見られなかったでしょうが、それにしてもまさにその場にいるような雰囲気が感じられます。

そして、観音さまの頭の上の、あらゆる方向を見渡す八面(三面は亡失)のお顔も、360度ぐるっと回って見ることができるので、慈悲深い表情をした面や怒っているかのような表情など、それぞれの面の表情の違いをご覧いただくことができます。

国宝 十一面観音菩薩立像(部分)
奈良時代・8世紀
奈良・聖林寺蔵


みほとけさまが約150年ぶりに感動の再会!


展示室内のレイアウトを見て、すっかり感動にひたっていたところですが、今回の展示にはさらに感動の物語が隠されているのです。

大御輪寺には多くの仏像がまつられていましたが、明治時代の神仏分離でそれらの仏像は近隣の寺に移されました。

聖徳太子ゆかりの奈良・法隆寺からは、国宝「地蔵菩薩立像」。
明治元年(1868年)に聖林寺に移されたのですが、その5年後にさらに法隆寺に移ったとのこと。十一面観音さまとは、まさに約150年ぶりの再会。
とても優しいお顔に、心がなごんできます。

国宝 地蔵菩薩立像
平安時代・9世紀
奈良・法隆寺蔵

奈良市東南の山あいにある正暦寺からは、「日光菩薩立像」「月光菩薩立像」。
国宝「地蔵菩薩立像」と並んで展示されていて、やはり約150年ぶりの再会です。
下の写真右がふくよかなお顔の「日光菩薩立像」、左がりりしいお顔の「月光菩薩立像」。

それぞれ特徴がありますが、どちらもの菩薩さんもいい表情をしています。

右 日光菩薩立像 左 月光菩薩立像
いずれも平安時代・10~11世紀
奈良・正暦寺蔵



自然信仰の姿を今に伝える大神神社の珍しい品々も公開!



こちらは、大神神社の広大な景観が描かれた「三輪山絵図」(室町時代・16世紀 奈良・大神神社蔵。8月1日までの展示。8月3日からは江戸時代に描かれた「三輪山絵図」が展示されます)。

大きな画面の上部には、ご神体の三輪山。
山のふもとには大神神社の拝殿と三ツ鳥居、さらには神仏習合の時代らしく、摂社や寺院が画面いっぱいに描かれています。
そして、画面中央左には国宝「十一面観音菩薩立像」をはじめ多くの仏像がまつられていた大御輪寺も見えます。


三輪山絵図 室町時代・16世紀
奈良・大神神社蔵
8月1日(日)までの展示


大神神社のご神体は三輪山なので本殿はありません。
拝殿の奥にある三ツ鳥居の先は、人の立ち入りができない神聖な場所「禁足地」。

その禁足地からは、勾玉(まがたま)や、坏(つき)、坩(つぼ)をはじめとした土製品ほか、古墳時代に祭祀に用いたものが出土され、この地が古くから神聖な場所であったことがうかがえます。
(下の写真中央から左が大神神社蔵、右奥が東京国立博物館蔵です。)

三輪山禁足地出土品ほかの展示風景
古墳時代(4~6世紀)

今回の展覧会では、大きな仏さまだけでなく、小さな展示品の細部に注目すると興味深い発見があるかもしれません。

縦長に整形した木板に書き写された仏典「柿経(こけらきょう)」。
お経の下には小さな地蔵菩薩さまが描かれています。

そして、この「杮経」は、大神神社の摂社・大直禰子神社社殿の天井裏から発見されたもので、神仏分離前、この社殿は、なんと大御輪寺の本堂!
この杮経も十一面観音菩薩さまと約150年ぶりの再会だったのです。

右 柿経 左 五輪塔墨描枌
いずれも鎌倉~南北朝時代・13~14世紀
奈良・大神神社蔵

最後にご紹介するのは、ちょっとこわい表情をした大黒様。
大黒様といえば、米俵の上に立って、打ち出の小槌を手に、にこやかな笑みを浮かべている七福神のイメージがありますが、もとはヒンドゥー教の破壊神・シバ神。
このこわい表情はシバ神の名残をとどめているからなのかもしれません。

大国主大神立像
平安時代・12世紀
奈良・大神神社蔵

そして、大黒天の姿をした大国主大神は、大神神社にゆかりの神様なのです。
『古事記』には、大神神社のご祭神・大物主大神は、大国主大神の国造りを助けるために、三輪山に自身をまつらせたといういわれがあります。


展覧会オリジナルグッズも充実!


展覧会に来て、やはり気になるのが展覧会オリジナルグッズ。
Tシャツ(税込3,000円)、トートバッグ(税込1,000円)をはじめ、来館の記念になるものばかりが勢ぞろい。





ジオラマ好きの私のおススメは、その名もずばり「国宝 聖林寺十一面観音 アクリルジオラマ」(税込880円)。りりしい観音さまのお姿がすくっと立つようになっています。
ぜひお部屋に飾ってみてはいかがでしょうか。






聖林寺オリジナルグッズもあります。
三輪という地名で思い浮かべるのが、手延べそうめんで知られた「三輪そうめん」。
その三輪そうめんが、カリッと揚がったスナックになっているとは知りませんでした。
「そうめんスナック」はうま塩味とかつお梅味があってどちらも税込648円(下の写真右上の棚)。

ビールのおつまみやお子さんのおやつにピッタリです。





そして、解説もカラー写真も充実した展覧会公式図録(税込1,800円)も記念にぜひ。



音声ガイドのナビゲーターは女優の天海祐希さん。
とてもわかりやすい解説で、みほとけの世界にすーっと入り込むことができました。
(音声ガイド 一人一台 税込600円)

1300年の時を超えて初めて東京に出現した三輪山信仰の空間をぜひお楽しみください。

2021年6月27日日曜日

三井記念美術館コレクション名品展「自然が彩る かたちとこころ-絵画・茶道具・調度品・能装束など-」

2021年7月10日(土)から、東京・日本橋にある三井記念美術館で、三井記念美術館コレクション名品展「自然が彩る かたちとこころ-絵画・茶道具・調度品・能装束など-」が開催されます。

今回は、日本や東洋の優れた美術品を数多く所蔵する三井記念美術館のコレクションの中か
ら、絵画、茶道具、調度品、能装束などのジャンルから選ばれた名品が展示される、まさにオールスターキャスト勢ぞろいといった豪華な内容の展覧会です。

展覧会概要

会 期  2021年7月10日(土)~8月22日(日)
開館時間 11:00~16:00(入館は15:30まで)
休館日  月曜日(ただし8月9日は開館)
入館料  一般 1,300円ほか
※予約なしで入館できますが、来館者数が多い場合には入場制限があります。

展覧会の詳細、新型コロナウイルス感染症感染防止策については、同館公式サイトをご覧ください⇒三井記念美術館 



今回のテーマは「自然が彩る かたちとこころ」。

古くから四季折々の花鳥風月といった自然は人々に愛され、美術作品にも描かれていますが、よく見ると、自然がありのままに描かれたものもあれば、意匠化されて描かれたものなどもあって、「自然のすがた」の表現はさまざまなのがわかります。

今回の展覧会では、そういったさまざまな形をとった「自然のすがた」を楽しむことができます。

それではさっそく展示構成にしたがって、代表的な作品をご紹介していきたいと思います。

理想化された自然を表す


この作品は過去に二度ほど見たことがあるのですが、作品の前に立つと、いつも不思議な感覚にとらわれるのです。

鶴や松といったおめでたい題材、春から秋の草花、ゴツゴツした岩と川の流れ。
どれも現実にあるものを描いているのですが、なぜか幻想的で、シュールな感覚になるのは、この世のどこでもない理想の境地を描いているからなのでしょう。

この作品が描かれた16世紀の室町時代は、幕府の威信が失墜し、全国各地で戦国大名が群雄割拠した激動の時代でした。
先行きがどうなるかわからない中、部屋の中に屏風を広げて、理想の世界に身を置きたくなるのもわかるような気がします。

重要文化財 日月松鶴図屏風(右隻) 室町時代・16世紀 三井記念美術館蔵


重要文化財 日月松鶴図屏風(左隻) 室町時代・16世紀 三井記念美術館蔵


自然物を造形化する


今から7年前の平成26(2014)年にこの三井記念美術館で「明治の超絶技巧展」が開催されて以来、アートファンの間にすっかり根付いたキーワードが「超絶技巧」。
中でも本物の野菜や果物と見間違えてしまうくらい精巧にできた象牙細工の緑山作品はひときわ異彩を放っていました。

今回は三井記念美術館が所蔵する緑山作品が展示されています。
後継者がなく、象牙細工の彩色技術が伝わらなかったため、いまだにその技法が解明されないというミステリアスな緑山作品をぜひお楽しみください。

 染象彫果菜置物 安藤緑山作 明治~昭和時代初期・20世紀 三井記念美術館蔵


素材を活かして自然を表す


三井記念美術館の代表作といえば、やはりこの作品。
円山応挙の国宝《雪松図屏風》も展示されます。

松の幹や葉に積もる雪の白さは、塗り残した地の紙の色なので平面なのですが、なぜか雪のふくらみが感じられるから不思議です。
この作品の修理時の調査で、絵の描かれた紙の裏に白色度の高い和紙が貼られていることがわかったとのとですが、それによって色の白さが強調されるだけでなく、雪のふっくら感を出す効果もあるのでしょうか。

国宝 雪松図屏風(右隻) 円山応挙筆 江戸時代・18世紀 三井記念美術館蔵


雪の重みに耐える松の大木、ぴんと張りつめた空気の緊張感が伝わってくるようです。

国宝 雪松図屏風(左隻) 円山応挙筆 江戸時代・18世紀 三井記念美術館蔵

自然をデフォルメして表す


自然現象などをデザイン化・文様化して装飾性を高めるのも日本美術の流れの一つ。

この作品は、漆細工の名手、柴田是真の青海波塗の皿。
青海波とは、海の波のうねりをかたどった吉祥文様で、このように少しずつパターンの違う波がリズミカルに並んでいると、遠くの海の波がうねっているように見えて、浜辺に立ったときの波や風の音まで聞こえてきそうです。


青海波塗皿 柴田是真作 江戸~明治時代・19世紀 三井記念美術館蔵



銘を通して自然を愛でる


円山応挙の国宝《雪松図屏風》と並んで、もう一つの三井記念美術館の代表作は、ご存じ国宝《志野茶碗 銘卯花墻》。
このごつごつとして、どっしりとした安定感のある茶碗を見ると、なぜか気持ちも落ち着いてくるのです。

国宝 志野茶碗 銘卯花墻 桃山時代・16~17世紀 三井記念美術館蔵


個別の展示ケースが並ぶ展示室Ⅰの先にある、VIPルームのように極上の1点が展示される展示室Ⅱに展示されるのでしょうか。
それとも、国宝の茶室「如庵」を再現した空間に展示されるのでしょうか。
作品のレイアウトも気になるところです。

三井記念美術館は、今回の展覧会終了後、リニューアル工事のため2022年4月下旬(予定)まで休館になります。

自然に親しみ、自然の声を聴き、四季の移ろいを感じるコレクションの名品をぜひお楽しみください。

2021年6月15日火曜日

伝教大師1200年大遠忌記念 特別展「最澄と天台宗のすべて」

 今年(2021年)10月から来年(2022年)5月まで、東京、九州、京都の国立博物館3館で開催される、伝教大師1200年大遠忌記念 特別展「最澄と天台宗のすべて」の報道発表会にオンライン参加しました。

今から約15年前、2005年から2006年にかけて京都、東京の国立博物館2館で天台宗開宗1200年記念特別展「最澄と天台の国宝」が開催されましたが、今回は日本天台宗の宗祖、伝教大師最澄1200年目の大遠忌を記念してさらにスケールアップ、まさに「最澄と天台宗のすべて」が見られる展覧会なのです。

東京会場チラシビジュアル


展覧会の特徴


今回の大きな特徴は、天台宗ゆかりの地、京都東京とともに、今回は九州を加えた3つの国立博物館で開催されること。

京都は、平安京の鬼門を延暦寺が守護したことから、開宗以来の天台宗の中心地、東京は、東国への布教の拠点で、江戸時代には東叡山寛永寺が江戸の鬼門を守護しました。
そして九州は、最澄が入唐前に1年ほど滞在して、大宰府などをめぐったご縁から、その後、多くの天台僧が巡礼した地。


展覧会の詳細は、展覧会公式サイトのほか、それぞれの館の公式サイトでも発表される予定なので、ぜひチェックしてみてください。それぞれの会場で特徴のある名宝が展示されるので、3館とも訪れてみたくなること間違いなしです。

【東京会場】
 会 期 2021年10月12日(火)~11月21日(日)⇒終了しました。
 会 場 東京国立博物館 平成館
 博物館公式サイト⇒東京国立博物館

【九州会場】
 会 期 2022年2月8日(火)~3月21日(月・祝)⇒終了しました。
 会 
 会 場 九州国立博物館
 博物館公式サイト⇒九州国立博物館

【京都会場】
 会 期 2022年4月12日(火)~5月22日(日)
 会 場 京都国立博物館
 博物館公式サイト⇒京都国立博物館

展覧会公式サイト⇒https://saicho2021-2022.jp/

さらに、うれしいお知らせがあります。
それぞれの会場には、延暦寺根本中堂の一部が再現されて、その場にいるような雰囲気の中で参拝することができるのです。

延暦寺 根本中堂 内観

それではさっそく展覧会の見どころを大きく3つに分けてご紹介していきたいと思います。

見どころ1
 約230件の国宝・重要文化財を含む名品で日本天台宗の歴史をたどることができる


展示は次の6章構成になっています。

 第1章 最澄と天台宗の始まりー祖師ゆかりの名宝
 第2章 教えのつらなりー最澄の弟子たち
 第3章 全国への広まりー各地に伝わる天台の至宝
 第4章 信仰の高まりー天台美術の精華
 第5章 教学の深まりー天台思想が生んだ多様な文化
 第6章 現代へのつながりー江戸時代の天台宗

第1章の最澄ゆかりの名宝に始まり、第2章の最澄の教えを継いだ円仁、円珍らの高弟たちによる9世紀の日本天台宗の発展、各会場の特色が出る第3章、10世紀半ば以降、貴族と結びついた華やかな天台の名宝が紹介される第4章、中世天台宗の様相を紹介する第5章、そして、江戸時代に徳川将軍家のもと発展した江戸天台を紹介する第6章。

このように、約230件の国宝・重要文化財を含む名品を見ながら日本天台宗の歴史を辿ることができる構成になっているのです。


最初に、東京会場の展覧会チラシの表紙を飾る、現存最古の最澄の肖像画をご紹介します。

       国宝 聖徳太子及び天台高僧像 十幅のうち 最澄
 平安時代・11世紀 兵庫・一乗寺蔵
展示期間:1012日(火)~117日(日)(東京会場) 
展示会場:東京、京都


東京会場と京都会場で展示されますが、東京ではわずか4週間だけの展示ですのでお見逃しなく!


見どころ2
 1200年の大遠忌ならではの秘仏本尊を含めきわめて貴重な宝物が勢ぞろい


寺院にとってご本尊様が不在になるのは大変なこと。
大遠忌だからということでお貸しいただいた秘仏も多かったのです。
このような絶好のチャンスは100年後にしかめぐってこないかもしれません。

岐阜県可児郡御嵩町の古刹、願興寺(蟹薬師)の秘仏本尊。重要文化財「薬師如来坐像」は寺外初公開。
最澄の東国布教の際、この地でご自刻されたと伝わるとても貴重な仏像なのです。
重要文化財 薬師如来坐像 平安時代・12世紀
 岐阜・願興寺(蟹薬師)蔵
展示会場:東京



見どころ3
 全国展開した日本天台宗の各地域における特色をご紹介


今回の展覧会の大きな見どころは、各会場ごとに特色ある展示が見られることです。


【東京会場】


現存する唯一の最澄自筆の手紙と伝わる国宝「尺牘(久隔帖)」は、東京会場限定で、わずか約3週間だけの展示なのでこちらも見逃せません。
これは弟子の泰範にあてた手紙で、最澄とともに入唐した空海への伝言が記され、当時の宗教界を代表する2人の交流がうかがえる貴重な文面なのです。

国宝 尺牘(久隔帖) 最澄筆 
平安時代・弘仁4(813) 奈良国立博物館蔵
展示期間:1012日(火)~1031日(日) 
展示会場:東京

 


最澄の高弟、円仁の作という伝承のある重要文化財「阿弥陀如来立像」は、紅葉の名所で知られる京都の真正極楽寺(真如堂)の秘仏。
期間限定で東京までお越しいただくことになります。

重要文化財 阿弥陀如来立像
 平安時代・10世紀 京都・真正極楽寺(真如堂)
展示期間: 1019日(火)~113日(水・祝) 
展示会場:東京


江戸天台の基礎を築いたのは、徳川家康、秀忠、家光の三代将軍の庇護を受け、江戸城の鬼門に東叡山寛永寺を創建した天海僧正。天海の前半生は明智光秀だったのではとの噂がありますが、実際のところはどうだったのでしょうか。


 重要文化財 天海僧正坐像 康音作
 江戸時代・寛永20(1643)
 栃木・輪王寺蔵 展示会場:東京

続いて「慈眼大師縁起絵巻」も東京会場のみの展示。
この絵巻は、慈眼大師天海の生涯を描いた絵巻物で、この場面には、かつて上野公園一帯に立派な伽藍を構えた寛永寺境内を描いた場面です。


 慈眼大師縁起絵巻(中巻部分)
詞書:胤海筆・絵:住吉具慶筆
 江戸時代・延宝8(1680)
 東京・寛永寺蔵
中巻展示期間:1026日(火)~117日(日)
展示会場:東京

東京国立博物館の総合文化展(常設展)では、特別展にちなんだ特集展示「浅草寺のみほとけ」「天台宗寺院の仏像」が予定されています。こちらも楽しみです。

【九州会場】


九州では1986年以来、35年ぶりに開催される天台宗の展覧会。
西日本(中国、四国、九州)に伝わった天台宗の至宝の数々が紹介されます。

中でも注目は、九州会場のみに展示される重要文化財「太郎天及び二童子立像」。
明治の神仏分離前は、大分・長安寺の後山にある六所権現社の主神だったもので、不動三尊の化身として造られた神仏習合時代の像です。

重要文化財 太郎天及び二童子立像
 平安時代・大治5(1130)
 大分・長安寺蔵 展示会場:九州

高く盛り上がった頭部が特徴の重要文化財「性空上人坐像」は、九州会場、京都会場の展示。
霧島山や九州各地で修業したのち、兵庫県の圓教寺を開いた性空上人(?~1007)は、九州にとって身近な存在。およそ1000年ぶりの九州への里帰りになります。
頭部にガラス製と思われる壺が収められてるとのことですが、これからの調査の行方が期待されます。
重要文化財 性空上人坐像 慶快作
 鎌倉時代・正応元年(1288) 兵庫・圓教寺蔵
展示会場:九州、京都

九州会場のみの展示は約50件もあるので、やはり九州会場にも行かないわけにはいきません。


【京都会場】


京都は比叡山のおひざもと。
開宗当時から天台宗の中心地であった京都には優品が集中しています。

寺外初公開の秘仏は、最澄作の秘仏本尊の薬師如来像に近い姿と考えられている、京都・日野にある法界寺所蔵の重要文化財「薬師如来立像」。
京都と東京での展示です。

重要文化財 薬師如来立像 
平安時代・11世紀
 京都・法界寺蔵 展示会場:東京、京都


こちらは、なんと60年に一度のみ公開されるという秘仏「菩薩遊戯坐像(伝如意輪観音)」。
現在の京都岡崎公園にかつてあった法勝寺と密接な関係があった、愛媛県宇和島市近隣の鬼北町にある等妙寺の御本尊。
こちらは九州と京都のみの展示です。
ごつごつとした岩を背景に堂々としたお姿、ぜひ目の前で見てみたいです。
菩薩遊戯坐像(伝如意輪観音)
 鎌倉時代・13世紀 愛媛・等妙寺蔵
展示会場:九州、京都


天台宗総本山、比叡山延暦寺からは、重要文化財「聖観音菩薩立像」。
こちらも九州と京都のみの展示です。
重要文化財 聖観音菩薩立像
 平安時代・12世紀
 滋賀・延暦寺蔵 展示会場:九州、京都

京都国立博物館近隣には妙法院など天台宗ゆかりの名所旧跡が多くあるので、会場外とのコラボ企画も考えられているとのこと。

この展覧会は、3会場を巡回しますが、文化財保護上の制約で、国宝・重文の展示場所は2か所までしか移動させられないので、3館共通で見られる国宝・重文はないのです。
担当された研究員のみなさまは3館の展示のバランスをとるのに苦労されたとのことですが、やはり3館とも見に行かないと「天台宗のすべて」は完結しないかもしれません。

今年10月から始まる特別展「最澄と天台宗のすべて」に注目です。