2024年2月3日土曜日

東京国立博物館 特別展「本阿弥光悦の大宇宙」

東京・上野公園にある東京国立博物館 平成館では、特別展「本阿弥光悦の大宇宙」が開催されています。

今回の展覧会のメインビジュアルになっているのはキラキラ輝く本阿弥光悦作の国宝《舟橋蒔絵硯箱》(東京国立博物館)。展示室内でもこの作品が冒頭でみなさまをお出迎えしてくれます。

東京国立博物館 平成館外壁の案内看板


「始めようか、天才観測。」という謎めいたキャッチコピーも気になりますが、これは誤植ではありません。
星空を見上げる「天体観測」ではなく、「天才芸術家」本阿弥光悦が作り出した蒔絵の硯箱や絵巻物、陶器のように決して大きくない作品の中に広がる大きな宇宙が楽しめる展覧会なのです。


展覧会開催概要


会 期  2024年1月16日(火)~3月10日(日)
     ※会期中、一部作品の展示替えがあります。
会 場  東京国立博物館 平成館
休館日  月曜日、2月13日(火) ※ただし、2月12日(月・休)は開館
開館時間 午前9時30分~午後5時(入館は閉館の30分前まで)
観覧料(税込) 一般:2,100円、大学生:1,300円、高校生:900円
※中学生以下、障がい者とその介護者1名は無料。入館の際に学生証、障がい者手帳等の提示が必要。
※本展は事前予約不要です。混雑時は入場をお待ちいただく可能性があります。

展覧会の詳細等は展覧会公式サイトをご覧ください⇒https://koetsu2024.jp/

展示構成
 第一章 本阿弥家の家職と法華信仰ー光悦芸術の源泉
 第二章 謡本と光悦蒔絵ー炸裂する言葉とかたち
 第三章 光悦の筆線と字姿ー二次元空間の妙技
 第四章 光悦茶碗ー土の刀剣

※展示室内は撮影禁止です。掲載した写真は、報道内覧会で主催者より許可を得て撮影したものです。
※展示期間の表記のない作品は通期展示予定の作品です。


本阿弥光悦(1558-1637)は、流麗な書やきらびやかな蒔絵の硯箱などで知られていますが、光悦が生まれた本阿弥家は刀剣鑑定の名門家系で、光悦自身も刀剣鑑定の優れた力量を持っていました。
第一章では本阿弥家によって高く評価された鎌倉時代後期の相州鍛冶・正宗ほかの作による国宝4件をはじめ名刀がまばゆいばかりの輝き放っているので、刀剣ファンは見逃すわけにはいきませんね。

「第一章 本阿弥家の家職と法華信仰ー光悦芸術の源泉」展示会場風景
左から、国宝《刀 無銘 正宗(名物 観世正宗)》相州正宗 鎌倉時代・14世紀
東京国立博物館、国宝《刀 金象嵌銘 城和泉守所持 正宗磨上 本阿(花押)》
相州正宗 鎌倉時代・14世紀 東京国立博物館 

光悦が実際に腰に着けていたと伝わる唯一の短刀や、蒔絵の装飾が見事な刀装(刀の外装)も
刀剣ファン必見です。


「第一章 本阿弥家の家職と法華信仰ー光悦芸術の源泉」展示会場風景
左から、重要美術品《短刀 銘 兼氏 金象嵌 花形見》志津兼氏
鎌倉~南北朝時代・14世紀、《(刀装)刻鞘変り塗忍ぶ草蒔絵合口腰刀》
江戸時代・17世紀



光悦が熱心な日蓮法華宗の信徒であったことがうかがえるのも今回の展覧会の特徴です。

突如目の前に出現したのは、寺院の建物などに掲げられている扁額(へんがく)。
いずれも光悦が揮毫したものですが、堂々とした書体に驚かされます。


「第一章 本阿弥家の家職と法華信仰ー光悦芸術の源泉」展示会場風景
左から、《扁額「学室」》原品:本阿弥光悦筆 明治2年(1869)再刻
京都・常照寺、《扁額「本門寺」》本阿弥光悦筆 江戸時代・寛政4年(1627)
東京・池上本門寺、《扁額「妙法華経寺」》本阿弥光悦筆 江戸時代・寛政4年(1627) 
千葉・中山法華経寺、《扁額「正中山」》本阿弥光悦筆 江戸時代・17世紀
千葉・中山法華経寺


紺紙でなく珍しく紫紙に金字で書かれた経典は、重要文化財《紫紙金字法華経幷開結》(京都・本法寺)。
この経典は平安中期の能書家(書の名人)で「三蹟」の一人、小野道風(894-966)の写経と伝わり、第二章で展示されている重要文化財《花唐草文螺鈿経箱》(京都・本法寺)とともに、光悦によって京都・本法寺に寄進されたものです。

重要文化財《紫紙金字法華経幷開結》平安時代・11世紀
京都・本法寺 ※会期中、部分巻き替えがあります


こちらが重要文化財《花唐草文螺鈿経箱》(京都・本法寺)。
螺鈿(貝殻の光沢のある部分を嵌め込む工芸技法)による「法華経」の文字の周りに配置された唐草文は、まるで舞っているかのようにリズミカルに感じられます。

重要文化財《花唐草文螺鈿経箱》本阿弥光悦作
江戸時代・17世紀 京都・本法寺


京都・本法寺ゆかりの芸術家でよく知られているのが、東京国立博物館が所蔵する国宝《松林図屏風》の作者・長谷川等伯(1539-1610)。
法華信徒の縁で本法寺との付合いがあった等伯が、若くして亡くなった息子の久蔵の七回忌追善供養のために描いた長さ約10m、幅横6mに及ぶ大作、重要文化財《佛涅槃図》ほかの作品が同寺に所蔵されています。

京都の町衆(裕福な商工業者)や法華信徒のネットワークを築いて、書、漆芸、陶芸など総合芸術家として活躍した光悦が、偶然等伯と本法寺の境内で遭遇して、それがきっかけでコラボしたらどんな作品が生まれたのだろうか、と勝手に想像してしまいました。


実際に光悦とコラボしたのは、国宝《風神雷神図屏風》(京都・建仁寺)の作者・俵屋宗達(生没年不詳)。

こちらは宗達の筆によると伝わる屛風に、光悦が『古今和歌集』の和歌を一首ずつ書き記した色紙が貼られた、天才芸術家二人が競演する超豪華な作品《桜山吹図屛風》です。

《桜山吹図屛風》色紙:本阿弥光悦筆、屛風:伝俵屋宗達筆 
江戸時代・17世紀 東京国立博物館

金銀泥で装飾された色紙一枚一枚の文様がどれも見事なので、近くでじっくりご覧いただきたいです。


今回の展覧会のもう一つの特徴は、華麗で斬新な意匠の「光悦蒔絵」の作品が、光悦がたしなんだ謡曲(能楽の文章)が書かれた謡本の装飾から受けた影響がよくわかることです。


「第二章 謡本と光悦蒔絵ー炸裂する言葉とかたち」展示会場風景

雲母(うんも)の粉末を施した雲母摺(きらずり)の料紙、金銀泥で描かれた草花など贅を尽くした装飾の謡本と「光悦蒔絵」の作品が向かい合わせに展示されているので、両方を見比べながら「光悦蒔絵」の世界を楽しむことができます。


「第二章 謡本と光悦蒔絵ー炸裂する言葉とかたち」展示会場風景
重要美術品《忍蒔絵硯箱》江戸時代・17世紀 東京国立博物館


今回の光悦展の大きな見どころの一つは、長さ13mに及ぶ重要文化財《鶴下絵三十六歌仙和歌巻》(京都国立博物館)はじめ絵巻物が全期間かつ全面展示されることです。

絵巻物は展示スペースの関係で一部だけ展示されていることがよくありますが、今回はこのようにゆったりとした空間で最初から最後まで全部見られるのがうれしいです。

「第三章 光悦の筆線と字姿ー二次元空間の妙技」展示会場風景

圧巻は何といっても重要文化財《鶴下絵三十六歌仙和歌巻》(京都国立博物館)。
水辺にたたずむ鶴の群れが飛び立ち、波間に向かって降り、また空に向かって昇り、そしてふたたび水辺に降り立つ様が描かれた下絵は俵屋宗達によるもので、まるで動画を見ているような動きが感じられます。

その鶴の下絵の上に書かれた光悦による三十六歌仙の秀作三十六首を見ていると、鶴の羽ばたく音を聞きながら三十六歌仙の和歌がメロディーを伴って流れてくるように思えてきました。


重要文化財《鶴下絵三十六歌仙和歌巻》本阿弥光悦筆
俵屋宗達下絵 江戸時代・17世紀 京都国立博物館

音楽のアクセントのように太い文字と細い文字が配置された「肥痩をきかせた筆線」が特徴の光悦の書と、金銀泥で描かれた下絵が競演している作品からも心地よい調べが聴こえてくるようです。

「第三章 光悦の筆線と字姿ー二次元空間の妙技」展示会場風景
《蓮下絵百人一首和歌巻断簡》本阿弥光悦筆 江戸時代・17世紀
(左)京都・樂美術館、(右)サントリー美術館 展示期間:1月16日(火)~
2月4日(日) ※会期中、展示替えがあります


そしていよいよクライマックスの第四章へ。

照明を落とした展示室内はまるでプラネタリウムの中に入り込んだよう。

「第四章 光悦茶碗ー土の刀剣」展示会場風景


ここで輝きを放っているのは何万光年も彼方の星座ではなく、眼の前の小さな光悦作の茶碗に広がる雄大な景色なのです。

元和元年(1615)、徳川家康から京都北部の鷹峯の地を拝領した光悦は、この地に住み、茶碗づくりを生業とした樂家(らくけ)との交流を通じて茶碗の制作づくりに励みました。

光悦が作る茶碗の特徴は「手捏ね(てづくね)」。
形は均一でなく、ひび割れもあったりして一見すると無骨なように見えますが、土をこねたり、茶碗をかたちづくるときの手の動きがわかるようで、見ているうちに味わいが深まってくるものばかりです。

《黒楽茶碗 銘 村雲》本阿弥光悦作 江戸時代・17世紀
京都・樂美術館




展覧会オリジナルグッズも充実してます!


会場内の特設ショップには、展示作品がデザインされたマスキングテープ、トートバッグ、Tシャツ、クリアファイル、筆ペンなど展覧会オリジナルグッズが盛りだくさん。
刀剣ペーパーナイフは別売の刀掛けとあわせて購入すると卓上に飾ることもできる優れもの。
会場内特設ショップにもぜひお立ち寄りください。





すべての展示作品を豊富なカラー図版と詳細な解説で紹介している展覧会公式図録もおすすめです。名品の数々が超拡大のグラビアページで掲載され、各章の解説やコラムも充実していて見応え十分の図録です。




まさに決定版の光悦展です。
多才な芸術家・本阿弥光悦が生みだした深淵な大宇宙をぜひお楽しみください!

2024年2月2日金曜日

都市にひそむミエナイモノ展(SusHi Tech Square 1F Space) 

東京・有楽町駅前にあるSusHi Tech Square 1F Spaceでは、第2期展覧会「都市にひそむミエナイモノ展」が開催されています。


昨年(2024年)8月30日にメディアアートとテクノロジーが体験できる無料スペースがオープンして、第1期展覧会「わたしのからだは心になる?」も謎かけのようなタイトルで、どのような内容なのかは体験するまでわかりませんでしたが、今回の展覧会のタイトルもミステリアス。

「ミエナイモノ」がどのように展示されているのか、興味津々でしたのでさっそく取材に行ってきました。


「都市にひそむミエナイモノ展」開催概要


会 期:2023年12月15日(金)~2024年3月10日(日)
         会期が3月24日(日)まで延長されました! 
休業日:月曜日(ただし2月12日は開場)、2月13日
開場時間:平日11:00~21:00(最終入場20:30)/土休日10:00~19:00(最終入場18:30)
入場料金:無料
会場:SusHi Tech Square 1階
公式サイトはこちらです⇒https://sushitech-real.metro.tokyo.lg.jp/second/

※会場内は写真、動画撮影OKです。

展示は8つの展示エリアと2つの特別展示のエリアに分かれていて、それぞれ現代のクリエーターたちの意欲的な作品を鑑賞したり、体験したりして楽しむことができます。


アートコミュニケーターによる展示鑑賞ツアーがおすすめです!

会場では、赤いスカーフと缶バッチを着けたアートコミュニケーターによる展示作品の解説や会場の楽しみ方を紹介する鑑賞ツアーが実施されています。

 ・ビジネスパーソン向け鑑賞ツアー 平 日 18:30-19:00
 ・ファミリー向け鑑賞ツアー    土休日 13:30-14:00

おうかがいいしたのが土曜日でしたので、ファミリー向け鑑賞ツアーに参加しました。

それぞれの作品に興味津々の子供たちが多く参加して鑑賞ツアーは盛り上がりました。
解説を聞くと新たな発見があったりするので、鑑賞ツアーに参加するのがおすすめです。

それでは、さっそくいくつかの作品をご紹介したいと思います。


<現実とフィクションの景色に境界はあるのか?>
クリエイター:セーマン・ペトラ
作品名:About their distance

最初にご紹介するのは、日本のアニメに深い影響を受けたハンガリー出身のセーマン・ペトラさんの作品「About their distance」。




これは、アニメに描かれたセーマンさん自身が電車に乗ったりしながら都会の中のアニメの舞台となった場所を訪れ、普段通っているなにげない場所が、実はある人にとってはアニメの聖地だったことを発見するという内容の作品です。

ピンク色の服を着ている若者がセーマンさんご自身です。
映像を見ている私たちもいっしょに聖地巡礼をしているような楽しい気分になってきます。







<都市でAIに見つからないためには?>
クリエイター:Tomo Kihara & Playfool
作品名:How (not) to get hit by a self-driving car
 

続いてはAIとの知恵比べ。
AIに見つからないように横断歩道を渡り切るゲーム「How (not) to get hit by a self-driving car」。
クリエーターは、「遊び」をテーマに創造性を育む道具のデザインや、社会・都市に介入するアートプロジェクトを展開している協働チームTomo Kihara & Playfool です。




多くの親子連れが訪れていて、未就学児くらいの子どもたちが正面から行かないで脇を通ったり、四つん這いになったり、赤いコーンをかぶったりして、見つからないように工夫をしながらトライしていました。

AIというと、私たち大人はこれからどうやって付き合っていけばいいのかと思い悩んでしまいますが、この作品のように小さい時からAIと接していれば、この子たちが大きくなる頃には、AIに使われるのでなく、うまくAIを使っていけるのではないのかと思いました。


<人工生命は環境からどんな影響を受けるのか?>
クリエイター:菅野創+加藤明洋+綿貫岳海
作品名:かぞくっち


手前は東京湾。高層ビル群やスカイツリーも見えています。そして後方には緑いっぱいの高尾の山々。
東京都の勾配を模した展示台の上を動き回る小さなロボットたちは《かぞくっち》の家で、都会や自然の中などの環境の影響を受けながら、家の中にいる人工生命の家族が暮らしていくのです。




今回展示されている「東京」の舞台は約10分のサイクルで昼と夜が訪れます。
明るさや時間帯、傾斜などの環境の変化によって《かぞくっち》の行動がどのように変化していくのかがわかる、まるで子どもの頃に遊んだ「人生ゲーム」のAI版のように思えました。





<現代都市の「楽園」は、どこにひそんでいるのだろう?>
クリエイター:藤倉麻子
作品名:あの山の裏/Tire Tracker


大きなベニヤのボードの画面に湖に映る山が見えてきました。
こちらは「山の裏」にユートピアがあると考えている藤倉麻子さんの作品です。




上の写真の画面の中央と、右の入口から山の裏側に入ることができますが、そこにあるのは藤倉さんがイメージするユートピア。
ネタバレになってしまうので裏側の写真は載せませんが、みなさんにとってユートピアがどこに潜んでいるのイメージしてみるきっかけになるのかもしれません。

少しだけお見せすると…
隅っこに置かれている黒い物体は、作品のタイトルにもある車体から外された「タイヤ」。
これはユートピアに向かうためのタイヤなのかもしれません。




まだまだほかにも楽しい作品があります。

初代ゴジラが破壊する東京をテーマにした、クリエイター:佐藤朋子さんによる「オバケ東京のためのインデックス 序章 Dual Screen Version」は上映時間55分の大作。




クリエイター:島田清夏(東京藝術大学大学院 美術研究科 先端芸術表現専攻 八谷和彦研究所)さんによる特別展示の作品「おとずれなかったもう一つの世界のための花火」は、COVID-19によって2020年に中止された日本の花火を、あり得たかもしれないもう一つの世界として、花火師としても活動している島田さんが実際に花火を打ち上げたもので、1日を1秒に見立てた365秒の花火パフォーマンスを楽しむことができます。





見るだけでなく参加型の展示があるのもこの展覧会の特徴です。

「ボイスウォール」には、東京のまちで見つけたミエナイモノ、見つけたいミエナイモノをシール紙に書いて貼ることができます。

さてみなさんにとってミエナイモノは何でしょうか?




スタンプラリーも開催しています。
すべてのスタンプを集めて最後にゴールに行くと、楽しいオリジナルステッカーがもらえます。(下の写真、左がスタンプラリーの台紙、右がオリジナルステッカー)




大人向けの鑑賞ガイド(下の写真左)も、子ども向けの鑑賞ガイド(同右)もあります。




お勤めの方は平日の仕事帰りに寄ることもできますし、親子連れの方は一日中いても飽きない展覧会です。
ぜひお気軽にお越しください!

2024年1月14日日曜日

大田区立龍子記念館 高橋龍太郎コレクション連携企画「川端龍子+1(PLUS ONE) 濱田樹里・谷保玲奈 色彩は踊り、共鳴する」

開館60年を迎えた東京の大田区立龍子記念館では 高橋龍太郎コレクション連携企画「川端龍子+1(PLUS ONE) 濱田樹里・谷保玲奈 色彩は踊り、共鳴する」が開催されています。

展覧会チラシ

今回の展覧会は、高橋龍太郎氏の3000点以上におよぶ現代アートの所蔵作品の中から選ばれた、前期後期でそれぞれ一人の現代の美術作家の作品と、大田区立龍子記念館が所蔵する川端龍子作品を展示するとどのような共鳴を呼び起こすのかを試みたエキサイティングな企画です。

とても楽しみにしていた展覧会で、前期、後期とも行ってきましたが、遅ればせながら後期展示の様子をご紹介したいと思います。

展覧会開催概要


会 期  2023年10月21日(土)~2024年1月28日(日)
 前 期 2023年10月21日(土)~12月3日(日)
 後 期 2023年12月9日(土)~2024年1月28日(日)
開館時間 9:00~16:30(入館は16:00まで)
休 館  月曜日
入館料  一般 300円、中学生以下 150円
展覧会の詳細等は同館公式サイトをご覧ください⇒大田区立龍子記念館 

※撮影可能エリアがあります。館内で配布している作品リストでご確認ください。


前期には幼少期をインドネシアで過ごした濱田樹里さんの南国を思わせる情熱的な屏風の作品が展示されていました。

前期展示の展示風景

そして後期展示は、生命感あふれる色彩鮮やかな植物や動物が描かれた谷保玲奈さんの大画面の作品が展示されています。

展示風景

上の写真手前の天井から吊り下げられた約4mの作品《狭間にゆれる》(2023年 作家蔵)は、今回の展覧会にあわせて制作された新作です。

谷保さんの作品は、近くで見ると様々な種類の草花や、蝶々や魚、さらには人間の内臓のような得体の知れないものまで描かれていて、とても魅力的でミステリアス。
《狭間にゆれる》に描かれているのは、ピンク色の大輪の牡丹、風に揺らめきながら百合の花に群がる蝶々の群れ。
画面下には気持ちよさそうに眠る猫を発見しました。

海の中のサンゴ礁を思わせる大作《ウブスナ》にはクラゲや金魚が描かれ、さらに手前には巨大なキノコまで見えてきます。

谷保玲奈《ウブスナ》2017年
高橋龍太郎コレクション蔵

白砂のビーチが美しい横須賀のたたら浜に谷保さんの対の作品《共鳴/蒐荷》(2018/2020)を設置して撮影した映像作品が展示室内に流れていますが、海鳥の鳴き声と波の音が何とも言えず心地よいです。


谷保玲奈《共鳴》2018年
高橋龍太郎コレクション蔵


谷保玲奈《蒐荷》2020年
高橋龍太郎コレクション蔵


谷保さんの作品と「会場芸術」を唱えた川端龍子の作品ー新旧の大画面の大作が時代を超えて一つの空間の中で共鳴して独特の雰囲気を醸し出していますが、今回の特徴のひとつは出品作家さんがセレクトした川端龍子作品が展示されていることです。
後期には、谷保さんが日本画ってかっこいいと思ったという《草の実》(1931年 大田区立龍子記念館蔵)はじめ生命感が感じられる龍子作品が展示されています。

また、今回は同館に隣接する龍子公園内にある龍子のアトリエで、谷保さんが昨年12月13日(水)~19日(火)に滞在制作を行いました。現在は終了していますが、会期中の10:00~、11:00~、14:00~の龍子公園の案内時にはアトリエ外周から新作を含めた大作、小作をご覧いただくことができます。

龍子公園内の龍子のアトリエ
※谷保さんの滞在制作時に撮影したものです。

会期は1月28日(日)までです。
まだの方はぜひ!

2024年1月9日火曜日

大阪中之島美術館 決定版! 女性画家たちの大阪

大阪中之島美術館では一足早い春の訪れを告げる展覧会、決定版! 女性たちの大阪が開催されています。


展示室前フォトスポット


昨年(2023年)に大阪中之島美術館と東京ステーションギャラリーで開催された特別展「大阪の日本画」で多くの女性日本画家たちの活躍ぶりがクローズアップされましたが、今回は、生き生きとした女性像や、古き良き大阪の街のにぎわいなどを描いた大阪の女性画家たちの作品にフォーカスを当てた展覧会です。

50名を超える近代大阪の女性日本画家の作品約150点が展示され(会期中展示替えあり)、期待通り充実の内容の展覧会でしたので、さっそく展示の様子をご紹介したいと思います。


展覧会開催概要


会 期  2023年12月23日(土)~2024年2月25日(日)
     前期:2023年12月23日(土)~2024年1月21日(日)
     後期:2024年1月23日(火)~2月25日(日)
     *会期中展示替えあり
休館日  月曜日(1/8、2/12は開館)
開場時間 10:00-17:00(入場は16:30まで)
     *2月10日~2月25日の期間は10:00-18:00(入場は17:30まで)
会 場  大阪中之島美術館 4階展示室
観覧料  一般 1800円、高大生 1000円、中学生以下無料
展覧会の詳細、関連イベント等は同館公式サイトをご覧ください⇒大阪中之島美術館 


展示構成
 第1章 先駆者、島成園
 第2章 女四人の会ー島成園、岡本更園、木谷千種、松本華羊
 第3章 伝統的な絵画ー南画、花鳥画など
 第4章 生田花朝と郷土芸術
 第5章 新たな時代を拓く女性たち


※会場内は第5章を除き撮影不可です。掲載した写真はプレス内覧会で美術館より許可を得て撮影したものです。


見どころ1 先駆者、島成園の画業の流れがよくわかる!


今回の展示の見どころのひとつは近代大阪における女性日本画家の先駆者、島成園(1892-1970)の画業の流れがよくわかる構成になっていることです。

第1章展示風景


ここで最初に注目したいのは、《宗右衛門町之夕》(個人蔵 通期展示)。

島成園《宗右衛門町之夕》大正元年頃
個人蔵 通期展示 

この作品は、大正元年(1912)、当時はまだ無名の画家だった20歳の島成園が第6回文部省美術展覧会(文展)に入選した《宗右衛門町の夕》の姉妹作。
舞妓さんの晴れやかな着物の柄、温かみが感じられる表情に心がなごみます。
第6回文展受賞作《宗右衛門町の夕》は現在、所在不明ですが、この《宗右衛門町之夕》からも受賞作の華やいだ雰囲気が伝わってくるように感じられます。

次に注目したいのは、文展の後身・帝国美術院展覧会(帝展)の第2回展(大正9年(1920))の入選作で、賛否両論があり、世間の注目を集めた成園の代表作《伽羅の薫》(大阪市立美術館 通期展示 下の写真右)。

第1章展示風景

イギリスの世紀末を代表する画家ビアズリーの代表作《サロメ》を彷彿させる大胆な構図、ビアズリーが黒と白の対比で描いたのに対して赤、黒、白、金で描かれたこの作品は「不快」とまで批判されましたが、仮に100年後の現在、新作として展覧会に出品されても強烈なインパクトを放ち、話題の作品になったのではないかと思えるほど斬新な作品です。

《無題》《自画像》(どちらも大阪市立美術館 通期展示)のように先駆者ならではの苦悩が感じられる作品も展示されています。
特に《自画像》からは、思うように描けないという焦燥感が伝わってきて、作品の前に釘付けになってしまいました。


島成園《自画像》大正13年(1924)
大阪市立美術館 通期展示


28歳で結婚した成園は、銀行員の夫とともに上海に滞在しますが、スランプの時期だったとはいえ、上海で描いた作品は、上海のエキゾチックな雰囲気が感じらてとても好きな作品です。

左から 島成園《上海にて》大正14年頃 《上海娘》大正13年
どちらも大阪市立美術館 前期展示(12/23-1/21)
後期(1/23-2/25)には《上海婦人》大正13年 大阪市立美術館、
《燈籠祭之夜》大正14年頃 福富太郎コレクション資料室
が展示されます。


見どころ2 島成園と同時代の女性日本画家がそろい踏み!


女四人の会

第2章で紹介されるのは、島成園の文展入選に勇気づけられて、その後の文展に入選した同時代の女性日本画家、岡本更園(1895-不詳)、木谷(旧姓・吉岡)千種(1895-1947)、松本華羊(1893-1961)。

第2章展示風景


4人は伊原西鶴の『好色五人女』を研究し、物語に登場した人物の美人画を制作して「女四人の会」展で発表しましたが、今回の展覧会ではそのうち2点が展示されています。


左 島成園《西鶴のおまん》 右 岡本更園《西鶴のお夏》
どちらも大正5年(1916) 個人蔵 通期展示

島成園が描く侍姿の娘おまんの流し目には、目を合わせたらスーッと吸い込まれそうな凄味が感じられます。

ほかにも岡本更園の第8回文展入選作《秋のうた》(大正3年(1914) 個人蔵 通期展示)、木谷千種の第12回文展入選作《をんごく》(大正7年(1918) 大阪中之島美術館 前期展示)、第12回文展に落選したとはいえ、棄教を拒否して処刑を待つ若い遊女の凛とした姿が描かれた松本華羊の《殉教(伴天連お春)》(大正7年(1918)頃 福富太郎コレクション資料室 通期展示)をはじめ、「女四人の会」のそれぞれ個性豊かな逸品が展示されています。

第2章展示風景


花鳥画、山水画も優品ぞろい


「大阪の日本画」展で見る機会があった2人の女性日本画家、水墨で描く山水画を得意とした橋本青江(1828-1905頃)と、青江の弟子で青緑山水の優品を残した川邊青蘭(1868-1931)をはじめとした山水画の作品にふたたびめぐり会えるのも今回の展覧会の楽しみの一つでした。


第3章展示風景

特に筆者は、「西の青江、東の晴湖」と並び称された奥原晴湖の明清絵画の影響を受けた山水画の大ファンなので、同じく中国文人文化に憧れた橋本青江の山水画はじわっと心に沁みてくるのです。

第3章展示風景


古き良き大阪の雰囲気を伝える生田花朝

「大阪の日本画」展で見て特に印象的だった生田花朝(1889-1978)が描く大阪の祭礼や寺社の風景は、見たことがないのになぜか懐かしさを感じさせてくれる作品ばかりです。

第4章展示風景

三歳年下の島成園が二十歳で文展に入選して、その後若い女性画家が文展で入選する一方で、文展での落選が続いた生田花朝が初めて官展に入選したのは遅く、大正14年(1925)に開催された第6回帝展、花朝35歳の時でした。
それでも翌年の第7回帝展では《浪花天神祭》が特選を受けるという栄誉に浴し、それからも生涯にわたり大阪の風物を描きました。
特選を受賞した大作《浪花天神祭》は現在、所在不明ですが、天神祭を描いた作品は人気を博したので、その後も描き続け、今回の展覧会で展示されている《天神祭》(上の写真右 昭和10年(1935)頃 大阪府立中之島図書館 通期展示)もそのうちの1点です。


見どころ3 次の世代も百花繚乱、多士済々!


第5章には、大正から昭和初期にかけて、「成」の字を雅号に授かった島成園の門下生や、木谷千種の画塾・八千草会、大阪画壇を代表する日本画家の一人、北野恒富の画塾・白耀社をはじめとした画塾で腕を磨いた、島成園たちの次の世代の女性画家の作品が展示されています。


第5章展示風景



第5章展示風景


下の写真《淀殿》(大正後期-昭和前期 個人蔵 通期展示)は、「喜代子」と記された落款以外に作者の情報がなく、第2章に展示されている木谷千種の《化粧(原題・不老の願い)》(昭和2年(1927) 個人蔵 前期展示)と作風や画題が似ていることから、八千草会出品作家の中に「喜代子」という名前の作者が確認できたので、この屏風が「西口喜代子」の作品と判定されたものです。

西口喜代子《淀殿》大正後期-昭和前期
個人蔵 通期展示


作者もミステリアスなら、描かれた人物もミステリアス。
《淀殿》は仮のタイトル。着物の柄の「太閤桐」の文様などからこの女性が豊臣秀吉の側室、淀殿ではないかと思われているものなのです。

先ほどご紹介した生田花朝の画室は昭和20年3月の大空襲で焼失してしまったように、きっと多くの作品が戦災で失われたことでしょう。それでもすそ野が広かった大阪の女性画家たちの隠れた名作が見つかる可能性があるのもこれからの楽しみの一つかもしれません。



第5章展示風景



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巡回展はありません。
地元・大阪でぜひ大阪の女性画家たちの競演をご覧ください!