大阪・天王寺公園内にある大阪市立美術館では、大阪・関西万博開催記念 大阪市立美術館リニューアル記念 特別展「日本国宝展」が開催されています。
大阪市立美術館 |
今回の特別展は、そのタイトルのとおり日本の国宝が大阪に大集結する展覧会。
どれだけすごい内容なのかは、国宝の展示作品数を見ればわかります。
美術工芸品など美術館で展示できる900件あまりの国宝のうち、会期中に展示される国宝は135件。全体のおよそ14%に及ぶ国宝を見ることができるのです。
開会前に開催された記者内覧会に参加しましたので、さっそく展示の様子をご紹介したいと思います。
展覧会開催概要
会 期 2025年4月26日(土)~6月15日(日)
※会期中、一部の作品の展示替えがあります。
会 場 大阪市立美術館
開館時間 午前9時30分~午後5時
※土曜日・5月4日・5日は午後7時まで
※入館は閉館の30分前まで
休館日 毎週月曜日
※ただし4月28日、5月5日は開館
観覧料 一般 2,400円、高大生 1,700円、小中生 500円
※土曜・日曜・祝日は日時指定予約優先制です。
※チケットの購入方法、他館との相互割引、展覧会の詳細等は展覧会公式サイト
をご覧ください⇒大阪市立美術館 特別展「日本国宝展」
※展示室内は、撮影可の1点を除き撮影不可です。掲載した写真は、記者内覧会で主催者の許可を得て撮影したものです。
展示構成
Ⅰ ニッポンの国宝ー美の歴史をたどる
1 日本美術の巨匠たち
2 いにしえ文化きらきらし
3 祈りのかたち
4 優雅なる日本の書
5 和と漢
6 サムライ・アート
Ⅱ おおさかゆかりの国宝ー大阪の歴史と文化
日本の美を未来へー紡ぐプロジェクト
特集展示 皇居三の丸尚蔵館収蔵品にみる万博の時代
展示は、西洋の大聖堂を思わせる堂々とした列柱が並ぶ中、正面階段を上って2階の第1会場から始まります。
第1会場の冒頭は「1 日本美術の巨匠たち」。
2つの部屋に分かれた「1 日本美術の巨匠たち」には、雪舟、狩野永徳、長谷川等伯、俵屋宗達、本阿弥光悦、尾形光琳、円山応挙、伊藤若冲はじめ、誰もが一度は聞いたことがあって、日本史の教科書でも見たことがある芸術家たちの作品がずらりと並びます。
「1 日本美術の巨匠たち」展示風景 |
中でも桃山時代に火花を散らした二人のライバル、狩野永徳と長谷川等伯の二人の作品の競演が見られるのは大きな楽しみです。
狩野永徳の作品の展示は次のとおりです。
《花鳥図襖》 狩野永徳筆 京都・聚光院 4/26-5/25
《唐獅子図屏風》 右隻 狩野永徳筆 左隻 狩野常信筆 国(皇居三の丸尚蔵館収蔵) 5/20-6/15
一方、長谷川等伯の方は、等伯一門が手掛けた京都・智積院の金碧障壁画から、長谷川等伯の長男・久蔵の金碧障壁画《桜図》が4月26日から5月18日まで、そして長谷川等伯の《楓図》が5月13日~6月1日の間に展示されます。
《桜図》長谷川久蔵筆 京都・智積院 展示期間 4月26日~5月11日 |
今をときめく伊藤若冲の《動植綵絵》は30幅のうち3幅が展示されますが、5月18日までなのでお見逃しなく!
《動植綵絵のうち秋塘群雀図・群鶏図・芦雁図(左から)》伊藤若冲筆 国(三の丸尚蔵館収蔵) 展示期間 4月26日~5月18日 |
日本美術界のビッグネームといえば画僧・雪舟。
雪舟の作品は後半に3点展示されます。
《四季山水図巻(山水長巻)》 雪舟筆 山口・毛利博物館 5/27-6/15(巻き替えあり)
《天橋立図》 雪舟筆 京都国立博物館 5/27-6/8
《慧可断臂図》 雪舟筆 愛知・齊年寺 5/27-6/15
続いて、「2 いにしえ文化きらきらし」へ。
会場の中央に鎮座するのは、縄文時代の6件の国宝のうち土器では唯一国宝に指定されている《深鉢型土器(①火焔型土器 ②王冠型土器)》。
ほかの5件はすべて土偶で、そのうち今回の特別展では《土偶(縄文のビーナス)》(長野・茅野市(茅野市尖石縄文考古館保管) 5/20-6/8)が大阪に降臨します。(展示場所はのちほどご紹介します。)
「3 祈りのかたち」では、大阪市立美術館の館蔵品で初めて国宝に指定された《物語下絵料紙金光明経 巻第二》に注目したいです。
制作途中の絵巻の下絵が写経の料紙として再利用されたもので、よく見ると貴族の邸宅の下絵が描かれているのがわかりますが、どの物語なのかは判明しないとのことです。
《物語下絵料紙金光明経 巻第二》大阪市立美術館 展示期間 4月26日~5月18日 |
《物語下絵料紙金光明経 巻第二》の展示は5月18日までですが、5月20日から6月15日まではもともとセットだった《白描下絵料紙金光明経 巻第三》(京都国立博物館)が展示されます。こういった国宝展ならではのリレー展示もうれしいです。
経典はもちろんのこと、仏画も各地から優品が集まっています。
「4 優雅なる日本の美」
平安時代中期に日本独特の優美な書「和様」を完成させた三人の書家、小野道風、藤原佐理、藤原行成の「平安の三蹟」の作品が見られるのも大きな見どころの一つです。
「4 優雅なる日本の美」展示風景 手前が《書巻(本能寺切)》 藤原行成筆 京都・本能寺 展示期間 4月26日~5月18日 |
奔放な性格で「詫び状」(《離洛帖》畠山美術館)が後世、国宝になったことで知られる藤原佐理が若い頃に詠じた漢詩を書いた《詩懐紙》ほかは5月20日から展示されます。
《詩懐紙》 藤原佐理筆 香川県立ミュージアム 5/20-6/1
《古今和歌集 巻第十二残巻(本阿弥切)》 伝 小野道風筆 京都国立博物館 5/20-6/15
日本の中世に愛好された伝統的なやまと絵や、中国から伝来して日本で国宝になった中国書画の名品が並んで見られるのが「5 和と漢」のコーナー。
「日本の国宝」の代表格のひとつともいえる「伝源頼朝像」をはじめとした京都・神護寺三像《伝源頼朝像、伝平重盛像、伝藤原光能像》が展示されるのは6月3日から15日までのおよそ2週間限定です。
「伝源頼朝像」は今回の特別展のメインビジュアルの中でもひときわ大きく目立っています。
(下の写真左下)
「6 サムライ・アート」
国宝の刀剣がずらりと展示されるとなれば刀剣ファンは見逃すわけにはいきません。
古墳時代から大陸からの技術や文化の玄関口で、その後も経済・文化の中心地として発展してきた大阪には多くの文化財が集まっています。
国宝の件数では東京都、京都府、奈良県についで堂々の4位にランクインしている大阪府の国宝のラインナップはさすがに見応えがあります。
刀剣ファンのみなさん!「サムライ・アート」のコーナーだけでなく、ここにも刀剣が展示されてますのでお楽しみに!
第3会場に移ります。
特集展示「皇居三の丸尚蔵館収蔵品にみる万博の時代」では、海外の万博や国内での博覧会に出品された作品を収蔵する皇居三の丸尚蔵館の名品が展示されています。
暗がりの中に浮かび上がり、幻想的な雰囲気が感じられる聖観音菩薩立像。
今回の特別展で撮影可能な作品はこちら、巨大な《薬師寺東塔 水煙》です。
撮影の際には注意事項をご確認ください。
象に乗った普賢菩薩と、四天王のうち東を守る持国天が対面する静かな緊張感が漂う空間。
5月13日~25日にはここに《鑑真和上坐像》が展示されるのですが、どのような配置になるのか今から気になります。
右《普賢菩薩騎象像》東京・大倉集古館、左《四天王立像のうち持国天立像》 京都・浄瑠璃寺 どちらも通期展示 |
そして、最後のVIPルームには大きな作品ではなく、国宝の中では最も小さい《金印》が展示されています。最も小さいといっても、日本古代史の謎に迫る意味ではとてつもなく大きな国宝です。
金印の展示は5月7日までの展示。その後は、先ほどご紹介した縄文のヴィーナスが展示されます。
今回の特別展では、会場内に特設のグッズショップが設置されいています。
(地階のミュージアムショップもオープンしてます。)
国宝のぬいぐるみの充実ぶりがすごい!
展示作品のカラー図版満載で、作品やその背景が詳しく解説されたコラムが多く掲載されている展覧会公式図録は永久保存版です。
「映像体験コーナー 智積院障壁画に込めた豊臣秀吉の想い」では、大画面に映し出される智積院の金碧障壁画の迫力をぜひ体験いただきたいです。(映像体験コーナーも撮影不可です。)
特別展のご紹介は以上ですが、2階では大阪市立美術館の館蔵品を展示する「企画展示」が開催されているので、ぜひこちらもご覧いただきたいです。
(開催期間は特別展「日本の国宝展」と同じく4月26日から6月15日までです。)
今年3月1日から30日にかけて開催された「大阪市立美術館リニューアルオープン記念展 What's New! 大阪市立美術館 名品珍品大公開!!」はご覧になられましたでしょうか。
今回はその中から、「中国の彫刻」「富本憲吉と人間国宝」「大阪の洋画」がピックアップされて展示されています。(企画展示は一部を除き撮影可です。)
大阪をはじめ関西各地で大阪・関西万博開催を記念した展覧会が開催されているので、いつどの展覧会を見に行こうかスケジュールを立てるのが大変というぜいたくな悩みを抱えていますが、大阪で初めての「国宝展」は優先順位が高くなること間違いなし。
おすすめの展覧会です!