2021年12月31日金曜日

2021年 私が見た展覧会ベスト10

今年もコロナ禍の影響を大きく受けた一年でした。
緊急事態宣言で中断して再開した展覧会もありましたが、残念ながらそのまま閉幕を迎えた展覧会もありました。

そういった厳しい状況の中でも心にじわっとくるとてもいい展覧会を数多く見ることができたことは、とても幸せなことでした。

そこで今年も毎年恒例の「私が見た展覧会ベスト10」を発表したいと思います。


第1位 静嘉堂文庫美術館「 旅立ちの美術」


来年(2022年)秋に東京丸の内に移転オープンする前に武蔵野の面影が残る世田谷区岡本で開催された最後の展覧会。
二子玉川駅から歩く長い道のりが美術館に行くまでの気分を盛り上げてくれましたが、これも最後でした。
しかしながら決して「お別れ」でなく、「旅立ち」にふさわしい展覧会でした。

下の写真は、今年夏に三菱一号館美術館で開催された「三菱の至宝展」のフォトスポット。
フラッシュをたいて撮影すると現れるのは、国宝《曜変天目》(静嘉堂文庫美術館蔵)の模様です。
この展覧会もまさに至宝尽くしの豪華な内容でした。



第2位 東京藝術大学大学美術館「渡辺省亭-欧米を魅了した花鳥画-」


近年特に注目を集めるようになった孤高の日本画家、渡辺省亭の大規模回顧展。
後期は《十二ヶ月花鳥図》がずらりと展示されるはずでしたが、残念ながら緊急事態宣言の発令に伴い、前期展示のみで閉幕。
その後、岡崎会場、三島会場に巡回しましたが、見に行くことはかないませんでした。

何年か後にはぜひもう一度開催してほしい展覧会です。


東京藝術大学キャンパス内の案内看板


第3位 大田区立龍子記念館 コラボレーション企画展「川端龍子VS.高橋龍太郎コレクション」


大画面の迫力ある龍子作品と現代作家の大作が競演する迫力たっぷりの展覧会でした。
中でも特に印象に残ったのが、川端龍子《越後(山本五十六元帥像》(大田区立龍子記念館蔵)。
展覧会レポートにも書きましたが(⇒川端龍子VS.高橋龍太郎コレクション)、アメリカの国力の強さを知っていたため、対米開戦を避けたかった山本長官の無念さがひしひしと感じられる作品でした。

展覧会チラシ



第4位 国立科学博物館「大英博物館ミイラ展 古代エジプト6つの物語」


今年は古代エジプト展の当たり年。
去年の秋に来日した「国立ベルリン・エジプト博物館所蔵 古代エジプト展 天地創造の神話」(来年1月16日まで東京富士美術館で開催)に始まって、来年夏まで国内を巡回する「ライデン国立古代博物館 古代エジプト展-美しき棺のメッセージ-」、そして今年10月に国立科学博物館で始まって、来年5月まで神戸市立博物館で開催される「大英博物館ミイラ展 古代エジプト6つの物語」まで、3つの古代エジプト展が国内各地を巡回するという、古代エジプトファンにはうれしい年でした。

写真は「大英博物館ミイラ展 古代エジプト6つの物語」で展示されている、「ツタンカーメン王の黄金のマスク」のレプリカ。撮影可のエリアに展示されています。



まだまだ3館コンプリートのチャンスがありますので、ぜひチャレンジしてみてください!
それぞれの展覧会の紹介記事はこちらです。





第5位 東京ステーションギャラリー「小早川秋聲-旅する画家の鎮魂歌」


《國之楯》で一躍名を知られるようになった小早川秋聲の東京での回顧展。

日露戦争から満州事変、第二次世界大戦と続く激動の時代に画家として旅を続けて描いた作品に続き、戦後、平穏な境地にたどり着いた作品でホッとさせてくれる展覧会でした。

展覧会レポートはこちらです⇒小早川秋聲-旅する画家の鎮魂歌-

東京ステーションギャラリーエントランス


第6位 東京国立博物館 特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」


今年も数多くの特別展や、ほぼ毎週展示替えのある総合文化展(常設展示)で楽しませてくれたトーハクですが、どれか一つといえば「鳥獣戯画」。
コロナ禍で一度中断したので、見られないかと思ったら再開してくれたので、喜びもひとしおでした。

修復されて、動物や人物のくっきりとした墨の輪郭が見えるようになったのが印象的でした。

展覧会チラシ



第7位 奈良国立博物館 特別展「奈良博三昧-至高の仏教美術コレクション」


国立博物館の特別展なのに写真撮影すべてOK!
仏教美術が身近に感じられる展覧会でした。
伽藍神立像のインパクト大きかったです。

伽藍神立像(奈良国立博物館蔵)

第8位 大倉集古館 特別展「海を渡った古伊万里」~ウィーン、ロースドルフ城の悲劇~


昨年11月に開幕しましたが、コロナ禍の影響で中断後、今年2月から3月にかけて会期が延長されて再開した展覧会です。

圧巻は、第二次世界大戦後、ウィーン郊外のロースドルフ城に進駐したソ連兵によって破壊された陶磁器の陶片がインスタレーションとして展示されている「陶片の間」の再現コーナー。
ちょうど岩波新書『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』(大木毅著 2019年)を読んだ後だけに、敵の存在をこの世から抹殺することを目的とした絶滅戦争の恐ろしさを垣間見たような気がしました。


大倉集古館外観




第9位 すみだ北斎美術館 「しりあがりサン北斎サン-クスッと笑えるSHOW TIME」


いつも葛飾北斎や一門の浮世絵の展覧会で私たちを楽しませてくれる「すみだ北斎美術館」がしりあがり寿さんの作品とのコラボで「クスッと笑える」展覧会を開催してくれました。
理屈抜きに楽しめる展覧会でした。
展覧会レポートはこちらです⇒しりあがりサン北斎サン

展覧会チラシ





第10位 慶應義塾ミュージアム・コモンズ(KeMCo) 交景:クロス・スケープ


KeMCoは、今年4月にオープンした慶應義塾大学の大学ミュージアム。
グランド・オープン記念企画展示「交景:クロス・スケープ」に始まり、その後も定期的に趣向を凝らした展覧会が開催されていて、これからの展開が楽しみなミュージアムです。



KeMCoエントランス




まだまだ印象に残る展覧会は数多くあって今年も悩みましたが、みなさまのベストテンと共通するものがありましたでしょうか。

私のブログ「ドイツ~東と西~」も始めてから10年が経過しましたが、今年1年間で何万人もの方にアクセスいただけるようになりました。
みなさまご愛読ありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。

それではみなさま、よいお年をお迎えください!


「私が見た展覧会ベスト10」のバックナンバーはこちらです。