2015年11月21日土曜日

プラド美術館展(三菱一号館美術館)ブロガー特別内覧会

11月11日(水)に開催された「青い日記帳×プラド美術館展ブロガー特別内覧会」(三菱一号館美術館)に参加してきました。

美術館入口の前に浮かぶイルミネーション広告

この美術展は、2013年に国立プラド美術館で開催され、2014年にバルセロナに巡回した展覧会を再構成したもので、7つの章で構成されています。

Ⅰ 中世後期と初期ルネサンスにおける宗教と日常生活
Ⅱ マニエリスムの世紀:イタリアとスペイン
Ⅲ バロック:初期と最盛期
Ⅳ 17世紀の主題:現実の生活と詩情
Ⅴ 18世紀ヨーロッパの宮廷の雅
Ⅵ ゴヤ
Ⅶ 19世紀:親密なまなざし、私的な領域


それではまず第一章から。

Ⅰ 中世後期と初期ルネサンスにおける宗教と日常生活

会場に入るとまるで礼拝堂のような静けさに包まれた空間が広がります。
正面は今回の展覧会では唯一のテンペラ画(他はすべて油彩)。
作品リストによると、作者は「聖カタリナ伝説の画家」で、携帯用三連祭壇画の一部、とあって、表は《聖母の婚約》、裏は《苦しみのキリスト》です。



この展覧会のパンフレットですっかり有名になったヒエロニムス・ボスの《愚者の石の除去》(右)もこの部屋に展示されています。
左のハンス・メムリンク《聖母子と二人の天使》は、空の青と咲き乱れる花がとてもきれいです。
中央は偽ブレスの三連祭壇画《東方三博士の礼拝》、《12部族の使者を迎えるダビデ王》、《ソロモン王の前のシバの女王》。こちらも背景の空の青がとてもきれいです。


続いて狭い廊下を抜けると第二章です。

Ⅱ  マニエリスムの世紀:イタリアとスペイン

第二章はルネサンスを超克しようと試みたマニエリスム。曲線を多用した複雑な構図や、デフォルメされた人体の描写などが特徴です。
左がティツィアーノ・ヴェチェッリオ《十字架を担うキリスト》、右がソフォニスバ・アングイッソーラ《クレモナの詩人、ジョバンニ・バッティスタ・カゼッリ》。


エル・グレコも小品ながらいい味を出しています。
《エジプトへの逃避》(右)は、近くで見ると御者のひく細い手綱が白く描かれているのがわかります。左は《受胎告知》。エル・グレコらしくマリアがとても優しく綺麗に描かれています。



次の小部屋からこれに続く大きな部屋は第三章です。

Ⅲ バロック:初期と最盛期

第三章の部屋には、小品の多い今回の展覧会の中にあって、比較的大きめの作品が展示されています。
右から、ムリーリョの《ロザリオの聖母》、ルーベンスの《聖人たちに囲まれた聖家族》、コルネリス・デ・フォス《アポロンと大蛇ピュトン》。

ほどなくすると、ムリーリョ《ロザリオの聖母》の前でギャラリーツアーが始まりました。

はじめに高橋館長さんから歓迎のごあいさつ。


「今回の展覧会は三菱一号館美術館にぴったりの小さい作品を集めたので、小さい作品ばかりではないか、というご意見をいただくかと思いましたが、今までこのようなお叱りの声はお客様からは聞こえてきません。」
とユーモアを交えてお話を始められました。

「小さい作品はディテールを見るのにエネルギーを使います。先日、黒柳徹子さんがお見えになりましたが、じっくり2時間見られました。みなさんもぜひじっくり見てください。」
「バロック時代の大きな作品は、工房で制作し、画家本人は少し手を入れる程度でしたが、小さい作品は画家本人の手によることが多いという特徴があります。」

続いて担当学芸員の安井さん(左)からの作品解説。
特別内覧会のモデレーターTakさん(右)が手にしているのは展覧会の図録。
表紙はベラスケスの《ローマ、ヴィラ・メディチの庭園》。高橋館長がおっしゃてましたが、コローと言っても通用する印象派のはしりとも言える作品です。


安井さん
「この展覧会では、王室のプライベートコレクションから、大きな宮殿の中の小ぶりな部屋に合ったキャビネット・ペインティングを集めて構成したものです。」
「小さいものは大きなものより劣るのか、大きくないと美は宿らないのか、美とは何かと問うのが今回の展覧会のコンセプトです。ぜひとも、よく見て、よく感じていただければと思います。」

「こちらはルーベンスが王室の狩猟休憩塔の装飾用下絵(手前)に基づいてコルネリス・デ・フォスが描いた《アポロンと大蛇ピュトン》。アポロンとキューピットの目が合っていないとか、デ・フォスが原画と異なる表現をしているところが注目です。」


「ムリーリョもルーベンスもベネチアで勉強しました。ルーベンスの《聖人たちに囲まれた聖家族》は、原画はアントワープにありますが、この絵はルーベンスが自分用のコピーとして描いたものです。筆使いから見て、この絵は100%ルーベンスの筆によるものでしょう。」


第三章の作品が展示されているこの部屋には小品の静物画も展示されています。
手前はパンフレットに掲示されているファン・バン・デル・アメン《スモモとサワーチェリーの載った皿》。サワーチェリーの透明感が素晴らしいです。



Ⅳ 17世紀の主題:現実の生活と詩情
第四章には、展覧会図録の表紙になっているベラスケス《ローマ、ヴィラ・メディチの庭園》(左)、そしてクロード・ロラン《浅瀬》が展示されています。
こうやって見ると確かに初期印象派と言っても通用する絵のタッチです。
それにこのマントルピースが絵の良さを一層引き立てています。


こちらはヤン・ブリューゲル(2世)《豊穣》(左)とヤン・ブリューゲル(1世)《森の中のロバの隊列とロマたち》(右)が並んでいます。右の作品の空の青色がとてもきれいなのが印象的でした。


Ⅴ 18世紀ヨーロッパの宮廷の雅

第五章には、美術館入口のイルミネーション広告を飾るメングスの《マリア・ルイサ・デ・パルマ》が展示されています。両脇のルイス・パレート・イ・アルカーサルの《花束》がまさに華を添えている心憎い演出です。

風景を描いた作品も素晴らしいです。
左からミシェランジュ・ウアス《エル・エスコリアル修道院の眺望》、ガスパーレ・ヴァンヴィテッリ《ポジリポ(ナポリ)のグロッタ》、フィリップス・ワウウェルマン《タカ狩りの一団》。



Ⅵ ゴヤ
第五章は、ずばりゴヤ。
さすがに18世紀スペインを代表する画家だけあって、ゴヤだけで一章を構成しています。
左から《傷を負った石工》、《目隠し鬼》、《トビアスと天使》。
天使の光がまばゆいばかりです。



Ⅶ 19世紀:親密なまなざし、私的な領域
そして第七章も小品が続きます。
左からイグナシオ・ピナーゾ・カマルレンチ《ファウヌス(子供のヌード)》、マリアノ・フォルトゥーニ・イ・マルサル《日本式広間にいる画家の子供たち》と《ポルティチの浜辺のヌード》。



最後はマリアノ・フォルトゥーニ・イ・マルサルとライムンド・デ・マドラーゾ・イ・ガレータの《フォルトゥーニ邸の庭》(左)、ライムンド・デ・マドラーゾ・イ・ガレータ《セビーリャ大聖堂のサン・ミゲルの中庭》(右)。



写真右の作品は縦15.8㎝、横10㎝ととにかく小さいですがよく描き込まれています。

とても内容の充実した展覧会です。
みなさんもぜひ、作品一つ一つをじっくりご覧になっていただきたいと思います。

※掲載した写真は主催者の許可を得て撮影したものです。

最後になりましたが、このたびは内覧会に参加させていただきありがとうございました。