2015年8月10日月曜日

「画鬼暁斎」ブロガー内覧会@三菱一号館美術館

8月6日(木)、三菱一号館美術館で開催中の「画鬼暁斎~幕末明治のスター絵師と弟子コンドル」のブロガー内覧会に参加してきました。


三菱一号館といえば英国人建築家ジョサイア・コンドルが設計した西洋風の近代建築の建物。
そこに型破りな河鍋暁斎の作品がどう展開されるのだろうかと、わくわくしながら会場に向かいました。

はじめに高橋館長からのごあいさつ。

「みなさま暑い中ようこそブロガー内覧会にお越しいただきました」との温かいお言葉のあと、
「三菱一号館美術館は西洋美術専門と見られているので、今回の展覧会は意外と思われるかもしれませんが、もともとこの美術館には西洋美術だけでなく、近代をいろいろな角度から見たいというコンセプトがありました。そこで以前からいつかは暁斎展を開催したいと考えていたのですが、開館5周年の企画として、コンドルが設計したこの三菱一号館にふさわしい企画として実現することができました。」と、この展覧会にかける思いのこもったお話をいただきました。

続いて、ナビゲーターのTakさんが今回の展覧会担当学芸員の野口さんに展覧会の見どころをおうかがいしました。

野口さん
「日本近代建築の父・コンドルにはもう一つの顔がありました。それは日本美術、日本文化好きという顔です。踊りも落語も好きでしたが、もっとも心血を注いだのが絵です。」

Takさん
「コンドルはなぜ暁斎に弟子入りしたのでしょうか?」

野口さん
「暁斎は、大衆的な浮世絵からフォーマルな狩野派まで勉強したので、なんでもできる絵師として、当時、大変人気がありました。コンドルが暁斎に目をつけたのも自然な流れであったと言えます」

Takさん
「今回の展示作品の見どころやエピソードは?」

野口さん
「まずは入口に入ってすぐにある「枯木寒鴉図」です。これは暁斎が第二回内国勧業博覧会に出品し最高賞をとったもので、暁斎の名を高めたターニング・ポイントとなった作品でした。
出品作品は売り物だったので価格をつけなくてはならなかったのですが、暁斎は当時としては破格の百円という価格をつけました。鴉(からす)一羽に百円は高すぎるのではという声に、『これまでの研鑚修行の対価だ』と応えたそうですが、これを意気に感じた榮太郎総本舗の当主・細田安兵衛が購入しました。この作品は以後『百円鴉』と呼ばれ、その後、鴉の絵の注文が多くなったとのことです。」

会場入口を入ると「枯木寒鴉図」の鴉(からす)がお出迎え

Takさん
「他に見どころはどの作品でしょうか?」
野口さん
「今みなさんがいらっしゃる部屋(Ⅳ.暁斎とコンドルの交流)は、かつてコンドルが所蔵していた作品を展示しています。また、暁斎は絵日記をつけていたのですが、ここによくコンドルが登場します。コンテールと書かれていますが、いっしょに日光に旅行に行ったりして、二人の間柄がよくわかります。あまりに多く出てくるので、そのうちコンドルの似顔絵のスタンプを作って押してます(笑)。」

ここがかつてコンドルが所蔵していた作品の部屋
(手前のガラスケースの中に展示されているのが絵日記)


野口さん
「ここから先はジャンル別になっています。 春画のコーナーもあります。暁斎の春画はおおらかで女性の方でも楽しんでいいただけるようなのでほっとしています(笑)。」

野口さんの楽しくてわかりやすい解説の後、会場内をめぐってみました。
展示は5つの章に分かれています。

Ⅰ.暁斎とコンドルの出会い-第二回内国勧業博覧会
   ここに先ほど紹介した「枯木寒鴉図」や、コンドルが設計した上野博物館(現在の東京国立博
  物館。ここで内国勧業博覧会が開催された。)も描かれた明治初期の上野山の絵が展示されて
  います。
  
Ⅱ.コンドル-近代建築の父
  コンドルが設計した鹿鳴館の写真と、階段の一部が展示されています。この階段は三菱一号館の一部ではと思えるほどこの建物の雰囲気にマッチしています。
 


Ⅲ.コンドルの日本研究
 師・暁斎について絵の修行をしたコンドルの作品が展示されています。
画号は「暁英」。イギリスから来た暁斎の弟子、という意味でしょうか。
鯉などいい雰囲気出してます。鷹の目がかわいらしいのはご愛嬌。


Ⅳ.暁斎とコンドルの交流
 ここは先ほど紹介した、かつてコンドルが所有していた作品の部屋です。

Ⅴ.暁斎の画業
 ここから先はジャンル別になっています。
 
 1 英国人が愛した暁斎作品-初公開 メトロポリタン美術館所属作品
   題材は猿サルだったり、鷲だったり、鹿だったりとバラエティに富んでいます。



 
2 道釈人物図
   このコーナーはいかにも狩野派らしい作品が並びます。
   風神雷神図(下の写真左)けっこう迫力ありました。




  


 このコーナーを出ると、巨大な猫に驚くところを記念撮影できるスポットがあります。
   

 「3 幽霊・妖怪図」、「4 芸能・演劇」と続いたあとは「5 動物画」。
暁斎の鷹は獲物を追う鋭い目つきをしています。


続いて暁斎には珍しい「6 山水画」。
右の二幅は秋冬山水図。いい雰囲気出してます。


 7 風俗・戯画
   ここは蟹が綱渡りをしていたり、蛙が猪の背に乗っていたり、おもわず笑みが出てくる作品が 
  多いです。



 8 春画
   最近になってようやく日が当たるようになった春画。これは袋に入ったハガキ大の大きさの春
 画で、それぞれの月の祭礼や行事にちなんで明るく描かれています。
   写真では小さくてわかりにくいので、その場で現物をじっくりとご覧になってください。  


 そして最後は「9 美人画」。女の人が楽しそうに蛙の相撲をながめている作品(下の写真右)などけっこうなごめます。




作品を見終わってとても満足。
多才な暁斎の画業の全体像を見ることができる貴重な展覧会です。
9月6日(日)までです。お早めに。
詳細は公式サイトをご参照ください。

http://mimt.jp/kyosai/


最後になりますが、今回の内覧会を企画していただいたみなさま、ご招待いただきどうもありがとうございました。

※ 掲載した写真は、主催者の特別な許可をいただいて撮影したものです。