東京・墨田区のすみだ北斎美術館では、開館10周年記念 特別展 ベスト オブ すみだ北斎美術館ー隅田川両岸景色図巻と名品-が開催されています。
今回の特別展は、すみだ北斎美術館開館10周年を記念して開催される展覧会の第3弾で、タイトルどおり、北斎の肉筆画、「冨嶽三十六景」「諸国瀧廻り」など人気シリーズの錦絵、摺物、版本、門人たちの名作と、まさに「ベスト オブ すみだ北斎美術館」の作品がずらりと並び、見ごたえ十分の展覧会です。
遅ればせながら、先日、展覧会を拝見してきましたので、さっそく展示の様子をご紹介したいと思います。
展覧会開催概要
会 期 2026年9月15日(火)~2026年11月23日(月・祝)
※前後期で一部展示替えがあります。
前期:9月15日(火)~10月18日(日)
後期:10月21日(水)~11月23日(月・祝)
開館時間 9:30~17:30(入館は17:00まで)
休館日 毎週月曜日
(月曜が祝日または振替休日の場合はその翌平日)
開館:10月12日(祝・月)、11月23日(祝・月)
休館:9月24日(木)、10月13日(火)
※ただし2026年10月20日(火)は展示替えのため当特別展は休室。
会 場 3階・4階企画展示室
主 催 墨田区・すみだ北斎美術館
※2026年10月1日(木)から墨田区在住・在学の中学生は観覧料が無料になります。
※展覧会の詳細、チケット購入方法、各種割引の詳細、最新のイベント情報は同館公式ホームページをご覧ください⇒https://hokusai-museum.jp/
※3階・4階企画展示室は撮影禁止です。掲載した写真は、主催者より広報画像をお借りしたものです。
展示構成
1章 北斎の肉筆画
2章 北斎の錦絵
3章 北斎の摺物
4章 北斎の版本
5章 魅力的な門人
今回の特別展の見どころのひとつは、明治期に海外に流出したことが知られ、約100年ぶりに北斎の故郷すみだに帰ってきた幻の絵巻「隅田川両岸景色図巻」が展示されていることです。
全長7mにも及ぶこの絵巻は現存する北斎作品の中で最長。高精細複製画が展示されることがあるので全体の構図はわかっていても、原本を見ると川面に揺らめく舟や橋の影に気が付いて、より幻想的な雰囲気を感じることができました。
北斎の肉筆画は、前後期であわせて20点展示されるという豪華ラインナップ。
前期に展示される「魚介図」は、限られた色数と巧みな筆遣いで立体感を表現した作品で、細部まで丁寧に描き込まれていてとてもリアルな感じがします。
同じく前期展示の「朱描鍾馗図」は、北斎が当時流行していた疱瘡除けの祈りを込めて描いた作品で、疫病神をにらみつける鋭い視線、鐘馗の右背後から見える剣が、何ともいえない迫力を感じさせてくれます。
見どころのふたつめは、すみだ北斎美術館コレクションの中から、他での所蔵が知られていない柱絵や、”向岳北斎”という珍しい落款の作品など、他ではみられない希少な作品も展示されていることです。
北斎が西洋風の表現を追求していた時代に発表した「賀奈川沖本杢之図」や「阿蘭陀画鏡 江戸八景」は現存数が少なく貴重な作品です。横浜や江戸の景色を描いているのにどこか外国の風景のようなエキゾチックな雰囲気があります。
今でこそ埋め立てられて海が遠くなった横浜本牧も江戸時代には海岸の近くまでこんな大きな波が押し寄せていたのですね。
もちろん世界的な人気を誇る「冨嶽三十六景」シリーズをはじめとする色鮮やかな大判錦絵シリーズも展示されます。
「冨嶽三十六景」の中でも人気のビッグスリーのうち、「山下白雨」と「神奈川沖浪裏」は前期、「凱風快晴」は後期に展示されます。
みなさんご存じのとおり、「山下白雨」の画面右下の稲光はすみだ北斎美術館のロゴになっています。
北斎は生涯を通じて摺物を制作しましたが、とくに宗理期には狂歌師との交流を背景に、多くの狂歌入り摺物を手がけました。
すみだ北斎美術館には希少な作品も多く、「日本橋霞」、「高輪休茶屋」は”向岳北斎”という珍しい落款をもつ貴重な作品です。
| 葛飾北斎「日本橋霞」すみだ北斎美術館蔵(前期) |
摺物には空摺や金属摺など手の込んだ技法が用いられることが多いので、そのような技法を探すのを楽しみにしているのですが、「日本橋霞」の川面や、「高輪休茶屋」の海面には空摺が施されていました。
北斎は、絵師として活動を始めた頃から晩年まで、生涯にわたってさまざまな版本(出版物)を手がけました。
安永9年(1790)刊行の黄表紙『白井権八幡随長兵衛 驪比異塚』は、北斎が絵師としてデビューした翌年に出版された貴重な作品です。
狂歌絵本『画本狂歌 山満多山』は、珍しく販売時の袋もあわせて残されています。
袋には「山」という本のタイトルにちなんで、山姥と金太郎がキャラクターになって版元の蔦屋重三郎の店頭に掛ける掛看板をしたためた瞬間が描かれています。
北斎には、孫弟子まで含めると200人以上の門人がいたと伝えられています。
今回の特別展では、北斎門人の双璧、魚屋北溪や蹄斎北馬をはじめ、現在ではあまり知られていない二代葛飾北斎などの門人の作品が紹介されます。
前期に展示される蹄斎北馬の「夕立図」には、突然の雨にあわてて茶屋に駆け込む旅芸人たち、雨宿りする野菜売りや巡礼の人、茶屋の中には串だんごを焼くお店の人たちなどが活き活きと描かれています。大木の陰には、雨が止むのを待っている人たちも見えます。
二代葛飾北斎の「十六羅漢図」は後期に展示されます。
羅漢図に登場する龍は羅漢さんになついている姿をよく見かけますが、この作品では羅漢さんが手に持った皿から湧き出てくる黒煙からぬっと出てくる場面が描かれています。
ほかの羅漢さんたちも驚いたり、喜んだりとさまざま。迫力もありながらどことなくユーモラスなところが感じられる作品です。
前期は10月18日(日)まで。前期も後期もぜひご覧いただきたいです。
観覧の記念にフォトスポットで記念撮影もぜひ!