2026年9月24日木曜日

開館10周年記念 特別展 ベスト オブ すみだ北斎美術館―隅田川両岸景色図巻と名品—

東京・墨田区のすみだ北斎美術館では、開館10周年記念 特別展 ベスト オブ すみだ北斎美術館ー隅田川両岸景色図巻と名品-が開催されています。

展覧会チラシ


今回の特別展は、すみだ北斎美術館開館10周年を記念して開催される展覧会の第3弾で、タイトルどおり、北斎の肉筆画、「冨嶽三十六景」「諸国瀧廻り」など人気シリーズの錦絵、摺物、版本、門人たちの名作と、まさに「ベスト オブ すみだ北斎美術館」の作品がずらりと並び、見ごたえ十分の展覧会です。

遅ればせながら、先日、展覧会を拝見してきましたので、さっそく展示の様子をご紹介したいと思います。


展覧会開催概要


会 期  2026年9月15日(火)~2026年11月23日(月・祝)
     ※前後期で一部展示替えがあります。
     前期:9月15日(火)~10月18日(日)
     後期:10月21日(水)~11月23日(月・祝) 
開館時間 9:30~17:30(入館は17:00まで)
休館日  毎週月曜日
     (月曜が祝日または振替休日の場合はその翌平日)
     開館:10月12日(祝・月)、11月23日(祝・月)
     休館:9月24日(木)、10月13日(火)
     ※ただし2026年10月20日(火)は展示替えのため当特別展は休室。
会 場  3階・4階企画展示室
主 催  墨田区・すみだ北斎美術館

※2026年10月1日(木)から墨田区在住・在学の中学生は観覧料が無料になります。
※展覧会の詳細、チケット購入方法、各種割引の詳細、最新のイベント情報は同館公式ホームページをご覧ください⇒https://hokusai-museum.jp/
※3階・4階企画展示室は撮影禁止です。掲載した写真は、主催者より広報画像をお借りしたものです。




展示構成
 1章 北斎の肉筆画
 2章 北斎の錦絵
 3章 北斎の摺物
 4章 北斎の版本
 5章 魅力的な門人


今回の特別展の見どころのひとつは、明治期に海外に流出したことが知られ、約100年ぶりに北斎の故郷すみだに帰ってきた幻の絵巻「隅田川両岸景色図巻」が展示されていることです。
全長7mにも及ぶこの絵巻は現存する北斎作品の中で最長。高精細複製画が展示されることがあるので全体の構図はわかっていても、原本を見ると川面に揺らめく舟や橋の影に気が付いて、より幻想的な雰囲気を感じることができました。


葛飾北斎「隅田川両岸景色図巻」(部分)すみだ北斎美術館蔵
(半期巻き替え・通期)



北斎の肉筆画は、前後期であわせて20点展示されるという豪華ラインナップ。
前期に展示される「魚介図」は、限られた色数と巧みな筆遣いで立体感を表現した作品で、細部まで丁寧に描き込まれていてとてもリアルな感じがします。


葛飾北斎「魚介図」すみだ北斎美術館蔵(前期)



同じく前期展示の「朱描鍾馗図」は、北斎が当時流行していた疱瘡除けの祈りを込めて描いた作品で、疫病神をにらみつける鋭い視線、鐘馗の右背後から見える剣が、何ともいえない迫力を感じさせてくれます。

葛飾北斎「朱描鍾馗図」すみだ北斎美術館蔵(前期)



見どころのふたつめは、すみだ北斎美術館コレクションの中から、他での所蔵が知られていない柱絵や、”向岳北斎”という珍しい落款の作品など、他ではみられない希少な作品も展示されていることです。

北斎が西洋風の表現を追求していた時代に発表した「賀奈川沖本杢之図」や「阿蘭陀画鏡 江戸八景」は現存数が少なく貴重な作品です。横浜や江戸の景色を描いているのにどこか外国の風景のようなエキゾチックな雰囲気があります。

今でこそ埋め立てられて海が遠くなった横浜本牧も江戸時代には海岸の近くまでこんな大きな波が押し寄せていたのですね。


葛飾北斎「賀奈川沖本杢之図」すみだ北斎美術館蔵(前期)




もちろん世界的な人気を誇る「冨嶽三十六景」シリーズをはじめとする色鮮やかな大判錦絵シリーズも展示されます。
「冨嶽三十六景」の中でも人気のビッグスリーのうち、「山下白雨」と「神奈川沖浪裏」は前期、「凱風快晴」は後期に展示されます。
みなさんご存じのとおり、「山下白雨」の画面右下の稲光はすみだ北斎美術館のロゴになっています。


葛飾北斎「冨嶽三十六景 山下白雨」すみだ北斎美術館蔵(前期)



北斎は生涯を通じて摺物を制作しましたが、とくに宗理期には狂歌師との交流を背景に、多くの狂歌入り摺物を手がけました。
すみだ北斎美術館には希少な作品も多く、「日本橋霞」、「高輪休茶屋」は”向岳北斎”という珍しい落款をもつ貴重な作品です。


葛飾北斎「日本橋霞」すみだ北斎美術館蔵(前期)

摺物には空摺や金属摺など手の込んだ技法が用いられることが多いので、そのような技法を探すのを楽しみにしているのですが、「日本橋霞」の川面や、「高輪休茶屋」の海面には空摺が施されていました。

葛飾北斎「高輪休茶屋」すみだ北斎美術館蔵(前期)



北斎は、絵師として活動を始めた頃から晩年まで、生涯にわたってさまざまな版本(出版物)を手がけました。

安永9年(1790)刊行の黄表紙『白井権八幡随長兵衛 驪比異塚』は、北斎が絵師としてデビューした翌年に出版された貴重な作品です。

葛飾北斎『白井権八幡随長兵衛 驪比異塚』すみだ北斎美術館蔵(前期)



狂歌絵本『画本狂歌 山満多山』は、珍しく販売時の袋もあわせて残されています。
袋には「山」という本のタイトルにちなんで、山姥と金太郎がキャラクターになって版元の蔦屋重三郎の店頭に掛ける掛看板をしたためた瞬間が描かれています。


葛飾北斎『画本狂歌 山満多山』 袋 すみだ北斎美術館蔵(前期)

王子や高田馬場といった山手の神社仏閣が多く描かれた『画本狂歌 山満多山』には当時の色合いがきれいに残っています。

葛飾北斎『画本狂歌 山満多山』すみだ北斎美術館蔵(半期で頁替え)



北斎には、孫弟子まで含めると200人以上の門人がいたと伝えられています。
今回の特別展では、北斎門人の双璧、魚屋北溪や蹄斎北馬をはじめ、現在ではあまり知られていない二代葛飾北斎などの門人の作品が紹介されます。

前期に展示される蹄斎北馬の「夕立図」には、突然の雨にあわてて茶屋に駆け込む旅芸人たち、雨宿りする野菜売りや巡礼の人、茶屋の中には串だんごを焼くお店の人たちなどが活き活きと描かれています。大木の陰には、雨が止むのを待っている人たちも見えます。

蹄斎北馬「夕立図」楢﨑宗重コレクション すみだ北斎美術館蔵 (前期)



二代葛飾北斎の「十六羅漢図」は後期に展示されます。
羅漢図に登場する龍は羅漢さんになついている姿をよく見かけますが、この作品では羅漢さんが手に持った皿から湧き出てくる黒煙からぬっと出てくる場面が描かれています。
ほかの羅漢さんたちも驚いたり、喜んだりとさまざま。迫力もありながらどことなくユーモラスなところが感じられる作品です。

二代葛飾北斎「十六羅漢図」すみだ北斎美術館蔵(後期)


今回が初お披露目となる未公開作品、新規収蔵作品もあって、すみだ北斎美術館が所蔵する北斎や門人たちの名品のエッセンスがぎゅっと詰まった展覧会です。
前期は10月18日(日)まで。前期も後期もぜひご覧いただきたいです。


観覧の記念にフォトスポットで記念撮影もぜひ!

フォトスポット

国立新美術館 ルーヴル美術館展 ルネサンス 

東京・六本木の国立新美術館では、ルーヴル美術館展 ルネサンスが開催されています。

展覧会チラシ



真筆とされる絵画作品はわずか15点ほどしか現存しないレオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)の作品のうち、5点を所蔵するルーヴル美術館からレオナルドの傑作《女性の肖像》、通称《美しきフェロニエール》が初来日するというので、今回の展覧会をとても楽しみにしていました。
そのうえ、ボッティチェリ、ティツィアーノ、デューラー、クラーナハ、エル・グレコなどルネサンスを代表する巨匠たちの作品も来日するというのですから、期待度倍増。
さらに、油彩だけでなく、木版画や銅版画、ブロンズ彫刻、メダル、陶器、タペストリーなど、さまざまな技法が飛躍的に発展したルネサンス期ならではの表現を見ることができるので、みどころいっぱいというのもうれしいです。

開幕前に開催されたプレス内覧会に参加しましたので、さっそく展覧会の様子をご紹介したいと思います。

展覧会開催概要


会 期  2026年9月9日(水)~12月13日(日)
休館日  毎週火曜日 ※ただし、9/22、11/3、12/8は開館、11/4は休館
開館時間 10:00ー18:00 ※毎週金・土曜日は20:00まで ※入場は閉館の30分前まで
会 場  国立新美術館 企画展示室1E
     〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
観覧料  一般 2,400円 大学生 1,400円、高校生 1,000円
※12月7日(月)~13日(日)は日時指定制が導入されるため、日時指定券の購入が必要です。
詳細は展覧会公式ウェブサイト、展覧会公式SNSで発表されるのでご確認ください。
その他、展覧会の詳細等は展覧会公式ウェブサイトをご覧ください⇒https://www.ntv.co.jp/louvre2026/

       
※展示室内は撮影禁止です。掲載した写真はプレス内覧会で許可を得て撮影したものです。


展覧会は、ルネサンスを代表する人であるレオナルド・ダ・ヴィンチから導き出された4つのテーマ—旅、技法の革新と洗練、古代へのまなざし、肖像芸術の隆盛によって構成されています。


Ⅰ. 旅


展示室に入ってすぐに私たちをお出迎えしてくれるのは、異国情緒あふれる大画面の油彩画でした。

ヴェネツィアの画家《ヴェネツィア共和国の使節団を迎えるダマスクス総督》1511年頃
パリ、ルーヴル美術館


この作品が制作された当時、現在のシリア・アラブ共和国の首都ダマスカス(ダマスクス)は、エジプトやシリアを支配したマムルーク朝(1250-1517)の地方州都のひとつでした。
この作品は長い間、コンスタンティノープルを描いたものと考えられ、次いでカイロとされていましたが、円筒状の2層の壁で支えられた象徴的なドームを特徴とするウマイヤ・モスクの南ファザードが画面左側に描かれているので、ダマスクスの街と同定されたものです。
安全にシリア旅行ができた30年ほど前、ダマスクスのウマイヤ・モスクや、破壊される前のパルミラ遺跡を訪れた時のことを思い出して懐かしさがこみ上げてきました。


ドイツ・ルネサンスの巨匠アルブレヒト・デューラーの大ファンで、ドイツ・ニュルンベルクのデューラーの工房(デューラー・ハウス)にまで行った筆者としては、今回特に楽しみにしていたのがデューラー作の《サイ》でした。


アルブレヒト・デューラー《サイ》1515年(初版)
パリ、ルーヴル美術館


実際にサイを見たことがないデューラーは、自身の想像力を駆使して描いたので、背中に角が生えていたり、胴体はまるでアルマジロみたいに甲冑のようなものを見につけていたりと、実物とはかけ離れていますが、この迫力ある《サイ》はデューラーの死後にも7回重版されるほど人気を博しました。
二度にわたってイタリアを訪れたデューラーも、多くの巨匠たちと同じく旅が重要な芸術的転機になった画家でした。デューラーはイタリアで人体表現や遠近法を学び、イタリアの芸術家たちはデューラーの高度な版画技法に多くを学んだのでした。


Ⅱ.技法の革新と洗練


今回の展覧会では、ルネサンス期における技法の革新にも注目したいです。
特に版画芸術では、15世紀半ばにドイツで確立された活版印刷術が木版画の新たな流行をもたらし、同じくドイツで誕生してヨーロッパに広まった銅版画は、絵画や彫刻の複製に用いられるだけでなく、木版画とともに、自立した一つの芸術形式としてみなされるようになりました。

複製版画と呼ばれる分野を開拓した16世紀イタリアの版画家マルカントニオ・ライモンディの《パリスの審判》はラファエロの原作に基づく作品ですが、原作が失われてしまったので、この版画が時代を越えて多くの芸術家に参照され、以後の西洋美術に計り知れない影響を及ぼしたという美術史上とても重要な作品です。
19世紀フランスの画家エドゥアール・マネの《草上の昼食》(パリ、オルセー美術館)は、発表当時、激しい批判を受けましたが、この版画から着想を得たこともよく知られています(右下の3人の人物のポーズに注目!)。


マルカントニオ・ライモンディ、ラファエロ・サンツィオの原作に基づく
《パリスの審判》1513-1581年頃 パリ、ルーヴル美術館


今回の展覧会の出品作品の中でもっとも驚き、レオナルド作品をのぞくとイチ押しの作品はこちらです。

フランス、おそらくパリ《「田園風陶法」による楕円水盤》
1600-1650年 パリ、ルーヴル美術館


中央のヘビも、周囲の蛙も、ものすごくリアルで今にも動きそう。ヘビを取り囲むように泳ぐ魚たちもまるで生きているようです。
「田園風陶法」という言葉は初めて耳にしましたが、実際の動植物から直接取った型を用いたというのですから、2度驚いてしまいました。


Ⅲ.古代へのまなざし


古代ギリシャ・ローマの文化を規範としたルネサンス期に芸術家たちは、古代の文献や建物、彫刻を学びました。
フィレンツェのルネサンスを代表する画家ボッティチェリの《5人の天使に囲まれる聖母子》では、聖母マリアの青衣のドレープや、左側の天使の動きなどの描き方に、ボッティチェリの古代彫刻学習の成果が反映されているのでした。

サンドロ・ボッティチェリ《5人の天使に囲まれる聖母子》1470年頃
パリ、ルーヴル美術館

デューラーとともにドイツ・ルネサンスを代表する巨匠ルカス・クラーナハ(父)が描いた《三美神》は、ギリシャ神話に登場するゼウスと、オケアニデスの一人であるエウリュノメとの間に生まれた三姉妹。
ボッティチェリの《春(プリマヴェーラ)》(フィレンツェ、ウフィツィ美術館)をはじめ、多くの絵画に描かれていますが、16世紀当時の流行を反映した帽子やネックレスを見につけるなど、作者のオリジナリティが出ています。
一番右の女神が左手で左足首を持って、左足を持ち上げているポーズが気になります。

ルカス・クラーナハ(父)《三美神》1531年
パリ、ルーヴル美術館


携帯用小型祭壇画を形成していたこの2枚の板絵は、古代の豊穣の女神ケレスの彫像が描かれた絵画が覆いの役割を果たし、これをスライドさせると聖家族の絵画が現れるという仕組みでした。
ラファエロの名が記されていますが、ラファエロの最も有能な弟子だったジュリオ・ロマーノが師の構想に基づいて描いたものと考えられています。

ラファエロ・サンツィオ、ジュリオ・ロマーノ 右《豊穣》または《ケレス》、
左《聖母子と聖エリザベト、洗礼者聖ヨハネ》通称《小さな聖家族》
1517-1519年頃 パリ、ルーヴル美術館 



Ⅳ.肖像芸術の隆盛


ルネサンス期に大きく花開いたのが肖像芸術でした。

イタリア・ルネサンスの三大巨匠のうち、ラファエロに関連する作品は「Ⅱ.技法の革新と洗練」、「Ⅲ.古代へのまなざし」でご紹介しました。そして、レオナルドの作品は最後に登場しますが、「ミケランジェロの作品がない!」と思っていたところ、ここまで来て見つけました。
《ミケランジェロの肖像》です。

頭に巻いたターバンのしわのリアルさに目を奪われましたが、これは彫像の制作中に飛び散る石くずやほこりが髪につかないようにするためのもので、絵画や建築にも才能を発揮したミケランジェロの彫刻家としての自負の表れだったのです。

バッチョ・バンディネッリに帰属《ミケランジェロの肖像》
1522年頃 パリ、ルーヴル美術館


そしてレオナルド作品が展示されている部屋に移りますが、VIPルームのように1点だけが展示されいるのではありません。
そこにはレオナルド作品をより深く理解することができるように、メダルや油彩画など関連する作品があわせて展示されているので、ぜひ展示室内をぐるりと一周して作品をご覧いただきたいです。

注目したいのはそれぞれの肖像の顔の向きです。
15世紀のイタリアでは、ローマ皇帝やその一族の横顔を刻んだ古代のコインに倣って肖像メダルが製作されるようになり、その流行は次第にヨーロッパ中に広まりましたが、肖像は横顔でした。

ところが、ルーヴル美術館コレクションの基礎を築き、レオナルドをパリに招いたフランス国王フランソワ1世(在位1515-47)の肖像画は少し違います。
作者はルネサンス盛期のヴェネツィアの巨匠ティツィアーノ。
横向きのポーズは人物が静止した印象を与えるので、ティツィアーノは王の胴体を四分の三正面に向けて描いたのでした(四分の三正面観)。


ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《フランソワ1世の肖像》
1538年頃 パリ、ルーヴル美術館


《フランソワ1世の肖像》と並んで展示されているのは、横向きの《女性の肖像》。
かつてはレオナルドの《美しきフェロニエール》とされた作品で、モデルはフランソワ1世の愛妾と言われていましたが、今日の歴史学では架空の人物であったと考えられています。


ロンバルディアの画家《女性の肖像》通称《美しきフェロニエール》
1500-1512年頃 パリ、ルーヴル美術館


そしていよいよレオナルド作品の登場です。

レオナルド・ダ・ヴィンチ《女性の肖像》誤って付された別称
《美しきフェロニエール》1490-1497年頃 パリ、ルーヴル美術館

作品タイトルがとてもミステリアスな響きがしますが、これは、フランス革命を経て、18世紀末に王室コレクションがルーヴル美術館に移管された頃、ロンバルディアの画家の作品との混同が生じて、このレオナルド作品が誤って《美しきフェロニエール》と称されたのでした。
そして描かれた女性は、顔も胴体も四分の三正面を向いた「四分の三正面観」。
見る人によって印象は異なるでしょうが、私たちの気配に気が付いてこちらに振り向いたようにも、私たちに何かを語り掛けるようにも見えて、横顔の肖像画よりは私たちとの距離が近いように感じられます。


特設ショップにはルネサンスを代表するルーヴル美術館の傑作をイメージしたグッズをはじめ、豊富なレパートリーが揃っているので、お帰りにはぜひお立ち寄りください。


特設ショップ


絵画から彫刻、版画、素描、工芸まで、ルネサンスの多彩な作品をカラー写真とともに紹介して、テキストや資料も充実した展覧会公式カタログもおすすめです。
表紙の《美しきフェロニエール》はなんと実寸大です!


展覧会公式カタログ

巡回展はありません。
都内でレオナルド作品を中心としたルネサンス期の雰囲気をぜひお楽しみいただきたいです。

東京ステーションギャラリー 水滸伝

東京ステーションギャラリーでは、水滸伝が開催されています。


東京ステーションギャラリー入口

ご存じ『水滸伝』は、北宋第八代皇帝・徽宗(在位1100-25)の時代、群盗・宋江(そうこう)率いる108人の豪傑たちが梁山泊に集まり活躍したものの、最後は悲惨な結末を迎えるという物語。
日本には江戸中期に伝えられ、一大ブームを巻き起こしました。

今回の展覧会は、『水滸伝』に着想を得た江戸時代から現代に至るまでの日本の作品や、舞台となった北宋時代の雰囲気を伝える中国の美術品などから『水滸伝』の魅力に迫る見どころ満載の内容です。

開幕前に開催されたプレス内覧会に参加しましたので、さっそく展覧会の様子をご紹介したいと思います。

展覧会開催概要


展覧会名 水滸伝
会 場  東京ステーションギャラリー(東京都千代田区丸の内1-9-1)
会 期  2026年9月19日(土)~11月8日(日) ※会期中、一部の作品の展示替えがあります。
休館日  月曜日(ただし10/12、11/2は開館)、10/13(火)
開館時間 10:00~18:00(金曜日~20:00) *入館は閉館30分前まで
入館料  一般 1,600円 高校・大学生1,100円、中学生以下無料

展覧会の詳細、チケット購入方法等は展覧会公式サイトをご覧ください⇒https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202609_suikoden.html

展示構成
 第一章 梁山泊へようこそ
 第二章 豪傑たちの生きた時代
 第三章 武侠小説・水滸伝の誕生と流行
 第四章 拡張する英雄像
 第五章 忠義のゆくえ

※展示室内は一部を除き撮影禁止です。掲載した写真はプレス内覧会で主催者の許可を得て撮影したものです。


第一章 梁山泊へようこそ


展示室に入っていきなり驚いてしまいました。
第一章には、江戸時代後期の浮世絵師・歌川国芳の出世作《通俗水滸伝豪傑百八人之一個(壱人)》シリーズのうち現在確認されている74枚が一挙公開されているのです。
いくつかの作品は今まで見たことはありますが、74枚全部というのは今回が初めて。

「第一章 梁山泊へようこそ」展示風景


猫好きで知られる国芳が15歳の頃、初代歌川豊国に入門したものの、兄弟子・国貞の後塵を拝してしばらく不遇の時代を過ごしたあと、30歳を過ぎて持っていたエネルギーを一気に炸裂させたかのようなパワーにただただ圧倒されるばかり。


「第一章 梁山泊へようこそ」展示風景


『水滸伝』と聞いて思い浮かべる作品は他にもありますが、国芳の出世作はビジュアル的には最高の展示ではないでしょうか。

《通俗水滸伝豪傑百八人之一個(壱人)》シリーズで最初に刊行された5点のうちのひとつ「花和尚魯知深初名魯達」もこの迫力。人気が出るはずです。

《通俗水滸伝豪傑百八人之一個(壱人)》のうち「花和尚魯知深初名魯達」歌川国芳
日本 江戸時代 19世紀 個人蔵


第二章 豪傑たちの生きた時代


『水滸伝』に登場する豪傑たちが生きた時代は北宋(960-1127)の末期。
北宋は文治主義を掲げ、都の開封は経済的に繁栄しましたが、しだいに北方民族の圧迫を受けるようになり、「風流天子」といわれた徽宗は、文化・芸術を振興したものの、政治には熱心でなく、豪奢な生活を送り、重税で人民を苦しめ、国は乱れました。

北宋時代の開封のにぎわいを描いた《清明上河図》のなかでは、北京故宮博物院に所蔵されている北宋・張沢端筆と伝わる作品がよく知られていますが、明代以降にも多くの《清明上河図》が制作されました。今回の展覧会で展示されるのは岡山・林原美術館が所蔵する重要文化財《清明上河図》です。


重要文化財《清明上河図》趙浙筆 中国 明時代 万暦5年(1577)
林原美術館 (前半10/12まで、後半10/14から)

長さ5.7m以上もある巻物なので、前半と後半で巻替えがあります。
行き交う舟や街のにぎわい、多くの人、人、人。細部まで見ていると時間がいくらあっても足りないのですが、筆者が特に好きなのは虹橋の様子です(下の写真)。

重要文化財《清明上河図》(部分)趙浙筆 中国 明時代 万暦5年(1577)
林原美術館 (前半10/12まで、後半10/14から)

徽宗の悪政を象徴するものとして、江南地方から珍木奇石を徴発して人民を苦しめた「花石綱」がありました。「花石綱」は1120年に起こった農民反乱、方臘(ほうろう)の乱の原因となり、この混乱によって北宋は弱体化して、1127年には北方の金に開封を追われ滅びてしまったのです。

「花石綱」で集められたとされるのが「太湖石」です。
太湖石とは、中国の江蘇省と浙江省にまたがる太湖から産出される石で、水の浸食によって奇怪な形をしているもので、古くから庭園などで観賞用に珍重されました。

《太湖石》中国 泉屋博古館 


第三章 武侠小説・水滸伝の誕生と流行


第三章では、挿絵入りの『忠義水滸全伝』(明時代末)や『忠義水滸全書』(清時代初)をはじめとした版本から、『水滸伝』が小説として誕生して、流行する様子をうかがうことができます。

また、今回の展覧会は大阪市立美術館開館90周年記念特別展「水滸伝」(大阪市立美術館、2026年7月11日~9月6日)の巡回展ですが、第二章から第三章にかけて、大阪市立美術館が誇る中国書画のコレクション「阿部コレクション」の中から中国書画の名品の数々が展示されていることに気がつきました。
2018年に大阪市立美術館で開催された「生誕150周年記念 阿部房次郎と中国書画」展には横浜から大阪まで前期、後期とも見に行ったくらい、大の中国書画ファンの筆者としては北宋から明時代までをはじめとした名品に再会することができて、とてもうれしくなりました。


こちらは第二章に展示されている、北宋初期の宮廷画家・燕文貴の《江山楼閣図》です。

《江山楼閣図》燕文貴筆 中国 北宋時代 10~11世紀
大阪市立美術館(阿部コレクション)

第三章に展示されているのは、(伝)張僧繇《五星二十八宿神形図》。

《五星二十八宿神形図》(伝)張僧繇 中国 制昨年代不詳
大阪市立美術館(阿部コレクション)
 
同じ大阪市内にある大阪市立東洋陶磁美術館の陶磁器の名品も展示されています。
第二章に展示されている透き通るような青が印象的な北宋時代の《青磁 水仙盆》は撮影可です。会場内で撮影の注意事項をご確認ください。


《青磁 水仙盆》汝窯 中国 北宋時代 11世紀末~12世紀初
大阪市立東洋陶磁美術館(住友グループ寄贈/安宅コレクション)


第四章 拡張する英雄像


第二章、第三章は中国の版本、書画、陶磁器が中心でしたが、第四章では、『水滸伝』の流行を背景に日本で出版された版本などを見ることができます。

なんといっても注目したいのは、曲亭馬琴と葛飾北斎による読本『新編水滸画伝 初編』です。巻之六を除く諸巻は初摺本に近く、細く鋭い線が美しく、北斎画の迫力と緻密さをよく伝えている一級品。
歌川国芳の作品に影響を与えているという点でも重要な作品なのです。

前列、中央の列および奥の列の左2冊 『新編水滸画伝 初編』 曲亭馬琴 作、
葛飾北斎画 日本 江戸時代 文化2年-4年(1805-07)、
奥の列右から 『画本東都遊 絵草紙店』葛飾北斎 日本 江戸時代 享和2年(1802)刊
『百八星誕肖像』葛飾北斎 日本 江戸時代 文政12年(1829)刊
いずれも浦上蒼穹堂


そして再び歌川国芳の登場です。
各図に豪傑を九名ずつ配置した《水滸伝豪傑百八人》の豪傑たちは、豪快で大胆なポーズをとるというよりは、かしこまって威厳があるように見えました。

《水滸伝豪傑百八人》歌川国芳 日本 江戸時代 天保14~弘化3年(1843~46)頃
個人蔵


一方、一転して笑っていたり、怒ったり、泣きわめいたり、驚いたりと滑稽で表現豊かな豪傑たちが描かれているのが《狂画水滸伝豪傑一百八人》。
豪快なのも、ユーモラスなのも、どちらも国芳の魅力ではと思いました。


《狂画水滸伝豪傑一百八人》歌川国芳 日本 江戸時代
 文政10年(1827)頃 個人蔵

なお、ここから先は一部を除き撮影可のエリアになります。ここでも撮影の注意事項をご確認ください。


第五章 忠義のゆくえ


第五章では、現代日本の文化・芸術の中でどのように展開しているのかがわかる作品が展示されています。

天井にぶら下がったロープにつかまり、足で絵を描くフット・ペインティングという独自のスタイルを確立した白髪一雄の《天魁星呼保義》の前に立つと、豪傑たちのパワーが伝わってくるように感じられました。

「第五章 忠義のゆくえ」展示風景
左が《天魁星呼保義》白髪一雄 日本 昭和39年(1964)
京都国立近代美術館 


北方謙三の小説『水滸伝』を原作として令和8年(2026)に放映された連続ドラマ「北方謙三 水滸伝」をご覧になられた方もいらっしゃるかと思いますが、ドラマで使われた衣裳も展示されています。

連続ドラマ「北方謙三 水滸伝」衣裳 日本 平成8年(2026)



ミュージアムショップには展覧会オリジナルグッズが揃っています。お帰りにはぜひお立ち寄りください。

ミュージアムショップ


『水滸伝』にまつわる中国・日本美術の名品の数々を全件フルカラー248ページで紹介して、論文やコラム、作品解説や資料なども充実した「水滸伝」公式図録もおすすめです。


「水滸伝」公式図録


『水滸伝』を手がかりに中国や日本のさまざまジャンルの名品が見られる展覧会です。
ぜひお楽しみください。

2026年9月13日日曜日

静嘉堂文庫美術館 民藝SHOCK‼ 没後60年 静嘉堂の河井寬次郎

 静嘉堂@丸の内では、民藝SHOCK‼ 没後60年 静嘉堂の河井寬次郎が開催されています。


展覧会チラシ



今回の展覧会のタイトルをご覧になって、「多くの貴重な東洋古美術品コレクションを所蔵する静嘉堂で民藝? 河井寬次郎?」と意外に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
河井寬次郎(1890-1966)は、およそ100年前の大正14年(1925)に、柳宗悦や濱田庄司とともに「民藝」(=民衆的工藝)を生み出し、「用の美」を意識したやきものを創作した、大正・昭和期を代表する陶芸家ですが、実は静嘉堂は昭和初期を中心とした51件の河井寬次郎作品を所蔵しているのです。

今回は静嘉堂が所蔵する河井寬次郎作品全件(初公開の2件+25年ぶりの49件)が初めて公開されますが、そこは静嘉堂。展示室内には同館ならではの展示が展開していますので、さっそく展示の様子をご紹介したいと思います。


展覧会開催概要


会 期  2026年9月5日(土)~11月8日(日)
     ※会期中、一部作品の展示替えがあります。
休館日  月曜日(ただし9月21日(月・祝)、10月12日(月・祝)は開館)、9月24日(木)、
     10月13日(火)
トークフリーデー 毎週木曜日
開館時間 10:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
     *第4水曜日の9月23日 (水・祝)・10月28日(水)は20:00まで開館
     *11月6日(金)、11月7日(土)は19:00まで開館
入館料  一般 1500円 大高生 1000円  中学生以下無料
     障がい者手帳をお持ちの方(同伴者1名〈無料〉を含む) 700円
※展覧会の詳細、チケット購入方法、関連イベント等については同館公式サイトをご覧ください。他館との相互割引もあるので要チェックです⇒https://www.seikado.or.jp

※撮影条件  写真撮影OKエリア:Gallery1、ホワイエのみ
 *動画撮影・フラッシュ撮影は不可。会場内で撮影の注意事項をご確認ください。
 *掲載した写真はプレス内覧会で美術館より許可を得て撮影したものです。

展示構成
 1章 彗星出現 寬次郎の大正時代
 2章 民藝の衝撃—「李朝」のやきもの、英国のスリップウェアと「下手物」の美
 3章 創造の源泉
 4章 岩﨑小彌太と近代陶芸—邸宅の装飾と愛用の品々


Gallery1入口

展示室に入って最初に気が付いたのは、河井寬次郎のやきものだけがずらりと並ぶというのでなく、日本各地の民窯や「李朝」の名で親しまれる朝鮮王朝時代の陶磁器、中国の陶磁器などが寬次郎作品とともに並んで展示されていることでした。

「1章 彗星出現 寬次郎の大正時代」展示風景


「1章 彗星出現 寬次郎の大正時代」には、大正時代の個人蔵の寬次郎作品と、静嘉堂所蔵の中国のやきものが並んで展示されているので、初期の寬次郎が東洋古美術の学習成果を自らの作風にどのように採り入れたのかうかがうことができます。

「わっ、唐三彩だ!」
陶磁器だけでなく、唐三彩の女子俑まで展示されているのには驚かされました。
ところがよく見てみると、下の写真一番左は唐時代のものではなく、河井寬次郎が成形・施釉・焼成した《三彩薬師像》だったのです。

右から 《三彩女子俑》唐時代(7~8世紀)、《加彩女子俑》唐時代(8世紀)、
新海竹太郎(原型製作)、河井寬次郎(成形・施釉・焼成)《三彩薬師像》
大正13年(1924) いずれも静嘉堂文庫美術館蔵


Gallery2に入ると、黄色い図柄が可愛らしい大きな皿が見えてきました。

「2章 民藝の衝撃—「李朝」のやきもの、英国のスリップウェアと「下手物」の美」には、昭和初期に寬次郎が最も強い影響を受けたとみられるスリップウェア、朝鮮の陶磁、丹波焼などが展示されています。


「2章 民藝の衝撃ー「李朝」のやきもの、英国のスリップウェアと「下手物」の美」展示風景


黄色い図柄の大きな皿は日本民藝館が所蔵する英国のスリップウェア。どちらも寬次郎の旧蔵品でした。


右 《スリップウェア皿》、左《スリップウェア角皿》
どちらもイギリス(18~19世紀) 日本民藝館蔵



大正13年(1924)に英国のスリップウェアを携えて帰国したのが寬次郎の無二の親友の濱田庄司でした。大正10年(1921)に柳宗悦が開催した「朝鮮民族美術展覧会」を見て、白磁などの造形に強い衝撃を受けた寬次郎は、当時、柳とは不仲だったのですが、ふたりの間を取り持ったのが、濱田であり、スリップウェアだったのです。
そして、3人の交流から大正14年(1925)に生まれたのが「民藝(民衆的工藝)」という言葉でした。
「民藝」誕生のきっかけとなった人間模様を知ると、それぞれの作品の味わいがより深く感じられるように思えました。


右 《辰砂葡萄文壺》 朝鮮時代(18世紀) 日本民藝館蔵
左 河井寬次郎《草花図壺》 昭和2~3年(1927~28)頃 静嘉堂文庫美術館蔵



Gallery3からGallery4に続く「3章 創造の源泉」では、静嘉堂が所蔵する寬次郎作品とあわせて、中国陶磁の名品などがずらりと並んでいるので、1章で寬次郎の初期の作品、2章で「民藝」誕生にゆかりのやきものを見てGallery3に入ると、「民藝」が一気に花開いたかのような華やいだ雰囲気が感じられました。

思わず「さてどれが寬次郎作品でしょうか。」とクイズを出したくなりますが、こうやって並んで展示されていると、寬次郎が自作に表現した古陶磁の美を見いだすことができます。

「3章 創造の源泉」展示風景

さて、寬次郎作品の中で「お気に入りの一品」を選ぶとしたらどれにしますでしょうか。
筆者はおめでたい松が描かれた《松の図鉢》にしたいと思います。
松の図柄は立体的ですが、これは陶器の素地に粘土と水を混ぜてクリーム状にした泥漿(スリップ)で装飾するスリップウェアの技法で描かれているのですね。


河井寬次郎《松の図鉢》昭和5年(1930)頃 静嘉堂文庫美術館蔵


寬次郎は「曜変」のやきものも作っていました。
現時点では「曜変」と書かれた共箱の寬次郎作品はこの2点だけで、国宝《曜変天目》のような斑文や輝く光彩は見られませんが、独特の斑文や金属光沢を生じた釉薬の様子から「窯変」であることは間違いないという貴重な作品です。

手前 《曜変櫛目盒子》、奥の右 《曜変壺》どちらも昭和2~3年(1927~28)頃
奥の左 《流し描盒子》昭和7年(1932)頃 いずれも河井寬次郎 静嘉堂美術館蔵


もちろん国宝《曜変天目》も展示されていますが、今回は意外な場所に展示されているので見逃さないようにご注意を!
Gallery3からホワイエへの出口のすぐ手前です。

手前 国宝《曜変天目(稲葉天目)》 建窯 南宋時代(12~13世紀)
静嘉堂文庫美術館



国宝《曜変天目》は、「世界に三碗しかなく、その三碗とも日本にあって、三碗とも国宝」として知られています。
静嘉堂のほかには、大阪の藤田美術館、京都の大徳寺龍光院が所蔵していますが、2019年春には、静嘉堂文庫美術館「日本刀の華」 備前刀」、奈良国立博物館「国宝の殿堂 藤田美術館展 ー曜変天目茶碗と仏教美術のきらめきー」、滋賀のMIHO MUSEUM「大徳寺龍光院 国宝曜変天目と破草鞋」でほぼ同時期に三碗が公開されて大きな話題になりました。
今回は東京国立博物館で開催される特別展「大徳寺 本朝無双之禅苑」で大徳寺龍光院の国宝《曜変天目》が展示されるので、都内で三碗のうち二碗が見られる絶好のチャンスです。
(二碗がそろうのは10/14~11/8の間だけです。静嘉堂@丸の内と東京国立博物館の相互割引もあります。詳しくは静嘉堂の公式サイトでご確認ください⇒https://www.seikado.or.jp)


4章 岩﨑小彌太と近代陶芸—邸宅の装飾と愛用の品々はホワイエに展示されています。
寬次郎作品を収集した岩﨑小彌太氏が昭和4年(1929)に建設した岩﨑家鳥居坂本邸の外壁に使用されたタイルの予備品は、鳥居坂本邸が昭和20年(1945)5月の空襲によって焼失して、実際に使用されていたタイル類は失われてしまったので、岩﨑家本邸の壮麗さを伝える貴重なやきものです。


《岩﨑家鳥居坂本邸海鼠釉タイル 一式》山茶窯(小森忍)
昭和3~4年(1928~29)頃 静嘉堂文庫美術館


ミュージアムショップは国宝《曜変天目》をモチーフにしたオリジナルグッズをはじめ充実のラインナップ。新商品も出ているので、お帰りの際にはミュージアムショップにぜひお立ち寄りください。


ミュージアムショップ



静嘉堂所蔵の河井寬次郎作品全51件に加え、東洋陶磁など合計109件を掲載して、詳細な作品解説や論文も収録している展覧会図録もおすすめです。


展覧会図録


「民藝」は「用の美」を意識したやきものを創作したのですが、もし自宅に河井寬次郎のやきものがあったら、きっともったいなくてとても普段使いはできないと思います。それでも、このやきものだったらこういう風に使おうかな、と考えながら見てみるのも楽しいかもしれません。
東洋陶磁器の名品とあわせて見ることができる静嘉堂ならではの河井寬次郎展ですので、多くの方にぜひご覧いただきたいです。