2013年8月18日日曜日

ドイツ・ゲーテ紀行(17)+「花開く江戸の園芸」「〈遊ぶ〉シュルレアリスム」

昨日(8月17日)は都内の美術展をハシゴしてきました。



ひとつめは江戸東京博物館で開催中の「花開く江戸の園芸」。
ここ両国に、花や緑の描かれた浮世絵や屏風、掛け軸、江戸時代に出版された草木図鑑が大集合。
北斎の「菊図」、広重の「東都名所 亀戸藤花」、それに国芳のユーモアあふれる作品、などなど館内はまさに百花繚乱。見ごたえ十分です。
会期は9月1日(日)までです。

http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/exhibition/special/2013/07/index.html

ふたつめは損保ジャパン東郷青児美術館で開催中の「〈遊ぶ〉シュルレアリスム」。
こちらは日本中のシュルレアリスムの作品が新宿に大集合。
マグリットやダリ、キリコの絵がこんなに多く国内にあったんですね。それも中国・四国・九州地方に集中しているなんて驚きです。
さらには私の大好きなポール・デルボーの作品も見ることができ、大満足です。
会期は8月25日(日)までなので、あと1週間です。

http://www.sompo-japan.co.jp/museum/exevit/index_shuru.html

紹介が会期末近くになってすみません。どれもおススメです。お見逃しなく。


ドイツ・ゲーテ紀行続き
平成24年9月9日(日)
いよいよ観光最終日。
朝食を済ませ、レーマー広場まで朝の散歩をして、それからゲーテの生家に向かった。
中央の黄色い建物がゲーテの生家で、右が入口。


日本語のオーディオガードがあるのもうれしい。

調度品も内装もすばらしい。
第二次大戦の空襲でフランクフルト市内は大きな被害を受け、ゲーテの生家も破壊され、現在の建物は戦後に再建されたものだが、調度品類は郊外に避難させていたので無事だった。
先人たちの努力があったからこそ、私たちは当時の面影をしのぶことができる。

 大きな天文時計。

空襲はすさまじく、建物は完全に破壊されがれきと化したが、空襲のあとがれきを掘り返したら、地下から地上に向かう階段の下から三段目までは破壊されずに残っていた。
良く見ると、下から三段目までは石にひびが入ったり、表面がはがれているが、四段目以上との色合いの違いは言われないとわからないほどなので、戦後、再建に尽力した人たちがいかにオリジナルの雰囲気を残しながら丁寧に再現しようとしていたかがよくわかる。


併設されているゲーテ博物館も見たのでゲーテの生家を出たときはすでに正午を過ぎていた。
湿気がないとはいえ、かなりの暑さで体もまいってきたので、ホテルの部屋で少し休みたくなった。
そこでフランクフルト中央駅まで歩き、駅ナカのイタリア料理のテイクアウトの店でパスタを買うことにした。
お店の女性はいかにも南国育ちらしい陽気な人。
どのパスタにしようかと迷っていたら、「ミックスでもいいですよ。この容器に入る分なら値段は一緒ですから」というので、ナスときゅうりのトマトソース、ブロッコリーのパスタを少しずつと香草のスパゲティを注文した。

ホテルの部屋に戻り窓を開けると外からは路面電車のきしむ音や車のクラクションの音が聞こえてくる。
昼間でも部屋の中は冷房が必要なほど暑くならないので、部屋には扇風機がひとつあるだけ。


扇風機の風に当たり、透き通った青い空をながめながら食べるパスタの味はいつになくおいしく感じられた。

けだるい夏の昼下がり。
「旅をしてるんだな」
こんな感覚がふと心の中に浮かんできた。


(次回に続く)







2013年8月11日日曜日

ジョー・プライスさんが来てくれました(福島県立美術館「若冲が来てくれました」に行ってきました)

先週の日曜日(8月4日)、「若冲が来てくれました」を見に福島県立美術館に行ってきました。
福島駅から福島交通飯坂線に乗り、2つめの「美術館図書館前」で降りて徒歩約3分、美術館は静かな山あいの中にあります。
入口では、伊藤若冲の「鳥獣花木図屏風」の看板がお出迎え。




美術館に着いたのが午後2時過ぎ。これから閉館の5時近くまでじっくり見て、5時過ぎの電車で帰るつもりでいたので、先にミュージアムショップに寄ってお目当てのものを買いました。
まずは「鳥獣花木図屏風」の絵はがき(奥)と一筆箋(手前)。


この一筆箋はすぐれもので、表は白紙でメモができるようになっていますが、裏は 「鳥獣花木図屏風」の屏風一枚一枚の絵が描かれていて、つなぎ合わせると一つの屏風になります。

左隻
 右隻

こうやって並べてみるとかなり大きくなるので壮観です。
ただし、これではもったいなくてメモとしては使えないという悩みもあります。

他にも長沢芦雪や鈴木其一の作品の絵はがきなどを買い込み、ロッカーに入れてひと安心。
これで心置きなく展示作品を見ることができます。


今回のお目当ての一つは、鈴木其一の「群鶴図屏風」。
鶴の頭が並ぶリズム感がなんともいえず好きで、屏風の前を何往復もして角度を変えてしばらく眺めていました。
この絵は折り畳み式の絵はがきが見当たらなかったので、下の写真ははがき大の左隻。
この作品は前期(8月25日まで)だけの展示なので、ご興味のある方はお見逃しなく。


 
次は大きな屏風に牛と象がでーんと描かれた長沢芦雪の「白象黒牛図屏風」。

師匠の円山応挙の言うことを聞かない、あまりいい弟子ではなかった芦雪ですが、黒牛の前で嬉しそうにたたずむ犬は、まさしく応挙の犬。
まるで芦雪が「私はやっぱり応挙の弟子です」と静かに宣言しているように思えました。

若冲や芦雪、其一、さらには酒井抱一、円山応挙はじめ江戸の絵師たちの粒よりの作品が展示替えも入れると全部で100点以上もそろった展覧会なので、一気に見るのは疲れます。
1時間ほどたったところで、少し休憩をとろうと思い展示会場を出たところ、ミュージアムショップの前に長蛇の列。
レジ待ちかな?それにしても人が多いな、と思いながら通り過ぎようとしたところ、なんとジョー・プライスさんと悦子さんのご夫妻がサイン会をやっていました。
事前のお知らせもなかったので、サプライズ企画だったのでしょうか。
それにしても「この機会を逃してはならない」と、急いで図録を買い、列に並びました。

ご夫婦のサインをいただき、「サンキュー」ぐらいしか言えませんでしたが握手をして、なんだか夢でも見ているような心地でした。

 
 プライスさんご夫妻にお会いできて、もう満足。帰ってもいいやという気にもなりましたが、まだまだ半分以上見ていない作品もあったので、気をとりなおしてもう一度展示室に入りました。

これは若冲の「鶴図屏風」の折り畳み式絵はがき(奥)と「花鳥人物図屏風」の一筆箋(手前)。
「花鳥人物図屏風」は8月20日からの展示で、見ることができなかったので、一枚一枚はがして、家で鑑賞するつもりです。

東日本大震災で被害を受けた人たちに元気と勇気を与えようというプライスさんご夫婦のご厚意により今年の3月から仙台市博物館、岩手県美術館と巡回してきたプライスコレクションもいよいよ福島でおしまいです。
会期は9月23日までなので、まだまだ間に合います(展覧会の構成や出品リストは公式サイトをご参照ください)。

http://www.art-museum.fks.ed.jp/exhibition/jakuchu.html


「この内容なら新幹線に乗っても来る価値あるわよね」
と話していた女性の二人組がいました。
私も横浜から新幹線を使ってきたので、二人の話を聞きながら「そうですよね」と心の中でうなずいていました。
今年の夏のおススメは福島です。

(追記)
 
私のホームページにも若冲の 「鳥獣花木図屏風」をアップしました。

http://hwm8.spaaqs.ne.jp/yamaguchi-25/jakuchu.html

2013年8月10日土曜日

ドイツ・ゲーテ紀行(16)

平成24年9月8日(土)続き
列車は時刻どおりフランクフルト南駅に到着した。
そこから地下鉄に乗り、ヴィリー・ブラント通り駅で降りて、フランクフルト中央駅の方に向かった。

フランクフルトは、今やドイツだけでなく欧州の金融の中心だ。
高層ビルが立ち並び、車も人も街にあふれ、今朝までいた旧東ドイツの都市と比べると、まるで別の国に来たようだ。

燦然と輝く欧州中央銀行とEUのシンボルマーク。


近くの公園にあったはずのゲーテ像は300mほど離れたところにあるゲーテ広場に移設されていた。

ゲーテの右後ろには高層ビルがそびえ立ち、工事用のクレーンも姿を現している。
これぞまさにドイツ発展の象徴だ。
そしてフランクフルトは欧州の交通の要所でもある。空に見える幾筋もの飛行機雲がそれを物語っている。

勇壮な姿のゲーテ像と比べてシラーの像は緑の中にひっそりとたたずんている。
ワイマールではゲーテと並んで立っていたシラー像だが、ここフランクフルトでは離ればなれになってしまった。

フランクフルトは、現在だけでなくゲーテが生まれ育った頃から大都市だった。
大聖堂では歴代神聖ローマ帝国皇帝の戴冠式が行われた。
1764年4月3日に行われたヨーゼフ2世の戴冠式のときの街じゅうのにぎわいはゲーテも実際に目の前で見ている。

ドイツ各地から選帝侯たちが大行列を従えて市の門をくぐりフランクフルトに入ってきた。
街には多くの見物人たちであふれていた。
市庁の前の広場も人でいっぱいだ。
戴冠式を終えたヨーゼフ2世が市庁のバルコニーに現れたとき、万歳の叫びがわき起こり、儀式はクライマックスを迎えた。
(岩波文庫『詩と真実』第一部 第五章P312以降) 

戴冠式が行われた大聖堂。


レーマー広場にある旧市庁。真ん中の建物の正面入り口の上がバルコニー。


バルコニーの内側の大広間には歴代皇帝の肖像画が飾られている。

選帝侯たちが通った市門は残っていない。かつては市の周囲をめぐらしていた城壁がわずかに残っているばかりだ。



かつての中央見張所(ハウプト・ヴァッフェ)も見張り塔(エッシェンハイマー塔)も今ではカフェになっている。
 



ゲーテ広場から伸びるショッピングストリート(グローセ-・ボッケンハイマー通り)にあるカフェで軽めの昼食。
カフェは外も人でいっぱい。

あまりのまばゆさ、あまりの人の多さにいささか疲れてしまったが、聖カタリーナ教会の中の静けさに救われた。


ランチの後もひたすら街の中を歩いた。
天気は晴れで気温は30℃。気温は高いが、湿度が低くからっとしているので、汗かきの私でも全く汗をかかない。
そのかわり、太陽光線は肌にちくちくするほど強く当たり、ノドがカラカラになってくる。
ゲーテの生家に行くのは次の日にしようと決めていたが、足が何となくゲーテの生家の方に向かい、結局、その近くのレストランで夕食をとることにした。
レストランの名前は「Salzkammer」。
この日はビールでなく、フランクフルト名物のリンゴ酒。


普段から野菜中心の食事をしているので、さすがに肉料理には飽きてきた。
そこでこの日の夕食はベジタリアン。

皿の手前左はラビオリ、真ん中の2つはチーズと小麦粉をこねて焼いたもの、一番右はその香草バージョン。
ほんのり塩味がついていて、どれも全粒粉パンとの相性がいい。
つけ合わせのサラダもみずみずしくて、干からびた体に水分がいきわたるような心地がした。
もちろんリンゴ酒も2杯目を注文した。

ここはアルペン料理を出すお店。
後で調べたら、店の名前もオーストリアのザルツブルグ周辺の山岳地帯からとったものであることがわかった。
この料理の名前もずばり「アルペントリオ」。

こちらはお店の前景。
今宵もフランクフルトの夜はリンゴ酒とともに更けていく。

(次回に続く)