2023年5月24日水曜日

WHAT MUSEUM 高橋龍太郎コレクション ARTdeチャチャチャ 日本現代アートのDNAを探る 

日本の現代アートコレクターで知られる高橋龍太郎さんのコレクションの展覧会が東京・天王洲のWHAT MUSEUMで開催されています。



タイトルの「ART de チャチャチャ」には、海外で評価されることが多い日本の現代アートの魅力を日本国内の人たちが感じ取って応援するきっかけにしてもらいたいという、高橋龍太郎さんの思いが込められています。

どの作品も日本の伝統文化・芸術を受け継ぎながらも、新たな表現を探求する作家たちの力作ばかり。サブタイトルにあるように、日本の現代アートの中に脈々と流れる日本文化のDNAが感じられる展覧会です。

展覧会開催概要


会 期  2023年4月28日(金)~8月27日(日)
会 場  WHAT MUSEUM Space1、2F
開館時間 11時~18時(最終入場17時)
休館日  月曜日(祝日の場合、翌火曜日休館)
入館料  一般 1,500円、大学生/専門学生 800円、高校生以下 無料
     PASSPORT 2,000円
※オンラインチケット制
※オンラインチケットの予約方法、展覧会の詳細等は同館公式サイトをご覧ください⇒WHAT MUSEUM 
  
※展示室内は、一部作品を除き撮影可ですが、フラッシュの使用、動画撮影、三脚・自撮り棒の使用は禁止です。館内の注意事項をご確認ください。


それではまずは1階のSpace1から。

今回の展覧会のために黒くしつらえられたのが1階のSpace1。

神秘的な空間の中に展示されているのは巨大な屏風。
初めは何が描かれているかわかりませんでしたが、暗闇に目が慣れてくると、手前の屏風には長沢芦雪の絵を思わせる白い象の巨体、うしろの屏風にはまるで肉食恐竜のような鋭い歯をもった二頭の獅子が浮かび上がって見えてきました。

手前から、岡村桂三郎《白象》《獅子》

白象と獅子のコンビを見てピンと来られる方もいらっしゃるのでは。
そうです、この屏風は、いずれも釈迦仏の両脇侍で、白象に乗った姿で表現される普賢菩薩と獅子に乗った姿で表現される文殊菩薩がメタファーとして存在しているのです。
そして作品の題材だけでなく、画材も古くから日本画で使われる岩絵具で描かれているので、ここにも日本の伝統のDNAが感じられます。

2階にも刺激的な作品が並んでいます。

すぐに目に飛び込んできたのは、襖に描かれた巨大なドクロ。

鴻池朋子《無題》

背景には金粉が蒔かれた草原にたむろす鹿たち、空には地表のクレーターがくっきりと見える満月が描かれていて、のどかな背景とドクロとの対比が一層際立っています。

ドクロの中央がちょうど襖の境目になっているので、襖を開けたらこの先にはどんな世界が広がっているのだろう、はたして天国か、地獄かと空想がかきたてられる作品です。


これは尾形光琳の国宝《紅白梅図屏風》(MOA美術館)のセピア色版では! と思わせる作品が目に入ってきました(下の写真左奥 小沢剛《岡本三太郎「醤油画(尾形光琳)」》。
江戸時代を代表する屏風の名作をモチーフにしていますが、画材は岩絵具でなく、なんと醤油。屏風の前に立っても醤油の香りはしませんでしたが、これも日本伝統の発酵食品を使っているので日本文化のDNAを受け継いでいると言えるでしょう。


展示風景


今回の展示で一番驚いたのはこの作品。
高層ビルが立ち並ぶ都心を少し高い場所から俯瞰して撮影した写真作品かなと思ったのですが、実は絹本の上に水墨で描かれた作品だったのです。


山口英紀《動脈》


絵画だけでなく、巨大なニワトリのオブジェやドンと置かれていたり、水面に映る金閣を著した立体模型が天井から吊り下げられていたり、意表を突く作品展示も楽しめます。

田代裕基《炎天華》

岩﨑貴宏《リフレクション・モデル(金閣)》


1960年代後半から70年代初頭にかけて現れた「もの派」のスペースには、その名のとおり「もの」がそのまま置かれているように見えても、どことなく神秘的な雰囲気を醸し出しています。


展示風景


展覧会は8月27日(日)まで開催されています。
この夏は現代アートのパワーをぜひその場で感じ取っていただきたいです。


公開制作:能條雅由「うつろいに身をゆだねて」が同時開催中!

1階のSpace2では、同館で初めての試みとなる、作品が来場者の目の前で完成されていく様子が見られる公開制作が行われています(能條さんの滞在日程は同館公式サイトでご確認ください)。

下の写真正面の32個のパネルがこれから制作される作品です。
今ではどれだけの作品が完成しているでしょうか。

展示風景

銀箔やアルミ箔をいくつも重ねて表現する能條雅由さんの個性的な作品や、その制作過程をぜひその場でご覧ください!

展示風景


2023年5月8日月曜日

東京ステーションギャラリー 「大阪の日本画」展

大阪中之島美術館で今年(2023年)1月から4月まで開催されていた「大阪の日本画」展が東京にやってきました。
会場は東京駅にある東京ステーションギャラリー


東京ステーションギャラリー入口


キャッチコピーは、浪速の近代日本画、初の大規模展がやってくる!

50人以上もの浪速の近代日本画家の個性的な作品150点以上(展示替えあり)が大挙して東京に来てくれたのですから、この機会を見逃すわけにはいきません。

展覧会開催概要


会 期   2023年4月15日(土)~6月11日(日)
      ※会期中、展示替えがあります。
開館時間  10:00~18:00(金曜日~20:00) *入館は閉館30分前まで
休館日   月曜日(6/5は開館)
入館料   一般 1,400円、 大学・高校生 1,200円 中学生以下 無料

展覧会の詳細等は同館公式サイトをご覧ください⇒東京ステーションギャラリー

展示構成
 第1章 ひとを描く-北野恒富とその門下
 第2章 文化を描く-菅楯彦、生田花朝
 第3章 新たなる山水を描くー矢野橋村と新南画
 第4章 文人画-街に息づく中国趣味
 第5章 船場(せんば)派ー商家の床の間を飾る画
 第6章 新しい表現の探求と女性画家の飛躍
(会場の都合により、第1章→第4章→第5章→第3章→第2章→第6章の順番で展示されています。)

※展示室内は撮影不可です。掲載した写真は内覧会で美術館の許可を得て撮影したものです。


展示の冒頭に登場するのは、その独特の作風から最近特に注目されるようになった北野恒富(1880-1947)。
「第1章 ひとを描く-北野恒富とその門下」では、北野恒富とその弟子たちの作品が私たちをお出迎えしてくれます。

第1章展示風景



この先もとてもいい雰囲気の展示が続くのですが、今回は筆者なりに注目してみた画家や作品を中心にご紹介したいと思います。


浪速風俗画


実は、今回の東京展に先がけて今年2月に大阪中之島美術館で「大阪の日本画」展を見てきたのですが、その時に感じたのは古き良き大阪の街並みや風物詩を描いた作品が多く見られることでした。

中でも注目は、菅楯彦(1878-1963)とその弟子の生田花朝(1889-1978)の作品。
(第2章 文化を描く-菅楯彦、生田花朝)

菅楯彦の作品は、自分がその場にいたことはない景色なのですが、なぜか懐かしく感じられるから不思議です。

第2章展示風景


江戸時代の風俗で描かれているところに深い味わいが感じられるのは《南郭春宵》(上の写真一番左)。

菅楯彦《南郭春宵》昭和21年(1946)
鳥取県立博物館 展示期間4/15-5/14

菅楯彦の作品は全部で17点(他の画家との合作1点を含む)展示されます。
5/16-6/11には、《南郭春宵》と同じく江戸時代の風俗で大坂の街が描かれた《高津宮秋景》(大阪歴史博物館)や《浪華三大橋緞帳下絵》(株式会社大阪美術倶楽部)が展示されるのでこちらも楽しみです。


祭りの様子を生き生きと描いた生田花朝の作品からは、その場で見ているような活気が伝わってきます。

第2章展示風景

幅3mを超えるパノラマの風景画は、漁師やそこに住む人たちのにぎわいが描かれた作品です。
上の写真の祭りの景色もそうですが、まるで「洛中洛外図」のように大勢の人たちがそれぞれ特徴をもって描かれているところに、この画家の力量のすごさを感じます。

生田花朝《泉州脇の浜》昭和11年(1936)
個人蔵(大阪中之島美術館寄託) 通期展示 

文人画(南画)


江戸時代から大阪に脈々と続いてきた中国趣味を背景に、文人画(南画)の分野でも逸品が揃っています。
(第3章 新たなる山水を描く-矢野橋村と新南画~第4章 文人画-街に息づく中国趣味) 

第4章展示風景

文人画(南画)で注目したい画家は、一時は東の奥原晴湖(1837-1913)と並び称された女性南画家橋本青江(1821-1898)。


橋本青江《梅林春景図》明治26年(1893)
関和男氏蔵(大阪中之島美術館寄託)
展示期間4/15-5/14

正統派南画を描いて一世を風靡した奥原晴湖は、日本絵画の近代化を図ったフェノロサが南画を批判して南画の人気が落ちてからは熊谷に隠棲し、今では「忘れられた画家」の一人になってしまいましたが、「これぞ南画!」という優れた作品を多く描いた女性南画家でした。
橋本青江の作品は会期中にもう1点、《山水図》(関和男氏蔵(大阪中之島美術館寄託 展示期間5/16-6/11)が展示されます。


船場派


古くから水の都として栄えた大坂らしく、商家が集まった船場界隈は町人文化の中心でした。そういった商家の床の間を飾ったのが「船場派」と呼ばれていた画家たちので作品でした。
(第5章 船場派-商家の床の間を飾る画)

ここでご紹介する画家は、幕末から明治期に活躍した西山完瑛(1834-1897)。
完瑛は父・芳園とともに西山派を形成し、大阪商人好みのあっさりとした作風で人気を博しました。

第5章展示風景


西山完瑛は、「大阪の日本画」展の中では以前から名前を知っていた数少ない画家の一人でしたが、京都画壇の四条派の流れをくんでいたので、今まで京都の人と思っていました。


女性画家の活躍


すでに生田花朝、橋本青江といった女性画家を紹介してきましたが、「大阪の日本画」展で特に気がついたのは、多くの女性画家が活躍していることでした。
(第6章「新しい表現の探求と女性画家の飛躍」)

大阪では江戸時代から女性画家が活躍していたことに加え、明治時代以降、富裕層を中心に子女に教養として絵画を習わせる傾向が強かったことが女性画家活躍の背景にありました。

島成園(1892-1970)も「大阪の日本画」展に登場する画家の中で筆者が知っていた数少ない画家の一人でした。

島成園《祭りのよそおい》大正2年(1913)
大阪中之島美術館 通期展示

画面左の着飾った二人の少女とそれを羨ましそうに見つめる少女、さらにその三人を見つめる素足に草履姿の少女。
少女たちの表情や装いでその背景にある貧富の差を見事に描き分けたところにも驚かされますが、貧しい少女に目を向けた作者の優しさが感じられる作品にも思えました。

島成園に師事した吉岡美枝(1911-1999)の《店頭の初夏》に描かれた女性は洋装で、パーマをかけた髪をカチューシャでまとめ、手には真っ赤なバッグを持っていてモダンな感じがします。
(吉岡美枝の作品はもう1点、蛍の光の中に横たわる少女が描かれた幻想的な作品《ホタル》(大阪中之島美術館 展示期間5/16-6/11)が展示されます。

吉岡美枝《店頭の初夏》昭和14年(1939)
大阪中之島美術館 展示期間4/15-5/14


幻想的な大阪の雪景色


「大阪の日本画」展のトリを務めるのは、大阪の雪景色が描かれた《雪の大阪》。
作者は、はじめ洋画を学び、のちに日本画に転向して竹内栖鳳に師事した池田遥邨(1895-1988)。

池田遥邨《雪の大阪》昭和3年(1928)
大阪中之島美術館 通期展示

手前の難波橋から天守閣再建前の大坂城までが描かれた幻想的な作品を眺めていたら、また大阪に行ってみたくなりました。


展覧会にちなんだグッズも盛りだくさん!

展示作品の額絵やトートバッグはじめオリジナルグッズも盛りだくさんです。
ぜひミュージアムショップにもお立ち寄りください!

ミュージアムショップ

全作品解説付きの公式図録もおすすめです!

展覧会公式図録(税込2,800円)



「大阪の日本画」という今まであまり知らなかった世界に入り込んで、とてもいい作品にめぐり会えうことができました。
「大阪の日本画」展にお越しいただいて新たな発見をしてみませんか。

2023年5月4日木曜日

静嘉堂@丸の内 特別展「明治美術狂想曲」

静嘉堂文庫美術館の展示ギャラリー「静嘉堂@丸の内」では、特別展「明治美術狂想曲」が開催されています。


展覧会チラシ

幕末から明治にかけて人々の価値観が大きく転換して、日本の歴史上まれに見る激動の時代に「美術」はどのように展開していったのでしょうか。
まさに「狂想曲」が流れるような当時の雰囲気が伝わってくる展覧会です。


展覧会開催概要 


会 期  2023年4月8日(土)~6月4日(日)
     前期 4月8日(土)~5月7日(日)
     後期 5月10日(水)~6月4日(日)
休館日  月曜日、5月9日(火)
開館時間 10:00~17:00(入館は16:30まで)
     金曜日は18:00(入館は17:30まで)
会 場  静嘉堂@丸の内(明治生命館1階)
入館料  一般 1500円 大高生 1000円 
     障がい者手帳をお持ちの方(同伴者1名無料を含む) 700円
     中学生以下無料

※展示室内及びミュージアムショップは撮影禁止です。掲載した写真は報道内覧会で美術館より特別の許可を得て撮影したものです。(ホワイエは撮影可です。)
※前期後期で展示替え等がある作品にはその旨を記載しています。
※展示作品はすべて静嘉堂文庫美術館所蔵です。

ギャラリー1 第1章 「美術」誕生の時-江戸と明治のあわい-


幕末から明治にかけの絵師たちは現代の私たちの想像が及ばないほど大変な思いをしたのではないでしょうか。なにしろ後ろ盾になっていた幕府や大名が力を失って、今まで売れていた絵が売れなくなり、生活すらおぼつかなくなったのでしょうから。

そういった中、したたかに時代を読んで新たな境地を切り開いた絵師たちがいました。
その代表格の一人が河鍋暁斎(1831-1889)。

天保2年(1831)に生まれた暁斎は、はじめに歌川国芳に浮世絵を学び、その後は狩野派で修業して、のちに独立。明治に入ると独創的な画風で一世を風靡しました。

展示の冒頭は、幕末から明治にかけて活躍した暁斎、月岡芳年らの幕末期の浮世絵から始まります。

ギャラリー1 展示風景

続いては明治に入って河鍋暁斎が描いた《地獄極楽めぐり図》(前期後期で場面替えあり)。

河鍋暁斎《地獄極楽めぐり図》明治2~5年(1869-72)
前期後期で場面替えあり


14歳で早世した小間物問屋勝田五兵衛の娘・田鶴(たつ)の追善供養のために制作されたこの画帖は、狩野派の画法をベースにしながらも暁斎独特の色遣いやユーモラスな表現もあって、新たな時代の到来が感じられる作品です。
中には明治5年5月に品川-横浜間で仮営業が始められた鉄道をモチーフにした乗り物も描かれています。
派手に飾りつけられていて実物とはかなり違うので、はたして暁斎は実際に鉄道を見たのかわかりませんが、さっそく新しいものを取り入れたところが暁斎ならではといえるのではないでしょうか。

河鍋暁斎《地獄極楽めぐり図》(部分)明治2~5年(1869-72)
前期後期で場面替えあり



ギャラリー2 第2章 明治工芸の魅力-欧米好みか、考古利今か-


明治に入ると外貨獲得のため、ジャポニズムの流れに乗って欧米好みの工芸品が積極的に輸出されました。
ギャラリー2には、今でいう「超絶技巧」の名品がずらりと並んでいます。

ギャラリー2 展示風景

ヨーロッパで人気だったのが「SATSUMA」の商標で積極的に輸出された薩摩焼。
表情やしぐさが可愛らしい獅子や麒麟が乗った色彩鮮やかな薩摩焼は、ヨーロッパの邸宅の重厚な部屋を明るくてなごんだ雰囲気にしてくれたことでしょう。

右 薩摩焼《色絵金彩獅子鈕香炉》左 《色絵金彩麒麟鈕香炉》
どちらも明治9年(1876)頃

一方で、明治10年代になると西洋文化一辺倒から日本の伝統的な美術品が顧みられるようになり、その時期に開催されたのが旧大名家などから自慢の逸品が出品展示された「観古美術会」でした。

明治13年(1880)に開催された第1回観古美術会に出品されたのが、淀藩主稲葉家に伝わり、「稲葉天目」と呼ばれた《曜変天目》、現在は静嘉堂文庫美術館が所蔵する国宝《曜変天目(稲葉天目)》でした。

国宝《曜変天目(稲葉天目)》南宋時代(12-13世紀)


ほかの作品が並ぶ展示ケースの反対側の単独ケースに入って展示されているので、あやうく見逃すところでしたが、なぜこのギャラリー2に展示されているのかがわかりました。
第2章のタイトルにある「考古利今」のとおり、「考古」一遍にならずに「利今」を目的とした観古美術会が開催された当時の流れに沿ってこの場所に展示されているのでした。


第1回観古美術会には、明治になるまでは大伽藍を誇り、明治の廃仏毀釈で廃寺になった奈良・内山永久寺の真言堂に安置されていた広目天眷属像もほかの四天王眷属像とともに展示さました。


重要文化財 康円《広目天眷属像》
鎌倉時代 文永4年(1267)

東西南北の四方を護った四天王のうち《持国天(東方天)眷属像》と《増長天(南方天)眷属像》が東京国立博物館、《多聞天(北方天)眷属像》がMOA美術館に所蔵されていて、この広目天(西方天)の眷属像は、のちに川崎造船などを創業した川崎正蔵氏が所有しましたが、その後、岩崎家の所蔵になりました。

2022年10月15日~12月4日に神戸市立博物館で開催された特別展「よみがえる川崎美術館-川崎正蔵が守り伝えた美への招待-」で展示されている時にも拝見しましたが、大仏師・運慶の孫にあたる康円作の、外敵に対してにらみを利かせるこの像の存在感には今回も圧倒されました。


ギャラリー3 第3章 博覧会と帝室技芸員


横幅も広く、高さもあるギャラリー3のこの展示ケースは、大画面の屏風がお似合いです。


右 重要文化財 橋本雅邦《龍虎図屏風》、左 野口幽谷《菊鶏図屏風》
どちらも明治28年(1895) 前期(4/8-5/7)展示

今回は、岩崎家の支援により開催された第四回内国勧業博覧会(明治28年(1895))の出品作品の中から、静嘉堂文庫美術館が所蔵する8点の屏風のうち前期後期で4点が見られるまたとないチャンスです。

後期(5/10-6/4)には、松本楓湖《蒙古襲来碧蹄館図屏風》、今尾景年《耶馬渓図屏風》が展示されます。

ちなみに同館が所蔵する屏風4点は次のとおりですが、この大きな展示ケースに展示されているところをぜひ見てみたいです。

川端玉章《桃李園独楽園図屏風》
野口小蘋《春秋青緑山水図屏風》
望月玉泉《雪中芦雁図屏風》
鈴木松年《群仙図屏風》

ギャラリー3では、皇室による日本美術・工芸の保護奨励を目的として明治23年(1890)に創設された帝室技芸員制度によって第1回目に帝室技芸員に任命された柴田是真(漆芸)、加納夏雄(彫金)の作品をはじめとした工芸の名品も展示されています。
(橋本雅邦も日本画の分野で第1回目に帝室技芸員に任命されています。)

蒔絵の五段重ねの重箱は、幕末から明治期に日本画家、蒔絵師として活躍した柴田是真の作。

柴田是真《柳流水蒔絵重箱》江戸~明治時代(19世紀)

蓋の上から下に流れる川は、絞漆を薄く塗り、生乾きのうちにへらや刷毛で波紋を描く青海波塗という技法で表現され、岸辺の柳や岩などは金銀蒔絵という贅を尽くした重箱はぜひぐるっと回って四方からその模様をお楽しみいただきたいです。

そして、柴田是真と同じく幕末から明治にかけて活躍した彫金家の第一人者・加納夏雄の金工の小刀も、細長い刃の面に描かれた模様に注目したいです。
下の写真のうち《小刀》中央の「ホトトギス」は本当に小さいので単眼鏡をお持ちの方はご持参いただくことをおすすめします。

 右から、加納夏雄《菊彫仙媒》、《小刀(柳図・月にホトトギス・薄図)》
どちらも明治時代(19世紀)

 

第3章の作品はホワイエにも展示されています。(ホワイエは撮影可。)


ホワイエ展示風景



ギャラリー4 第4章 裸体画論祖と高輪邸の室内装飾


今回の展覧会のタイトル「明治美術狂想曲」をもっとも体現しているのがこの第4章ではないでしょうか。

明治34年(1901)に開催された第六回白馬会に出品された黒田清輝の《裸体婦人像》は議論を呼び、警察の指導により作者が最も力を注いで描いた下半身が布で覆われて展示されるというドタバタがあったのです(後に「腰巻事件」と呼ばれました)。
西洋では理想美とされていた裸体像が、明治中期の日本では公序良俗に反するとされていたのです。

ギャラリー4 展示風景

ギャラリー4には、下半身に布を覆って展示された時の貴重な写真も展示されています。
この《裸体婦人像》は展覧会公式図録の表紙になっていますが、当時の「狂想曲」の様子を表すため、婦人の下半身が隠れるように帯の幅が通常より広くなっています。

展覧会公式図録


朗報!曜変天目ぬいぐるみの販売が再開しました。


静嘉堂文庫美術館の展示ギャラリーが丸の内に開館して以来、大人気の曜変天目ぬぐるみは、5月3日(水)から1日10個数量限定で販売が再開されました。
詳しくは同館公式サイトをご覧ください。

他にも曜変天目はじめ展示作品関連グッズや展示作品のカラー図版や詳しい解説が掲載された公式図録も販売されているので、ぜひミュージアムショップにもお立ち寄りください。

ミュージアムショップ


5月20日から始まる8日間限定企画が見逃せない!


世田谷区岡本にある静嘉堂文庫美術館では、河野元昭館長の傘寿をお祝いして、近世絵画の中から河野館長が大好きな名品、気になる作品が展示される展覧会が8日間限定で開催されます。

展覧会チラシ




5月20日(土)と5月28日(日)には「饒舌館長大いに語るギャラリートーク」が開催されます。
詳しくは同館公式サイトをご覧ください。

5月は、うれしいことに丸の内と世田谷区岡本の両方で展覧会が開催されます。
どちらも見逃せません!