2017年11月27日月曜日

損保ジャパン日本興亜美術館「デンマーク・デザイン展」

寒い冬には暖房のきいた暖かい部屋の中でのんびりしているのが一番。
こんな季節にぴったりの展覧会「デンマーク・デザイン展」が東京・新宿の損保ジャパン日本興亜美術館で開催されています。
会場内はぬくもりでいっぱい。デンマークの家庭の室内が再現されていたり、椅子に座ってその心地よさを実感できたり、まさに「アット・ホーム」な展覧会です。

会場入口にはすっかりおなじみになった記念撮影スポット。
クリスマスツリーがとても華やか。



会場の最後のコーナーには実際に座れる椅子が展示されています。
このコーナーは写真撮影可なので、ぜひ座り心地を実感しながら記念写真を撮ってください。
私は一番後ろの黄色い背もたれのついた椅子が気に入りました。
後ろにもたれかかると心地よすぎて、そのままうとうとしてしまいそうでした。


それでは、展覧会の開会に先がけて開催されたweb内覧会の進行に沿って、展覧会の様子をご紹介したいと思います。
展覧会の詳細は美術館の公式サイトをご参照ください。

http://www.sjnk-museum.org/program/current/5062.html

※掲載した写真は美術館より特別の許可をいただいて撮影したものです。

「デンマーク・デザイン展」は日本・デンマーク国交樹立150周年を記念して開催された展覧会です。冒頭、デンマーク大使館・公使参事官のマーティン・ミケルセン氏が来館されて、ご挨拶をいただきました。

マーティン・ミケルセン氏

「今年8月、日本に着任したばかりですが、会場内を見てデンマークに帰ったような気分になり、少しホームシックにかかりました(笑)。」
「今回の展覧会はデンマークの素晴らしいデザイナーの作品が展示されています。どれもこだわりの職人技で、日本のデザインと共通していると感じています。」
「北欧の寒い冬に素敵なデザインの家具のある暖かい部屋で本を読み、紅茶を飲むところを想像してみてください。これがデンマーク・デザインのコンセプト『ヒュゲ』(デンマーク語で「温かな居心地のよい雰囲気」)です。」
「デンマーク人は、椅子を買うためにお金を貯める、と言われています。みなさんもぜひデンマークのデザイナーの椅子に腰を落ち着けて最高の体験をして、デンマーク・デザインの素晴らしさを楽しんでいただいたいと思います。」(拍手)

続いて同館主任学芸員の江川均さんから各章ごとにポイントを解説していただきました。

最初の会場、手前が第1章、後ろが第2章
第1章 国際的評価を得た最初のデンマーク・デザイン

第1章は、今では「ロイヤル・コペンハーゲン」のブランドで有名な磁器が展示されています。デンマークの磁器の歴史は、王立磁器製作所が設立された1775年に始まりました。

こちらがシンプルなデザインの「ブルーフルーテッド」。
「磁器は熱を通しにくいので、当時飲まれるようになった紅茶やコーヒー、チョコレートを飲むのに適していました。」と江川さん。


こちらが写実的なデザインの「ブルーフラワー」。
左の方の皿は中央に花柄模様が描かれていますが、右の方の皿は中央に余白をとっています。ここには「ジャポニズムの影響がある。」と江川さん。




第2章 古典主義から機能主義へ

「近代家具デザインのパイオニア」コーオ・クリントのレッドチェア。



「伝統を切り捨てずに新しいものを作ったコーオ・クリントのレッドチェアは美術工芸博物館の講堂のために作られたものですが、その後身のデンマーク・デザイン博物館で使われています。」

第3章 オーガニック・モダニズム-デンマーク・デザインの国際化-

「オーガニックとは、『有機的な』という意味で、曲線、曲面を重んじるデザインのことです。」
「第二次世界大戦後にデンマーク・デザインは黄金期をむかえました。工業が発達して大量生産の時代になると、デンマークの手工業の伝統が、特にアメリカで新鮮なものに見えるようになったのです。」
「この頃は人間工学の影響で椅子のラインは人間にあわせて曲線になり、世界の流行に
フィットすることになります。」
「この章では、3大デザイナーの作品を紹介します。」

一人目はハンス・ヴィーイナ。
「こちらはアメリカのケネディ元大統領が大統領選挙の中、ニクソン候補とテレビ討論会を行った時にケネディ候補が使用した椅子(《ラウンドチェア》)です。このあと、この椅子はアメリカで「ザ・チェア(椅子の中の椅子)」と呼ばれ、その後、爆発的な人気を博しました。」

「二人目はアーネ・ヤコプスンです。建築家で、室内の内装も手がけたヤコプスンが設計した小・中学校のためにデザインした椅子や机です。素材は成形合板で、背もたれから座る部分まで一体化されています。デザインはシンプルですが、座り心地がいいものです。」


アーネ・ヤコプスンが設計したコペンハーゲンのSASロイヤルホテル(現在はラディソンブル・ロイヤルホテル)の客室とロビーに置かれた《エッグチェア》(右の黒い椅子)と、《スワンチェア》(左の赤い椅子)。
後にはロビーの様子とホテルの外観のパネル。


「そして3人目がフィン・ユールです。」
「ユールも建築家で、カーブを描く《チーフテンチェア(=酋長の椅子)》(下の写真中央の椅子)は古代エジプトの女王の椅子をイメージしたもので別名《エジプシャンチェア》と呼ばれています。」
(壁のパネルはフィン・ユール邸のリビングルームです。)


「次は近代照明の父と呼ばれたポウル・ヘニングスンです。彼のコンセプトは『まぶしくない』。これは子どものころほんのりとしたランプの光の中で生活していたことが原点にあるのではと言われています。」

後方のパネルはデンマークの特長的な切妻式の屋根のある民家。


「建築家ヴェアナ・パントンがデザインした。色鮮やかでビビッド、心が落ち着くのとは正反対の《パントン・チェア》。1960年代のポップカルチャーから受容されました。」
「素材はプラスチックで、先ほどのアーネ・ヤコプスンの椅子は背もたれと座る部分が一体化されましたが、この椅子は脚まで一体化されています。」



第4章 ポストモダニズムと現代のデンマーク・デザイン

「1970年代初め頃からデンマーク・デザインに対する海外の関心が薄れ、粗悪品も出回り、家具の輸出も減少しました。」
「そういった中、日用品の新しいブランドが出てきました。また、機能性に加え、環境に配慮した素材を使った家具も出てきました。《リトル・ノーバディ》(下の写真の青い椅子)は使用済みペットボトルを再利用しています。」
「後ろの展示は高級自転車です。デンマークは国土が平坦で自転車専用道路も整備されているので、自転車を利用しやすい環境にあります。」



「新しいブランドの日用品は、ダイニング(下の写真)の棚にも展示しています。」

「長い冬に家の中で多くの時間をすごさなくてはならない北欧の人たちが、伝統をいかして改良を重ねてきたデンマーク・デザイン。今回の展覧会では200点以上の作品が展示されています。日本でこれだけ大きな展覧会は初めてです。ぜひ高品質なデンマーク・デザインを楽しんでいただければと思います。」(拍手)

冒頭に紹介した、実際に座り心地を実感できるコーナーで椅子に座っていたら、公使参事官のマーティン・ミケルセンさんが「どうですか?」と声をかけてくださいました。とても気さくな方でした。もちろん笑顔で「心地いいです。」と答えました。

寒い冬にピッタリの展覧会です。
会期は約1ヶ月。12月27日(水)までなのでお見逃しなく。





2017年11月19日日曜日

三菱一号館美術館「パリグラフィック ロートレック展」 

東京・丸の内に19世紀末パリの街並みが登場しました!

右から二つめがロートレック《ムーラン・ルージュ、ラ・グーリュ》(三菱一号館美術館)

パリの街並みのパネル
(このコーナーでは写真撮影ができます。)

三菱一号館美術館で開催中の「パリ♡グラフィック ロートレックとアートになった版画・ポスター展」では、3階展示室の一角が19世紀末パリの街並みを撮った写真のパネルで部屋が区切られていて、そのパネルにロートレックの作品が展示されています。それにBGMにシャンソンが流れていて、ここはすっかり19世紀末のパリ。

とてもおしゃれで素敵な展覧会です。
先日開催されたブロガー内覧会に参加しましたので、そのときの様子をお伝えしながら展覧会の素晴らしさをご紹介したいと思います。

はじめに三菱一号館美術館学芸員の野口玲一さんから今回の展覧会の見どころについてのお話がありました。モデレーターは「青い日記帳」主宰のTakさんです。

野口さん(左)、Takさん(右)


Takさん 今回の展覧会のサブタイトルは「From Elite to the Street」ですが、これはど
 ういった意味を込めているのでしょうか。
野口さん 版画は絵画の表現手段として重視されていませんでしたが、大衆の消費文化が
 さかんになった19世紀末には商品ポスターや店の宣伝ポスターなどの商業美術がスト
 リートに出現するようになりました。
Takさん 街の写真のパネルがあって、歌手の歌声も聞こえるこの空間がまさにストリー
 トということですね。
野口さん そうです。そして隣の部屋がエリートたちの書斎をイメージしたプライベート
 な空間になっています。
  プライベートな空間に飾る作品は、前衛的なもの、一見したところ分かりにくくて密
 やかなメッセージが込められたもの、見る人に想像させるもの、エロチックで人前で見
 せられないものなど、個人的に楽しむものが好まれました。


Takさん 版画が流行した背景にはリトグラフの普及も大きいのでは。
野口さん リトグラフは石版の化学反応を利用したもので、版を彫る必要がないため、絵
 の勢いをそのまま表現することができるのです。実際に使われた石版を展示しているの
 でぜひご覧になってください。(上の写真の奥の展示台の上に展示されています。)
Takさん リトグラフですと版画に適した大きな石がないため、大きな作品が作れないとい
 うデメリットがありますが、ロートレックの《ムーラン・ルージュ、ラ・グーリュ》は
 3つに分けて印刷していますね。
野口さん よく見ると紙の継ぎ目があるので、みなさんもご覧になってください。
Takさん 三菱一号館美術館所蔵のロートレック作品は保存状態がいいですね。
野口さん ロートレックが個人的に手元にもっていたものを譲り受けた画廊主モーリス・
 ジョワイヤンのコレクションだったもので、街に貼られていなかったので、色もきれい
 で、折り目もなく、別摺りの文字も入っていません。
Takさん 文字なしがレアということですね(笑)。
  版画集『カフェ・コンセール』が展示されていますが、ロートレックは線の描き方が
 上手で、一発で決めていますね。
野口さん そうですね。描く人物の特徴をうまくとらえています。ただし意地悪なとこ 
 ろがあって、女性をきれいに描かないのです(笑)。

右がロートレック《版画集『カフェ・コンセール』(三菱一号館美術館))

Takさん ロートレックは正式な美術教育を受けていませんね。
野口さん そうなんです。それなのに最初の作品である《ムーラン・ルージュ、ラ・グー
 シュ》は実験的な要素も取り入れていて、まさに天才です。
  版画は当時の最新のメディアでした。大量に摺られて街じゅうに出回り、大衆に人気
 が出てくるようになりました。ロートレックの時代には画家のデビューの仕方が変わっ
 てきたのです。(拍手)

展覧会は庶民向けの版画と知的階層向けの版画の2章構成になっています。

「はじめに 高尚(ハイ)から低俗(ロー)まで」に続いて「第1章 庶民(ストリート)向けの版画」が続きます。

今回の展覧会でBGMが流れているのは冒頭で紹介したパリの街並みのパネルがある部屋を入れて3室。
最初の部屋にもBGMが流れていて、会場に入った途端、気分はパリ!




続いて「第2章 知的階層(エリート)向けの版画」の展示が続きます。

創建当時の内装が再現されてヨーロッパの雰囲気がただよう三菱一号館美術館ならではの展覧会ですね。


 


そして最後の部屋にもBGMが流れています。
ここにはゴッホが所蔵していて、自身の制作にも大きな影響を与えた浮世絵コレクションが展示されています。


秋を飛び越えてすっかり冬になったような寒さの中、都会の片隅で前衛芸術華やかりし19世紀末のパリの雰囲気にひたってみてはいかがでしょうか。

詳細は三菱一号館美術館の公式サイトでご確認ください。
http://mimt.jp/parigura/

2017年11月13日月曜日

国立新美術館「改組 新 第4回日展」


さわやかに晴れわたった文化の日。
六本木の国立新美術館で始まった「改組 新 第4回日展」に行ってきました。

今年は明治40年の第1回文展から数えて110回目の記念すべき年。
この日は開会初日ということではじめに開会式があったので、開場時間前から入口付近には関係者やプレスの人をはじめ多くの人でにぎわっていて、オープニングにふさわしい華やかな雰囲気に彩られていました。


開会式では、公益社団法人 日展の奥田小由女理事長がご挨拶の中で、応募作品が5部門合計で11,581点、そのうち入選作品が2,225点(役員他の無鑑査作品を含めて2,931点展示)とお話されていました。
日々、制作に励んでいる芸術家のみなさんがここにたどり着くまでの道のりはよほど険しいことを想像する一方で、ここに展示されている作品はどれもが素晴らしいものばかりではとの期待も膨らんできました。

開会式のあと会場に入り、とりあえず全体を見渡そうと思い会場内を歩いていきましたが、作品の数の多さ、そして質の高さに圧倒されました。
広い国立新美術館の1階から3階まで日本画、洋画、彫刻、工芸美術、書の5部門、約3000点、行けども行けども質の高い作品ばかり、まるで芸術作品の森に迷い込んだような不思議な感覚になりました。

展覧会の内容がどれだけ素晴らしいかをお伝えしたいのですが、これだけ多くの作品をすべて紹介することはできませんので、各部門の会場の雰囲気をお伝えして、それぞれの部門ごとにあくまでも私の趣味ということで「私の一押し」を紹介してきたいと思います。

会期は12月10日(日)までです。会期中にさまざまなイベントもあります。
詳細は「日展ウェブサイト」をご参照ください。

https://nitten.or.jp/summary


はじめに日本画の会場です。

日本画の会場には、縦もので240cm×190cm以内または260cm×165cm以内という大きさの作品がずらりと並んでいて壮観です。
題材も日本画の世界では古くから描かれてきた日本の山や森や海、鳥や動物などの自然の景色をはじめ、街中のさりげない一コマ、日常の中の人たち、さらには海外の街並みや抽象絵画のような作品まで、バラエティに富んでいて、それぞれの作者の思いが伝わってきそうな作品ばかりです。









そういった中で「私の一押し」を決めるのは至難の業ですが、やはり一番気になった作品は佐々木淳一氏の《廃船》。

うらびれた漁港の片隅にはどこにでもありそうなありふれた廃船。
船底には海水がしみ込んでいて使い物にならないのに、なぜかカチッとした構図でかつて現役だったころの威厳を保っている。おそらく夕陽であろうか、海面は一面赤茶けた色に染まっているが、なぜか緑色や紫色も混ざっていて、手前の方は真珠のように輝く水玉模様に彩られている。そしてさらにミステリアスなのがこの廃船にとまろうとしてる鳩。この鳩は何を意味しているのだろうか?

短い時間の間にこんなことを考えさせてくれる作品です。




続いて同じ1階の工芸美術の会場へ。

こちらのコーナーには壁面には大画面の作品が並び、台の上には立体の作品がずらりと並んでいます。どれも素晴らし作品ばかりですが、驚いたのはその素材。
遠くで見ると油絵かと思ったものが、実は大きな七宝の作品だったり、染物だったり、パッチワークだったり。立体の作品も漆、ガラス、陶器、金属など多種多様。








こちらもこの1点となるととても難しかったですが、一番気になったのがこの作品。
清水素子氏の《ヴェネチィア幻想》(七宝)。
ベネチアはサンマルコ広場も、リアルト橋も、サンタマリア・デラ・サルーテ教会や小島に浮かぶサンジョルジョ・マッジョーレ教会も、運河やゴンドラもどれも絵になるのですが、この作品のように裏路地(裏運河?)も絵になります。もちろん題材がいいだけでなく、重厚な建物と淡い青の運河の水の対比、そして運河の水面の先と空との境界線があいまいで、この先、どこか遠くへ行ってしまうのではという不安と期待、そういたものを感じさせてくれる作品です。


続いて2階に移り洋画の会場です。
洋画の規定はF100号(長162.1cm・短130.3cm)以内と日本画より一まわり小振りなため、まるでヨーロッパの美術館のように作品が壁の上下2段にびっしり展示されています。

洋画も、日本の自然の風景や海外の街並み、さりげない日常の一コマ、物思いにふける人物、静物、そしてシュール風の作品などさまざまなジャンルの作品が並んでいます。




洋画のコーナーでも思案しましたが、「私の一押し」はこの作品。
中村末二氏の《暖日》。
重厚感あふれる土蔵とおぼしき壁、塗装は落ちていても金属の板で補強された頑丈な扉。
軒下にぶら下がるランプ、そして農薬を巻く機械(? 間違えていたらすみません)。すべてがここに何年も根を張っているかのようにどっしりとした存在感。
そして扉は空間と空間だけでなく、時間と時間を区切るもの。この扉がギ―ッと音を立てて開くとその先にはどういった世界が広がっているのか想像をかき立ててくれる、そういった作品でした。



次は同じく2階の彫刻会場。
このコーナーでは来場者が入らないように写真を撮るのに苦労しました。
なにしろこれだけ彫刻の数が多いと、カメラのファインダー越しには作品と来場者の区別がつきにくいからです(笑)。

こちらもモデルは老若男女、古今東西、さらに動物まで様々なテーマの作品が展示されていました。






ウルトラマンのポーズをとる少年、赤ん坊を抱く母親、何かを見つめるように佇む男性、古代ギリシャ風の衣をまとった女性、どれもが考えさせてくれる作品だったので、やはり「私の一押し」を決めるのには難儀しましたが、彫刻のコーナーではこの作品が気になる作品でした。
村井良樹氏の《刻の扉~追憶~》です。
顔を少し上に上げながら目を閉じて何かを思っている若い女性。
片方の胸を肌けてうっとりしたような表情をしているので、よかった時のことを思い浮かべているのだろうか。
しかし時間の流れを示す時計は文字盤は欠けてる。これはよき時代は二度と戻らないことを暗示しているのか。
考えさせてくれる作品です。

そして3階は書の会場。

小学生のとき書道を習っていたので5部門の中では唯一ゆかりのあるジャンルです。
とは言うものの、全く上達しなくて、他の人が上手に書いたのを見て、「どうしてこんなに上手に字が書けるのだろう」とうらやましく思ったことを思い出しながら拝見しました。本当にうらやましいです。





5部門の中で最も多い1,028点が展示されていて、タイトルを見ると万葉集や古今和歌集、をはじめとした日本の古典、中国・盛唐の詩人、杜甫、李白、北宋の詩人、蘇東坡の詩など有名な題材も多く、やはりここでも「私の一押し」を決めるのには苦労しました。
その中で私の気になった作品は、池堂正子氏の《おくのほそ道》。

10年ほど前に松尾芭蕉の歩いた道をたどりたくて「奥の細道」を和風綴のノートに筆ペンで書き写したのですが、思ったように上手に書けなかったので途中で放棄してしまいました。それでも「奥の細道」そのものが好き、というのと、ここまで上手に書けなくても少しでも近づきたいという思いがあったためか、この作品に心を惹かれました。




さて、駆け足で日展の様子を紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
とてもすべてをお伝えすることはできませんので、ぜひとも実際に六本木まで足を運んで、芸術作品の森を散策して、「私の一押し」を選んでいただければと思います。