2018年12月30日日曜日

バスキア作品の魅力に迫る映画『バスキア、10代最後のとき』

12月22日(土)から東京・恵比寿のYEBISU GARDEN CINEMAほかで公開が始まった映画『バスキア、10代最後のとき』はもうご覧になられましたでしょうか?

『バスキア、10代最後のとき』は、1970年代後半から80年代にかけてニューヨークで活躍して27才の若さで夭逝した天才アーティスト、ジャン=ミッシェル・バスキアと交流のあったアーティストや友人たちのインタビューで彼の創作活動や生きざまを浮き彫りにしていくドキュメンタリー映画です。

バスキア・ファンの方にも、名前ぐらいは聞いたとこがあるという方にもおすすめしたい映画なので、公開に先がけて開催された試写会&トークショーの様子をネタバレにならない程度にご紹介したいと思います。

映画のチラシ

オフィシャルサイトはこちらです→映画『バスキア、10代最後のとき』

映画では、バスキアが活動していた当時の荒廃したニューヨークのダウンタウンの風景が流れ続け、そこで生活し活動するあやしげなアーティストたちの姿が映し出されます。

そこには、アメリカンフットボールのヘルメットをかぶって歩いたり、頭の上から後ろ半分だけに髪を伸ばした奇抜なヘアスタイルをしていてもなに食わぬ顔をしていたり、まだ10代の、あどけなさが残った素顔のバスキアも登場してきます。

そして、次から次へと続く関係者たちのコメント。

スピード感があって、いつの間にかバスキアの世界に引き込まれて、最後には、この時代のこの混沌とした空間だからこそあのエネルギーのある作品が出てきたのだなと納得する自分に気がつくという仕掛けになっていることが後からわかってきます。

試写会に続いて、ミヅマアートギャラリーのエグゼクティブディレクター、三潴末雄さんと、アートブログ「青い日記帳」主宰のTakさんの楽しいトークショーがありました。


トークショーの内容については、すでに他の方ブログなどで詳細に紹介されているので、特に私の印象に残ったやりとりをお伝えしたいと思います。

Takさん「 バスキアは若くしてなくなったので神格化されたのでしょうか。」
三潴さん「作品自体にすでに思想的なものがあった。神格化はメディアがつくる虚構。」
「自分がペインティングしたTシャツに1万ドル、2万ドルという値をつけていた。本人は自分の作品の未来の価値をつけていたのでしょう。」

このやりとりを聞いて、私はバスキアと同じく27才の若さで亡くなった天才ギタリスト、ジミ・ヘンドリクスのことを思い浮かべました。

ジミ・ヘンドリクスがロックの表舞台で活躍したのは1966年から1970年にかけてのわずか4年間。
その間に”Purple Haze”や”Voodoo Chile(Slight Return)”に代表されるアグレッシブなギタープレイや、ギターを床にたたきつけて壊したり、火をつけたりと過激なパフォーマンスで当時のロックファンやミュージシャンのド肝を抜き、今でも多くのロック・ギタリストに大きな影響を与え続けているものすごいギタリスト。

私がバスキアの作品を初めて見たとき、ちょうどウッドストックでのライブの”Purple Haze”をFMラジオで初めて聴いたときと同じくらい頭の中に直接「ズシーン」と来る衝撃を受けました。

それは、2017年に「ZOZO TOWN」前澤友作社長が約123億円で落札したことで一躍有名になったバスキアの作品でした。
当時の新聞記事の写真を見たときは、正直「この落書きのような作品が123億円?」と思いましたが、ガラス越しでなく生の作品を前にすると、不思議なことに作品のもつパワーというかインパクトというか、そういったものが体全体に響いてきたのです。


この作品が公開されたのは、前澤社長が創設し、会長を務める現代芸術振興財団が主催する「第4回CAF賞展」(2017年10月31日~11月5日 代官山ヒルサイドフォーラムで開催)でのこと。
入場は無料!つまり123億円の作品を無料で見ることができたのです!

2016年には同じくバスキアの作品を約63億円で落札し、今年にはDIC川村記念美術館から長谷川等伯『烏鷺図屏風』(重要文化財)を収蔵(譲受金額は非公開)してアートコレクターとしても話題にこと欠かない前澤社長。
トークショーでは、アートコレクターとして前澤社長のことも話題になりました。

「前澤社長には日本のアートシーンも買ってほしい」と三潴さん。

過去を振り返ってみても、静嘉堂文庫美術館、三井記念美術館、出光美術館、根津美術館、などなど例をあがたらきりがないくらいですが、私たちが身近に内外の美術品を見ることができるのも、明治時代に財閥や財界の人たちが大切に蒐集・保存していたからこそ。

プライベート美術館建設の構想があるという前澤社長。
「前澤美術館」も楽しみですが、来年9月には六本木の森アーツセンターギャラリーでバスキア展が開催されて、前澤社長所蔵の作品も出展されるようなので、こちらも楽しみにしています。

映画「バスキア、10代最後のとき」は1月以降も全国各地の映画館で順次公開されます。
バスキアがより身近な存在に感じられる映画です。バスキア展の予習にもなりますので、ぜひご覧になっていただければと思います。

ロードショーのスケジュールはこちらです→ロードショースケジュール

2018年12月19日水曜日

動物を探そう!三井記念美術館「国宝雪松図と動物アート」展がおもしろい

絵画に工芸、茶道具、さらには能面や織物、蒔絵、切手まで、動物たちを探しながら作品を見ることができるとても楽しい展覧会が東京・日本橋の三井記念美術館で開催されています。

タイトルは「国宝雪松図と動物アート」。

タイトルにあるとおり、三井記念美術館所蔵の国宝、円山応挙《雪松図屏風》と、同じく《志野茶碗 銘卯花墻》も展示されているので、国宝と動物アートがダブルで楽しめる充実の内容です。
※掲載した写真は、美術館の特別の許可をいただいて撮影したものです。

展示室3の展示風景
正面奥が国宝・円山応挙《雪松図屏風》(三井記念美術館)

それでは、さっそく展示室内をご案内したいと思います。
展示室内は、12月13日のオープニングを前に展示作業で忙しい中、三井記念美術館学芸部長の清水さんにご案内いただきました。

「今回のテーマは動物アート。想像上の動物から、哺乳類、鳥類、昆虫、魚介類まで、当館所蔵品をメインにした作品を展示しています。」と清水さん。

シックな内装と個別の展示ケースがオシャレな展示室1には茶道具が展示されています。

こちらは《古銅龍耳花入》。胴体の左右に付いている半円形の耳の上部は龍の顔です。
「これは明時代のものですが、中国古代の青銅器のように、胴体下には中国古代の想像上の動物・饕餮(とうてつ)の文様が表されています。」
器の正面から見ると饕餮と「にらめっこ」ができます。


続いて交趾香合。
「交趾香合は、江戸時代にはベトナムから来たものとされていましたが、近年、中国福建省で窯跡が発見されているので、現在では中国産と考えられています。」

右は、黄色い花のまわりを二羽の尾長鳥が舞っている《交趾金花鳥香合》。
左は《交趾黄鹿香合》。よく見ると黄色い鹿が丸まっているのがわかります。



右は鶏の色が鮮やかな野々村仁清作《色絵鶏香合》。
左は樂左入作《赤楽白蔵主香合》。
「狸のように見えますが(笑)、狂言『釣狐』に登場する狐が変装した禅僧・白蔵主をかたどっています。」
狂言『釣狐』は、狐を捕える漁師を懲らしめるため禅僧の白蔵主に化けて漁師に説教をして罠を捨てさせたのですが、その帰りに餌に目がくらんで罠にかかるというストーリーです。

こちらは朱漆を塗り重ねてそこに文様を彫り込む「堆朱(ついしゅ)」という技法で作られた香合。
右は牡丹のまわりを舞う二羽の尾長鳥が彫られた《堆朱牡丹尾長鳥香合》。
左は《彫漆花松虫香合》。中央やや右寄りにある穴の開いた大きな石は太湖石でしょうか。それと比べると松虫のなんと大きいこと!


十二支が浮き彫りになっている《十二支文腰霰平丸釜》。こちらの面には子、丑、寅の浮彫がうっすらと見えます。
「この釜は干支に関係なく毎年展示できる便利な作品です(笑)。」と清水さん。
もちろん毎年は展示しないとのことですが。


UFOが飛んでる!と驚いたのは《色絵蓬莱注連縄文茶碗》。
描かれている動物は、おめでたい鶴と亀(鶴は反対側に描かれています)。
亀が見上げるUFOの正体は同じく吉祥を表す蓑傘。


こちらはシンプルな竹筒《竹置筒花入 銘白象》。
なぜ銘が白象かは・・・
ズシン、ズシンという足音が聞こえてきそうです。


続いて、いつも特上の作品が展示されている展示室2。
今回は野々村仁清の《信楽写兎耳付水指》。
正面から見るとよく分かりませんが、横から見るとこのとおり、大きな耳の兎がいます。
「器の肩は波模様と見れば謡曲『竹生島』に謡われる、波の上を飛ぶ兎が連想されます。」と清水さん。

今回の展示ではキャプションの右上に動物名が記載されているので、解説と一緒に読むと作品の楽しさも増します。

次に織田信長の弟・織田有楽斎が京都の建仁寺正伝院に建てた茶室『如庵』の内部を再現した展示室3。

今回の展覧会では三井記念美術館の国宝《志野茶碗 銘卯花墻》はここに展示されていました。
茶室に国宝の茶碗。当然のことながら、これ以上ないというくらいぴったりはまっています(1月から床の間には袋に入った飾り物《詞黎勒》が展示されています)。


次が冒頭でも紹介した、絵画を展示している展示室4。
「円山応挙《雪松図屏風》の屏風1隻には、当時では難しい技術だった1枚ものの和紙を使っています。雪の白は色を塗らず、紙の色を活かしたものです。」

江戸時代の享保年間に長崎に来航して日本で絶大な人気を誇った中国の画家・沈南蘋の作品《花鳥動物図》。全11幅のうち、今回は6幅が展示されています。
沈南蘋は享保16(1731)年に来日して、約2年間長崎に滞在しました。


ふたたび円山応挙です。
右が《滝に亀図》。
「涼しげな滝の絵なので夏にふさわしいと思いがちですが、落款には冬に描いたと書かれてあるので、この時期にふさわしいと思い展示したものです。」


中央の三幅セットの掛軸は《蓬莱山・竹鶏図》。
「三井家は、江戸時代には敷地内に鶏を五百羽飼育していたこともあったそうです。この作品は鶏好きだった三井家の注文により描かれたものと考えられます。」

左の《雲龍図》は「当時、三井家の近くに住んでいた応挙が、直接三井家に持参したという記録が残っています。」
応挙が「ご依頼の掛軸お持ちしました。」と言って持ってきてくるなんてうらやましい!

《雪松図屏風》の左側には山口素絢と岡本豊彦の《雪中松に鹿図屏風》、個人蔵で、プライスコレクションのものとほぼ同じ構図の長沢芦雪《白象黒牛図屏風》が並んでいます。
「三井家の祖先は藤原氏とされていて、藤原氏の氏神を祀る春日大社の使いの鹿が三井家では好まれました。」


そして、猿といえば森狙仙、森狙仙といえば猿と言われるくらい有名な森狙仙《岩上群猿図屏風》(右)と、酒井抱一《秋草の兎図襖》(左)。

《秋草の兎図襖》の下地には薄く剥いだ木を貼り付けていて、まるで左斜め上から風が吹いているようです。右上の半月と左下で飛び跳ねる兎が対角線上に描かれる配置は絶妙。


展示室5に移ります。こちらは主に工芸作品が展示されています。

《朱塗鶴亀鹿蒔絵三重盃》
ここにも鶴亀と並んで鹿が描かれています。


続いて、江戸後期の京都で活躍した陶工・永楽保全、永楽和全親子の香合が並びます。
「保全は中国風の陶器を京都風にアレンジした人です。」と清水さん。

右から永楽保全《交趾写丸龍香合》《交趾写手遊獅子香合》《金欄手鳳凰文宝珠香合》。


上が永楽和全《交趾写大獅子香合》、下の右が《交趾写花喰鳥香合》《交趾写台牛香合》


どれもかわいらしい保全・和全親子の香合ですが、ニッと歯を出して笑っているように見える獅子の愛くるしさに惹かれました。

洋風のデザインが目をひく《阿蘭陀象唐草文鉢》。
「江戸時代にはオランダのデルフト窯など舶来のものは『阿蘭陀』と呼ばれました。」
赤、白、青の旗はオランダ国旗のようですが、象が鼻で掲げているところが可愛いらしいです。


精巧な自在置物もあります。
高瀬好山《昆虫自在置物》

高瀬好山《伊勢海老自在置物》

そして、明治の超絶技巧の展覧会で一躍有名になった安藤緑山の《染象牙貝尽置物》。
「緑山」は今まで「ろくざん」と読まれていましたが、正確には「りょくざん」と読むそうです。


円山応挙《昆虫・魚写生図》
「画中にコメントが書かれているのですが、左下の魚は加茂の生け簀の魚を写生したこと、中央下の魚は京都錦小路の魚店の鮎を写生したということがわかります(笑)。」
今も多くの人でにぎわう錦小路の魚屋の前で、売り物の魚を黙々と写生する応挙の姿を思わず想像してしまいました。一匹ぐらいは買って晩ごはんのおかずにしたのでしょうか。



展示室6には動物が描かれた明治時代の切手や世界の動物切手が展示されています。

近くでよく見ると文字の両側に昇り龍の文様!


最後の展示室7に移ります。
こちらは十二支の動物たちと狸や狼、熊、狐、鵄(トビ)など十二支に入っていない鳥獣たちの合戦物語《十二類合戦絵巻》。
歌合の判者をするためにやってきた狸が十二支の動物たちに罵倒されたのがきっかけで合戦になるが、狸一味は負け、世の無常を感じた狸が出家するという物語。



人間の僧侶に剃髪を受ける狸の姿にわびしさを感じます。



《能管 銘紫葛 笛筒:葡萄栗鼠蒔絵筒》
笛筒の模様を近くでよく見るとリスの愛らしいクリッとした目が見えてきます。 

右が《紅地網目蝶罌粟模様厚板唐織》、左が《刺繍七賢人模様厚板唐織》。
右は蝶々がひらひら飛んでいて、左は七賢人に獅子や麒麟、象や針鼠が刺繍されています。こちらもぜひ近くでじっくりご覧になって、かわいい動物たちを探してみてください。


重要文化財の能面も展示されています。
右から謡曲「道成寺」で使われる《蛇》、謡曲「石橋」で使われる《獅子口》、謡曲「殺生石」で使われる《小飛出》。《小飛出》の能面は狐を表しています。

「《百馬図巻》は初公開の作品です。スペースの関係ですべては広げられませんが、全部で百匹の馬が描かれています。」
こんなにいろいろな毛色の馬がいるのを知ってびっくりです。



さて、三井記念美術館の国宝と動物アートの展覧会はいかがだったでしょうか。
作品の中にいろいろな動物が描かれていて、それを見つけるのがとても楽しみな展覧会です。
年末年始の休みをはさんで1月31日(木)まで開催されます。

今年の締めくくりに行くか、年のはじめに行くか、どちらにもふさわしいおめでたい展覧会です。おススメの展覧会です。

【展覧会基本情報】
会 場 三井記念美術館
開館時間 10:00~17:00(入館は16:30まで)
期 間 2018年12月13日(木)~2019年1月31日(木)
休館日 月曜日(但し、12月24日、1月14日、1月28日は開館)
    年末年始 12月26日(水)~1月3日(木)休館、1月27日(日)休館
入館料 一般1,000円 大学・高校生500円 中学生以下無料 他
土曜講座 1月12日(土)、1月19日(土)に開催

展覧会の詳細は同館ホームページでご確認ください。



 

2018年12月3日月曜日

山種美術館「特別展 皇室ゆかりの美術ー宮殿を彩った日本画家ー」


東京・広尾の山種美術館では、特別展「皇室ゆかりの美術-宮殿を飾った日本画家-」が開催されています。

皇室ゆかりの美術品や宮殿にちなんで制作された作品が展示されていて、とてもきらびやか。幅9mを超える大画面の東山魁夷《満ち来る潮》(山種美術館)(下の展覧会チラシ中央)から、可愛らしい銀製のボンボニエール(下の展覧会チラシ右下)の細部まで楽しめる展覧会です。
ぜひみなさまにもご覧になっていただきたい展覧会なので、今回は先日開催された内覧会の様子をお伝えしながら見どころをご紹介したいと思います。
※掲載した写真は、美術館の特別の許可をいただいて撮影したものです。

ギャラリートークはじめ関連イベントもあります。
詳細は同館ホームページでご確認ください。 → 山種美術館


さて、それではさっそく同館特別研究員の三戸さんのギャラリートークをおうかがいすることにしましょう。

「皇居宮殿が完成したのが1968(昭和43)年、今年でちょうど50年。また、来年には皇位が継承されて年号が代わります。こういった節目の年に今回の特別展を開催しました。」と三戸さん。

第1章 皇室と美術 -近世から現代まで

展示室入口でお出迎えしてくれるのは鶴と松のお目でたい題材の双幅の掛軸《松鶴》(山種美術館)。作者は京都に生まれ、京都で活躍した西村五雲。

西村五雲《松鶴》(山種美術館)


「今回の展覧会は作品のキャプションにも注目です。この《松鶴》は久邇宮家旧蔵の作品で、昭和8年に大礼記念京都美術館(現 京都市美術館)から久邇宮家に寄贈されたものです。久邇宮家は昭和天皇の皇后・香淳皇后の出身家です。

「皇室の書」のコーナーでは、後陽成天皇《和歌巻》【重要美術品】(山種美術館)に注目。和歌の一部の言葉が絵で表される「判じ絵」になっています。

「絵画」のコーナーでは、野口小蘋《箱根真景図》、下村観山《老松白藤》と大作が並びます。
野口小蘋《箱根真景図》は、竹田宮家旧蔵の屏風。
右隻が箱根権現や富士山の描かれた春景、左隻がドイツの医師・ベルツが保養地として設置を勧めた箱根離宮が描かれた秋景。
竹田宮家の婚礼の調度品であった可能性が指摘されています。

野口小蘋《箱根真景図》(山種美術館)

下村観山《老松白藤》(山種美術館)

下村観山《老松白藤》は、明治神宮から献上された伏見宮家旧蔵の屏風。
大胆な松に繊細な藤がからむ観山渾身の作品。
左隻の左から2面に描かれた小さな熊蜂に注目です。
この作品のみ撮影可です。ぜひ記念に一枚!

第2章 宮殿と日本画 -皇居造営下絵と宮殿ゆかりの絵画

「皇居を飾る」のコーナーでは、赤坂離宮や皇居造営の下絵に注目です。

赤坂離宮の花鳥図の下絵は、荒木寛畝がはじめに担当しましたが、途中で渡辺省亭に交代。
「時代に合わせて、より西洋的な図柄が好まれたのでは。」と三戸さん。
それでも荒木寛畝には絵を描いた分の謝礼は支払われたそうです。

「山種美術館と宮殿ゆかりの絵画」のコーナーでは、昭和の新宮殿の作品を誰もが楽しめるようにと、山種美術館創立者・山﨑種二氏が宮殿装飾に携わった画家たちに依頼して制作された作品が展示されています。

橋本明治《朝陽桜》は、皇居正殿の東廊下を飾る杉戸絵《桜》とほぼ同様の構図の作品。

橋本明治《朝陽桜》(山種美術館)

第3章 帝室技芸員ー日本美術の奨励

帝室技芸員制度は、日本美術を奨励、顕彰する目的で設置された制度。
「1890(明治23)年から1944(昭和19)年まで13回にわたり任命が行われ、日本画家がもっとも多く、第1回の橋本雅邦らから、最終回となった第13回の鏑木清方、上村松園、前田青邨らまで79名が任命されました。作品のキャプションの右上に任命された年が記載されています。」と三戸さん。

こちらは日本画のコーナーです。

橋本雅邦《松林山水》(山種美術館)

右から、瀧和亭《五客図》、荒木寛畝《雉竹長春》、
川端玉章《犀川真景図》(いずれも山種美術館)


右から、竹内栖鳳《双鶴》、今尾景年《松下牧童図》
(いずれも山種美術館)

右から、下村観山《寿老》、川合玉堂《鵜飼》
(いずれも山種美術館)


右から、横山大観《富士山》、山元春挙《火口の水》、
寺崎広業《渓山雪後》(いずれも山種美術館)
日本画だけでなく、洋画や工芸・彫刻の分野で任命された帝室技芸員の作品も展示されているので、こちらもぜひじっくりご覧になってください。

展示されている作品はもちろん、今回もスイーツやグッズが充実しています。

1階エントランスロビーにある「Cafe 椿」の特製和菓子。
どれも美味なので、どれをおススメしたらいいか迷ってしまいます。

下の写真中央は「吉祥」(西村五雲《松鶴》)、右上から時計回りに「初陽」(横山大観《富士山》)、「雪輪」(上村松園《牡丹雪》)、「ちとせ」(下村観山《老松白藤》)、「春の朝」(橋本明治《朝陽桜》)。(カッコ内はイメージした作品名で、いずれも山種美術館蔵)

こちらは今回の展覧会関連グッズ。地下のミュージアムショップで販売していますので、展覧会の思い出にぜひ。


おススメは、クリスマスの時期などに欠かせないグリーティングカード。
1枚は350円+税ですが、5枚セットだと1,400円+税で1枚分お得です。


会期は2019年1月20日(日)までですが、展示替えがあって、前期は12月16日(日)までなのでお見逃しなく!
後期は12月18日(火)から始まります。後期展示も楽しみです。