2016年7月15日金曜日

DMM.PLANETS Art by teamLab内覧会


7月16日(土)からお台場で開催されるDMM.プラネッツ art by teamLabの内覧会に参加してきました。


はじめに主催者あいさつ。
左がDMM.com代表取締役の松栄氏、右がチームラボ代表の猪子氏。



会場内にはひざ下まで水に浸かる部屋があるので、入口で靴と靴下を脱いでズボンをひざ下までたくし上げてから会場内に入ります。
中に入ってすぐに迎えてくれるのは、床一面に布団のような、枕のようなものが敷かれた不思議な空間。足をとられてなかなか前に進めません。
この部屋は”やわらかいブラックホール-あなたの身体は空間であり、空間は他者の身体である”。


続いて電球の柱が天井から降り注ぐ部屋。
この部屋は”Wander through the Crystal Universe”。
QRコードをスマホで読み取って星のパターンを選んで送信すると、自分の好きな光のシンフォニーを奏でてくれます。見るだけでなく、自分でも作品を作れてしまうところがうれしいですね。






猪子さんは会場内でも、丁寧に解説をしてくださいました。

「体でアートを感じ取ってください」
「この会場は3,300㎡の迷路です。作品の中をさまよってください。道を失ってください。ついでに自分も失ってください。」
と、いつものユニークなトーク。

「写真撮らせてください」とお声かけしたら、気さくにポーズをとってくれた猪子さん。



ここがひざ下まで水に浸かる部屋。水の上に写る光のアートです。
この部屋は”人と共に踊る鯉によって描かれる水面のドローイング-Infinity”。



その名のとおり、池の中にはたくさんの錦鯉が泳いでいて、足元まで近づいてきます。


そして最後の部屋がプラネタリウム。
この部屋は”Floating in the Falling Universe of Flowers”。
ここも不思議な空間です。プラネタリウムなのに空を舞うのは色とりどりの花。寝そべって見るためのソファーもあります。

寝そべって上を見上げてみると・・・
まばゆいばかりに星、でなく花が輝くきれいな夜空です。

お台場に出現した巨大なアート空間。
理屈ぬきで楽しめます。

会期は7月16日(土)から8月31日(水)まで。
夏休みはお台場で決まりです!

詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。
  ↓
http://exhibition.team-lab.net/dmmplanets2016/

2016年7月5日火曜日

メアリー・カサット展夜間特別鑑賞会 in 横浜美術館

横浜美術館で開催中のメアリー・カサット展。
先週の土曜日に夜間特別鑑賞会に参加してきました。

はじめに担当学芸員・沼田さんのギャラリー・トーク。
会場を回りながら、展覧会への思いのこもったお話しをおうかがいしました。

「メアリー・カサットは印象派を代表する女性画家。それでも国内に所蔵作品が少ないので、あまり日本になじみがなく、今回は国内では35年ぶり2回目の回顧展です。」

以下、沼田さんの解説に沿って作品を紹介していきます。

展覧会は次の3章構成になっていて、初期の作品から晩年の作品までカサットの生涯をたどることができます。

第1章 画家としての出発
第2章 印象派との出会い
第3章 新しい表現、新しい女性

まずは第1章。
入口すぐでお出迎えしてくれるのは、カサットの初期の作品「バルコニーにて」(1873年 フィラデルフィア美術館)。
これはカサットがスペイン滞在中に魅了されたスペインの画家ムリーリョへの傾倒が見られる作品。初期にはこういった力強い作品を描いていたのだと、ひたすら感心して見ていました。


こちらは1875年にパリにアトリエを構えてから肖像画の注文が多くなってきた時期の作品。
左から2番目が「刺繍するメアリー・エリソン」(1877年 フィラデルフィア美術館)。

「この作品は、肖像画に刺繍という風俗画の要素を取り入れた実験的な要素が入っている作品です。」
この頃から決まりごとの多いアカデミズムに嫌気がさしてきたそうです。


「刺繍するメアリー・エリソン」の左が「若い娘の頭部」(1874年頃 ボストン美術館)、その右が「赤い帽子の女性」(1874/75年 ジェラルド&キャサリン・ピータース夫婦協力)。 


第2章「印象派との出会い」

サロン(官展)に疑問をもったカサットが街を歩いていて偶然出会ったのが店のショーウインドーに飾られていたドガの作品。
その時の衝撃を彼女は次のように述べています。


この展覧会は壁にも注目です。

「印象派の画家は、モネのように主に風景を描く風景画家と、ドガのように主に人物を描く人物画家に大きく分かれます。」
「カサットはドガの影響を受けたので、身の回りの女性や子供に興味があって、人物をよく描きました。」

「作品№7(下の写真の右の作品)は、背景の海は少しで、砂遊びに夢中になっている二人の愛らしい女の子が大きく描かれています。二人の女の子は、亡くなった2歳上の姉リディアと自分を重ね合わせているとも言われています。」

写真左「庭の子どもたち(乳母)」(1878年 ヒューストン美術館)、右「浜辺で遊ぶ子どもたち」(1884年 ワシントン・ナショナル・ギャラリー)





「作品№13(下の写真右)は、今回の展覧会のパンフレットになった『桟敷席にて』です。
作品№14(下の写真左)のように胸の開いたイブニングドレスでなく、当時の流行色だった黒い昼の外出着を着て、オペラグラスでおそらく舞台を見ているところを描いています。これは、当時は見られる対象であった女性が、私は見られるためでなく、お芝居を見に来た、ということを画家として宣言したチャレンジングな作品と言えます。」

写真左「扇を持つ婦人(アン・シャーロット・ガイヤール)」(1880年 個人蔵)、右「桟敷席にて」(1878年 ボストン美術館)





カサットが大きな影響を受けたドガの作品も展示されています。

左「踊りの稽古場にて」(1884年頃 ポーラ美術館)、右「踊りの稽古場にて」(1895-98年頃 石橋財団ブリジストン美術館)



「こちらのコーナーはカサットの家族を描いた作品が並んでいます。これらの作品はアメリカの異なった美術館に所属されているので、久しぶりに家族が大集合です。みなさんきっと喜んでいることでしょう。」

左から、「青い夜会服を着てタペストリー・フレームの前に座るアレクサンダー・J・カサット夫人」(1888年 アデルソン・ギャラリー協力)、「アレクサンダー・J・カサット」(1880年頃 デトロイト美術館)、「ロバート・S・カサット夫人、画家の母」(1889年頃 デ・ヤング、サンフランシスコ美術館)、「タペストリー・フレームに向かうリディア」(1881年頃 フリント・インスティチュート・オブ・アーツ)
(メアリー・カサットは5人兄弟の4番目で、アレクサンダーは長男です)
 

「この作品はのちに母子像を多く描いたカサットの最初期のものです。子どもをあやすお母さんの右手に注目してください。全体が淡い色調の中、スポンジに水を浸している右手だけがはっきりと描かれていて、働くお母さんの手にフォーカスを当てています。」

「眠たい子どもを沐浴させる母親」(1880年 ロサンゼルス郡立美術館) 




第3章に入ります。

「1890年4月にエコール・デ・ボザール(国立美術学校)で開催された日本版画展で浮世絵版画に感銘を受けたカサットは、女性たちの日常生活を描いた多色刷り銅版画のシリーズを制作しました。」

こちらは壁に書かれた同時代の女性画家ベルト・モリゾへの手紙の一部で、カサットの感動ぶりがよくわかります。


「カサットの銅版画が10点勢ぞろいするのはとても珍しいことです。ぜひご覧になってください。」


左から「湯あみ(たらい)」「ランプ」「オムニビュスにて」「手紙」「仮縫い」(いずれも1890-1891年 アメリカ議会図書館)

左から「沐浴する女性」「母のキス」「母の愛撫」「午後のお茶会」「髪結い」(いずれも1890-1891年 「沐浴する女性」と「「午後のお茶会」はブリンマー・カレッジ、その他はアメリカ議会図書館)



「1890年代はカサットにとって円熟期でした。浮世絵への傾倒と並行して、シカゴ万国博覧会の女性館の壁画を制作する大プロジェクトに係わりました。」

「その壁画は現在では失われてしまったのですが、「果実をとろうとする子どもたち」(作品№74)などの作品に壁画に描かれたテーマが描かれています。」

日本やドイツなら第二次大戦中の空襲で建物が破壊されることもあったでしょうが、なぜアメリカで壁画が残されていないのか疑問に思い、ギャラリー・トークのあとで沼田さんにおうかがいしました。

「壁画は万博のあと取り外されて、所在不明になってしまいました。焼失したといった話がないので、いつか発見されるかもしれません。ぜひ見てみたいですね。」と丁寧に教えていただきました。



「晩年はパステル画の母子像を多く描いています。カサットは、『パステルは子どもや女性の肌を描くのにふさわし画材』と言っています。」

左から「団扇を持つバラ色の服の女」(1889年頃 東京富士美術館)、「犬を抱くラズベリー色の服の女性」(1901年頃 ハーシュホーン美術館)、「マリー=ルイーズ・デュラン=リュエルの肖像」(1911年 公益財団法人吉野石膏美術振興財団(山形美術館に寄託))、一番右は油彩の「赤い胴着の女性と赤ん坊」(1901年頃 ブルックリン美術館)

こちらは油絵ですが、カサットはルネサンス期にフィレンツェで流行したトンド(円形画)形式にもこだわりました。
左「母親とふたりの子ども」(1905年頃 ウエストモアランド・アメリカ美術館)、右「温室にいる子どもと母親」(1906年 ニューオーリンズ美術館)


「この作品は特におススメです。子どもの肌のぬくもり、体の重みが伝わってくるような作品です。」

「母の愛撫」(1896年頃 フィラデルフィア美術館)


そして、最後に私のおススメの一枚。
「家族」(1893年 クライスラー美術館)

ラファエロやボッティチェッリのようで、印象派風のよう。まるでルネッサンスと印象派が融合したような聖母子像です。とても神々しく感じられて、しばらく見入ってしまいました。


カサットは生涯独身で通しました。でもなぜ母子像にこだわったのか。
沼田さんは「アーティストとして女性の役割に着目したからでは」とおっしゃっていました。

この展覧会はカサットのアーティストとしての誇りに満ちた言葉で締めくくられています。



地元の横浜でこんな素晴らしい展覧会が開催されるなんてうれしい限りです。
この機会にぜひとも横浜にお越しになってください。


会期 2016年6月25日(土)~9月11日(日)
会場 横浜美術館

詳細は横浜美術館の公式サイトをご覧ください。



※会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。