今年(2026)年に開館100周年を迎えた東京・上野公園の東京都美術館では、東京都美術館開館100周年記念「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」が開催されています。
| 企画展示室入口のフォトスポット |
今年(2026年)は、東京都美術館が日本初の公立美術館として1926(大正15)年に開館してから100年目を迎える記念すべき年。
すでに今年開催される開館100周年記念展のラインナップがアナウンスされていますが、その第1弾として開催されているのが、スウェーデン国立美術館の全面協力のもと、19世紀末から20世紀にかけてスウェーデン絵画が展示され、展示作品は100%スウェーデン人作家という今回の展覧会なのです。
実は、スウェーデン人の画家といっても、スウェーデンの国民的画家カール・ラーションの作品もあまり見たことはなく、ほとんど予備知識がありませんでしたが、それがかえって、どのような画家や作品にめぐり合えるのだろうという期待がふくらんだので、開幕を楽しみにしていました。
それではさっそく展示の様子をご紹介したいと思います。
展覧会開催概要
展覧会名 東京都美術館開館100周年記念 スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき
会 期 2026年1月27日(火)~4月12日(日)
会 場 東京都美術館 企画展示室
休室日 月曜日、2月24日(火) ※ただし、2月23日(月・祝)は開室
開室時間 9:30~17:30、金曜日は20:00まで(入室は閉室の30分前まで)
展覧会の詳細、チケットの購入方法、イベント等の情報は展覧会公式サイトをご覧ください⇒https://www.swedishpainting2026.jp
展示構成
LBF 第1章 スウェーデン近代絵画の夜明け
第2章 パリをめざして―フランス近代絵画との出合い
第3章 グレ=シュル=ロワンの芸術家村
1F 第4章 日常のかがやき―”スウェーデンらしい”暮らしのなかで
第5章 現実のかなたへ―見えない世界を描く
2F 第6章 自然とともに―新たなスウェーデン絵画の創造
※展示室では1F、2Fのみ写真撮影が可能です(一部を除く)。展示室内で撮影の注意事項等をご確認ください。
※本稿ではLBFの作品の写真も掲載していますが、プレス内覧会で美術館より特別に許可を得て撮影したものです。
第1章 スウェーデン近代絵画の夜明け
第1章に並ぶ19世紀半ばの風景画を見て最初に感じたことは、フランスやドイツをはじめ外国の美術の影響は受けていても、スウェーデンの自然や風景を描いた画家たちの郷土愛でした。
| 「東京都美術館開館100周年記念 スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」 展示風景、東京都美術館、2026年 |
特に気になった作品は、ドイツ・デュッセルドルフに学んだマルクス・ラーションの《荒れ狂うボーヒュースレーンの海》。
| マルクス・ラーション《荒れ狂うボーヒュースレーンの海》 1857年(年記) スウェーデン国立美術館蔵 |
描かれているのは、スウェーデン南西部のボーヒュースレーンの海岸で座礁する帆船と、そこから脱出した船乗りを乗せた小舟、そして岩場には先に逃れた人々の姿。
空を覆う不穏な雨雲、背景にはごつごつした岩山、荒れ狂う波、船乗りたちを見守るように空を舞う海鳥たち、そして一本一本丁寧に描かれた帆船のロープ。
このような詳細な描写がまるで映画のワンシーンを見ているようで、手に汗を握る迫真の描写に圧倒されました。
第2章 パリをめざして―フランス近代絵画との出合い
1870年代後半になると、スウェーデンの多くの若い画家たちがめざしたのは、印象派をはじめ前衛的な美術が次々と生まれたフランスのパリ。
なかでもスウェーデンの画家たちが魅了されたのはバルビゾン派でした。彼らの素朴で情緒豊かな手法は、母国スウェーデンの農村や豊かな自然に親しんで育った画家たちにとってぴったりとフィットするものだったのです。
| 「東京都美術館開館100周年記念 スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」 展示風景、東京都美術館、2026年 |
パリで毎年1度開催されるサロンへの入選をめざした画家のひとりがアーンシュト・ヨーセフソン。自然を背景に描かれた人物画もとてもいい雰囲気でしたが、この章で一番印象に残ったのが、鍛冶屋の暗い室内から出てきた男たちの笑顔、白い歯、たくましい腕にたくましい生命感が感じらる《スペインの鍛冶屋》でした。
| アーンシュト・ヨーセフソン《スペインの鍛冶屋》1881年 スウェーデン国立美術館蔵 |
この作品は、1881年にヨーセフソンがスペインに旅行した際に描いた代表作で、本人にとっては自信作だったのですが、サロンの審査員から理解を得ることなく落選してしまいました。
第3章 グレ=シュル=ロワンの芸術家村
グレ=シュル=ロワンとはパリの南東約70キロメートルに位置する小さな村の名前で、スウェーデンの画家たちは、バルビゾン村に集い戸外制作を実践していたカミーユ・コローやジャン=フランソワ・ミレーにならい、この村に滞在して制作を行いました。
1Fに移ります。
1880年代の終わりになると、フランスでの経験を通して、「スウェーデンらしい」新たな芸術を築きたいという願いが芽生え、多くのスウェーデンの画家たちは故郷スウェーデンに帰国しました。
「”スウェーデンらしい”暮らし」という第4章のサブタイトルにふさわしく、室内のしつらえが再現された空間で見る作品はまた格別です。
| 「東京都美術館開館100周年記念 スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」 展示風景、東京都美術館、2026年 |
「スウェーデンらしい」暮らしのイメージをかたちづくったカール・ラーションの作品は、厳しい寒さの長い冬の暖かい室内のぬくもりが感じられて、ほっとした気分にさせてくれます。
第5章 現実のかなたへ―見えない世界を描く
この章は、今までの章と少し雰囲気が違います。
ここに展示されている作品は、フランスから帰国したスウェーデンの画家たちのなかでも、北欧の神話や民間伝承といった民族的な主題を描いたり、精神の不安定さと向き合い、幻想や幻覚を映し出すような作品を制作するなど、現実のかなたにある人間の目に見えない心理や精神のありようを絵画で探ろうとした画家たちが描いたものだからなのです。
生涯を通じてストックホルムを拠点として活動したエウシェーン・ヤーンソンが描いたのは、郊外の畑を宅地開発して建てられた労働者の集合住宅とストックホルム市内にある高台の街かど。本来なら人がいるはずなのに人が描かれていないせいでしょうか、現実の場面を描いているのに幻想的な雰囲気が感じられる不思議な作品です。
第6章 自然とともに―新たなスウェーデン絵画の創造
1890年代から世紀転換期にかけて、スウェーデンの風景画は大きな変化を迎えました。
第6章に展示されているのは、厳しくも美しいスウェーデンの自然を描くのにふさわしい表現方法を模索した画家たちの風景画です。
フランスの印象派やバルビゾン派の作品とは印象が少し違うな、と感じていたのですが、夕暮れや夜明けの淡く繊細な光の表現などが特徴的だということに気が付きました。
| 「東京都美術館開館100周年記念 スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」 展示風景、東京都美術館、2026年 |
最後にご紹介するのは、今年の干支にちなんで馬が描かれたニルス・クルーゲル《夜の訪れ》です。
背景の弱々しく光を発している太陽がいかにも北欧らしさを感じさせてくれます。
今回の特別展出品作品の図柄を使用したオリジナルグッズも充実。
「幸せを呼ぶ馬」とも呼ばれるスウェーデンの伝統工芸品ダーラナホースのオリジナルイラストグッズは午年にぴったり。
展覧会特設ショップにもぜひお寄りください。
出品作品は全てカラー図版で掲載されて作品解説付き、スウェーデン絵画をより深く知るためのコラムを多数収録した展覧会公式図録もおすすめです。
東京都美術館開館100周年記念展の第1弾は、100%スウェーデン画家による知られざるスウェーデン絵画の展覧会。新たな発見がいっぱいの展覧会ですので、ぜひお楽しみください!