2018年8月1日水曜日

ホテルオークラ東京 チャリティ-イベント「第24回秘蔵の名品 アートコレクション展 動物たちの息吹」ブロガーナイト

ホテルオークラ東京で7月30日(月)から始まったチャリティーイベント「第24回秘蔵の名品 アートコレクション展 動物たちの息吹」のブロガーナイトに参加してきました。

今回の展覧会のテーマは「動物」。
犬や猫といった私たちに身近な動物から、牛や猿、虎、さらには孔雀や鶴、それに鷹といった鳥類まで、動物たちのいろいろな表情やしぐさにめぐり会える、とても楽しい展覧会です。



展示作品の見どころをご案内いただいたのは、今回の展覧会を監修された東京藝術大学の熊澤弘さん。
それではさっそく展示作品を紹介していきたいと思います。

※掲載した写真は、主催者の特別の許可を得て撮影したものです。


展示は三章構成になっています。
第一章は「田園のなかの動物 西洋と日本」

会場に入るとすぐにのどかな牧場の絵が目に入ってきます。
下の写真の左は、ジャン・フェルディナン・モンシャブロン《牧場》(1888年 美術館 ギャルリ・ミレー)。
青々とした広い牧場に草をはむ羊と遠くには牛、そして手前では座って編み物をする羊飼いの女性。
「この絵は朝の風景を描いているのでは。」と熊澤さん。
画面右側の林の上の赤みを帯びている空は、暗くなっていく夕焼けではなく、少しずつ明るくなる朝焼けに見えます。
画面いっぱいに広がる牧場を前に、朝のすがすがしい空気を深く吸い込んでみたくなる作品です。

左から、ジャン・フェルディナン・モンシャブロン《牧場》(1888年 美術館 ギャルリ・ミレー)
ジャック=レイモン・ブラカサ《牛のいる風景》(1844年 美術館 ギャルリ・ミレー)
フィリップス・ヴァウウェルマンに帰属《馬》(17世紀 東京藝術大学)

次にローマ神話や旧約聖書から題材をとった作品が並びます。

左から、ヘルブラント・ファン・デン・エークハウト《ユノ、ユピテル、
そして牛に変身させられたイオ》(1672年 個人蔵)
ヤン・フィクトールス《岩を打って水を出すモーゼ》(1650年頃 個人蔵)
ダーフィット・テニールス一世周辺の画家に帰属《ノアの泥酔》(17世紀 個人蔵)
《ユノ、ユピテル、そして牛に変身させられたイオ》の作者エークハウトはレンブラントの弟子。
ローマ神話のユピテル(ギリシャ神話のゼウス)は、妻のユノ(ギリシャ神話ではヘラ)にイオとの逢引きが見つかるのをおそれて愛するイオを牛に変えたが、ユノはすべてお見通し。
「勝ち誇ったユノの顔をご覧ください。」と熊澤さん。

モーゼとノアの作品は、どちらも旧約聖書から題材をとったもの。
ノアの方はこういう話です。
洪水のあと箱舟から出たノアは農夫になっていて、あるときぶどう酒を飲んで酔い、裸で寝ていました。息子の一人ハムが父の裸を見て二人の兄弟に告げると、セムとヤフェトは後ろ向きに歩いて、父の裸を見ないで着物を父にかけました。あとでそのことを知ったノアはハムのしたことを知り、「(ハムではなくハムの息子)カナンは呪われよ。」と言ったという旧約聖書創世記の物語からきています。

西洋絵画が続きます。
下の写真中央が熊澤さんのお気に入りの一枚《田園の求愛》(乳しぼりの娘に求愛する農夫)。
「風景と動物の位置関係に注目です。」
左から、 サロモン・ファン・ライスダール《二台の馬車と渡し舟のある川辺の風景》
(1661年 美術館 ギャルリ・ミレー)
トーマス・ゲインズバラ《田園の求愛》(乳しぼりの娘に求愛する農夫)
(1755-59年頃 丸紅株式会社)
ジョン・サージェント・ノーブル《猟犬と獲物》
(1872年 住友コレクション泉屋博古館分館)
続いて日本画家の作品。
浅井忠《牛追い》は、歌舞伎座に飾られている作品です。

右が浅井忠《牛追い》(明治39年(1906) 歌舞伎座)
左が伊藤小坡《山羊の乳》(大正11年(1922) 公益財団法人ウッドワン美術館
第二会場に移ります。
こちらは「第二章 動物画の魅力 江戸から近代へ」です。

まずは犬のコーナー。

このコーナーの注目は長澤蘆雪《洋風母子犬図》(下の写真右)。
「油絵のように厚く塗られていて、油絵によく見られる小さなヒビまで見られます。」
その左隣の二幅は同じく長澤蘆雪の《一笑図》。タイトルどおり思わず笑ってしまいそうな、蘆雪らしいユーモアの聞いた作品です。
その左隣は蘆雪の師・円山応挙の《十二支図の内 菊狗子》。
奔放な弟子・蘆雪でしたが、こうやって師弟の作品が仲良く並んでいるのを見ると何となく気持ちが和んできます。

一番右が長澤蘆雪《洋風母子犬図》(天明6-7(1786-87)頃 すみだ北斎美術館)
その左が長澤蘆雪《一笑図》(寛政中期 同志社大学文化情報学部)
左は円山応挙《十二支図の内 菊狗子》(明和7年(1770) 海の見える杜美術館)


次にネコ科の作品が続きます。
こちらは明治座を飾る山口華楊の《黒豹》。
悠然と構えこちらをにらんだ姿は貫禄があります。

山口華楊《黒豹》(昭和36年(1961) 明治座)

岸竹堂《月下猫児図》と「虎の画家」と言われた大橋翠石の《虎図》。
このコーナーは、《虎図》の左の大橋翠石《月下猛虎之図》(写真なし)と並んで、
「月夜の虎のセットです。」と熊澤さん。

右が岸竹堂《月下猫児図》(明治29年(1896) 千總)
左が大橋翠石《虎図》(制作年不詳 田原市博物館)
若くして亡くなった天才・菱田春草の作品は、いつも涙なしでは見られません。

菱田春草《黒猫》(明治43年(1910) 播磨屋本店)


「こちらは橋本関雪のボックス。右の《暖日》は昭和4年に制作されたものです。」
その翌年にはホテルオークラ創業者 大倉喜七郎男爵が企画した「ローマ日本美術展」がローマで開催され、横山大観《夜桜》(大倉集古館)はじめ当時の日本を代表する日本画家の作品が、床の間や畳の部屋を再現した展示会場で展示されました。

「ローマ日本美術展が開催された昭和5年の前年は、当時の日本画家たちによって多くの秀作が制作された年でした。」と熊澤さん。

いずれも橋本関雪作、右から《暖日》(昭和4年(1929) 大倉集古館)
《冬晴》(制作年不詳 公益財団法人 ひろしま美術館)
《猿猴図》(昭和4年(1929) 大倉集古館)

展示会場の奥には堂々と並んだ六曲一双の屏風。
右は岸竹堂《猛虎図屏風》、左は石崎光瑤《孔雀図》。
《孔雀図》からが「第三章 花鳥繚乱 美しき鳥たち」です。

右 岸竹堂《猛虎図屏風》(明治23年(1890) 千總)
左 石崎光瑤《孔雀図》(昭和3年(1928)頃 海の見える杜美術館) 
最近特に注目されてきている渡辺省亭の《糸桜に双雉之図》も、江戸時代に日本に滞在して中国帰国後も日本で大人気だった沈南蘋の《鴛鴦図》も展示されています。

ボックス内左が渡辺省亭《糸桜に双雉之図》(大正期 東京富士美術館)
中央が沈南蘋《鴛鴦図》(乾隆15年(1750)頃 松岡美術館)
右が入江波光《松に鷹》(制作年不詳 公益財団法人ひろしま美術館)
左は佐々木尚文《放生司》(昭和4年(1929) 大倉集古館)

第三会場はまさに「鳥ゾーン」(熊澤さん)。
上村松篁、上村淳之の親子コンビ、山口蓬春はじめタッチのやわらかな作品が多く展示されていて、とても明るく和んだ雰囲気の部屋です。


展示会場風景

展示会場風景


展示会場風景

展覧会の記念カタログもチャリティー販売しています。1冊500円です。


1994年に始まったこのチャリティ-イベント「秘蔵の名品アートコレクション展」は、阪神・淡路大震災で中止になった1995年を除き毎年開催されてきましたが、今回が最後かもしれません。
来年9月には新本館のリニューアルオープン、2020年には東京オリンピックと、本業のホテル業が忙しくなるの開催されず、2021年以降の開催は未定とのことです。

会期も8月23日(木)まで。最後になるかもしれないこの展覧会、お見逃しなく!

展覧会の概要
場所 ホテルオークラ東京 アスコットホール(地下2階)
会期 7月30日(月)~8月23日(木)
時間 10:00~17:30(最終入場17:00)
料金 一般 1,300円 大学・高校生 1,000円 ※中学生以下無料
   ※当日券のみ、One Harmony会員様、ご宿泊のお客様、障害者手帳をお持ちの方
    は100円割引
特別ランチセット券や関連イベントもありますので詳しくは展覧会公式サイトをご参照ください。