2023年2月7日火曜日

三井記念美術館 三井家のおひなさま 特集展示 近年の寄贈品ー絵画・工芸・人形などー

東京・日本橋の三井記念美術館では、2月11日(土・祝)から「三井家のおひなさま」が開催されます。

展覧会チラシ


キャッチコピーは、3年ぶりに、逢いにきてください

一昨年から昨年までのリニューアル工事による休館もありましたが、3年前の2020年にはコロナ禍のため会期途中で終了せざるを得なかった「三井家のおひなさま」が3年ぶりにお目見えです。
まだまだコロナ禍は収束していませんが、桃の節句のこの時期に豪華絢爛なひな人形を見て、ぜひ明るい気分になっていただきたいです。

特集展示 近年の寄贈品ー絵画・工芸・人形などーでは、同館が近年寄贈を受け入れた作品の中から主だったものが展示されるので、こちらも楽しみです。

展覧会開催概要


会 期   2023年2月11日(土・祝)~4月2日(日)
開館時間  10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日   月曜日、2月26日(日)
入館料   一般 1,000(800)円、大学・高校生 500(400)円、中学生以下無料
      *70歳以上の方は800円(要証明)。
      *リピーター割引:会期中一般券、学生券の半券のご提示で、2回目以降は( )
       内割引料金となります。
      *障害者手帳をご呈示いただいた方、およびその介護者1名は無料です(ミライ
       ロIDも可)。
※展覧会の詳細、展覧会関連イベント等については、同館ホームページをご覧ください⇒三井記念美術館
※展示室内は撮影禁止です。掲載した写真は美術館より広報用画像をお借りしたものです。   



巴印のひな人形・ひな道具(三井苞子<北三井家十代・高棟夫人>旧蔵品)

北三井家十代・高棟(たかみね)夫人の苞子(もとこ)氏の旧蔵品のおひなさまは、実家の旧富山藩主前田家から伝わったもの、明治25年(1892)に結婚後、三井家で新たに作られたもの、江戸時代から三井家に伝来したものなど、さまざまな年代や種類のひな人形、ひな道具があります。

最初にご紹介する「内裏雛」は、雲上人の姿になぞらえた男女一対の雛人形で、明治28年(1895)に製作されたものです。

雲上人とは、宮中において昇殿を許された殿上人や女官のことで、まさに「雲の上の人たち」。衣裳や表情に気品が感じられます。

内裏雛 三世大木平藏製 明治28年(1895)
三井記念美術館蔵

こちらは、化粧道具、茶道具、香道具、文房具など、おひな様が生活するのに必要な道具一式のミニチュア版。
一つひとつはとても小さいのですが、どれも丁寧に作られているのがよくわかります。
ミニチュア・ファンの筆者としてはぜひとも見てみたい展示作品のひとつです。

銀製ひな道具 江戸~明治時代・19世紀
三井記念美術館蔵

江戸後期・文化年間に作られた紙製の立雛は、小袖には岩絵具で松、藤、撫子が描かれ、袴の菊と亀甲紋は金泥で表されていてとても鮮やかです。

立雛 江戸時代・文化12年(1815)
三井記念美術館蔵


小蝶印のひな人形・ひな道具(三井鋹子<北三井家十一代・高公夫人>旧蔵品)

北三井家十一代・高公(たかきみ)夫人の鋹子(としこ)氏のひな人形は、東京日本橋に店を構えた名工・二代永徳斎製のものが中心で、丸いお顔がとても可愛らしいです。

次郎左衛門雛 二代永徳斎製 明治~大正時代・20世紀
三井記念美術館蔵 

永徳斎は、明治から昭和戦後にかけて四代続いた名店。
次郎左衛門雛は、丸顔に引目鉤鼻の面立ちが特徴で、京の人形師で幕府御用も勤めた雛屋次郎左衛門が創始した人形と伝えられています。

ほかにも幼児の無事息災を祈る意味をもつ、雌雄一対の「犬筥」(展覧会チラシの下の左右の隅に見えます)や、牡丹唐草蒔絵の装飾が施された化粧道具なども展示されます。


永印のひな人形・雛道具(浅野久子氏<北三井家十一代・髙公長女>寄贈品)

北三井家十一代・髙公氏の一人娘として昭和8年(1933)に誕生した浅野久子氏の初節句に際し、「丸平」で知られる京都の丸平大木人形店・五世大木平藏(1885-1941)に注文してあつらえたひな人形、ひな道具が、近年まで浅野家で行われていた段飾りを再現する形で展示されます。
幅3メートルにおよぶ浅野久子氏の豪華なひな段飾りは必見です!

内裏雛 五世大木平藏製 昭和9年(1934)
三井記念美術館蔵

内裏雛は、近くで見ても髪飾り、衣裳、扇子などが丁寧に作り込まれているのがよく分かります。

内裏雛(女雛) 五世大木平藏製 昭和9年(1934)
三井記念美術館蔵


珠印のひな人形・雛道具(三井興子<伊皿子三井家九代・高長夫人>旧蔵品)


北三井家十代・高棟氏と苞子氏の三女として明治33年(1900)に誕生し、大正8年(1919)に伊皿子家・九代高長氏と結婚した三井興子氏の内裏雛は四世大木平藏によるもの。
背景の銀屏風がきらびやかな雛人形を引き立てています。

内裏雛 四世大木平藏製 明治33年(1900)
三井記念美術館蔵

男性の「仕丁」はよく見られますが、ここではその女性版の「女仕丁」が展示されるので、三人官女とともにぜひ見てみたいです。

特集展示・近年の寄贈品ー絵画・工芸・人形などー

展示室6では、水野年方の版画『三井好 都のにしき』全13枚が一挙に公開されます。

『三井好 都のにしき』のうち「春の野」 水野年方画
明治時代・20世紀 三井記念美術館蔵

浮世絵師月岡芳年に師事した水野年方の版画『三井好 都のにしき』は、三越呉服店の前身・三井呉服店の明治37年頃の新作ファッションカタログとしての性格を兼ねているもので、当時の流行の最先端をうかがうことができます。
水野年方は、美人画家として「西の松園、東の清方」と並び称された鏑木清方の師匠としても知られています。

展示室7には、北三井家から寄贈された御所人形や五月人形など、また、三井グループ企業から寄贈された酒井抱一下絵、原羊遊斎作の「春野蒔絵引戸」、個人からの寄贈品では河鍋暁斎の「花見の図」などの絵画はじめ、多彩な作品の数々を楽しむことができます。

花見の図 河鍋暁斎筆 明治時代・19世紀
三井記念美術館蔵


「花見の図」なのに花は描かれてなくて、描かれているのは天狗の鼻のようなお面をつけてはしゃいでいる男と団子を食べる女、そしてお面やおもちゃを売っている老婆。
すでに盛り上がっている男女はこれから花見に行くところなのでしょうか。
暁斎らしいユーモアにあふれた作品です。

会場内はひな人形やひな道具で彩られて明るく楽しい雰囲気でいっぱい。
春の訪れをぜひ会場で味わっていただきたい展覧会です。