2026年3月19日木曜日

山種美術館 【特別展】花・flower・華 2026―横山大観の桜・川端龍子の牡丹・速水御舟の梅―

東京・広尾の山種美術館では、 【特別展】花・flower・華 2026—横山大観の桜・川端龍子の牡丹・速水御舟の梅―が開催されています。


山種美術館では、毎春、花をテーマにした展覧会が開催されていますが、今年は酒井抱一、横山大観、菱田春草、川端龍子、速水御舟をはじめ、名だたる画家たちが描いた四季折々の花をモチーフにした名品の数々が展示されている展覧会です。
それではさっそく展示の様子をご紹介したいと思います。


展覧会開催概要


会 期  2026年2月28日(土)~5月10日(日)
開館時間 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日  月曜日(5/4(月・祝)は開館)
入館料  一般 1400円、中学生以下無料(付添者の同伴が必要です。)
     春の学割  大学生・高校生 500円
各種割引、展覧会の詳細、関連イベント等は山種美術館公式サイトをご覧ください⇒https://www.yamatane-museum.jp/

展示構成
 第1章 季節の花々
 第2章 幻想の花々

今年(2026(令和8)年)、山種美術館は開館60周年を迎え、年間を通して、所蔵する近代・現代日本画の名品を中心に見ごたえのある特別展が開催されます。開館60周年記念特別展についてはこちらをご覧ください⇒https://www.yamatane-museum.jp/exhibitions/schedule.html


※展示室内は次の1点を除き撮影禁止です。掲載した写真はプレス内覧会で美術館より許可を得て撮影したものです。

今回の撮影可の作品は、墨の濃淡で表現された牡丹の花びらが幻想的な速水御舟《牡丹花(墨牡丹)》(山種美術館)。スマートフォン・タブレット・携帯電話限定で写真撮影OKです。展示室内で撮影の注意事項をご確認ください。 

速水御舟《牡丹花(墨牡丹)》1934(昭和9)年
紙本・墨画彩色 山種美術館


第1章 季節の花々


春の花といえば桜、桜といえば花見。
桜の花が描かれた作品が並ぶ様は、まさに春爛漫。
展示室内は華やいだ雰囲気に満ちあふれています。

展示風景

菱田春草《桜下美人図》(山種美術館)に描かれているのは、満開の桜の下を優雅に歩く和服姿の女性たち。
これは春草が東京美術学校(現 東京藝術大学)在学中の制作で、一番左の女性の姿は菱川師宣の《見返り美人》(東京国立博物館)の影響が見られ、浮世絵の研究成果があらわれた作品です。
20歳にしてこれだけの完成した作品を描いた春草の早熟ぶりにおどろかされますが、画面右下の謎(?)の動物にも注目したいです。 

菱田春草《桜下美人図》1894(明治27)年
絹本・彩色 山種美術館

一方、春草と同じく岡倉天心の薫陶を受け、東京美術学校、日本美術院と歩んだ横山大観が好んで描いたのは、人知れず可憐に咲く山桜。
朝日に輝く様子を描く《春朝》(山種美術館)は、江戸時代の本居宣長の和歌「しき嶋の やまとごころを 人とはば 朝日ににほふ 山さくら花」を彷彿とさせます。

横山大観《春朝》1939(昭和14)年頃
絹本・彩色 山種美術館


中国では「富貴花」「花王」「花神」とも呼ばれ、堂々とした花を咲かせる牡丹が描かれた作品は、冒頭でご紹介した速水御舟《牡丹花(墨牡丹)》(山種美術館)をはじめ、なぜか幻想的な世界に引き込まれていきそうな気分になってきます。


展示風景

「会場芸術」を提唱して日本美術院を脱退し、青龍社を立ち上げた川端龍子らしい大画面の屏風に描かれているのは『伊勢物語』に登場する「八橋」とその周囲に咲き誇る杜若(かきつばた)。
尾形光琳《八橋図屛風》(メトロポリタン美術館)などの影響を受けて描かれた作品ですが、発表されたのは1945(昭和20)年に開催された第13回春の青龍展。
太平洋戦争末期の厳しい状況の中でもこれだけの大作を制作し、自らが主宰する展覧会を開催してしまう龍子のエネルギーのすごさが感じられました。

 
川端龍子《八ツ橋》1945(昭和20)年
絹本金地・彩色 山種美術館

秋を彩る草花は、華やかさはありませんが、落ち着いた趣きが感じられます。

展示風景


ここで木村武山の作品にめぐり合えたのはうれしかったです。
日本美術院の北茨城・五浦への移転の際、横山大観、菱田春草、下村観山とともに岡倉天心に従った木村武山は、大観らと比べて知名度はあまり高くありませんが、鮮やかな色彩の作品を描く武山は好きな近代日本画家のひとりなのです。
《秋色》(山種美術館)は、そのタイトルどおり秋らしく抑え気味の色合いがとても素晴らしい作品です。

木村武山《秋色》20世紀(大正時代)
絹本・彩色 山種美術館

 
つぼみがちらほら開いてくると春が近づいてきたんだな、と感じさせてくれるのが梅の花。そして、雪の中でも元気に花を咲かせているイメージがあるのが椿の花。
下の写真は《紅梅・白梅》(双幅)、《椿ノ花》(どちらも山種美術館)とも速水御舟の作品です。
《紅梅・白梅》のうち左幅の金泥で描かれた三日月は、まるで研ぎ澄まされた刀のよう。まだまだ寒い冬の夜の緊張感が伝わってくるようでした。


右 速水御舟《紅梅・白梅》1929(昭和4)年 絹本・彩色 
左 速水御舟《椿ノ花》1933(昭和8)年 紙本・彩色
どちらも山種美術館


四季それぞれの花が描かれた四幅の荒木十畝《四季花鳥》(山種美術館)はとても華やかで、巨幅が並んだ様はまさに壮観。
今回の特別展のメインビジュアルになっていて、実際に百種類の花が描かれている田能村直入《百花》(山種美術館)もじっくり見ていたらいつの間にか時が過ぎてしまいます。

荒木十畝《四季花鳥》1917(大正6)年
絹本・彩色 山種美術館


第2章 幻想の花々


第2展示室に展示されているのは、伝説に登場する花や、空想上の花が描かれた作品です。

山本梅逸《桃花源図》(山種美術館)は、中国の詩人・陶淵明の「桃花源記」に記された、桃の花が咲き誇る桃源郷が描かれた作品で、のどかな理想郷の雰囲気が感じられます。
同じ尾張国(愛知)出身の中林竹洞とともに中国絵画のコレクターでもあった神谷天遊のもとで学び、中国絵画の影響を受けた山本梅逸は竹洞と並んで好きな江戸時代の絵師のひとりです。


山本梅逸《桃花源図》19世紀(江戸時代)
絹本・彩色 山種美術館


花がテーマの特別展ですので、出品作品をモチーフにしたオリジナルグッズも盛りだくさん。




1階の「Cafe椿」では、特製オリジナル和菓子のメニューもあります。



今年の春も美術館でお花見をしてみませんか。おすすめの展覧会です。