2011年6月26日日曜日

二度と行けない国「東ドイツ」(2)

(前回からの続き)

 ベルリンにはまだ明るいうちに戻ることができた。お昼が軽かったのでおなかも空いたし、ビールも飲みたかったので夕食はレストランでしっかり食べることにした。
 市の中心でレストランはすぐ見つかった。だだっ広いフロアにテーブルがぎっしり並んでいたが、客は全く入っていなかった。入口にいたウェイトレスの若い女性に「二人」と声をかけ中に入ろうとした。
 すると、ウェイトレスの若い女性からは信じられない返事が返ってきた。

 「席はない(Kein Platz)」

 私は自分の耳を疑った。店はガラガラだ。
 「どうして?席はあるのに」とか「私の友人がおなかを空かしていているんだ」となんとか言っても「ないものはない」の繰り返しで、とりつく島がない。
 社会主義の国では仕事してもしなくても給料は同じだから、レストランでもお客が多く入って忙しくなるのをいやがる、とどこかに書かれていたことを思い出した。
 「これがそのことだったのか」と思ったが、海外から来た観光客に対して、どこにでもいるような普通の若い女性が、悪びれる風もなく、こともなげに「席はない」と言ってのける神経はとても信じられなかった。
 仕方なくその場を離れたが、どこへ行くあてがあるわけではない。結局、夕食も通りに並んでいるワゴンで売れ残りのパンを買って宿泊先のホテルで食べたが、空腹はおさまらなかった。ビールもなく、さびしい東ベルリンの夜はこうして過ぎていった。
 翌日は、ホテルの朝食をしっかり食べて、列車でドレスデンに向かった。
 (次回に続く)