東京都美術館で開催されている「日本美術院再興100年 特別展 世紀の日本画」の後期展示が始まった昨日(3月1日)、ブロガーナイトに参加してきました。
前期展示については前回のブログで紹介していますが、後期も見ごたえのある充実した内容でしたので、特に印象に残った作品を中心に展覧会の紹介をさせていただきます。
(今回は展示室内の撮影はできなかったので写真はなしです。)
まず、入口を入ってすぐに展示されているのが横山大観の「無我」(作品№6)。
これは学校の教科書によく出てくるので、子どもの頃から知っていた作品です。
大観というと富士山で有名ですが、私にとって大観というと、昔からこのボーッとした子どものイメージでした。
でも、ボーッとしてるようで、近くで見るとけっこう愛嬌があってかわいいですね。
こちらは展覧会のパンフレットです。
「無我」は上の段の左から2つめです。
次の狩野芳崖「悲母観音」(作品№2)や大観「屈原」(作品№7)を見ているとやはり映画「天心」を思い出します。特に「悲母観音」は、映画で芳崖が最後の力をふり絞って描いているところを思い出して、胸にこみ上げてくるものがありました。映画「天心」については前回のブログでも紹介しましたが、映画を見ると作品への思い入れが余計に強くなるような気がするので、映画の方もおススメです。
(「悲母観音」はパンフレット上段の一番左です。)
「屈原」は、事実無根の誹謗により国を追放された屈原に、東京美術学校を同じく誹謗により追放された天心を重ね合わせて大観が描いた作品。
去年、横浜美術館で開催された「横山大観展」では最初の10日間しか展示されませんでしたが、今回は会期末の4月1日まで1ヶ月まるまる展示されるので、前回見のがした方、ぜひご覧になってください。
続いて橋本雅邦の「龍虎図屏風」(作品№4)。(上のパンフレットでは下段です。)
雷鳴轟く中、風とともに雲の間から現れた2頭の龍に、足を踏ん張り敢然と立ち向かう虎。
江戸期の龍虎図では、龍が出てきて困ったな、といった顔をする虎が多い中で、これだけ迫力のある虎はおそらく狩野山楽の「龍虎図屏風」の虎以来ではないでしょうか。
この力強い虎の姿を見ていると、御用絵師集団として室町後期から江戸時代にかけて400年近く君臨し、明治に入って権力者の庇護を失い没落した狩野派の最後の雄たけびを聞いているような気がしてなりません。
前期で傑作を披露した下村観山は後期には登場しませんが、代わって観山や大観、春草とともに天心に従って五浦に移り住んだ木村武山が登場します。作品は琳派風の屏風「小春」(作品№19)です。
琳派風といえば、前田青邨の「芥子図屏風」(作品№56)も、いかにも尾形光琳の「燕子花図屏風」を意識した作品と言えます。琳派風の作品を見ると何となくホッとしますが、尾形光琳が後世に与えた影響と、光琳の良さを広めた酒井抱一の果たした役割の大きさをあらためて感じます。
こちらは展覧会のパンフレットの裏面です。「芥子図屏風」は上から二段目です。
青邨の作品は「芥子図屏風」のほかにも、「京名所八題(都八題)」(作品№11)が前期の4幅に続いて後期の4幅、「湯治場」(作品№24)3幅、86歳の時の作品とは思えないほど迫力のある青邨歴史画の集大成「知盛幻生」(作品№41)、と、後期は青邨の頑張りが目立ちます。
近年の作品も力作ぞろいです。
北海道の四季を描いた全長なんと29m(!)の絵巻物、岩橋英遠の「道産子追憶の巻」(作品№71)、夏の夕日に照らされる竹林を描いた琳派風の作品、中島清之の「緑扇」(作品№88)、一瞬モネの作品かと思ったほど一面濃い青色の林で覆われ、その中に光る蛍を描いた福王寺一彦の「蛍(二)」(作品№76)などなど、ここに紹介しきれないほど素晴らしい作品がばかりです。
気の早い話ですが、「世紀の日本画」は今年の私の展覧会ベストテンにエントリーしそうな展覧会です。
みなさんぜひご覧になってください。
公式サイトはこちらです。
↓
http://www.tobikan.jp/exhibition/h25_inten.html
最後になりましたが、このような貴重な機会を提供していただいた東京都美術館ならびに「日本美術の祭典」広報事務局のみなさまに感謝申し上げます。