はじめに同館館長の高橋明也さんからごあいさつがあり、
「今まで日本では2回ワシントン・ナショナル・ギャラリー展が開催され、今回も日本で人気の高い印象派の作品が展示されていますが、今回の特徴は作品が『小さい』ということ。手を伸ばすと届くような親しみやすさが、印象派以前の絵画と異なる印象派のラジカルなところ。こういった作品の数々をぜひ楽しんでいただきたい」
といったお話をいただきました。
続いて今回の展覧会を担当された同館学芸員の杉山菜穂子さんから、3階展示室にある作品の中からいくつかの作品の解説をいただきました。
杉山さんの左手前はマネ「競馬のレース」、その左はドガの「競馬」。
「マネの作品はレース中の現場の臨場感が出ているのに対して、ドガの作品はレース前ののどかな雰囲気が描かれている。この対比がおもしろい」と杉山さん。
小さなマネの作品には、後ろに見物している着飾った貴婦人たちが描かれていると解説していただいたので、あとで近くからよく見てみましたが、「これがそうかな」と思えるほど小さかったです。
次はルノワールの「花摘み」(右)と「ブドウの収穫」(左)。
「花摘み」が描かれた1875年頃、ルノワールはパリ・モンマルトルの丘にあるサクレクール寺院近くにアトリエを構えましたが、それは、その家の庭が気に入ったからとのことで、庭といってもイングリッシュガーデンのように整然と整備されたものでなく、ワイルドな感じが特に気に入ったから、とのことでした。この「花摘み」の絵もアトリエの庭がモデルになったのではと言われているそうです。
そして「ブドウの収穫」は「花摘み」の4年後に描かれたのですが、「2枚とも季節は同じ時に描かれたのに、画風が変わっていることに注目してください」との解説がありましたが、「花摘み」の方が私たちになじみのある絵のタッチかなと思いました。
「今回は、少ない色でシンプルな絵を描くルドンの作品も展示されています」と杉山さん。
近くで見ると空や海、緑の色が本当にきれいです。
そしておなじみルノワールの女性の肖像画も展示されています。
中央の絵は、パンフレットに出ている「猫を抱く女性」。
「女性の肌の質感、猫の毛のふわふわ感、まるでさわったような触感が感じられます」と杉山さん。
さて、ここからは入口に戻って各章ごとに作品を紹介していきます。
最初は第1章「戸外での制作」。
印象派の画家たちはイーゼルを屋外に持ち出し、外の景色を描きました。
入口の部屋にはモネ、ピサロ、シスレーといった「印象派といえばこの人たち」といった画家の作品が並び、まずは私たち印象派ファンを安心させてくれます。
さらに常連のブータンと続きます。
さきほど杉山さんに解説していただいた作品を通り過ぎ(第1章「戸外での制作」と第2章「友人とモデル」)、さらに先に進むと、小さな部屋がいくつかあります(この辺は第2章と第3章「芸術家の肖像」です)。
ゴーガン「カリエールに捧げる自画像」
マントルピースがいかにも家の中にいる、といった雰囲気を出してくれます。
こちらはモネの「ルノワール」(左)とベルト・モリゾ「窓辺にいる画家の姉」。
現在リニューアルのため閉館中の静嘉堂文庫美術館の古伊万里も展示されています。
静嘉堂文庫美術館のリニューアル記念特別展「金銀の系譜-宗達・光琳・抱一をめぐる美の世界」(10月31日~12月23日)も楽しみです。
2階に降りるとやはりおなじみのセザンヌの果物の静物画もあります(第4章「静物画」)。
そして最後に杉山さんおススメのボナールとヴァイヤール(第5章)。
ボナールもいいですね。
作品中央の「画家のアトリエ」を見ていると、まるで自分がパリのアパートにいて、街の光景をぼんやりと眺めているような錯覚を覚えてきます。
印象派ファンのツボを押さえた、見ていてとても心地の良い展覧会でした。
会期は5月24日(日)までです。ぜひみなさんも三菱一号館美術館に足を運んでみてください。
詳細はこちらです。
↓
http://mimt.jp/nga/
最後になりましたが、Takさん、ウィンダムさん、三菱一号館美術館のみなさん、貴重な場を設定していいただきありがとうございました。しっかり展覧会の宣伝します。
(会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです)