展示室Ⅰ《二条城行幸図屏風》(左)、《誰ヶ袖図屏風》(右)
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野地分館長(右)と学芸員の森下さん(左) |
○ 2月25日(土)に始まって5月7日(日)まで開催されるのが今回紹介する「屏風にあそぶ春のしつらえ-茶道具とおもてなしのうつわ」。
○ 6月1日(木)~8月4日(金)は、兵庫県西宮市にある黒川古文化研究所の名刀コレクションを展示する「名刀礼賛-もののふ達の美学」。愛刀家には見逃せない企画です。
(上の写真で森下さんが手に持っているのがこの展覧会のパンフレットです。)
○ 9月9日(土)~10月13日(金)は、日本洋画壇の先覚者・浅井忠が教授を務めた京都高等工芸学校(現 京都工芸繊維大学)とのタイアップ企画「浅井忠の京都遺産ー京都工芸繊維大学 美術工芸コレクション」。
○ 11月3日(金・祝)~12月10日(日)は、泉屋博古館だけでなく東京国立博物館、京都国立博物館、大阪市立美術館所蔵の明末清初の中国名画を展示する「典雅と奇想-明末清初の中国名画展」。
どれも興味深い特別展ですが、中国絵画ファンの私としては、11月3日から始まる中国名画展は見逃せない展覧会です。
展示会場は展示室Ⅰと展示室Ⅱに分かれていて、展示室Ⅰは森下さんにご案内していただきました。
展示室Ⅰ 《扇面散・農村風俗図屏風》 |
入ってすぐ左に展示されている屏風が《扇面散・農村風俗図屏風》。
桜の花が咲く農村の風景。
森下さん「春の風物詩として定着してる花見ですが、昔は田植えの時期を神様が桜の花を咲かせて知らせてくれたと考えられていました。」
展示室Ⅰの右側には江戸前期流行のファッションの着物が描かれた《誰ヶ袖図屏風》と、今回注目の作品《二条城行幸図屏風》が展示されています。
時の将軍・徳川家光と父・秀忠の招きに応じて後水尾天皇と中宮和子の一行が二条城に行幸する様子を描いた《二条城行幸図屏風》には、一行の行列と見物人を合わせてなんと3,226人もの人物が描き込まれているとのことです。
一人ひとりのしぐさや表情がそれぞれ特徴があって、いくら眺めても飽きることのない素晴らしい屏風です。
上段は後水尾天皇と中宮和子の一行が堀川通りを二条城に向かう様子で、下段が将軍・家光の一行が天皇を奉迎するために中立売通りを御所に向かう様子が描かれています。
上段の行列の後方、鳳凰の飾りが付いているのが後水尾天皇が乗っている輿、中ほどの中宮和子の乗っている牛車は牛2頭立て、下段の行列の中ほどのやや後方、将軍・家光が乗っている牛車も牛2頭立てなので、みなさんもぜひ探してみてください。
この屏風は、江戸時代にはすでに住友家が所蔵していたのですが、天皇家と徳川家が描かれていたため、おそれ多くて飾ることができなかったそうです。そのおかげでとても保存状態がいいのです、と森下さん。
展示室Ⅰには《二条城行幸図屏風》が描かれた寛永年間にちなんだ茶道具が展示されています。
続いて展示室Ⅱへ。
こちらでは野地分館長の解説をおうかがいしました。
展示室Ⅱ |
野地館長のお話
○ 今回は新収蔵品もまじえて、春にちなんだ作品を展示しています。
○ 正面の《桜図》は、上野の寛永寺が戊辰戦争で焼ける前、境内に咲いていた桜を描い
たもので、作者の菊池容斎は幕臣で、38歳から本格的に絵を描きはじめた人です。
○ 菊池容斎は学者肌の人で、人体デッサンを初めて行ったり、狩野派や四条派など当時
の作風を取り入れて、自分風の作風を確立した人です。
○ この作品は1年半ほど前に住友家の倉庫から発見されたもので、今回が初公開です。
菊池容斎《桜図》(左)、香田勝太 春秋草花図のうち《春》(左)
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の重なり具合がよくわかります。
畳が敷かれた茶室風のしつらえがとてもいい雰囲気です。
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二代目川甚兵衛《猟犬図額》(左)、クロード・モネ《モンソー公園》(中)、《サン=シメオン農場の道》(右)
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○ 《猟犬図額》は油絵のようですが、実は織物です。
○ モネの作品は、印象派になりきる前のバルビゾン風の作品《サン=シメオン農場の
道》と点描を使った印象派の作品《モンソー公園》の対比を楽しむことができます。
展示室内は春らしくてとても華やかな雰囲気でいっぱいです。
この春おすすめの展覧会です。
分館長の野地さんや学芸員の森下さんのお話は興味深く、とても参考になりました。
ご興味のある方は、ギャラリートークの日程に合わせてご覧になってはいかがでしょうか。
展示作品やギャラリートークの詳細は泉屋博古館の公式サイトをご覧ください。
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「屏風にあそぶ春のしつらえ」
※掲載した写真は美術館より特別に撮影の許可をいただいたものです。