4 重要なのは選挙公約でなく誰が首相になるか
SPDとCDU/CSUの選挙公約は出そろったが、有権者は選挙公約でなく首相候補への期
待度によって投票するという興味深い世論調査結果が出ている。
7月7日に行われた世論調査では、「何によって政党を選ぶか」という質問に対して、
CDU/CSUを選ぶ有権者の4人のうち3人は「メルケルさんだから」と答えている。
一方、SPDを選ぶ有権者のうち「シュルツさんだから」と答えた人は1/3にすぎな
い。
7月7日付けPolitbarometer
何によって政党を選ぶか?
CDU/CSUを選ぶ有権者 選挙公約 20% メルケル氏だから 74%
SPDを選ぶ有権者 選挙公約 59% シュルツ氏だから 34%
同じく7月7日付の世論調査では、CDU/CSUに対する政策遂行能力への信頼度が
依然として高いことが示されている。
政党の政策遂行能力(7月7日付Politbarometer)
項 目
|
CDU/CSU
|
SPD
|
治 安
|
43%
|
10%
|
移民・難民
|
40%
|
14%
|
年 金
|
31%
|
21%
|
社会的公正
|
24%
|
33%
|
経 済
|
47%
|
16%
|
雇 用
|
38%
|
20%
|
税 制
|
34%
|
23%
|
子育て
|
28%
|
32%
|
SPDが信頼度で上回っているのは「社会的公生」という抽象的な項目と、具体的な項
目では「子育て」だけで、他の項目はCDU/CSUが大きく上回っている。
特に国民の関心が高い「治安」については最も差が大きく、7月7日~8日にG20サミ
ットが開催されたハンブルクでは、SPDの治安対応能力の低さを印象付ける事件が起こ
った。
ットが開催されたハンブルクでは、SPDの治安対応能力の低さを印象付ける事件が起こ
った。
5 有権者は大きな変化を求めない
今回失態を演じたのはシュルツ(Schulz)氏でなく、ハンブルク州のショルツ(Scholz)第
一市長(ハンブルクは16の連邦州のひとつであるが、都市州なのでトップは「首相」では
なく「第一市長」)。
一市長(ハンブルクは16の連邦州のひとつであるが、都市州なのでトップは「首相」では
なく「第一市長」)。
G20サミットに抗議するデモ隊に対して、警察隊はG20に参加した首脳たちを守ること
はできたものの、暴徒化したデモ隊を抑えることができず、多くの店舗や事務所が破壊
され警察官にも多くの負傷者が出た。
ハンブルクはもともと左翼過激派の拠点で、なぜそういった都市でわざわざG20サミ
ットを開催したのか、と開催を決定したメルケル首相への批判は聞こえず、もっぱら
SPDの政治家であるショルツ第一市長に批判が集中した。
前回見たように、メルケル候補はNATO首脳会議とG7サミットへの対応で株を上げ
たが、G20サミットでもSPDの敵失により得点をかせぐことができた。
このようにメルケル候補は何もやらなくてもうまくいくが、一方のSPDは何をやって
もうまくいかない。
同性婚の合法化には慎重な立場だったメルケル首相が6月26日(月)に容認する発言をし
たのを受けてSPDは、今まで用意していた法案を2日後の28日(水)に委員会に提出して可
決、そしてその2日後の30日(金)には連邦議会で議決にかけ、賛成多数で可決するという
奇襲攻撃をメルケル首相に仕掛けた。
これについては、同性婚を選挙の争点にしたくないという思惑があったメルケル首相
の作戦勝ちとの見方もあるが、CDUのカウダーCDU/CSU院内総務は「戦術的失敗だ。」
と発言している。
はできたものの、暴徒化したデモ隊を抑えることができず、多くの店舗や事務所が破壊
され警察官にも多くの負傷者が出た。
ハンブルクはもともと左翼過激派の拠点で、なぜそういった都市でわざわざG20サミ
ットを開催したのか、と開催を決定したメルケル首相への批判は聞こえず、もっぱら
SPDの政治家であるショルツ第一市長に批判が集中した。
前回見たように、メルケル候補はNATO首脳会議とG7サミットへの対応で株を上げ
たが、G20サミットでもSPDの敵失により得点をかせぐことができた。
このようにメルケル候補は何もやらなくてもうまくいくが、一方のSPDは何をやって
もうまくいかない。
同性婚の合法化には慎重な立場だったメルケル首相が6月26日(月)に容認する発言をし
たのを受けてSPDは、今まで用意していた法案を2日後の28日(水)に委員会に提出して可
決、そしてその2日後の30日(金)には連邦議会で議決にかけ、賛成多数で可決するという
奇襲攻撃をメルケル首相に仕掛けた。
これについては、同性婚を選挙の争点にしたくないという思惑があったメルケル首相
の作戦勝ちとの見方もあるが、CDUのカウダーCDU/CSU院内総務は「戦術的失敗だ。」
と発言している。
真相はどちらだかわからないが、確実に言えることは、この奇襲攻撃をもってしても
SPDは劣勢を挽回できなかったということ。
SPDは劣勢を挽回できなかったということ。
3月には多くの有権者がSPD主導の連立政権を望んでいたのに対して、7月には逆転
し、SPDはCDU/CSUに大きく水をあけられている。
どの政党主導の連立が望ましいか。(7月7日付Politbarometer)
7月
|
3月
|
||||
CDU/CSU
|
SPD
|
わからない
|
CDU/CSU
|
SPD
|
わからない
|
52%
|
37%
|
11%
|
41%
|
47%
|
12%
|
有権者が大きな変化を望んでいない大きな要因として、ドイツ経済が順調に推移して
いることがあげられる。
いることがあげられる。
ドイツの経済状況をどう思うか。(7月7日付Politbarometer)
良い 64%、どちらとも言えない 32%、 悪い 4%
ドイツ経済が悪いと思っている人はわずか4%にしかすぎない。
メルケル候補が優位な状況は続くが、まだどちらが勝つかはわからない。
現時点でどちらが勝つかはっきりしているか。(7月21日付Politbarometer)
はい 43%、いいえ 55%、わからない 2%メルケル候補が優位な状況は続くが、まだどちらが勝つかはわからない。
現時点でどちらが勝つかはっきりしているか。(7月21日付Politbarometer)
7月7日の世論調査と比較して「はい」が5ポイント増え、「いいえ」が6ポイント減っ
ているが、まだまだ半分以上の人が決着がついたわけではないと答えている。
選挙まであと6週間弱。暑い夏はまだまだ続く。
(次回に続く)
ているが、まだまだ半分以上の人が決着がついたわけではないと答えている。
選挙まであと6週間弱。暑い夏はまだまだ続く。
(次回に続く)