2019年4月28日日曜日

山種美術館「花・Flower・華 -四季を彩る-」

東京・広尾の山種美術館では、花いっぱいの展覧会「花・Flower・華-四季を彩る-」が開催されています。


春の花、夏の花、秋の花、冬の花、会場内は色とりどりに描かれた花で埋めつくされています。見ているだけで幸せな気分になる展覧会です。

それでは、さっそく先日参加した内覧会の様子を紹介しながら、展覧会の魅力をお伝えしていきたいと思います。
展覧会概要はこちらです。ギャラリートークもありますので、日時はこちらでご確認ください→山種美術館公式サイト
※掲載した写真は内覧会で特別の許可をいただいて撮影したものです。

展示室内を案内していただいたのは、山種美術館特別研究員の三戸さんです。

はじめに日本絵画の流れの中で、花鳥画の位置づけについてのお話がありました。

「東アジアの絵画の三大画題、人物、山水、花鳥のうち、人物、山水は近世と明治以降では様変わりしましたが、花鳥は伝統との距離が近いジャンルです。」
「日本では、中国・宋代の院体画の流れと、琳派の流れの二大潮流がありました。」

第1会場に入ってすぐに私たちをお出迎えしてくれるのは、月の光の中に浮かぶ梅がとてもきれいな酒井抱一《月梅図》。

酒井抱一《月梅図》(山種美術館)
梅といえば「光琳梅」といわれるほど琳派のアイコンの一つ。
月は下地の白を残して塗らずに、まわりに金泥を塗って月のほのかな光を表す「外ぐま」という水墨画の表現で描かれています。

続いて、春から夏にかけての花の作品を見ていくことにしましょう。

第1章 春から夏、輝く季節

はじめに、小林古径《鉢花》と奥村土牛《木蓮》。

左から、小林古径《鉢花》、奥村土牛《木蓮》(いずれも山種美術館)

「小林古径の《鉢花》は、切り花を描いた珍しい作品です。花を描くのを得意とした古径は、大正中期から昭和10年代にかけて陶磁器と花、陶磁器と果物を題材に絵を描きました。」
「奥村土牛の《木蓮》は、花や木の一部を切り取って画面に描いたもの。このように、折った花や木を描いいたり、画面に花や木の一部を切り取って描く作品は宋代院体画の「切枝画(せっしが)」の流れを汲んでいます。」

続いて、春の花といえば「桜」。

右から、横山大観《山桜》、渡辺省亭《桜に雀》、
小茂田青樹《春雨》(いずれも山種美術館)
花鳥画を得意とした渡辺省亭の《桜に雀》。
大観といえばやはり《山桜》。

そして小林古径の「切枝画」。

小林古径《桜花》(山種美術館)
どの作品にもそれぞれの画家の個性が出ています。

続いて「牡丹」のコーナー。

こちらは菱田春草《白牡丹》。
「牡丹と蝶という伝統的な画題です。」と三戸さん。
淡い色で描かれているので、よ~く見ないと見逃してしまいます。

今回の展覧会ではこの作品だけ写真撮影可です。ぜひ記念に一枚!

菱田春草《白牡丹》(山種美術館)

こちらは渡辺省亭の《牡丹に蝶図》。
「満開の牡丹と、はらはらと花が落ちる牡丹が描かれていて、一枚の絵の中に時間的なプロセスが盛り込まれています。」

渡辺省亭《牡丹に蝶図》(個人蔵)

ここにも小林古径の「切枝画」が!
白い花と鳥の瑠璃色の色合いがすばらしいです。

左 小林古径《白華小禽》、右 結城素明《躑躅百合》
(いずれも山種美術館)

花のユートピア

このコーナーには四季の花鳥を描いた作品が展示されています。

はじめに岸連山《花鳥図》。
富貴を象徴する牡丹、縁起ものの松竹梅、それに五客(中国・宋の宰相、李昉が飼った、鶴、白鷳(はっかん)、鸚鵡、孔雀、白鷺)といった吉祥を表す花鳥が描かれたおめでたい屏風です。

岸連山《花鳥図》(山種美術館)

続いて荒木十畝《四季花鳥》。
画面いっぱいに花が描かれていて、一見したところアール・ヌーボー調で、「ミュシャでは」と思ってしまいますが、春の水流の流れやたらしこみは琳派風、秋は菱田春草の《落葉》(福井県立美術館他が所蔵)のよう、冬の鳥は花鳥画を得意とした中国明代の宮廷画家・呂紀のよう。
「荒木十畝が古典を熱心に勉強していたことがわかります。」と三戸さん。


荒木十畝《四季花鳥》(山種美術館)
右から、春(華陰鳥語)、夏(玉樹芳艸)、
秋(木梢文錦)、冬(山澗雪霽)

第2章 秋と冬の彩り、再び春へ

時代によって赤色のもつ意味合いは異なりました。

酒井抱一の時代は、赤は秋の色。

左から、酒井抱一《秋草図》《菊小禽図》(いずれも山種美術館)
一方、明治の洋画家にとって、赤は夏の色でした。
下の写真左は赤いバラを描いた中川一政の《薔薇》(こちらは「夏」のコーナー)。

左から、中川一政《薔薇》(山種美術館)、
山口蓬春《梅雨晴》《唐壺芍薬》(山種美術館)
(©公益財団法人JR東海生涯学習財団)

冬といえば、春の訪れを待つ梅。
竹内栖鳳の《梅園》です。

竹内栖鳳《梅園》(山種美術館)

花と人

第2展示室は花と人物。
「上村松園の特徴は、花の色を控え目にして、美人を目立たせることです。」と三戸さん。

右 上村松園《春芳》、左 新井勝利《杜若》
(いずれも山種美術館)
「桜の花見の三幅は、江戸時代の浮世絵のアプローチが見られる作品です。」と三戸さん。
上村松園《桜可里》で女性が桜の枝をもつところは菱川師宣、菱田春草《桜下美人図》の中央の女性の姿は《見返り美人》(菱川師宣筆 東京国立博物館)、渡辺省亭《御殿山観花図》で女性が帯に手を入れているところは歌川広重の影響が見られます。
右から 上村松園《桜可里》、菱田春草《桜下美人図》(以上、山種美術館)、
渡辺省亭《御殿山観花図》(個人蔵)

花がテーマの展覧会なので、Cafe椿のコラボスィーツもひときわおしゃれです。


中央が「春いろ」(横山大観《山桜》)、右上から時計回りに、「鳥きたる」(荒木十畝《四季花鳥》のうち 春(華陰鳥語))、「花香る」(小林古径《白華小禽》)、「雨あがり」(山口蓬春《梅雨晴》©公益財団法人 JR東海生涯学習財団)、「華の王」(菱田春草《白牡丹》)。 *作品はすべて山種美術館蔵。

お抹茶セットで1,100円(税込)です。

そして、今回は特にアプリゲーム「明治東京恋伽~ハヰイカラデヱト」(通称:「めいこい」)とのコラボで菱田春草と横山大観をイメージした特別メニューが用意されています。
※1回の会計につき、お一人様1セットのみ
 1セット1,400円(税込)
 セット内容
  春草セット(和菓子「華の王」、お抹茶、特製コースター1枚)
  大観セット(和菓子「春いろ」、お抹茶、特製コースター1枚)
  特製コースターは11種より1種、ランダム配布)


さらに関連グッズも充実!
地下1階のミュージアムショップで販売しています。



こちらは花いっぱいのグリーティングカード。1枚350円+税ですが、5枚セットだと1,400円+税で、1枚分お得です。


そしてこちらがめいこい缶バッジ。1枚500円+税です。


さて、四季を彩る花いっぱいの展覧会はいかがだったでしょうか。
花の絵をたくさん見て、花をモチーフにした和菓子を食べて、思い出に花いっぱいのオリジナルグッズやめんこいグッズを買って、何倍にも楽しめる展覧会です。

6月2日(日)まで開催しています。初夏のいい季節におススメの展覧会です。

展覧会概要
 会 期  4月6日(土)~6月2日(日)
 休館日  月曜日*但し、4/29(月)、4/30(火)、5/6(月)は開館、5/7(火)は休館
 開館時間 午前10時から午後5時(入館は午後4時30分まで)
 入館料 一般 1200円ほか
 (各種割引があります。詳細は山種美術館公式サイトでご確認ください。)