2019年11月1日金曜日

永青文庫「細川家伝来・江戸の唐絵」展

東京・目白台にある永青文庫では中国・明清絵画と工芸の展覧会「細川家伝来・江戸の唐絵」展が開催されています。


永青文庫は、肥後熊本54万石の大名・細川家の広大な屋敷跡にあって、大都会の中にありながらも緑が多く、静かなたたずまいの中にあります。建物も昭和初期に建てられた旧細川侯爵家の家政所(事務所)で、洋館風の落ち着いた風情。


展示室内はまるで江戸時代の蔵の中のような重厚で古風な雰囲気。
中国明清の絵画・工芸との相性もピッタリ。
4階展示室風景
さて、今回の令和元年度秋季展「細川家伝来・江戸の唐絵」とはどんな内容の展覧会なのでしょうか。開会に先駆けて開催された内覧会に行ってきましたので、さっそく館内をご案内したいと思います。
※館内は撮影禁止です。掲載した写真は主催者より特別の許可をいただいて撮影したものです。
※展示されている作品はすべて永青文庫蔵です。

【展覧会概要】
会 期 10月19日(土)~12月8日(日)
    前期 10月19日(土)~11月10日(日)
    後期 11月12日(火)~12月8日(日)
開館時間 10:00~16:30(入館は16:00まで)
休館日  毎週月曜日(但し11/4は開館し、11/5は休館)
入館料  一般 800円ほか
公式サイト→永青文庫

今回の展覧会の主役は熊本藩細川家8代藩主の細川斉茲(なりしげ)(1759-1835)。
天明7(1787)年に藩主となって、文化7(1810)年に52歳で隠居。中国絵画を収集するだけでなく、自らも絵筆をとる絵画を愛した藩主でした。

はじめに4階展示室からご案内しましょう。

下の写真の左の掛軸は斉茲筆、いかにも「中国花鳥画大好きです」と主張している《木蓮錦鶏図》。
右 《細川斉茲像》通期展示
 左 細川斉茲《木蓮錦鶏図》前期展示
(後期には同じく細川斉茲《松鶴図》が展示されます)
そして、斉茲は細川家コレクションのリストも作成しました。

「古画御掛物之帳」 通期展示
「掛物之帳」というだけあって、細川家が所蔵した掛軸だけのリストで、巻物は含まれていませんが、それでも日本絵画16件、中国絵画119件が記されています。
そして、中国絵画119件のうち、永青文庫に現存しているのは12件。
残りの107件も見てみたい!と思いますが、とりあえず永青文庫が所蔵する12件だけは前期と後期ですべて見ることができます。

右から 伝・劉祥《雲龍図》、顧氏《咸陽宮(楼閣)図》、
伝・辺文進《海棠牡丹八哥鳥図》
いずれも前期展示

《雲龍図》は一見黒ずんでいるように見えますが、よ~く見ると雲の間から表れてくるのはどことなく愛嬌のある龍の顔。

伝・劉祥《雲龍図》(部分) 前期展示
そして楼閣も細部まで丁寧に描かれています。
画面右上、宮殿の右上の雁の群れが飛んでいるのがご覧いただけますでしょうか?
単眼鏡必携です!

顧氏《咸陽宮(楼閣)図》(部分) 前期展示
さらに、愛嬌のある表情の八哥鳥。
伝・辺文進《海棠牡丹八哥鳥図》(部分)
前期展示
中国絵画はさらに続きます。
手前 沈南蘋《芦雁図》 通期展示
後の右から林良(款)《芦雁図》、
李一和(款)《花鳥図》(三幅対)、
《松鷹図》いずれも前期展示
4階展示室のもう一つの見どころは、前期限定で展示される重要文化財・黄庭堅《伏波神祠詩巻》。

重要文化財 黄庭堅《伏波神祠詩巻》
前期展示
黄庭堅(1045~1105)は、中国・北宋時代を代表する詩人・書家で、蘇軾、米芾、蔡襄とともに宋の四大家に数えられるほどの人。
《伏波神祠詩巻》は、国、東京都、文京区の助成を得て修理を完成した後の初めての公開です。きれいによみがえった名作をぜひご覧ください。

3階展示室に移ります。
こちらは中国工芸と巻物のコーナー。

3階展示室風景
3階展示室風景

こちらは清時代の《漆絵雲龍文食駕》。
パッと見るとよくわからないのですが、しばらく眺めていると、あれよあれよという間に何頭もの龍が姿を現してくるので、あら不思議。
《漆絵雲龍文食駕》 通期展示
こちらは青緑山水を得意とした明時代の仇英の款がある《宮中図巻》。
仇英(款)《宮中図巻》(部分)
前期後期で巻替あり
この作品は、明時代に文化の中心地だった江南地方・蘇州で多く作られた「蘇州片」と見られていますが、とてもレプリカとは言えないほどの鮮やかな色が残った作品です。
先ほど紹介した『古画御掛物之帳』に巻物は記されていませんが、他の巻物も見事な作品ばかりです。

3階では細川斉茲が自ら描いたと伝わる《写生図》も見逃せません。
包み紙に「うつし絵」とあることから、手本となる絵を模写したものとされていますが、
江の島や湘南海岸の様子、人物の動きなどは、その場で写生したのではと思えるほど生き生きと描かれています。
細川斉茲《写生図》全62枚のうち
通期展示

2階展示室に移ります。
手前は東本願寺伝来品と伝えられる《螺鈿楼閣人物稜花形食籠》。
奥は図書コーナーになっています。
2階展示室風景
360度ぐるりと見ることができる《螺鈿楼閣人物稜花形食籠》。
螺鈿の細かな細工、側面に描かれた場面ごとの人物の動き、何回ぐるぐる回っても飽きません。
《螺鈿楼閣人物稜花形食籠》(明~元時代)
通期展示

まるで中国の博物館に紛れ込んだような気分が味わえる展覧会。
前期展示は11月10日(日)までです。
もちろん後期展示も見逃せません。

4階展示室には中国・唐時代の如来さんがいらっしゃいます。
優しいお顔に癒されます。

重要文化財 如来坐像
(中国 唐時代 8世紀前半)
この如来さんは、唐の都・長安(現・西安)の青龍寺から来られたと伝えられています。
せっかくなので、以前西安の青龍寺址に行ったときの写真もご紹介します。
青龍寺は、空海が留学中に師・恵果和尚のもとで修業したお寺です。