2022年7月18日月曜日

三井記念美術館 リニューアルオープンⅡ 茶の湯の陶磁器~”景色”を愛でる~

東京・日本橋、三井記念美術館ではリニューアルオープン第2弾「茶の湯の陶磁器~”景色”を愛でる~」が開催されています。


1階ロビーのポスター


今回は、メインビジュアルのとおり桃山時代や江戸時代の茶人たち好みの渋くて落ち着いた雰囲気の陶磁器が楽しめる展覧会。
さっそく会場内の様子をご紹介したいと思います。


展覧会概要


展覧会名  リニューアルオープンⅡ 茶の湯の陶磁器~”景色”を愛でる~
会 場   三井記念美術館
会 期   2022年7月9日(土)~9月19日(月・祝)
      *会期中、一部展示替えを行います。
開館時間  10:00~17:00(入館は16:30まで)
     *ナイトミュージアム:会期中毎週金曜日は19:00まで開館(入館は18:30まで)
休館日   月曜日(但し7月18日、8月15日、9月19日は開館)、7月19日(火)
主 催   三井記念美術館
入館料   一般 1,000円(800円)/大学・高校生500円(400円)/中学生以下無料
      *ナイトミュージアム割引:会期中毎週金曜日17:00以降のご入館で( )内
       割引料金になります。
      
※本展は予約なしで入館いただけます。
※展覧会の詳細、各種割引、新型コロナウイルス感染防止対策などについては同館公式ホームページをご覧ください⇒https://www.mitsui-museum.jp

※会場内は撮影禁止です。掲載した写真はプレス内覧会で美術館の特別の許可をいただいて撮影したものです。


茶道具の「銘」に注目!

今回の注目は茶碗や茶入、花入、水指などの茶道具につけられた「銘」。

例えば「斗々屋茶碗 銘かすみ」の銘は「かすみ」。

「銘」は、茶道具を所有していた茶人が、釉の変化や器の姿などを見て「いい景色だな。」と愛でて、ひらめいたイメージから名前をつけたものなのです。

この「斗々屋茶碗 銘かすみ」は、全体が枇杷色のところに一部薄青色に変化した釉景色が、春霞を連想されたことから「銘 かすみ」と付けられました。

斗々屋茶碗 銘かすみ 1口  朝鮮時代・16世紀
  三井記念美術館蔵


こちらは8月9日(火)から展示される、本阿弥光悦作 重要文化財「黒楽茶碗 銘雨雲」。
黒いかたまりは雲、縦の黒い筋は雲間から降る雨。
空が急に暗くなって雨が降ってくる光景が目に浮かんでくるようです。

 重要文化財 黒楽茶碗 銘雨雲 1口  本阿弥光悦作
  江戸時代・17世紀  三井記念美術館蔵
(8/9~9/19展示)

ほかにも自然の景色にちなんだ村雨、秋月、和歌をイメージした「歌銘」など優雅な銘の茶道具が出てきます。

茶人たちが付けた銘から連想して景色を思い描くことも今回の展覧会の大きな楽しみの一つですし、「自分だったらこういう銘を付けたい。」と想像してみるのも面白いかもしれません。


展示室1展示風景





国宝、重要文化財の茶道具が勢ぞろい!


毎回メインの一品が展示される展示室2には、国宝「志野茶碗 銘卯花墻」が展示されています。 

展示室2展示風景


日本で焼かれた陶磁器の中で、2碗しかない国宝のうちの1つという貴重な国宝「志野茶碗 銘卯花墻」は8月7日までの展示です。

銘の「卯花墻」は、卯の花になぞらえた白い志野釉の下に鉄絵で垣根が描かれていることから付けられたものなのです。

 国宝 志野茶碗 銘卯花墻 1口  桃山時代・16~17世紀 
三井記念美術館蔵 (7/9~8/7展示)


この展示室2には、8月9日(火)から中国・南宋時代の重要文化財「玳皮盞 鸞天目」が展示されるので、こちらも楽しみです。


茶室のしつらえが雰囲気を盛り上げてます


茶道具ですので、やはり茶室に展示されると、このようにしっくりきます。


国宝の茶室「如庵」を再現した展示室3展示風景


茶室でなくても茶道具や掛け軸を組み合わせた展示が随所に見られ、展示室内の雰囲気を盛り上げていました。

展示室4正面の掛け軸は、明治期に京都で活躍した日本画家、川端玉章の《京都名所十二月》12幅のうち1月から6月までの6幅。
7月から12月までの6幅は展示室7に展示されています。

月ごとに京都の名所や行事が淡い色彩で描かれていて、とてもいい感じの作品です。


展示室4展示風景

今回は、展示室1、2に茶碗、展示室4に花入・水指といった具合に、各展示室には茶道具の種類ごとに並べて展示されているので、それぞれの茶道具の趣きの違いがよくわかります。

茶碗や茶入れと比べて少し大ぶりで、でんと構えているのが水指。
中でもこの「伊賀耳付水指 銘閑居」のごつごつとした感じが気に入りました。
すわりの良いわびた様子を擬人化して「閑居」と名付けられたと思われるとのことです。


伊賀耳付水指 銘閑居 1口   桃山時代・17世紀 
 三井記念美術館蔵


展示室5に展示されているのは茶壷・茶入。
小ぶりながらも、ほっそりしたものや、丸身を帯びたものなど、それぞれ形に特徴があって、釉で彩られた模様も味わいがあるので、一つひとつじっくりご覧いただきたです。


展示室5展示風景

8月9日から展示される茶入の中で特に注目したいのは「唐物肩衝茶入 銘遅桜 大名物」。
あの銀閣寺を建てた室町幕府八代将軍足利義政が、この茶入が天下の名物「初花」より早く世に知られたならば、この茶入が第一であっただろうとしておくったという伝承がある歌銘がこの遅桜という銘なのです。

大名物(おおめいぶつ)とは、千利休以前に選定された名物の茶器のことで、足利義政が東山山荘で選定した茶道具がその代表です。


唐物肩衝茶入 銘遅桜 大名物 1口  南宋時代・12~13世紀
  三井記念美術館蔵(8/9~9/19展示)


近くでじっくり見ることができる展示室6には、小さくても色合いが鮮やかで、ユニークなしぐさの獅子をはじめとした動物たちの姿も楽しめる香合が展示されています。

展示室6展示風景

展示室7に展示されているのは楽茶碗・紀州御庭焼。
正面は、先ほどご紹介した川端玉章の《京都名所十二月》12幅のうち7月から12月までの6幅です。

展示室7展示風景

楽茶碗とは、轆轤(ろくろ)を使わずに手とヘラだけで成形する「手捏ね」と呼ばれる方法で成形するので、いかにも手作り感たっぷりの安定感が感じられます。

こちらは、樂家初代、長次郎作の黒楽茶碗。

千利休が薩摩の門人に三碗を送ったところ、この茶碗を残して二碗は送り返されてきたので、平家を打倒しようとした鹿ケ谷事件に加担して薩摩の国の鬼界ケ島(硫黄島)に流され、その後許されず島に残された僧・俊寛にちなんでつけられたのがこの黒楽茶碗の銘とのこと。

このような銘のつけ方もあるのだな、とひたすら感心するばかりでした。

重要文化財 黒楽茶碗 銘俊寛 長次郎作 1口  桃山時代・16世紀 
 三井記念美術館蔵(7/9~8/7展示)


ミュージアムショップにも茶道具があります!


素晴らしい茶道具を愛でて展示室を出るとすぐに見えてくるのは、改装後広くなったミュージアムショップ。

今回の展覧会にあわせて販売されているのは、現代陶芸作家の作品です。
作家さんたちそれぞれの特徴があって、どれも素敵な形や柄なので、「この茶碗でお茶を飲んでみたい!」「このお皿に料理を盛ってみたい。」と思える器が見つかるかもしれません。

お帰りの際にはぜひお立ち寄りください。

ミュージアムショップ


次回展は、平安時代以来の優美な文化の香りが感じられる特別展「大蒔絵展-漆と金の千年物語」(2022年10月1日~11月13日)。
毎回楽しみな展覧会が開催されるので、リニューアルオープン後も三井記念美術館から目が離せません。


次回展「大蒔絵展」