東京・広尾の山種美術館では、【特別展】HAPPYな日本美術―伊藤若冲から横山大観、川端龍子へ―が開催されています。
展覧会チラシ |
【展覧会開催概要】
会 期 2024年12月14日(土)~2025年2月24日(月・振休)
開館時間 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日 月曜日[1/13(月・祝)、2/24(月・振休)は開館、1/14(火)は休館
12/29(日)~1/2(木)は年末年始休館]
入館料 一般 1400円、中学生以下無料(付添者の同伴が必要)
【冬の学割】大学生・高校生500円
※本展に限り、特別に入館料が通常1100円のところ500円になります。
その他、各種割引、展覧会の詳細等は山種美術館公式ホームページをご覧ください⇒https://www.yamatane-museum.jp/
展示構成
第1章 福をよぶ―吉祥のかたち
第2章 幸せをもたらす―にっこり・ほのぼの・ほんわか
展覧会チラシをご覧になって「あれッ?」と思われた方がいらっしゃるのではないでしょうか。いつも江戸時代から近代・現代日本画の名品の展覧会を開催している山種美術館なのに、チラシにはなぜかハニワの写真も。
しかし、そのナゾは展示室に入ってわかりました。
※掲載した写真はプレス内覧会で美術館より許可を得て撮影したものです。
※今回の特別展では、《埴輪 猪を抱える猟師》(5-7世紀(古墳時代) 個人蔵)のみ写真撮影OKです。撮影はスマートフォン・タブレット・携帯電話に限定されています。その他、撮影の注意事項は展示室内でご確認ください。
新年を迎えるのにふさわしいおめでたい展覧会ですので、松竹梅、七福神、富士山、鶴や来年の干支の蛇など、おめでたい画題の作品がずらりと並んでいます。
展示風景 |
第1展示室の冒頭を飾るのは富士山をはじめとした吉祥画を数多く描いた横山大観の《天長地久》(昭和18年頃 山種美術館 上の写真左手前)。青々と茂る松林と、画面右から左に飛んでいく鶴の群れが緊張感を感じさせる印象的な作品です。
「天長地久」とは、永久に変わることのない天地のように、物事がいつまでも続くことを意味する語ですが、太平洋戦争のさ中、連合軍の反攻で日本軍が劣勢に立たされるようになった昭和18年頃の大観の、変わることのない日本を残したいという思いが伝わってくるようです。
大観の願いもあってか、敗戦後も日本は滅ぶことなく平和な日々が訪れました。
戦後に描いた松林にはどことなくのどかな雰囲気がただよっているように感じられます(下の写真中央)。
三人の巨匠によるこの作品は、山種美術館の創設者・山﨑種二氏の希望により企画された松竹梅展で実現したもので、青龍社を創設して大観と袂を分かった川端龍子と横山大観は、戦前は仲たがいしていたのですが、戦後は交流が復活して、二人でひたすら酒を酌み交わしたという、これまたおめでたいエピソードも残されています。
今回のメインビジュアルの中でも特に大きく扱われているのは、その川端龍子が描いた《百子図》(大田区立龍子記念館)。
象のまわりを子どもたちがうれしそうにはしゃいでいて、見ている私たちも明るい気分なってきます。
この作品は、戦後、「象を見たい」と東京の子どもたちが行動を起こし、「戦時猛獣処分」で象がいなくなった上野動物園にインドから「インディラ」と名付けられた象が贈られ、象は首につけた鈴を鳴らしながら芝浦の港から上野動物園まで歩いたというエピソードに触発されて龍子が描いたものでした。
HAPPYな気分になれるのは、やはり平和があってこそ。
今回の展示を見て、あらためて平和の大切さを感じました。
続いては、二つの国立博物館での展覧会ですっかり人気者になったハニワが登場。
冒頭でご紹介したハニワは、獲物の猪を抱えて得意気な表情をしています。
展示風景 |
その左隣の独立ケースに展示されているのは、極楽浄土に棲み、その美しい声で仏法を説くという想像上の鳥で、上半身は人の姿、下半身は鳥の姿の迦陵頻伽(かりょうびんが)像。
仏涅槃図でよく見かける迦陵頻伽は嘆き悲しむ表情で描かれていますが、この迦陵頻伽は子どもがにこやかに笑っているような表情をしています。
どちらもHAPPYな表情をしているので今回の特別展に展示されているということがここで初めてわかりました。そして展覧会のタイトルも「HAPPYな『日本画』」でなく「HAPPYな日本美術」になっているナゾも同時に解けました。
新年の楽しみのひとつは七福神めぐり。展示室内でも七福神めぐりができます。
こちらは狩野探幽没後に江戸狩野派の総帥となった狩野常信の《七福神図》。
七福神をかこんではしゃぐ子どもたちがとてもかわいいです。
初夢でどんな夢を見るのかは、大いに気になるのではないでしょうか。
ここで富士山が描かれた作品を見て富士山のイメージをつかんで、ぜひいい初夢を見ていただきたいです。
今回の特別展では、山種美術館所蔵の《伏見人形図》をはじめ《鶴図》《鶏図》《叭々鳥図》《蛸図》(いずれも個人蔵)の5点もの伊藤若冲作品を観ることができます。
中でも海中をゆらりと泳ぐ「さかさタコ」は初めて見ましたが、くりっとした目が愛らしいです。
年内は12月28日(土)まで。新年は1月3日(金)から。
2025年がHAPPYな年になることを願って、ぜひ訪れていただきたい展覧会です。