2026年4月15日水曜日

静嘉堂文庫美術館 美を味わう ―懐石のうつわと茶の湯

静嘉堂@丸の内では、展覧会「美を味わう —懐石のうつわと茶の湯」が開催されています。


多くの美術館や博物館で陶磁器などうつわの展覧会が開催されていますが、懐石のうつわや茶道具を愛でる内容の今回の展覧会はちょっと違った味付けがされています。
本来であれば料理を盛り付けているところを展示できればよいのですが、生ものは長い日数置いておくと腐ってしまうのでそれはできません。そこで、形や文様などはもちろんのこと、料理や菓子を盛っていることも想像しながらうつわを愛でることができるように、展示室の壁面には料理を盛り付けた様子がパネル展示されています。
まさに美を味わうことができる展覧会なのです。
(ホワイエの一角でも、うつわに料理を盛り付けている場面を撮影したビデオが上映されているので、ぜひご覧いただきたいです。)

それでは、開会前に開催されたプレス内覧会に参加してきましたので、  さっそく展示の様子をご紹介したいと思います。


展覧会開催概要


会 期   2026年4月7日(火)~6月14日(日)
      前期:4月7日(火)~5月6日(水・祝)
      後期:5月8日(金)~6月14日(日)
      ※前後期で一部作品の展示替えあり
休館日   毎週月曜日(ただし5月4日(月・祝)は開館)、5月7日(木)
開館時間  10:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
      ※毎月第4水曜日は20時まで、6月12日(金)、・13日(土)は19時まで開館
トークフリーデー  毎週木曜日
入館料   一般 1500円、大高生 1000円、中学生以下 無料
      障がい者手帳をお持ちの方(同伴者1名〈無料〉を含む) 700円      
※展覧会の詳細、チケット購入方法、関連イベント等については同館公式サイトをご覧ください⇒https://www.seikado.or.jp
※掲載した作品はすべて公益財団法人静嘉堂の所蔵です。

撮影条件  国宝《曜変天目(稲葉天目)》以外は撮影可。
      *携帯電話・スマートフォン・タブレットのカメラは使用できます。
       動画撮影・カメラでの撮影は不可。

展示構成
 第1章 懐石の流れ
 第2章 懐石道具の華、「向付」のさまざま
 第3章 茶事を彩る、懐石のうつわ
 第4章 懐石から茶へ―千利休と豊臣秀吉ゆかりの茶道具

展覧会チラシ


第1章 懐石の流れ


静嘉堂文庫美術館では、今までにも陶磁器や茶道具など、うつわの展覧会は開催されていましたが、懐石のうつわを中心とした展覧会は、1992年の開館以来、今回が初めてとのこと。
陶磁器、漆器、ガラスなど様々な素材のうつわが見られるのが今回の展覧会の大きな見どころのひとつです。

懐石とは、茶事において抹茶を喫する前に供される料理のこのとで、茶道の世界では11月から4月までが炉の季節、5月から10月までが風炉の季節なので、第1章では、前期(4/7-5/6)には炉の季節、後期(5/8-6/14)には風炉の季節を想定した取り合わせが紹介されます。


第1章 展示風景


第2章 懐石道具の華、「向付」のさまざま


今回の展覧会で特に注目したいのが懐石道具の華、「向付(むこうづけ)」。
膳の手前にご飯と汁物の碗があって、その向こう側にあって懐石の最初に出される主菜または副菜を盛り付けるための小鉢や皿が向付ですが、その形もデザインもさまざまなものを楽しむことができるのが第2章です。



第2章 展示風景

向付は、料理を盛り付けやすいように長方形や楕円形のものが多いのかと思っていたのですが、今回の展覧会ではいろいろな形の向付があることに気が付かされました。
そして、産地も日本の有田、中国の景徳鎮窯、朝鮮の釜山窯、さらにはオランダのデルフト窯だったりと、まさに「さまざま」。

中国・景徳鎮窯の《祥瑞松竹梅文袖型向付》は、旗がたなびくような少し変わった形をしていますが、これは明末の崇禎年間(1628-44)頃、日本の茶人の注文によって景徳鎮民窯で焼成されたやきもので、形は江戸初期に流行した「誰袖屛風(たがそでびょうぶ)」や「誰袖匂袋(たがそでにおいぶくろ)」等に着想を得たものではないかと考えらえれています。


《祥瑞松竹梅文袖型向付》 景徳鎮窯 明時代(17世紀前半)
通期展示


筆者が特に気に入ったのは、京都で焼かれた舟形の《銹絵舟形向付》。
素早く食べないとすいすいとどこかへ行ってしまいそうです。

《銹絵舟形向付》 京 江戸時代(18世紀)
通期展示



第3章 茶事を彩る、懐石のうつわ

 
懐石では一汁三菜が基本ですが、季節や亭主の趣向に応じて様々なうつわがそれぞれの場面に応じて登場します。第3章では、静嘉堂の所蔵品のなかから、懐石のうつわとして用いられた鉢や皿、さらには酒器や菓子器までの、多様な作品を楽しむことができます。


第3章 展示風景

ここでもお気に入りの一品を見つけました。
中国・漳州窯で焼かれた、胡人たちが楽しそうに踊る《呉州赤絵胡人獅子文鉢》です。

《呉州赤絵胡人獅子文鉢》漳州窯 明時代(17世紀前半)
通期展示

モダンなデザインに感じられたのが、有田 古九谷様式の《色絵丸文台鉢》。
紫を地に緑・白・黄の丸文が映える表面に目が行きがちですが、裏面にも染付で葡萄の蔓を二箇所からつたわせるように描き、高台内面は緑釉で塗り込めるという念の入りよう。
鏡の上に展示されているので、裏面までよく見ることができます。

《色絵丸文台鉢》有田 古九谷様式 江戸時代(17世紀)
通期展示



第4章 懐石から茶へ―千利休と豊臣秀吉ゆかりの茶道具


懐石を中心とした初座を終えたあと茶人たちは、濃茶と薄茶を喫する後座に移ります。
第4章では、静嘉堂の茶道具コレクションから、千利休と、利休が仕えた豊臣秀吉ゆかりの名品が展示されて、後座の茶室をイメージした雰囲気を味わうことができます。


第4章 展示風景 



なかでも前期の注目は、室町幕府第三代将軍・足利義満によって見出されたとされる唐物茄子茶入《付藻茄子》。
桃山時代には織田信長、豊臣秀吉の手に渡り、大坂夏の陣で大坂城が落城したとき、大破した《付藻茄子》を徳川家康の命によって塗師の藤重藤元・藤巖堂父子が精巧な漆繕いを行い、このような姿によみがえった茶入です。。
今回は鏡の上に展示されているので、底の部分の繕いの様子がよく見えるようになっています。


唐物茄子茶入《付藻茄子》 福州窯系 南宋~元時代(13~14世紀)
前期展示(4/7-5/6)


後期には同じく大坂夏の陣で罹災して藤重父子が修復した唐物茄子茶入《松本茄子(紹鷗茄子)》が展示されます。
家康は、見事な修理の労をねぎらって、《付藻茄子》を父・藤元に、《松本茄子》を子の藤巖に下賜しました。
今日の私たちがこのような茶入の名品を見ることができるのは藤重父子のおかげなので、とてもありがたいです。

第4章では、国宝《曜変天目(稲葉天目)》も展示されています。

 
ミュージアム・ショップでは新商品も続々入荷。
国宝《曜変天目(稲葉天目)》がデザインされた「曜変天目ゴーフレット」も新商品。
ゴーフレットを食べ終えたあとも、缶はオシャレな小物入れとして使えるのがうれしいです。

ミュージアムショップ


展示作品のカラー図版や詳しい作品解説が掲載された展覧会図録はハンディサイズ。鑑賞のお供にいかがでしょうか。
展覧会図録

展覧会のタイトルどおり、料理を味わう気分で懐石のうつわが楽しめます。おすすめの展覧会です。