2011年8月7日日曜日

日独交流150周年(7)

(前回からの続き)
時代が時代だけに、どうしても内容が重苦しくなってしまう。そこで今回は少し気分転換を。

 日独交流150周年(4)で青島ビールのことを書いら飲みたくなったので久しぶりに買ってみた。
味はさっぱり系、やっぱり蒸し暑い夏は下面発酵のすっきりした味のビールに限る。イギリスのエールやドイツのバイツェンビールみたいな上面発酵ビールは冬に温かい部屋で飲む方がいい。
ラベルを見ると「since 1903」とある。ドイツが青島を占領したのは1896年。7年間どうしたのだろうか。日本でもすでにビールを醸造していたが、まさか三国干渉をした相手方からは輸入しづらいだろうな、個人的に醸造していたのではまかないきれないから本国からの輸入に頼ったかな、など勝手に想像する。
次に裏のラベルを見る。「原材料 大麦麦芽、ホップ、米」とある。
えっ、米?
確かビール純粋令(Reinheitsgebot)によると、ビール(Bier)は麦芽(Malz)、ホップ(Hopfen)、酵母(Hefe)、水(Wasser)だけでできていなくてはならないはず。いつから米が入ったのか?
日本の多くのビールに見られるように、米やコーンスターチを入れると湿潤な日本の気候に適したさっぱりした味のビールができる。でも、ドイツではこういったビールは造ってもいけないし、輸入もできないはず。
ビール純粋令は、1516年4月23日、バイエルン公ヴィルヘルム4世が公布したもの。
それがバイエルンで長年引き継がれ、ドイツ帝国成立後やワイマール共和国時代にはドイツ全土に適用された。第二次世界大戦後もめでたくビール税法(Biersteuergesetz)で公認されている。(旧東ドイツで適用されたかは不明→今度調べておきます)
 以前、ドイツの地ビールのことを書いた本を買ったことを思い出し、本棚をさがした。それがこの『ドイツ地ビール 夢の旅』(相原恭子著 1996年 東京書籍)。
ビール純粋令のことはこの本でも紹介されている。1995年からビール純粋令を記念して4月23日は「ビールの日」となり各地の醸造所やレストランで催し物や記念行事が行われたとのこと。バレンタインデーやクリスマスなどいろんな記念日を取り込んでいる日本が「ビールの日」に飛びつかないのは不思議な気がする。
この本では世界最古のビール醸造所ヴァイエンシュテファンに始まり地ビールゆかりの地を訪ねる旅を紹介している。文章もさることながら、何しろ写真がきれい。紹介されている街に行ってビールを飲みたくなってしまう。

青島ビールに話を戻すと、2009年にアサヒビールが青島ビールと提携して世界最大のビール消費国中国の販路を拡大したいとのプレスリリースをした。それによると青島ビールは中国ビール市場で占有率第2位とのこと。青島ビールはもはやドイツビールでなくなってしまったということか。少しさびしい気がする。

(アサヒビールのプレスリリース)

いろんなことを考えているうちに青島ビールを飲み干してしまったので、泡盛の水割りに移る。自分では軽い沖縄病に罹っていると思っている。だから最近は泡盛の水割り。「沖縄もの」の本によると、重度の沖縄病だと移住してしまうくらい沖縄が好きになってしまうようだが、私の場合は、寒くなって手の甲にあかぎれができて痛くなる1月から2月になると沖縄に行きたくなるくらいなので、勝手に軽症と診断している。
ところでドイツ人は日本人のようにチャンポンはしない。日本だと、まず中ジョッキの生で乾杯、その後はめいめいがチューハイや日本酒、最近だとハイボールという感じだが、ドイツではビールを飲む人は最後までビール、ワインを飲む人は最初の乾杯もワインだし、最後までワイン、という具合。
ドイツといえばビールを思い浮かべるが、ワインも負けてはいない。
私が住んでいたラインラント・プファルツ州の小さな街に近いライン川中流、フランスと国境を接する丘陵地帯はブドウ畑が広がっている。
10月になるとブドウ農家でも自家製のワインを造り、家の軒先に「新しいワイン(Neuer Wein)」と手書きで書いた小さな看板をぶら下げて売っている。買う人は自分で1ℓや2ℓのブラスチック容器を持参して買っていく。新しいワインは市販されている白ワインのように透き通っていない。濁ったリンゴジュースのような感じ。きちんと精製していないのでアルコール度数もわからない。地元の人には、甘くて口当たりがいいので飲みすぎないようにと言われる。
新しいワインによく合うのが玉ねぎケーキ(Zwiebelkuchen)。ケーキと言っても甘くはなく、小麦粉生地の上に、塩コショウで味付けして炒めた玉ねぎとベーコンをのせてオーブンで焼くもの。味はピザに近い。
秋にはクルミも採れる。脂分がじっとりしみこんだカリフォルニア産のクルミに慣れきっていたので採れたてのみずみすしいクルミは新鮮な味がした。
秋にドイツに行ったら「ワイン党」になった方がいいかもしれない。
 (次回に続く)