ホテルでの軽い昼食を終えて、午後はブランデンブルク門近くの観光案内所でもらった地図をたよりに、かつての国家保安省、現在のシュタージ博物館に行くことにした。
ホテルからはアレキサンダー広場まで歩き、そこから地下鉄(U-Bahn)で7つめの「マグダーレン通り」が最寄駅だ。
これがアレキサンダー広場。クリスマス1か月前の11月26日から始まるクリスマス市場のための仮設店舗が所狭しと並んでいるせいもあるが、周囲にビルができたため、統一前より広場はかなり狭くなっている。
1989年11月4日、政府が発表した旅行法が不十分だったので、それに抗議して50万人の市民が集まったが、この広さではもうそんなに多くの市民が集まるスペースはない。警察の車も、かつてのように体制を批判する市民を拘束することはない。
当時の抗議行動の様子が「シュピーゲル」の記事に出ている。統一前はこの広場はこんなに広かった。
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http://einestages.spiegel.de/static/entry/platz_da_fuer_die_revolution/82601/grossdemonstration_auf_dem_ost_berliner_alexanderplatz.html?o=position-ASCENDING&s=6&r=1&a=20841&c=1
地下鉄の中は駅と駅の間のトンネルの中も携帯電話が使える。私のドコモの携帯を見ても、アンテナがしっかり3本立っている。
東京の都営地下鉄と東京メトロは今年3月から順次、トンネル内でも携帯電話が利用できるようにするとのことだが、メールの送受信だけで、通話は今までどおり控えるよう呼びかけるようだ。
でもドイツでは通話も禁止されていないので、車内ではみんな気にせず携帯でおしゃべりしている。禁止されていないと、こちらも気にならないから不思議だ。
駅ごとに緑、赤、黄色などカラフルな色になっているのも大きな特徴。これだと降りる駅を間違えないで済む。「アレキサンダー通り」と「マグダーレン通り」は緑。途中の駅は赤とか黄色だった。
駅には大きな絵も飾られている。
ドアの模様はブランデンブルク門。これは統一後のことか。
地上に出て、もらった地図どおりに歩いていくと、住宅街の一角を占める大きな敷地の中にかつての国家保安省の建物がいくつも並んでいた。今では多くの建物は住宅やクリニックビル、オフィスなどとして使われている。
敷地の中のどこに「シュタージ博物館」があるのかわからず敷地の周りをぐるぐる歩いていると「ノルマーネン通り(Normannenstraße)」という表示が目に入った。「ノルマーネン通り」
東ドイツ国民は、シュタージの代名詞となったこの通りの名前を聞くだけで背筋がぞっとしたという。日本の江戸時代でいうと「八丁堀」だろうか。
ぐるっと周っているうちに、ようやく入口に「シュタージ博物館」と書いている建物を見つけた。
中に入り、気のよさそうなおじさんに料金を払った。博物館は2階まであり、まずは1階から入る。
1階展示室前でわれわれ来館者を出迎えてくれるのは、このブログにもよく登場するエーリッヒ・ホーネッカー。この顔を見たくない旧・東ドイツ国民は多いはずだ。
1階展示室に入ると国家保安省の模型。いくつもの建物が群をなしている。
これは大臣室の再現。一番奥の隅が大臣の席。
これは枯木の幹に仕掛けられた監視カメラ。
野っ原に置かれ、祭りなどに来る人たちを記録していた。ここまでやるのか、とあきれてしまう。
これは映画「善き人のためのソナタ(Das Leben der Andere)」にも、尋問される市民が自分の太ももの下に手を当てるように命じられるシーンが出てきた。椅子に布を敷いておいて、そこにその人の臭いを浸み込ませて、その臭いを犬に嗅がせて、その人を識別させるものだ。
下の写真は布の敷き方の説明書き。
2階のカフェで高校生ぐらいの男女7~8人がコーヒーを飲みながら楽しそうにおしゃべりをしていた。社会見学に来ていたのだろうか。
彼らにとってドイツ統一は生まれる前のできごと。昨夜行ったDDR博物館と同じで、残す努力をしないと、いつの間にか忘れ去られてしまうのだろう。帰りがけに「シュタージ」という書籍を買った。値段は14ユーロ99セント。15ユーロ渡すとおじさんはすまなそうに「今、おつりの1セントがないんだ」と言う。
「いいですよ。そのうち1セントがくずせたら募金箱に入れておいてください」と私。
それから、いくつかのパンフレット類をもらい、
「DDRがどういう国だったか研究してるんです。とても参考になりました」と礼を言ってシュタージ博物館を後にした。
外に出ると、5時前なのにあたりはすでに暗い。気温もかなり下がっている。
昨日の夜も、実質的な観光初日の今日も内容が盛りだくさんで、滑り出し順調だな、などと考えながら、ひんやりとした空気の中、地下鉄の駅に向かった。
いったんホテルに戻り一休み。
今日の夕食はどうしようかと考えたが、寒いのでやはり近いところということで、ホテルと隣のビルの間のショッピングモールに行った。
奥の方のレストランの外に立っている看板を見ると、「ベルリン名物、カレーソーセージ(Currywurst)」とあったので、このレストランに入ることにした。
写真は、レストランの中から見たショッピング・モール。
出てきた料理はこれ。ソーセージにケチャップとカレー粉がかかっているだけのシンプルなものだが、カレー味がビールに合う。ビールは、やはりご当地の「Berliner Kindler」。
これがレシート。「チップは含まれていません。10%です」と英語で書かれたスタンプが押してある。これならわかりやすい。
ちなみに日本の消費税に相当する付加価値税の税率は19%。
ドイツの付加価値税の税率は、1968年に導入された10%から、1998年までに6回、1%ずつだけ小刻みにアップしたが、2007年1月には16%から19%と、一気に3%アップした(軽減税率は導入時の5%から、やはり小刻みにアップしたが、1983年に7%になって以来、2007年以降も7%で据え置き)。
付加価値税率の大幅な引上げの背景には、当時、財政再建が喫緊の課題だったことがあるが、2005年の総選挙で2大政党の社会民主党(SPD)とキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)のどちらも過半数をとれなかったため、大連立を組んで19%に引上げたものである。
日本でも消費税率引上げが大きな議論になっているが、さて、これからどうなるのだろうか。
この日の夕食のように、食事して、ビール1杯飲んで税込で約1,300円。いきなり19%はないが、ある程度の負担増は仕方ないかなあ、と思いつつレシートを眺めていた。もちろん、税金のムダ遣いだけはやめてほしいと思う。
翌日は寒さを我慢してベルリンの壁の跡など外歩きをしました。街の様子などを紹介しますので、ご期待を。
(次回に続く)