11月16日(水) ドレスデン市内
寒さの中、旧市街を歩き回って体が冷えてきたので、アルテ・マイスター絵画館に避難することにした。
アルテ・マイスター絵画館は、ルネッサンス期のイタリア絵画を中心として、他にもファン・ダイクやデューラー、クラーナハ、ムリリョ、プッサンをはじめとした17世紀のオランダ、ドイツ、スペイン、フランスなどの画家たちの作品が充実していて、1階の半分と2階、3階に所狭しと並んでいる。
全部じっくり見ていたらいくら時間があっても足りない、と思ったが、せっかくの機会だから、体力と気力が続く範囲内でできる限り全部の作品を見る心づもりで、館内を歩き始めた。
下は絵画館のパンフレット裏面の案内図。
ラファエロの「システィナのマドンナ」が展示されている部屋が一目でわかるようになっている。
興味深かったのがパンフレットの表面。「システィナのマドンナ」とフェルメールの「手紙を読む女」の写真が並んで写っている。
最近、日本で人気の出てきたフェルメール。ドイツでも人気が出てきているようだ。
私がちょうどこの作品を見て次の部屋に行こうとしたとき、地元の高校生くらいの女の子二人が
「あ、これこれ、これが見たかったの」といった感じで嬉しそうに小走りで「手紙を読む女」の前に向かっていった。
待ちに待った恋人からの手紙。何が書いてあるのか心をときめかせながら読んでいる少女。その心情が伝わってくるから若い女の子の共感を得るのだろうか。
それにしてもルネッサンス期の天才画家ラファエロと双璧の扱いなのはすごい。
ドレスデン市ホームページでも、「世界中に30数点しかないフェルメールの作品を2点所蔵している」と、誇らしげに紹介している。
↓
http://www.dresden.de/museen/detail/Kultur_159_18.2.2006
これはアルテ・マイスター絵画館の入場券。さすがにこちらはフェルメールでなく「システィナのマドンナ」。幼きキリストを抱きかかえる神々しいマリアを、下からつまらなそうな表情で見ている天使たちだ。
さて、37点とも言われているフェルメールの作品のうち、今年は、日本で6点も見ることができる。
2月3日には渋谷のBunkamuraで開催されていた「フェルメールからのラブレター展」では、「手紙を書く女と召使い」「手紙を読む青衣の女」「手紙を書く女」(下のパンフレットの上3枚の作品の左から)の3点が展示された。
「フェルメールからのラブレター展」はもう終わってしまったが、6月13日からは上野の国立西洋美術館で開催される「ベルリン国立美術館展」で「真珠の首飾りの少女」が、6月30日からは同じく上野の東京都美術館で開催される「マウリッツハイス展」で「真珠の耳飾りの女」と「ディアナとニンフたち」が展示される。
昨年の3月から5月にかけてBunkamuraで「シュテーデル美術館所蔵 フェルメール≪地理学者≫とオランダ・フランドル絵画展」が開催されていたが、フェルメールの作品は「地理学者」の1点だけだったので行かなかった。
今となっては行っておけばよかったと思うが、シュテーデル美術館はフランクフルト・アム・マインにあるし、今度ドイツに行けばいいさ、と一人で強がってみた。
(シュテーデル美術館ホームページ)
http://www.staedelmuseum.de/sm/index.php?StoryID=1036&ObjectID=293
見れなかった分は、とりあえずフェルメール・センター銀座で開催されている「フェルメール 光の王国展」でカバーできる。ここではデジタル技術で複製されたフェルメールの全作品が展示されている。
(フェルメール・センターのホームページ)
http://www.vermeer-center-ginza.com/
2月11日にフェルメール・センターに行ったとき、記念にドレスデンで見た2つの作品を写真に撮ってきた。
これは「手紙を読む女」。
次は「取り持ち女」。
そしてこれはもう一枚は、オランダのデン・ハーグにあるマウリッツハイスが所蔵する「デルフトの眺望」。
私のフェルメールとの出会いはマルセル・プルーストの「失われた時を求めて」なので、この作品には親しみを感じている。しかし、さすがにデン・ハーグまでは行く機会はなので、「マウリッツハイス展」で出展されないのは少し残念。
不思議だったのは、初めて見る作品は本物らしく感じられたが、一度本物を見た作品はどうしても平板に見えてしまうこと。「フェルメールからのラブレター展」で見た「手紙を読む青衣の女」の青い服や、「手紙を書く女」の黄色い服のふわふわした感じは本物には及ばない。
これはやはり本物がもつ力だろうか。気のせいではないと思う。
(次回に続く)