2012年9月3日月曜日

ギュンター・グラスの見たドイツ統一(3)

今回は第3段落と第4段落。

まず、第3段落。

債務者として服も着ないでさらし者にされ、国は苦しんでいる。
君のおかげだ、というのはお世辞だったのだ。

民主主義も、科学も、哲学も、演劇も、ギリシャで生まれたものが、その後のヨーロッパ社会の形成に大きな影響を及ぼしたことは誰もが知っている。
ヨーロッパの人たちにとってギリシャは理想の楽園であり、憧れの的であった。

しかし、今ではどうだろうか。
ギリシャはまわりの国から「借金(負債)が多すぎる」と後ろ指をさされるところまで落ちぶれてしまった。

ここでグラスは、Schudner(債務者)と dem Dank zu schulden(~のおかげ)という具合に、schuldenを二つの意味に掛けている。
もともとschuldenとは、借りがある、とか、おかげである、といった、相手方に何かを負っていることを意味するので、この掛けことばを生かして訳してみるとこういう感じになる。


君の国は、「借金を負っている人」と服も着ないでさらし者にされて苦しんでいる。
今のヨーロッパがあるのはギリシャに負っている、というのはお世辞だったのだ。

解説をしたあとではこちらの方がわかりやすいかもしれない。

次に第4段落。


貧しい国と宣告された国の富が保護されて、博物館を飾っている。
それは君によって大切にされてきた略奪品だ。

グラスは、ドイツをはじめとしたほかの国を鋭く批判している。
ギリシャのことを貧しい国と決めつけているのに、ギリシャの遺跡を自分たちの国にもってきて、博物館に展示している。
私が昨年行った、ベルリンのペルガモン博物館がそのいい例だ。
(今年1月22日のブログをご参照ください)
まず、名称からして古代ギリシャの都市の名前そのもので(現在はトルコ領)、大神殿を建物の中に復元したりして、この古代都市国家を理想化している。
展示されているものも、学術研究、遺跡の保護の名のもとに現地から運んできたものだが、持って行かれた側にしては、いい迷惑だ。

(次回に続く)

(追記)
  9月5日から11日までドイツに行ってきます。今回は、ワイマール、エアフルト、フランクフルトと回ってくる予定です。帰ってきたらこのブログで旅行記を連載しますので、こちらの方もご期待ください。