平成24年9月8日(土)続き
列車は時刻どおりフランクフルト南駅に到着した。
そこから地下鉄に乗り、ヴィリー・ブラント通り駅で降りて、フランクフルト中央駅の方に向かった。
フランクフルトは、今やドイツだけでなく欧州の金融の中心だ。
高層ビルが立ち並び、車も人も街にあふれ、今朝までいた旧東ドイツの都市と比べると、まるで別の国に来たようだ。
燦然と輝く欧州中央銀行とEUのシンボルマーク。
近くの公園にあったはずのゲーテ像は300mほど離れたところにあるゲーテ広場に移設されていた。
ゲーテの右後ろには高層ビルがそびえ立ち、工事用のクレーンも姿を現している。
これぞまさにドイツ発展の象徴だ。
そしてフランクフルトは欧州の交通の要所でもある。空に見える幾筋もの飛行機雲がそれを物語っている。
勇壮な姿のゲーテ像と比べてシラーの像は緑の中にひっそりとたたずんている。
ワイマールではゲーテと並んで立っていたシラー像だが、ここフランクフルトでは離ればなれになってしまった。
フランクフルトは、現在だけでなくゲーテが生まれ育った頃から大都市だった。
大聖堂では歴代神聖ローマ帝国皇帝の戴冠式が行われた。
1764年4月3日に行われたヨーゼフ2世の戴冠式のときの街じゅうのにぎわいはゲーテも実際に目の前で見ている。
ドイツ各地から選帝侯たちが大行列を従えて市の門をくぐりフランクフルトに入ってきた。
街には多くの見物人たちであふれていた。
市庁の前の広場も人でいっぱいだ。
戴冠式を終えたヨーゼフ2世が市庁のバルコニーに現れたとき、万歳の叫びがわき起こり、儀式はクライマックスを迎えた。
(岩波文庫『詩と真実』第一部 第五章P312以降)
戴冠式が行われた大聖堂。
レーマー広場にある旧市庁。真ん中の建物の正面入り口の上がバルコニー。
バルコニーの内側の大広間には歴代皇帝の肖像画が飾られている。
選帝侯たちが通った市門は残っていない。かつては市の周囲をめぐらしていた城壁がわずかに残っているばかりだ。
かつての中央見張所(ハウプト・ヴァッフェ)も見張り塔(エッシェンハイマー塔)も今ではカフェになっている。
ゲーテ広場から伸びるショッピングストリート(グローセ-・ボッケンハイマー通り)にあるカフェで軽めの昼食。
カフェは外も人でいっぱい。
あまりのまばゆさ、あまりの人の多さにいささか疲れてしまったが、聖カタリーナ教会の中の静けさに救われた。
ランチの後もひたすら街の中を歩いた。
天気は晴れで気温は30℃。気温は高いが、湿度が低くからっとしているので、汗かきの私でも全く汗をかかない。
そのかわり、太陽光線は肌にちくちくするほど強く当たり、ノドがカラカラになってくる。
ゲーテの生家に行くのは次の日にしようと決めていたが、足が何となくゲーテの生家の方に向かい、結局、その近くのレストランで夕食をとることにした。
レストランの名前は「Salzkammer」。
この日はビールでなく、フランクフルト名物のリンゴ酒。
普段から野菜中心の食事をしているので、さすがに肉料理には飽きてきた。
そこでこの日の夕食はベジタリアン。
皿の手前左はラビオリ、真ん中の2つはチーズと小麦粉をこねて焼いたもの、一番右はその香草バージョン。
ほんのり塩味がついていて、どれも全粒粉パンとの相性がいい。
つけ合わせのサラダもみずみずしくて、干からびた体に水分がいきわたるような心地がした。
もちろんリンゴ酒も2杯目を注文した。
ここはアルペン料理を出すお店。
後で調べたら、店の名前もオーストリアのザルツブルグ周辺の山岳地帯からとったものであることがわかった。
この料理の名前もずばり「アルペントリオ」。
こちらはお店の前景。
今宵もフランクフルトの夜はリンゴ酒とともに更けていく。
(次回に続く)