一方、今まで大連立を組んでいたSPDとCDUはともに議席を減らし、合計で69議席となり過半数を割ってしまった。
そこで、浮上したのが赤(SPD)、赤(左派党)、緑(緑の党)の連立。
「赤赤緑」連立は、州レベルではチューリンゲン州で実績があり(2014年~)、「赤赤」であればベルリンでも2002年から2011年まで連立を組んでいたので、全く可能性がないわけではないが、選挙から1ヶ月以上が経過した今でも、各党の綱引きが続いている。
ベルリン市議会議員の選挙結果(投票日 9月18日)
得票率及び獲得議席数(カッコ内は前回2011年との比較)
- SPD 21.6%(-6.7%) 38議席(-9)
- CDU 17.6%(-5.8%) 31議席(-8)
- 左派党 15.6%(+4.9%) 27議席(+8)
- 緑の党 15.2%(-2.4%) 27議席(-2)
- AfD 14.2%(+14.2) 25議席(+25)
- FDP 6.7%(+4.9%) 12議席(+12)
各党の幹部たちが他の党に牽制球を投げたりして、「赤赤緑」の連立交渉がうまくいかないのは、どうやら来年行われる連邦議会選挙後をにらんでいることが大きな要因のようである。
首都ベルリンでの連立は、連邦レベルでの「赤赤緑」連立の可能性を探る、いわば試金石と言ってもいいだろう。
「赤赤緑」の三党のうち連邦レベルでも連立を組んだことのあるSPDと緑の党の歩み寄りは難しくないと思われるが、NATOやEUよりロシアの方に顔を向けている左派党は、これら二党とは外交政策面での隔たりが大きく、連邦レベルでの連立は難しいと考えられていた。
実際、2013年の連邦議会選挙の結果、CDU/CSUとSPDの大連立が成立したが、数の上では過半数をとることができた「赤赤緑」の三党には、そもそも連立に向けた動きすらなかった。
もし、そのとき「赤赤緑」の連立政権が成立していたら、CDUのメルケル首相は、党としては選挙で躍進したにもかかわらず野党に転落するという信じられない事態になっていたところだった。
下の表は、私が参加しているある勉強会のために作成した1994年からの連邦議会選挙の結果をメルケル首相の動きを中心にまとめたものであるが、2013年の選挙結果を見ると、「赤赤緑」は320議席を獲得していて、過半数の316議席をわずかに超えている。
外交面での方向転換を迫られている左派党ではあるが、旧東ベルリンではあいかわらず強い支持を得ている。
旧東ベルリン市民にとって、SPDやCDU、FDPは「西から来た党」であるが、左派党はいまだに「おらが党」として親しまれているのだろう。今回のベルリン市議会選挙で出た、あたかもベルリンの壁が存在するかのような興味深い投票結果を見るとついそう思ってしまう。
旧西ベルリン
- SPD 23.2%
- CDU 20.9%
- 緑の党 17.1%
- AfD 12.1%
- 左派党 10.1%
- FDP 8.6%
旧東ベルリン
- 左派党 23.4%
- SPD 19.3%
- AfD 17.0%
- CDU 13.1%
- 緑の党 12.6%
- FDP 4.0%
次回は、そもそもAfDとはどのような政党なのか見ていきたいと思います。