2026年6月18日木曜日

加島美術 「櫂 舟三郎コレクション 暁斎が描いた浮世のことども ―肉筆画と版画でたどるその画業―」

 東京・京橋の加島美術では、「櫂 舟三郎(かい しゅうざぶろう)コレクション 暁斎が描いた浮世のことども ―肉筆画と版画でたどるその画業―」が開催されています。

加島美術入口では鬼を捕らえた巨大な鐘馗様がお出迎え

加島美術は、絵画、掛け軸などの日本美術を中心に、主に江戸時代から近代までの美術品全般を取り扱い、定期的に「美術品入札会 廻-MEGURU-」やWEB限定オークション「廻オンライン」などを開催していますが、日本美術の普及に向けた取り組みとして、展覧会などの開催にも取り組んでいます。
2017年には加島美術で「蘇る!孤高の神絵師 渡辺省亭」展が開催され、その後、「幻の画家」渡辺省亭が注目されるきっかけとなりましたが、今回の主役は河鍋暁斎。

暁斎なら知ってるという方も多くいらっしゃるかもしれませんが、今回は国内屈指の暁斎コレクター・研究者である藤田昇氏が長年にわたり蒐集し、暁斎の幼名「甲斐周三郎」にちなんで自身が名づけた「櫂 舟三郎コレクション」の中から選りすぐりの作品が展示され、肉筆画・版画あわせて167点のうち65点に上る作品が東京では初公開ですので、暁斎ファンならずとも見逃すわけにはいきません。

それではさっそく展示の様子をご紹介したいと思います。

展覧会開催概要


会 期  2026年6月13日(土)~6月28日(日) ※会期中無休
営業時間 10:00~18:00
出展作品 167点
※展示スペースの都合により、本展では展示替を実施いたします。一部作品は6月22日(月)からの後期展示にて公開いたします。
会 場  加島美術(〒104-0031 東京都中央区京橋3-3-2)
主 催  加島美術
※観覧無料、作品販売はありません。

最新情報は加島美術公式サイトでご確認ください⇒https://www.kashima-arts.co.jp/

※館内には撮影可能な作品が1点ありますが、それ以外の作品は撮影禁止となっています。掲載した写真は内覧会で主催者の許可を得て撮影したものです。

撮影可の作品はこちらです。

河鍋暁斎《瀧に白鷲図》明治4年(1871)以降



作品を拝見して最初に驚いたのは、その保存状態のよさ、色合いの鮮やかさでした。
そして、肉筆画と版画が「美とモード」「花鳥風月」「戯画・狂画・諷刺画」など、14のテーマに分けられ、それぞれのテーマごとに作品解説があるので、作品の見どころがよくわかりました。

「美とモード」展示風景

※作品は原則、ガラスケースなしの露出展示ですので、あまり近づかないように気を付けて鑑賞しましょう。

「花鳥風月」のコーナーに展示されている《鴛鴦図》は特に注目したいです。

「花鳥風月」展示風景


生涯に数千点にも及ぶ作品を制作したとも言われる暁斎ですが、その画業の初期にあたる20代前半の肉筆画は現存数が極めて少なく、詳細はほとんど明らかになっていません。今回の展覧会では、このたび新たに発見された、20代前半の肉筆画と推測される《鴛鴦図》が全国で初公開されています。(上の写真の壁にかかっている掛軸)


厚いアクリルケースで守られているのは《惺々暁斎団扇絵聚画帖》。

河鍋暁斎《惺々暁斎団扇絵聚画帖》明治4年(1871)以降

現存する肉筆団扇絵の画帖は他に例がなく、団扇絵15枚を収めた《惺々暁斎団扇絵聚画帖》はとても貴重な作品です。
最初に作品タイトルを見たとき、能面で知られる赤ら顔の「猩々(しょうじょう)」かと思いましたが、心のさえるさま、心の明らかなさまを表す「惺々(せいせい)」でした。
細部まで描き込まれた筆致や極彩色の鮮やかさはまさに「惺々」というタイトルにぴったり。思わず見とれてしまうような作品です。
この作品は会期中ページ替えがあります。
画帖ですので一度に全部のページを見ることはできませんが、作品横のiPadで全作品をご覧いただくことができます。

これまで1階の展示作品をご紹介してきましたが、展示は2階にも続きます。

和室のしつらえの展示スペースに展示されている掛軸は《不動明王開化図》。

河鍋暁斎《不動明王開化図》明治4年(1871)以降

浴衣を着て雑誌を読む不動明王、銘酒「剣菱」を調達したり、肉を捌いたりする脇侍たち、不動明王の光背の炎の上には肉を煮るための鍋が掛けられています。
文明開化の名のもとに行われた西欧の制度や文化、生活様式の急激な導入をユーモアたっぷりに皮肉ったところはまさに暁斎の真骨頂といえる作品ではないでしょうか。


内覧会では藤田昇氏に直接お話をうかがうことができました。
藤田氏が最初に蒐集した作品は《鐘馗に鬼図》。


河鍋暁斎《鐘馗に鬼図》明治12年(1879)以降


右隻には鬼を取り逃がした鐘馗、左隻には崖から飛び降りる鬼が描かれていますが、「鐘馗と鬼を画面から取り除くと、狩野派の山水画になります。」と藤田氏。
つい鐘馗と鬼だけに目が行きがちですが、確かに右隻の岩は狩野派のトレードマークともいえる斧で割ったような岩の描き方(斧劈皴〈ふへきしゅん〉)で表現されています。
若い頃、狩野派で修行した暁斎のこだわりが感じられる作品です。

入口でお出迎えしてくれた大迫力の鐘馗様にもお目にかかれました。(下の写真右)


右《鐘馗捕鬼図》 明治12年(1879)以降
左《鐘馗と梅の木にしがみつく鬼図》明治4年(1871)以降
どちらも河鍋暁斎

 
子供が遊んで楽しめる「おもちゃ絵」というジャンルの作品は初めて見ました。当時の子供たちは暁斎の双六で遊んだのでしょうが、今ならもったいなくて遊べないですね。


河鍋暁斎《絵双六 泰平開化繰雙録》明治7年(1874)



展示作品全167点を収録している展覧会図録も販売中です。
全作品に藤田氏による解説付きで、作品の魅力や見どころがよくわかり、暁斎の年譜や、暁斎が使用した署名・印章の一覧も掲載されていて、資料としての価値も高いのでおすすめです。
加島美術店頭でも、オンラインでも販売しています。

『展覧会図録』 販売価格:1,000円(税込)


今まで多くの暁斎作品を見ていたのに、まだまだ知らない暁斎があったことに気づいた展覧会でした。
会期が短いのでお見逃しなく! 

展示風景