東京・上野公園の東京都美術館では、特別展「東京都美術館開館100周年記念 大英博物館日本美術コレクション 百花繚乱~海を越えた江戸絵画」が開催されています。
現在の東京都美術館が1926(大正15)年5月、東京府美術館として開館してから今年(2026年)でちょうど100年目を迎えたことを記念して、今年1月から始まった開館100周年記念特別展は、今回が第3弾。
今回の特別展は、世界を代表するミュージアムのひとつである大英博物館から日本美術コレクションの至宝が厳選されて来日した、まさに百花繚乱、超豪華な内容の展覧会です。
開幕を前に開催された報道内覧会に参加しましたので、さっそく展覧会の様子をご紹介したいと思います。
展覧会概要
展覧会名:東京都美術館開館100周年記念
大英博物館日本美術コレクション 百花繚乱~海を越えた江戸絵画
会 場:東京都美術館(東京・上野公園)
会 期:2026年7月25日(土)~10月18日(日)
開室時間:9:30~17:30 ※金曜日は20:00まで ※入室は閉室の30分前まで
休 室 日 :月曜日、10月13日(火)
※ただし8月10日(月)、9月21日(月・祝)、10月12日(月・祝)は開室
展覧会公式サイト⇒https://daiei-ten2026.exhibit.jp
※展示室内は一部を除き撮影禁止です。掲載した写真は、報道内覧会で美術館より許可を得て撮影したものです。
展示構成
プロローグ 大英博物館と「日本」をつないだ貢献者たち
第1章 花開く江戸絵画
第2章 浮世絵―—江戸の「いま」を映す万華鏡
いきなり欧米の美術館に迷い込んだ気分にさせてくれますが、こういった雰囲気の中で見る葛飾北斎の代表作《「冨嶽三十六景 凱風快晴」》をはじめとした江戸絵画は、まるで海外で懐かしい人に会ったような格別な味わいがあります。
| ※「大英博物館日本美術コレクション」展 会場写真 中央が葛飾北斎《「冨嶽三十六景 凱風快晴」》天保元~4年(1830-1833)頃 大英博物館蔵 |
日本史に出てくる有名な歴史上の人物も登場します。
円柱の間からのぞく《聖徳太子像》と《源頼朝像》は、どちらも室町時代の作品で、作者は不詳です。
一瞬、「なぜ源頼朝像がロンドンに!?」と思いましたが、やはり京都・神護寺が所蔵する国宝《伝源頼朝像》に拠って制作されたと考えられていのでした。
| 右 作者不詳《源頼朝像》室町時代(14世紀後半) 左 作者不詳《聖徳太子像》室町時代(14世紀) どちらも大英博物館蔵 |
明治維新後に離れ離れになって、約150年ぶりに奇跡の再会を果たしたことが大きな話題になった襖絵が見えてきました。
| 左から 狩野宗眼重信《秋冬花鳥図襖》大英博物館蔵、《春景花鳥図襖》個人蔵 どちらも桃山時代末~江戸時代初(17世紀初) |
《秋冬花鳥図襖》、《春景花鳥図襖》をはじめとした襖絵は、17世紀初め(桃山時代末~江戸時代初)、奈良・談山神社(幕末までは妙楽寺)の重要な建物(竹林坊学頭屋敷)のために狩野宗眼重信によって描かれたと伝えられ、明治の神仏分離・廃仏毀釈のあおりで、1870(明治3)年頃、談山神社を離れ、売りに出されたと考えられています。
そして時を経て2024(令和6)年、現在はイギリス・ロンドンの大英博物館にある《秋冬花鳥図襖》と、日本・青森県中泊町の旧家・宮越家が所蔵する《春景花鳥図襖》が、一連のものであることが判明したのでした。
展示方法にもこだわりが見られました。
二つの襖絵は、学頭屋敷の花鳥間では、上の写真のように直角に並んでいたのでした。つまり手前のスペースが花鳥間ということですね。
展示のこだわりはそれだけではありませんでした。
《春景花鳥図襖》の反対側に回ると、《春景花鳥図襖》と表裏をなしている《名所風俗図襖(三保松原・清見寺)》の雄大な景色を見ることができます。
| 狩野宗眼重信《名所風俗図襖(三保松原・清見寺)》桃山時代末~江戸時代初(17世紀初) 個人蔵 |
さらに驚くべきことに、《秋冬花鳥図襖》の反対面に描かれていた《琴棋書画仙人図襖》はシアトル美術館が所蔵していて、このたびはるばる太平洋を渡って、かつてのように《秋冬花鳥図襖》の反対側に展示されているのでした。
| 狩野宗眼重信《琴棋書画仙人図襖》桃山時代末~江戸時代初(17世紀初) シアトル美術館蔵 |
もともと奈良にあった狩野派の襖絵がイギリス、アメリカ、青森に分かれ、それが今、東京でおよそ150年ぶりに再会するという、まさに奇跡の場面をぜひお楽しみいただきたいです。
ほかにもイギリスからの初里帰り作品などが多数来日しています。
円山応挙《虎の子渡し図屛風》は、下村観山や今村紫紅をはじめ近代日本画家を支援し、自らも美術品コレクターだった横浜の実業家・原三溪の旧蔵品。
関東大震災をきっかけに多くのコレクションを手放し、甚大な被害を受けた横浜の復興に尽力した三溪の旧蔵品が海外にまで出て、ロンドンで大切にされていたのでした。
英国の王子(のちの国王)と近代日本画家との共作というとても珍しい作品も初来日です。
ここまで大英博物館の江戸絵画コレクションのすごさには驚かされてばっかりでしたが、浮世絵コレクションの豊富さも、これまたすごいです。
| ※「大英博物館日本美術コレクション」展 会場写真 |
いまや「世界の北斎」となった葛飾北斎をはじめ、鈴木春信、鳥居清長、喜多川歌麿、東洲斎写楽、初代歌川豊国、歌川広重、歌川国芳といった八大絵師ほか、コレクションの多さにも圧倒されますが、珍しい作品も楽しめました。
葛飾北斎でいえば、出版されなかった北斎の版下絵がその一つ。
歌川広重のエリアでは、バージョンの違う日本橋が展示されています。
| ※「大英博物館日本美術コレクション」展 会場写真 |
ゴッホが模写したことでも知られる《「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」》は、対岸の船が省略されていない初摺の本版でした。以前、東京藝術大学大学美術館所蔵のバージョンを見て以来、久しぶりに対面することができたのがうれしかったです。
| 歌川広重《「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」》安政4年(1857)9月 大英博物館蔵 |
2000年代以降に大英博物館が新たに収蔵した傑作も来日しています。
大英博物館では、50点ほどしか現存していない喜多川歌麿の肉筆画のうち11点も所蔵していて、《文読む遊女》のように、これだけ大ぶりの作品はとても珍しいものなのです。