2012年1月22日日曜日

旧東ドイツ紀行(5)

11月13日(日)  ペルガモン博物館

博物館島に位置するペルガモン博物館。広々とした室内には、古代ギリシャ、ローマ、バビロニアやイスラム圏などの巨大遺跡がそのままの形で再現されている。





 ペルガモンは、かつてヘレニズム文化が花開いた古代ギリシャの都市で、現在はトルコ領のベルガマ。
  入口を入ってすぐに、かつて繁栄したペルガモンの姿を復元した大きな想像図が迎えてくれる。





 展示は、古代ギリシャ、ヘレニズム、古代ローマと続き、大理石の彫像群や再現された遺跡群が並び、まさに壮観の一言。



圧巻は博物館の中心に位置する、ペルガモンのゼウスの大祭壇の再現。


これはペルガモンのジオラマ。
 まずは全景。
以前にもお話ししたが、私は特撮で育った世代。そらぞらしいCGはどうもなじめないし、目が疲れてくる。それに比べて、模型は空想力をかきたててくれるので、いつまで眺めてもあきることがない。







 例えば、人の目線でジオラマを見ると、こうなる。 
今まさに西の入口に立ち、どういった街なのだろうかと期待に胸を膨らませながら、丘に立つ街の中心に向かう自分自身を想像してしまう。






これがゼウスの大祭殿。
先ほど紹介したのが、階段から下の部分。これがそっくり再現されている。





現代のヨーロッパ文明の基礎となった古代ギリシャ、ローマ文明。そして古代ギリシャは民主主義発祥の地でもあり、欧州連合(EU)もその土台の上に成り立っている。
しかし一方で、現代では「ユーロ危機」の震源地となっているギリシャ。

「どうしてこうなってしまったのか」
遺跡群に圧倒されればされるほど、こういった疑問が頭の中で大きくなってくる。
ギリシャ政府の財政危機はイタリアにも飛び火し、ドイツによる巨額の財政支援は避けられない状況だ。真面目に働き、つつましやかな生活を送るドイツ人が、自分たちの税金で、なぜ浪費ばかりしているギリシャ人を助けなくてはならないのか、といった声はドイツ国内に根強い。
ドイツに行く前に調べた記事では、ドイツ人の80%がギリシャへの支援に反対している。


シュピーゲル誌の世論調査結果

http://www.spiegel.de/politik/deutschland/0,1518,787463,00.html

しかし、よく考えてみると、ギリシャ人をはじめとしたEUの各国の人たちがドイツ製品を買ってくれるからこそ、ドイツ企業の業績は上がり、労働者にとっても、雇用は確保され賃金は上がる。現に、「ユーロ危機」といっても、ドイツ経済は危機に直面していない。経済は成長を続け、失業率は下がっている。
この記事はフランクフルト空港に置いてあった新聞の電子版。 

http://www.finanzen.net/eurams/bericht/Titel-Gewinner-der-Krise-1482191


ギリシャ政府が財政再建のために増税をはじめとした財政再建策をとれば、国民の購買意欲は下がり、ドイツ製品だって売れなくなる。こうなると困るのはドイツ企業であり、そこに雇われている労働者である。だから、ドイツの財政支援は自国民のためのものでもある。

ペルガモンの遺跡群を見ながら、私の頭の中には、ヨーロッパを舞台として回り続ける巨大なメリーゴーランドが浮かんできた。
借金までしてギリシャ人がドイツ製品を買う→ドイツ企業がもうかる→ドイツ人労働者の賃金が上がり、納税額も多くなる→ギリシャの財政が破たんしてギリシャ人がドイツ製品を買わなくなる→ギリシャの財政立て直しのためドイツ人の税金をつぎ込む→ギリシャ人がドイツ製品を買う。
かなりデフォルメしているが、こういったサイクルを繰り返すメリーゴーランドだ。


日本に帰ってから興味深い動画を見つけた。
ギリシャ政府観光局のPR動画「You in Athens」。

http://www.visitgreece.jp/

老夫婦、若いカップル、遺跡に興味のある女性、中年の男性、親子連れなど各国からアテネに来た人たちが口々にアテネの素晴らしさをほめたたえている。
ところが、登場する人たちはすべて白人。アジア系の人は一人もいない。アジア系はお呼びでないということか。
また、国別にみてもアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、イギリス、フランス、ベルギー、オーストリア、デンマークで、ドイツは見事にはずされている。現地に来てもけちでお金を落とさないドイツ人もやはりお呼びでないということか。
さらに追い打ちをかけるようにデンマーク人のおじさんは、「ギリシャ人のライフスタイルといえば、ドイツ人などと比べてたくさんのコンサートや劇場、映画館に足を運んでいますね」とまでのたまわっている。

しかし、ドイツ人たちよ、怒るなかれ。ギリシャ国民はドイツ製品を買ってくれる大事なお客さんなのだ。
そもそもEUの東方への拡大(Osterweiterung)を推し進めたのはドイツ市場の拡大のためではなかったのか。ギリシャ、ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、フィンランド、いずれの国も以前からドイツとの経済的な結びつきが強く、EU加盟によりドイツからのモノの流れはさらに加速し、ドイツが得る利益は計り知れない。一方で、盟友フランスはじめ他の国には何のメリットもないが、ドイツがそういうのだからと、しぶしぶ付き合ってきた。
先ほどのシュピーゲルの世論調査では、37%のドイツ人がユーロからの離脱に賛成しているが、離脱して困るのはドイツの方だ。
メリーゴーランドを回し続ける今の経済サイクルがいいかどうかはわらないが、今すぐに止めてしまってはドイツが、そしてヨーロッパ全体が沈没してしまうかもしれない。
(次回に続く)