2012年3月20日火曜日

旧東ドイツ紀行(13)

11月14日(月)続き ベルリン
新博物館を出たら、外はすっかり暗くなっていた。
古代エジプトの遺跡を中心に内容があまりにも充実していたので、閉館ぎりぎりの6時までいたが、地中海文明や石器時代、青銅器時代、鉄器時代の遺跡が並んだコーナーは駆け足になってしまった(新博物館は、日曜日から水曜日までは18時、木曜日から土曜日までは20時閉館)。

早いもので今日はベルリン最後の夜。
せっかくベルリンに来たのだから、東側だけでなく、西側にも行ってみようと思い、ベルリン一の繁華街「クーダム」に行ってみることにした。
これはフリードリッヒ駅構内。ドイツ人は歩くのが早い。目的地に向かってわき目もふらずに歩いていく。私も歩くのは遅い方ではないが、どこへ行っていいかわからずうろうろしていると、歩いている人の邪魔になってしまう。

フリードリッヒ通り駅からS-バーン(東京でいえば山手線のような近郊電車)に乗り、4つ目のツォー駅(動物園駅)で降りる。
駅前からクーダムに至るまで、レストランやデパートのネオンがまばゆく、街全体がやたら明るい。人通りも車も多く、せわしない感じ。

日本でも都会に住んでいて、人や車の多いところは慣れているはずなのに、東側の節度ある明るさ、ほどよい人の多さに慣れてしまったのだろうか。西側には違和感を感じつつ、クーダムの入口あたりまで少し歩いただけで、そそくさと東側に戻ってきてしまった。
下の写真は、ツォー駅近くの交差点。

次の写真はツォー駅の反対側。


  ドイツ人はこんな寒い冬でも外で食事をする。


気のせいか、西は東ほど交通ルールもあまり守られていないようだ。

東では、歩行者用の信号が点滅すると誰もが止まる。自動車も自転車も、交差点で横断歩道を渡る人を見るとぴたりと止まる。
ところが西では信号が赤でも横断歩道を渡ろうとする人がいる。自動車も信号が変わりかけてもかなりのスピードで交差点に進入する。
こんな調子では横断歩道を渡るときも神経を使う。
これも西側は居心地がよくないと思った一つの理由かもしれない。

交通ルールについて話が出たついでに・・・
先週末、1泊2日で京都に行ってきた。
京都市内は、道幅が広く、歩道も十分な幅がある通りでは、自転車通行帯が色分けされている。でも、歩行者の方が色分けに気付かず、自転車通行帯を歩いて自転車に乗っている人を困らせている場面をよく見かけた。
日本では自転車と歩行者のいい関係ができるまでまだ時間がかかりそうだ。
下の写真は堀川通りの歩道。





S-バーンに乗ってふたたびフリードリッヒ通り駅。
「戻ってきた」と言う感じで、何となくほっとする。
東側は人通りも、車の通りもあるが、ごみごみした感じはない。ネオンサインも少ない。
夕食は、フリードリッヒ通り駅近くのガード下の「ツア・ノレ(Zur Nolle)」。地球の歩き方に、野菜料理も豊富にある、と書いてあったのでここ決めた。


お店の上はS-バーンの線路。まるで有楽町のガード下にありそうなおしゃれな店。
そういえば、S-バーンに交差するフリードリッヒ通りはデパートやブランドショップが並んでいるので、たとえて言うなら「東ベルリンの銀座通り」。
外観だけでなく、店内も中世の酒場といった落ち着いた雰囲気。

メニューを見ると、肉料理の他に野菜料理もいくつか並んでいた。
その中で一番温かそうな「野菜ラザニア」を注文することにした。
私は案内しくれたウェイトレスさんに声をかけた。
「野菜ラザニアとビール。それから、ビールは料理といっしょにもってきてもらえますか」
「はい、わかりました」
ドイツのレストランでは、まずビールが出され、それをちびちび飲みながら料理を待つ、というのが一般的なようだ。日本の居酒屋のように、「はい、生ビール、はい、お通し、はい、枝豆」というわけにはいかない。
私は料理をつまみながらビールを飲みたかったので、こう注文した。

しばし、ガイドブックを見たり、メールを打ったりしていると、おいしそうな料理が運ばれてきた。
そこでウェイトレスさんは、「あっ」という感じでビールを持ってこなかったことに気がついて、すぐにカウンターまで戻ってビールを持ってきてくれた。東ドイツ時代では考えられないような親切な対応。

何種類もの野菜がはさまったラザニア。チーズの塩気が適度にきいて、濃い味のドイツビールによく似合う。すぐに1杯飲み干してしまい、2杯目を注文した。
道行く人や店内の装飾を眺めながら、ベルリン最後の夕食を心ゆくまで楽しんだ。

お勘定をお願いすると、ウェイトレスさんはレシートを持ってきた。
ここには「チップは含まれていません」という表示はない。観光客でなく地元の人が来るレストランだからだろうか。
「おいしかったです」とお礼を言いいながら18ユーロを渡すと、ウェイトレスさんもにこっと笑顔。
下の写真の左はレシート、右は記念にいただいたコースター。赤ちゃんがジョッキから顔を出しているかわいらしいデザイン。「ベルリーナー・キンドル」とは「ベルリンの小さな子」という意味。
ベルリーナー・キンドル社のホームページによると、「19世紀後半に醸造所が造られ、ドイツ帝国の隆盛によるベルリン人口増加に伴ってビールの製造量が増えた。1890年には、『ミュンヒナー・キンドル』に倣い名前を付けた」とある。
やはり、ドイツでもビールといえばミュンヘンが有名なようだ。

ホテルまでは歩いて10分ほどの距離。
夜になりさらに寒さが厳しくなってきたが、食事をしたせいか体はぽかぽかしていた。
それでも、さっきからのどの痛みが気になっていたので、今日は風呂でよく温まって早く寝ようかな、明日は良くなってればいいのだけれど、などと考えながら、ホテルへの帰りを急いだ。
(次回に続く)