こんな季節にぴったりの展覧会「デンマーク・デザイン展」が東京・新宿の損保ジャパン日本興亜美術館で開催されています。
会場内はぬくもりでいっぱい。デンマークの家庭の室内が再現されていたり、椅子に座ってその心地よさを実感できたり、まさに「アット・ホーム」な展覧会です。
会場入口にはすっかりおなじみになった記念撮影スポット。
クリスマスツリーがとても華やか。
会場の最後のコーナーには実際に座れる椅子が展示されています。
このコーナーは写真撮影可なので、ぜひ座り心地を実感しながら記念写真を撮ってください。
私は一番後ろの黄色い背もたれのついた椅子が気に入りました。
後ろにもたれかかると心地よすぎて、そのままうとうとしてしまいそうでした。
それでは、展覧会の開会に先がけて開催されたweb内覧会の進行に沿って、展覧会の様子をご紹介したいと思います。
展覧会の詳細は美術館の公式サイトをご参照ください。
http://www.sjnk-museum.org/program/current/5062.html
※掲載した写真は美術館より特別の許可をいただいて撮影したものです。
「デンマーク・デザイン展」は日本・デンマーク国交樹立150周年を記念して開催された展覧会です。冒頭、デンマーク大使館・公使参事官のマーティン・ミケルセン氏が来館されて、ご挨拶をいただきました。
「今年8月、日本に着任したばかりですが、会場内を見てデンマークに帰ったような気分になり、少しホームシックにかかりました(笑)。」
「今回の展覧会はデンマークの素晴らしいデザイナーの作品が展示されています。どれもこだわりの職人技で、日本のデザインと共通していると感じています。」
「北欧の寒い冬に素敵なデザインの家具のある暖かい部屋で本を読み、紅茶を飲むところを想像してみてください。これがデンマーク・デザインのコンセプト『ヒュゲ』(デンマーク語で「温かな居心地のよい雰囲気」)です。」
「デンマーク人は、椅子を買うためにお金を貯める、と言われています。みなさんもぜひデンマークのデザイナーの椅子に腰を落ち着けて最高の体験をして、デンマーク・デザインの素晴らしさを楽しんでいただいたいと思います。」(拍手)
最初の会場、手前が第1章、後ろが第2章 |
第1章 国際的評価を得た最初のデンマーク・デザイン
第1章は、今では「ロイヤル・コペンハーゲン」のブランドで有名な磁器が展示されています。デンマークの磁器の歴史は、王立磁器製作所が設立された1775年に始まりました。
こちらがシンプルなデザインの「ブルーフルーテッド」。
こちらが写実的なデザインの「ブルーフラワー」。
左の方の皿は中央に花柄模様が描かれていますが、右の方の皿は中央に余白をとっています。ここには「ジャポニズムの影響がある。」と江川さん。
第2章 古典主義から機能主義へ
「近代家具デザインのパイオニア」コーオ・クリントのレッドチェア。
「伝統を切り捨てずに新しいものを作ったコーオ・クリントのレッドチェアは美術工芸博物館の講堂のために作られたものですが、その後身のデンマーク・デザイン博物館で使われています。」
第3章 オーガニック・モダニズム-デンマーク・デザインの国際化-
「オーガニックとは、『有機的な』という意味で、曲線、曲面を重んじるデザインのことです。」
「第二次世界大戦後にデンマーク・デザインは黄金期をむかえました。工業が発達して大量生産の時代になると、デンマークの手工業の伝統が、特にアメリカで新鮮なものに見えるようになったのです。」
「この頃は人間工学の影響で椅子のラインは人間にあわせて曲線になり、世界の流行に
フィットすることになります。」
「この章では、3大デザイナーの作品を紹介します。」
一人目はハンス・ヴィーイナ。
「こちらはアメリカのケネディ元大統領が大統領選挙の中、ニクソン候補とテレビ討論会を行った時にケネディ候補が使用した椅子(《ラウンドチェア》)です。このあと、この椅子はアメリカで「ザ・チェア(椅子の中の椅子)」と呼ばれ、その後、爆発的な人気を博しました。」
「二人目はアーネ・ヤコプスンです。建築家で、室内の内装も手がけたヤコプスンが設計した小・中学校のためにデザインした椅子や机です。素材は成形合板で、背もたれから座る部分まで一体化されています。デザインはシンプルですが、座り心地がいいものです。」
アーネ・ヤコプスンが設計したコペンハーゲンのSASロイヤルホテル(現在はラディソンブル・ロイヤルホテル)の客室とロビーに置かれた《エッグチェア》(右の黒い椅子)と、《スワンチェア》(左の赤い椅子)。
後にはロビーの様子とホテルの外観のパネル。
「そして3人目がフィン・ユールです。」
「ユールも建築家で、カーブを描く《チーフテンチェア(=酋長の椅子)》(下の写真中央の椅子)は古代エジプトの女王の椅子をイメージしたもので別名《エジプシャンチェア》と呼ばれています。」
(壁のパネルはフィン・ユール邸のリビングルームです。)
「次は近代照明の父と呼ばれたポウル・ヘニングスンです。彼のコンセプトは『まぶしくない』。これは子どものころほんのりとしたランプの光の中で生活していたことが原点にあるのではと言われています。」
「建築家ヴェアナ・パントンがデザインした。色鮮やかでビビッド、心が落ち着くのとは正反対の《パントン・チェア》。1960年代のポップカルチャーから受容されました。」
「素材はプラスチックで、先ほどのアーネ・ヤコプスンの椅子は背もたれと座る部分が一体化されましたが、この椅子は脚まで一体化されています。」
第4章 ポストモダニズムと現代のデンマーク・デザイン
「1970年代初め頃からデンマーク・デザインに対する海外の関心が薄れ、粗悪品も出回り、家具の輸出も減少しました。」
「そういった中、日用品の新しいブランドが出てきました。また、機能性に加え、環境に配慮した素材を使った家具も出てきました。《リトル・ノーバディ》(下の写真の青い椅子)は使用済みペットボトルを再利用しています。」
「後ろの展示は高級自転車です。デンマークは国土が平坦で自転車専用道路も整備されているので、自転車を利用しやすい環境にあります。」
「新しいブランドの日用品は、ダイニング(下の写真)の棚にも展示しています。」
「長い冬に家の中で多くの時間をすごさなくてはならない北欧の人たちが、伝統をいかして改良を重ねてきたデンマーク・デザイン。今回の展覧会では200点以上の作品が展示されています。日本でこれだけ大きな展覧会は初めてです。ぜひ高品質なデンマーク・デザインを楽しんでいただければと思います。」(拍手)
冒頭に紹介した、実際に座り心地を実感できるコーナーで椅子に座っていたら、公使参事官のマーティン・ミケルセンさんが「どうですか?」と声をかけてくださいました。とても気さくな方でした。もちろん笑顔で「心地いいです。」と答えました。
寒い冬にピッタリの展覧会です。
会期は約1ヶ月。12月27日(水)までなのでお見逃しなく。