2017年11月19日日曜日

三菱一号館美術館「パリグラフィック ロートレック展」 

東京・丸の内に19世紀末パリの街並みが登場しました!

右から二つめがロートレック《ムーラン・ルージュ、ラ・グーリュ》(三菱一号館美術館)

パリの街並みのパネル
(このコーナーでは写真撮影ができます。)

三菱一号館美術館で開催中の「パリ♡グラフィック ロートレックとアートになった版画・ポスター展」では、3階展示室の一角が19世紀末パリの街並みを撮った写真のパネルで部屋が区切られていて、そのパネルにロートレックの作品が展示されています。それにBGMにシャンソンが流れていて、ここはすっかり19世紀末のパリ。

とてもおしゃれで素敵な展覧会です。
先日開催されたブロガー内覧会に参加しましたので、そのときの様子をお伝えしながら展覧会の素晴らしさをご紹介したいと思います。

はじめに三菱一号館美術館学芸員の野口玲一さんから今回の展覧会の見どころについてのお話がありました。モデレーターは「青い日記帳」主宰のTakさんです。

野口さん(左)、Takさん(右)


Takさん 今回の展覧会のサブタイトルは「From Elite to the Street」ですが、これはど
 ういった意味を込めているのでしょうか。
野口さん 版画は絵画の表現手段として重視されていませんでしたが、大衆の消費文化が
 さかんになった19世紀末には商品ポスターや店の宣伝ポスターなどの商業美術がスト
 リートに出現するようになりました。
Takさん 街の写真のパネルがあって、歌手の歌声も聞こえるこの空間がまさにストリー
 トということですね。
野口さん そうです。そして隣の部屋がエリートたちの書斎をイメージしたプライベート
 な空間になっています。
  プライベートな空間に飾る作品は、前衛的なもの、一見したところ分かりにくくて密
 やかなメッセージが込められたもの、見る人に想像させるもの、エロチックで人前で見
 せられないものなど、個人的に楽しむものが好まれました。


Takさん 版画が流行した背景にはリトグラフの普及も大きいのでは。
野口さん リトグラフは石版の化学反応を利用したもので、版を彫る必要がないため、絵
 の勢いをそのまま表現することができるのです。実際に使われた石版を展示しているの
 でぜひご覧になってください。(上の写真の奥の展示台の上に展示されています。)
Takさん リトグラフですと版画に適した大きな石がないため、大きな作品が作れないとい
 うデメリットがありますが、ロートレックの《ムーラン・ルージュ、ラ・グーリュ》は
 3つに分けて印刷していますね。
野口さん よく見ると紙の継ぎ目があるので、みなさんもご覧になってください。
Takさん 三菱一号館美術館所蔵のロートレック作品は保存状態がいいですね。
野口さん ロートレックが個人的に手元にもっていたものを譲り受けた画廊主モーリス・
 ジョワイヤンのコレクションだったもので、街に貼られていなかったので、色もきれい
 で、折り目もなく、別摺りの文字も入っていません。
Takさん 文字なしがレアということですね(笑)。
  版画集『カフェ・コンセール』が展示されていますが、ロートレックは線の描き方が
 上手で、一発で決めていますね。
野口さん そうですね。描く人物の特徴をうまくとらえています。ただし意地悪なとこ 
 ろがあって、女性をきれいに描かないのです(笑)。

右がロートレック《版画集『カフェ・コンセール』(三菱一号館美術館))

Takさん ロートレックは正式な美術教育を受けていませんね。
野口さん そうなんです。それなのに最初の作品である《ムーラン・ルージュ、ラ・グー
 シュ》は実験的な要素も取り入れていて、まさに天才です。
  版画は当時の最新のメディアでした。大量に摺られて街じゅうに出回り、大衆に人気
 が出てくるようになりました。ロートレックの時代には画家のデビューの仕方が変わっ
 てきたのです。(拍手)

展覧会は庶民向けの版画と知的階層向けの版画の2章構成になっています。

「はじめに 高尚(ハイ)から低俗(ロー)まで」に続いて「第1章 庶民(ストリート)向けの版画」が続きます。

今回の展覧会でBGMが流れているのは冒頭で紹介したパリの街並みのパネルがある部屋を入れて3室。
最初の部屋にもBGMが流れていて、会場に入った途端、気分はパリ!




続いて「第2章 知的階層(エリート)向けの版画」の展示が続きます。

創建当時の内装が再現されてヨーロッパの雰囲気がただよう三菱一号館美術館ならではの展覧会ですね。


 


そして最後の部屋にもBGMが流れています。
ここにはゴッホが所蔵していて、自身の制作にも大きな影響を与えた浮世絵コレクションが展示されています。


秋を飛び越えてすっかり冬になったような寒さの中、都会の片隅で前衛芸術華やかりし19世紀末のパリの雰囲気にひたってみてはいかがでしょうか。

詳細は三菱一号館美術館の公式サイトでご確認ください。
http://mimt.jp/parigura/